(2014年2月1日)品質管理研究所
ものづくりで品質を確認するための世界共通の検査「外観検査」、
だれにでもできる一見簡単そうな外観目視検査には、多くの問題が潜んでいます。
ものづくりが海外にシフトして、現地生産化しているような海外工場の場合では、
現場の従業員の離職率も高い場合も多く、安定した検査を行うための工夫も必要です。
特に、外観目視検査は、ひとに依存する部分が多く、
ヒューマンエラーによる検査ミスや作業ばらつきが発生しやすいものです。
外観検査員の力量を十分に確保して検査をしなければ、
生産工程で管理しきれていない工程不良品を市場に流出させてしまいます。
お客様にご迷惑をかけるばかりでなく、企業にとっても大きな損失となるものです。
また、品質が安定しにくい初期生産品の出荷品質を確保するために
外観検査による流出防止に頼らざるをえないことももちろんあるでしょう。
今回は、外観目視検査の教育と生産現場の検査にかかすことのできない
「不良見本」の活用について考えてみましょう。
海外の街中で、みかけた下記のキャラクター製品を例に考えてみましょう。
まず、どれが良品で、どれが不良品でしょうか。

なにを良品として、なにを不良品とするのか、
それを明確にしなければ、工場での検査判定はできません。
おおざっぱで細かなことを気にしないひとにとっては、気にならない程度かもしれませんが、
細部にわたりこだわりをもつひとにとっては、気になるレベルかもしれません。
どのような基準で検査して、出荷するかは、
企業の品質に対する考え方を示すものです。
この製品では、何が、品質の変化として気になるでしょうか。
・あるべきものがない、・形状がおかしい ・色がおかしい ・・・。
さまざまな違いに気づくことができますが、何が不良品でしょうか。
どこからが不良品で、どこまでが良品になるのでしょうか。
一定の外観判定項目と判定基準がなければ、
外観の判定をおこなうことは、難しいことがよくわかります。
検査者が複数いる場合には、どの状態が合格か検査者による認識の違いで、
不良検出率に違いが現れますので、客観的な基準を明確にしておくことが必要になります。
外観の品質は、人の感覚に左右されがちだからこそ、
製品の品質を維持するためには、
一律の外観基準を設定し、その基準にもとづき、判定することが求められます。
まずは、検査をする上での明確な基準を設定することが、外観検査の第一歩となります。
次に、なにが良品で、何が不良品か、検査基準で明確にできても、
それが検査員につたわり、正しく理解されなければ、検査基準書も役に立ちません。
多くの工場でよくある検査基準書には、
不良の内容が、ことばや数値で書面にびっしり書いてありますが、
果たして、現場の検査員に、その具体的基準をどのようにすれば、
より簡単に、よりわかりやすく、そして、より正しく理解してもらえるでしょうか。
人の入れ替わりの激しい工場においては、特に重要な課題といえます。
そのコミュニケーションの橋渡し役こそが、「不良見本」です。
不良見本は、外観検査の判定基準を検査者の記憶に頼るのではなく、
不良の現物見本をたよりにして、判定項目や判定基準を「見える化」するものです。
検査員を教育するためにも活用され、現場に掲示して活用します。
実際にどのような不良品が発生するのか、事前に理解できるように、
現物の見本として掲示することが検査員の理解の手助けとなります。
もちろん写真でもわかる不良の場合には、
手順書やワンポイントレッスンなどの掲示物にいれて、表現することもできます。
下記のようにあらかじめ、不良の状態を理解しておくことが大切です。

不良品の実物を実際に見て理解するのとしないのでは、
検査員の理解の深まり方も違います。
どこを見て、どのようなポイントを検査すればよいか、
また、どのような点に気をつければよいか、肌で感じ取ることができるでしょう。
検査を通じて、大きな変化はとらえやすいものの、見逃しやすい不良項目については、
あらかじめ、不良の現物を見ることで、注意を喚起することができます。
また、実際の不良品や良品の限度として、検査判定に迷うような生産品と比較することで、
良否の判定を正しく実施できるようにするため活用される場合には、限度見本となります。
さらに、測定設備では、始業時に点検をおこない正しく動作することをチェックしますが、
検査のようにヒトに頼る場合には、始業時の確認がおこなわれない場合が多いものですが、
どのような検査基準で正しく判定するべきか、このような不良見本を活用し、
検査員と確認した上で、外観目視検査を始めることも大切なことです。
ものづくりにおいては、多くの良品の中に不良品がごくわずかな確率で混じっているものです。
下記の製品写真のように、さきほどみた不良の写真事例を見て理解した後では、
同じ製品をみても、容易に不良品に気づくことができるはずです。
ぜひ、どこに不良が潜んでいるか、探してみてください。

検査責任者には、このように検査員が、判定もれや判定ミスをおこさないような
環境づくりを積極的におこなってほしいものです。
以上、今回は、検査の見える化「不良見本」についてご紹介しました。
外観目視検査で、日々試行錯誤されている皆様のヒントになれば幸いです。
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