2011年11月03日

工程FMEAとは?

工程FMEAとは? -品質管理研究所-


品質の高い製品をうみだすためには、

設計・開発・生産・販売・サービスという一連の流れを阻害する
問題を理解し、未然に改善を図ることが大切です。

今回は、量産試作や量産に入る製造前の段階で、
事前に問題を把握し、製造工程に未然の対策を施す創造的な品質管理手法、
『工程FMEA』について、ご紹介します。

工程FMEA

※ 上記のFMEAのフォーマットのExcel版を下記で、
無料でダウンロードできるようにしていますので、
ご自由にアレンジして、ご活用いただければ幸いです。


■ FMEAとは?

FMEAとは、Failure Mode And Effects Analysis の略称で、
『故障モード影響解析』ともいわれ、


製品やそれを構成する部材の想定されうる故障モード(Failure mode)を
事前に抽出して、その原因や影響を分析することで、

量産前段階の部材や製品の設計段階から、工程上で想定される問題を防ぐように、
基本設計の改善や工程設計の改善を図る優れた品質管理手法です。



FMEAは、もともと、アメリカ軍やNASAなどで、
技術開発と品質向上を図るために生み出された手法ですが、
今では、自動車業界を中心として、多くの一般企業にも普及しています。


人の命を預かる自動車では、特に、高い品質が求められます。

そのため、ISO9001の品質マネジメントシステムに加え、
自動車産業の要求事項を備えた規格ISO/TS16949による
『コアツール』と呼ばれる5つの品質手法を活用することが要求されています。

FMEAは、そのコアツールのひとつとして、活用されている品質手法としても知られています。


今回は、FMEAのフォーマットの中でも、特に、工程の設計にかかわる、
工程FMEAのフォーマットを無料でダウンロード(Excel)できるようにいたしました。

ぜひ、皆様の会社にあった形でアレンジして活用いただければ幸いです。


■ ダウンロードはこちらからどうぞ!

@ FMEAのフォーマット(Excel)※工程FMEA バージョン

ひらめき工程FMEA (例)Excelバージョン

※簡単な記入事例も記載しておりますので、参考になれば幸いです。

こちらは、PDFでの確認バージョンです。

ひらめき工程FMEA(例)PDFバージョン


A FMEAのフォーマット(Excel)※設計FMEA バージョン

あわせて、設計FMEAのフォーマット(参考)については、
こちらの記事から、ダウンロードできますので、ご参考にどうぞ。

ひらめきFMEAによる未然防止とは?(品質管理研究所)


■ 工程FMEAとは?

設計FMEAが、製品の設計に着目するのに対して、
工程FMEAは、その名のとおり、工程の設計(製造工程上の製品の不具合・問題)に着目し、

実際に製造ラインで生産をする前に
QC工程表に対応した各製造工程(各製造設備や検査設備、作業内容)に対しての問題や
原因を追求し、改善を図るために活用することができます。


■ 工程FMEAのやりかた  簡単7ステップ

(1)お客様の要求仕様、設計の変更点、新規に追加される部品や工程を明確にしておきます。
 ※FMEAは、新たな隠れた問題点を抽出するものであり、リスクの大きな
  変化点に意識を向けることが大切です。

(2)想定されるQC工程図をもとに、工程と工程機能を抽出します。
 ※特に新たに追加された工程がもれていないか注意してください。


■ QC工程図については、こちらの関連記事で説明していますので、ご参考まで!

何をかく?QC工程表!
QC工程表の作り方とは?
『QC工程表』って何?


(3)製造工程で発生が想定される問題点(工程の故障モード)とその要因を抽出します。
  新規の製品をつくるために、既存の工程に新たに追加する工程は特に注意しましょう。

 作業のしやすさ(Man)、必要な治工具(Method)、新規設備(Machine)、
 手袋やメガネなどの備品や副資材(Material)、検査に必要な測定器具(Measurement)
 作業・設備スペース(Environment)など、

 5M1Eにかかわるポイントでの工程上の問題点を抽出しましょう。
 新規設備導入予定があれば、設備メーカーさんが理解している設備のメンテ・磨耗情報や
 交換部品、チェックシートなど含め、教えていただくこともできるでしょう。

 工程設計上の問題を防ぐためには、製品の不良だけに焦点をあてるのではなく、
 つくるために必要な5M1Eの要素にも、注意しておきたいものです。

■ 設備の汎用性
 将来、製品の機種変更に伴う可能性があるのであれば、
 より広い範囲で加工できるより汎用性のある設備を導入することも必要でしょうし、

■ ラインバランスによる生産性
 量産工程での各工程の生産タクトタイムを測定したときに、
 新規に追加した工程だけが多く時間がかかりボトルネックになるのであれば、
 生産性のよい機械を購入したり、2台購入したりして、
 ラインバランスを保つことも必要になってきます。

