2013年03月11日

P管理図とは?

P管理図とは?
(2013年3月11日)品質管理研究所

ものづくりの現場で品質を管理するための重要な指標として、「不良率」があります。

たくさんの製品の中でのごくわずかな違いを生みだす
変動要因を理解することが、安定した品質をうみだすことにつながります。

P管理図と品質不良


今回は、不良率を統計的に管理するための実務手法『P管理図の活用方法』について、
無料でダウンロードできるエクセルフォーマットと共にご紹介します。


______________________________


(1)P管理図とは?
(2)P管理図の計算とは?
(3)P管理図の計算上の注意ポイント
(4)P管理図の導入障壁とは?
(5)P管理図の活用手順
  @不良情報の収集
  A不良情報の集計
  B目標不良率の導入
  C品質不良グラフの現場での掲示
  D管理限界線の活用
  EP管理図による改善の実施
(6)P管理図の活用のコツ
  @不良モード別に層別してデータを取得
  A工程別に層別してデータを取得
  Bリアルタイムでデータを活用
  C生産数と不良率の関係性に注意

______________________________



(1)P管理図とは?
P管理図(ぴーかんりず)は、QC7つ道具のひとつとして、品質管理業務の中で、
実践的に活用されている「不良率(%)」を指標とする統計的品質管理手法です。


熟練の品質管理者は、P管理図を、親しみをもって「ぴーかん」とよんでいます。
P管理図のPは、Proportion(比率や割合)の頭文字のPに由来しているようですね。

まずは、P管理図のイメージをつかんでみましょう。


■ P管理図のEXCELフォーマット

これから紹介するP管理図は、こちらです!

P管理図エクセルフォーマット

■ P管理図のフォーマットのダウンロードはこちらからどうぞ!

ひらめきP管理図(エクセルフォーマット)

ひらめきP管理図(PDFフォーマット) (閲覧参考用にどうぞ!)


EXCELの黄色のセルの部分に不良数、生産数、不良項目などの簡単な設定をするだけで、P管理図を活用できるようにしていますので、P管理図の作り方の参考になれば、幸いです!

もともと、管理図は、製品の要求仕様にある寸法などの特性値を満たしているかどうか、単なる結果に満足することなく、製品をうみだす工程での変動や異常に対して、その原因となる問題点を取り除き、品質を安定させるために活用するものです。

さまざまな数値を管理するための管理図の中で、特に不良率に着目した管理図が、P管理図です。
実践的に活用できる品質改善にかかせないツールですので、ぜひ実務で活用してみてください。


(2)P管理図の計算とは?
市場のお客様での品質不良をへらすためには、その前提となる
購入材料の不良と工程内で発生する不良が、実際に生産した量に対して、
どのくらい発生しているのか、不良率として把握することが求められます。

P管理図の管理対象となる不良率は、ご存知の通り、
下記の非常に簡単な計算式で求められます。


■ 不良率(%)=不良数(個)/生産数(個)×100

P管理図では、この不良率を時系列に並べて、
管理限界線という基準線をひいて、傾向的な変化をとらえていきます。


もし、基準がなければ、ひとによって、変化のとらえかたはことなり、
対応の基点にも、ばらつきが生じます。

何を変化ととらえるか、客観的な基準となる管理限界線をもちいることによって、
客観性のある判断にもとづく、アクションのきっかけを明確にできます。

P管理図のつくり方


P管理図のグラフで表現される管理限界線は、中央のCLを境にして、UCL、LCLの2つがあります。

@CLは、Center Lineで、不良率の平均値(pバー)になります。
      ※「pバー」を以降、「p」と記載します。
AUCLは、Upper Control Limitは、上方管理限界線となります。
BLCLは、Lower Control Limitは、下方管理限界線となります。


具体的には、下記の算術式より、
統計的なばらつきの尺度である3シグマに相当する管理限界線をもとめます。

pを過去一定期間の平均不良率、
nを1日の生産数(検査数)として、

CL=p 
UCL=p+3×(p(1−p)/n)^(1/2)
LCL=p−3×(p(1−p)/n)^(1/2)


管理限界線が算出することができます。 ※^(1/2)は、√「ルート」をあらわしています。

なお、P管理図の管理限界線の計算は、EXCELフォーマット内の数式で、
自動で計算していますので、ぜひ、あわせて、ご確認ください。



(3)P管理図の計算上の注意ポイント
上記の計算式において、1日の生産数 n が変動している場合、
毎日都度計算をおこなうと、管理限界線UCLやLCLの式の中のnが変化し、
管理する側の限界線が、グラフ上で都度うごくことになるため、注意が必要です。

品質関連の参考書籍などでは、
変動した管理限界線を活用している例もみられますが、
基準の変化がともなう使用方法は、実務上おすすめできる方法ではありません。


そこで、CL、UCL、LCLを求める際には、過去の平均的な1日あたりの生産数を n とする簡易的な方法をここでは活用しています。

管理限界線が、不良率のようにふらふら変動するグラフでは、
基準を管理しているのか、管理されているのか良くわからなくなります。

管理基準は、品質が安定している過去のデータから作成し、
例えば、前月度の1日の平均生産数をもとにnを算出して、
基準として設定するのもよいでしょう。

P管理図のポイント

さらに、生産数nの大幅な増減がある場合や、
品質の改善状況とともに不良率が変化している場合などのタイミングで
適宜管理限界線の基準を更新していくようにするのがおすすめです。


今回、紹介しているEXCELのフォーマットでは、
前月度のデータ(過去のデータ)をもとに管理限界線を設定するフォーマットにしていますので、
最初の一月目は、基礎となるデータを取得して、管理基準を設定し、
2ヶ月目からP管理図として、活用していただくことを想定しています。


(4)P管理図の導入障壁とは?
P管理図で扱われる不良率は、割り算だけの簡単な計算のため簡単ですが、
管理限界線のUCLやLCLなどの数値計算となると、
ばらつきを含む計算でむずかしそうに感じてしまいがちです。


現場で忙しいうえに、細かな計算までしていられない、
細かな計算をするくらいであれば、グラフの傾向からざっくり判断して
改善対応を迅速にすればよいと思っている方が、実際には、多いのではないでしょうか。

統計的品質管理の導入の難しさは、このような計算の煩雑さにも課題があります。

■ 自転車と補助輪
はじめて、こどもたちが、補助輪なしの自転車にのるとき、どのようなことをするでしょうか。

補助輪をつけた状態で、のりなれた自転車から、
ひとつずつ補助輪をはずして、
2輪の自転車にのれるようになっていくのではないでしょうか。


統計的品質管理という難しそうなことにはじめて取り組む場合、
自転車にうまくのるためのプロセスと同じで、
段階的に取り組んで、成長をうながしていくことは大切なことです。

P管理図の活用


自転車にのる楽しみを味わった上で、補助輪をはずすことも大切です。

管理限界線を用いた管理に移行する必要性を認識し、
徐々になれていけるように時間をかけて教育することが、
統計的品質管理の実務への活用においては、大切なことではないでしょうか。

品質管理手法の座学教育では、
統計的な品質管理によるメリットが一方的に説明されるものの、
実務上の有効性や必要性、簡便性が感じとりにくければ、
現場でいくら統計的手法を導入しようとしても、なかなか定着しません。


本質的な意味や必要性が十分理解されるように、
あわてず、いそがず、段階的な導入をすることも検討したいものです。


(5)P管理図の活用手順
具体的にどのように段階的にP管理図を活用していけばよいでしょうか。

P管理図を導入するにあたって、企業の不良に対する管理レベルに応じて、
6段階的のステップで取り組んでみてはいかがでしょうか。


@不良情報の収集
製造工程中での不良率をすいあげる仕組みとして、チェックシートに記入して、
定期的に情報をすいあげる仕組みが構築されているでしょうか。

十分に不良率が把握されていない現場では、まずは、
この情報収集の仕組みを構築することからスタートしなければなりません。


A不良情報の集計
不良の情報はタイムリーにまとめて、次の不良の防止に役立てることが必要です。

不良の情報を集計して、現状の品質実績がどのような実態であるのか集計して、
見えるようにすることが求められます。

集計したデータはあるものの、十分に生かされていない企業が非常に多いものです。
不良の情報は宝の山です。


B目標不良率の導入
不良の情報とともに品質目標を設定し、改善目標を明確にして、
リーダーはもとより、現場ではたらく全てのメンバーに伝えることが必要です。

P管理図の活用

今回紹介しているP管理図のフォーマットには、品質目標も設定して、
グラフに反映していますが、通常のP管理図では品質目標ははいっていません。


P管理図の管理限界線を活用する前に、品質目標達成の手段として、
品質目標となる不良率を設定して、改善に役立てることも大切です。


目標を達成できた場合は、次の新たな高い目標を設定します。
逆に、目標が達成できなかった場合には、どのような品質問題が発生していて、
達成できなかったのか、どのようなアクションを次に講じるのか、
改善の基本PDCAのサイクルをまわして、改善していくことが必要です。