■ 作業者の安全
 工程を動かすのは、大切な社員さんです。
 事故やけがが起きないように工程設計の段階で未然に安全を確保することも大切です。

 工程FMEAは、製品に伴う問題に着目しがちですが、
 工程全体、将来にわたる時間軸ももった検討が大切ではないでしょうか。

 さらに、過去の失敗経験やベテラン社員さんの豊富な知識もあれば、
 さらによいFMEAになることでしょう。

(4)工程上の問題による影響が、製造の「工程」や部品が組み込まれる「製品」、
 さらに、最終的に使用する「お客様」にどのような影響を与えるかを明確にします。

(5)対策前のリスクとして、定量的に発生頻度、厳しさ(影響の大きさ)、
 検出の難しさの観点から評点をつけて、掛け合わせた値を致命度(重要度)として、
 ランク化し、重要性を認識します。

 多くのFMEAでは、リスクをRisk Priority Number (RPN)という指標で、
 発生頻度(Occurrence)×厳しさ(Severity)×検出難しさ(Detection)で算出します。

 ランク付けは、5段階など、自社内で評定基準を定めて運用することになりますが、
 致命度が低いから、未対策でよいと判断すべきものではないことを
 認識しておく必要があります。


 また、対策前のリスクに対して、改善した後は、
 きちんとリスクを再評価して、確認しておくことも大切です。

(6)抽出された問題の要因から、改善策と改善担当者、改善期限を明確にします。

 工程の作業性の悪さなどから、製品設計への改善が必要な部分があれば、
 早急にフィードバックをかけることが求められます。

(7)改善の結果を評価し、改善が有効であるかを判断します。

 改善が十分できていない場合は、
 更なる改善を図り、製品の設計、工程の設計改善を実施します。


今回は、工程FMEAについて、紹介しましたが、

製品の特徴やお客様の個別要求にあわせて、FMEAをうまく使いこなして、
品質の高い製品をお客様に提供していければうれしい限りです。


【関連記事】
FMEAによる未然防止とは?(品質管理研究所)
動画で学ぶFMEA!(品質管理研究所)
品質管理研究所サイトマップ(品質管理研究所)
posted by かおる at 21:46| Comment(4) | TrackBack(0) | FMEA

2011年09月05日

動画で学ぶ!未然防止のFMEA!

動画で学ぶFMEA!  -品質管理研究所-


品質不良の未然防止手法のひとつである
FMEA(故障モードとその影響解析)について、
今回は、わかりやすく学べる動画をご紹介します。


形あるもの、いつかはこわれます。

製品は、いつ、どのように壊れるでしょうか。
きちんと製品の壊れ方が理解されているでしょうか。


製品の設計段階で、故障を予測し、モノを造る前に対策を施す手段として、
FMEAをうまく使いこなして、品質改善に役立てていきましょう。

FMEA


@飯塚悦功氏 講義その7 「FMEAってスゴイ!」
yusakunakaoさん Youtube




「故障モードとは何か?」
「なぜ、故障モードをとりあげて考えるのか?」

多くのみなさんの抱える疑問にこたえるアドバイスが盛りだくさんです。

FMEAの本質とは何か、あらためて考えてみたくなりますね。



AFMEA/FMECA初級編 オープニング映像 FMECA Elementary Riskmanagementtimesさん Youtube



※RMT HP http://www.safety-book.net/

FMEAとは何か、たいへんわかりやすく紹介されています!



FMEAは、海外でも活用されていますので、英語で学ぶFMEAは、こちらをどうぞ!


BFMEA: How To Perform a Failure Mode and Effects Analysis Tutorial
  Leansixsigmasourceさん Youtube




重要度や致命度として定量化される RPN (Risk priority number) について
非常に細かな説明がされており、改善アクションへの落とし込みもていねいに解説されています。


FMEAをうまく活用して、品質の高い製品をうみだしていきたいものです。



【関連記事】
FMEA による未然防止とは? 
工程FMEAとは?
品質管理研究所サイトマップ
posted by かおる at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | FMEA

2011年09月04日

FMEA による未然防止とは?

FMEA による未然防止とは? -品質管理研究所-

品質管理の基本は、
問題を事前に予測し、「未然に防ぐ」ことです。


そんな未然予防のツールが、FMEA(読み:エフエムイーエー)です。

FMEA(Failure Mode And Effects Analysis :故障モードとその影響解析)は、

製品やそれを構成する部材の想定されうる故障モード(Failure mode)を
事前に抽出して、その原因や影響を分析することで
部材や製品の設計段階から、未然の対策を行う創造的な品質管理手法です。



今回は、FMEAのフォーマットを、無料でダウンロード(Excel)できるようにいたしました。
ぜひ、皆様の会社にあった形でアレンジして、ご活用いただければ幸いです。


@FMEA のフォーマット例(サンプル)について ※設計FMEA バージョン

設計FMEA

上記のFMEAのフォーマットのExcel版を無料でダウンロードできるようにしていますので
下記をクリックして、ご自由にアレンジして、ご活用いただければ幸いです。

■ ダウンロードはこちらからどうぞ!