このような改善進捗状況をフォローアップしていくためには、

経営者の参画する品質会議を定期的に行ない、
品質問題が、経営上の重要な課題であることを徹底し、

朝礼のリーダーミーティングや現場の交代時のミーティングでは、
横のつながりを通じて、大切な情報を共有することがかかせません。



C品質不良グラフの現場での掲示
品質不良率を常に意識できるように、各工程で白紙のP管理図を掲示しましょう。

管理図の中に設定した目標不良率で、改善状況を見えるようにします。
不良率を現場で共有して、改善の意識を高めることが大切です。

不良率が見える化されて、工程品質の重要性が認識されれば、
管理限界線をいれて、管理することの意味も理解できるようになるでしょう。
また、管理限界線をいれずとも、その不良の発生の変化に注目する意志が高まれば、
わずかな不良の発生に対しても、すぐに現場での改善の必要性に気づくはずです。

品質管理に力をいれている企業の多くで、かならずといってよいほど、

休憩室や現場への通路に最新の不良率の推移が掲示されており、
改善取り組みが紹介され、品質意識を高めるための工夫がされています。


P管理図の掲示


D管理限界線の活用
不良率のグラフが社内に定着すれば、P管理図の役割である
統計的な変化を示す管理限界線の活用がより実務的になるでしょう。

管理限界線を活用して、品質不良を引き起こす変動要因を改善するためには、
管理限界線からはずれたときだけでなく、不良の傾向性にも着目して、
変化に対して、先手で対応することが求められます。


今回提供しているP管理図には、不良の原因追究がしやすいように、
不良項目別の不良発生数も記録できるようにしています。

どんな不良が発生しているかもしっかり数値に残しておくことで、
効率的な改善につなげることも大切です。


EP管理図による改善の実施
P管理図は、いったんつくると、満足してしまいがちです。

P管理図を作成した後に管理図として活用し、問題が確認されたときに、
具体的にどのような対応を実施するかということが、最も大切なポイントです。


P管理図のEXCELフォーマットには、具体的な改善対応策、対策担当者、日付をいれて、
改善アクションを明確にできるようにしています。

いつどのような対応を講じて効果があったのかが、一目でわかるように活用しましょう。


(6)P管理図の活用のコツ
@不良モード別に層別してデータを取得

ただ、単にひとつの製品の不良率をざっくりと把握するだけでなく、
どのような不良が多く発生しているのか、不良項目別の集計をできるような
チェックシートを現場に用意しておくことが事前の準備として大切なことです。


細かく分析できるデータを取得することで、
品質問題の原因とその対策をより明確にすることができます。


A工程別に層別してデータを取得
ひとつの製品の不良率を詳細に分析するためには、
どこの工程でどれだけ加工して、どれだけ不良が発生したのか、
工程ごとの不良データを集計することが求められます。


だれが、不良を発見したかという履歴も記載しておくことで、
後々の原因調査にも役立てることができます。

さらに、不良の発生状況や問題の原因など、
その場で感じた作業者のコメントなども原因究明と対策にはかかせません。


Bリアルタイムでデータを活用
不良のデータは、現場でリアルタイムに取得して、活用することが大切です。
多くの企業では、管理図を現場ではなく、現場からはなれた居室で時間が経過した後に、
報告書としての役割をかねて、作成されて使用されている場合も多いものです。

時間が経てば、傾向的に発生している品質不良も手遅れとなりやすいため、
問題の発生を最小限にくいとめるために、生きたデータをもとにすぐに改善する
即時性を重視することが、管理図運用の大切なポイントとなります。


現場でパソコンを置いて、タイムリーな情報を入力して、
社内のイントラネットシステムで共有すること、

現場に管理図を設備の前に掲示して、
担当者が打点しながら管理していくこともおすすめの方法です。


C生産数と不良率の関係性に注意
P管理図では、不良率をみるときに、生産数に大きな違いがないことを確認することも大切です。

生産数が極端に少ない日に、不良が発生すれば、
不良率は大きな変動をしやすくなるため、数値の取り方によって、
まどわされないように注意することが必要になります。


何が変動か、単に数値やグラフに惑わされずに現場に足を運ぶ基本を忘れなければ、
P管理図は生きた品質管理ツールとしてつかいこなせるはずです!



以上、今回は、QC7つ道具の『P管理図』についてご紹介しました。

P管理図フォーマットをうまくカスタマイズして、
実務にあわせて、ご活用いただければうれしく思います。


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2010年12月31日

ドラッカーに学ぶ『管理』とは?