 ひらめき FMEA フォーマット(Excel)

 ※設計FMEA バージョン


AFMEAのフォーマット(Pdf)

 FMEAのPdf バージョンもご参考まで。

 ひらめき FMEA フォーマット(Pdf) 


FMEAは、設計FMEAと工程FMEAにわかれますが、
今回は、設計FMEAについてのフォーマットを無料ダウンロードできるようにしています!



また、工程FMEAやDRBFMについて興味がある方は、こちらの記事をご参考にどうぞ!

工程FMEAとは?
DRBFMのやり方とは?


それでは、FMEAの簡単な紹介と使い方について、以下で見ていきましょう。


■ FMEA のメリット

FMEAは、お客様の個別の要求品質や市場使用環境を考慮し、

@製品設計上、A製造工程上、B輸送上、C使用上の問題から生じる
製品の故障や不具合を早期に発見し、未然に防ぐことで、
製品の品質、信頼性、安全性を高める
ことを可能にします。

未然予防と予測

■ FMEA のお育ち
FMEAは、もともと、アメリカ軍やNASAで開発・活用されていた管理手法といわれ、
現在では、日本の自動車産業や航空産業やその他製造業、さらには、
業界を越えて医療の分野にも、活用されている優れた手法のひとつといえます。

品質管理のセミナーでも人気のテーマのひとつではないでしょうか。

■ FMEA の活用
自社の製品の品質向上に役立てるだけでなく、
購入する部材のサプライヤーさんとFMEAを実施し、
品質向上に対するコミュニケーションツールとしても、
活用することができる
点でも実用的なツールのひとつではないでしょうか。

部材としての品質特性が、最終製品の品質特性にどのような影響を与えるかは
部材サプライヤーさんでは、把握しにくいため、このようなFMEAによる
コミュニケーションで、お互いの品質情報を共有化することは、大きな意義があるといえます。


■ 設計FMEAのやりかた  簡単7ステップ

(1)お客様の要求仕様、仕向け地、使用環境、設計の変更点などを
  明確
にしておきます。
 ※FMEAは、新たな隠れた問題点を抽出するものであり、新たな変化点に意識を向けることが大切です。

未然予防と予測

(2)製品を構成する部品または製品と、その部位や部品が果たす機能を抽出します。
  ※特に新たに変更された部品や追加された機能などに、注意をはらうことが大切です。

(3)その機能がはたらかなくなる故障モードとその故障の要因を明確にします
  ※特に、初期の性能で生じる故障要因だけでなく、製品として使用・動作したときの
  磨耗劣化など耐久性にかわかる故障要因も明らかにすることがポイントです。
  また、過去の失敗経験やベテラン社員の豊富な知識も活用したいところですね。

(4)故障による影響が、後工程でどのようなインパクトを与えるかを、
  部品を組み込む「製品」と最終的に使用する「お客様」での影響を明確にします

(5)対策前のリスクとして、発生頻度、厳しさ(影響の大きさ)、検出の難しさの観点
  から定量的に評点をつけて、掛け合わせた値を致命度(重要度)として、ランク化し、
  重要性を認識します。

  ※ランク付けは、5段階など自社内で評定基準を定めて運用することになりますが、
  致命度が低いから、未対策でよいと判断すべきものではないということを認識して
  おく必要があります。

  限られた時間と資源の中で効果を考えて、
  優先順位を決めて対策を講じることは重要ですが、
  品質問題が起こる可能性があると知りながら、
  安易に見過ごすのは品質保証の立場としては考えられません。

  リスクを数値で定量化すると、もっともらしくみえますが、
  市場で問題が起きたとき「基準以下だから仕方なかった」ということは、
  お客様に対する言い訳になることなどあってはなりませんので、
  参考として、活用すべき程度におさえておくことが大切ではないでしょうか。


(6)抽出された問題の要因から、改善策、改善担当者、改善期限を明確にして改善推進します。

(7)最終的に、改善実施の結果、懸念された故障モードがおきないかどうかを
   試験などで検証し、その有効性を試験レポートなどのエビデンスとして残し、
   歯止めを行います

 
   問題の改善効果が十分でない場合は、更なる改善を行い、設計改善を行います。

  過去の不良の知見や、さまざまな分野の技術者の知恵もかりながら、
  FMEAを利用して、わいわいがやがや派生的に意見をだしあうことができれば、
  多くの不良は、きっと未然に防ぐことができるはずです。



今回は、FMEA(設計)についてご紹介しました。

品質は、コストとトレードオフだという考え方をするのではなく、

品質を上げることでコストが下がり、競争力が高まるように、
実務で活用できる品質改善手法と考えをこれからも、ご紹介できればとおもいます!



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posted by かおる at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | FMEA