ドラッカーに学ぶ『管理』とは? -品質管理研究所-


わたしたちは日々さまざまなものを管理しています。

品質管理とドラッカー

製造業においては、製造工程を管理し、
品質の高い製品を継続的に安定して生み出していくために、

QC7つ道具の『管理図』を活用した傾向管理をすることが多いでしょう。

今回は、『管理図』が管理のためのひとつの手段、ツール(道具)であることを再認識して、
その根本にある『管理』の考え方を考えてみようと思います。


みなさんは、『P.Fドラッカー』という名前を聞いたことがあるでしょうか?

野球界のトッププレイヤーが、『イチロー』だとすれば、
ビジネス界のマネジメントの大家は、『P.Fドラッカー』だと思えば、わかりやすいかもしれませんね。


ドラッガーさんは、ビジネス界にもっとも影響を与えた思想家としてしられ、

政府やNPOの分野をはじめ、私たちの生活にもおきかえられるような
『マネジメントの基本と原則』について、わかりやすくまとめておられます。


最近では、2010年にベストセラーにもなった

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら




の原点になっている本でもあり、あらためてドラッカーの著書に注目が集まっていますね。


ドラッカーさんの著書は、時代を問わず、世界で読み続けられる本として、
時流の変化に左右されない基本原則が
説明されている点が他の著書と違う点かもしれませんね。


今回は、『マネジメント 基本と原則』 P.Fドラッガー著 上田惇生編訳 



で紹介されている『管理』について、
QC7つ道具の『管理図』と重ねあわせて、基本原則をみていきましょう。



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◆管理手段を、管理能力の向上に結びつけるためには何が必要か?
※『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』 P.Fドラッガー著 上田惇生編訳 P165 より要約

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管理図という手段(QC7つ道具)を学んだら、

それを実務の管理能力向上につなげるためには、
具体的に何をすべきか?また、何をすべきでないか?
ということを考えてみることが大切ですね。

以下では、管理のための、管理手段として、必要なことを
ドラッカーさんがどのように考えていたかを踏まえて、管理図にあてはめて考えてます。


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◆管理手段とは何か?

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@管理手段は、順客観的でも準中立的でもありえない。

  測定という行為は、客観的でも、中立的でもなく、主観的な行為であり、
 何がしかの偏りを持たざるをえない。測定の対象を変えるのみならず、測定者をも変える。
 なぜなら測定することで知覚の経験が大きく変わるからである。

 測定の対象は、新たな意味と新たな価値を賦与される。

  したがって、管理に関わる根本の問題は、いかに管理するかではなく、
 何を測定するかにある。

※『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』 P.Fドラッガー著 上田惇生編訳 P165 -166より要約

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管理図では、3シグマ法による管理限界線に基づき、管理異常を判定します。

その異常判定のルールは、管理限界線からのアウトや傾向性でのアウトを
JISや独自に設定した基準に基づいて、異常か異常でないかを判定します。

ですから、その管理方法でのアウトが、必ずしも現実的にアウトではないこともあり、
判断の誤りが生じる可能性があることを理解しておく必要があります。


1)あわてものの誤り(第一種の誤り)

 工程に全く異常がないにも関わらず、点が管理限界の外側にでる状態。
その確率は、『千三つの法則』 3/1000≒0.27%の確率です。

異常原因を追究しても原因がつかめないこともあります。

管理限界の幅を広げると、第一種の誤りの可能性は小さくなりますが、
逆に、2)ぼんやりものの誤りが多くなるため注意が必要ですね。


2)ぼんやりものの誤り(第二種の誤り) 

工程に異常が現実に発生しているにも関わらず、点が管理限界の外側にですに、
管理図上で、管理状態と判断される状態。第二種の誤りを防ぐ方法は、できるだけ
サンプリング数を多くして、現実の状態に近づけることです。


このようなツールとしての管理図の限界についてもきちんと認識しておく必要があります。

また、管理図というツールをまなんだとき、そのツールを使うことが
目的化していまいそうですが、その前に、『何を測定すべきか』という視点で、

大切な『測定項目を選定する』作業をわすれてはいけないとうことですね。

教育と実務の間でよく起こる課題、『手段の目的化』ですね。

管理図をつかおうとするあまり、それを使うことが大きな目的となり、
本来管理するという目的が、おろそかになっていまいがちですので、注意したいポイントですよね。

『管理図』学びたてのときは、実際に業務でツールである『管理図』を
つかってみることはたいへん大切なことですが、

それを適用する対象についても、考えてたいところですね。


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A管理手段は、成果に焦点を合わせなければならない。

 組織における活動の成果は、組織の外に表れる。

 社会、経済、顧客に対する成果として表れる。

 企業の利益をうみだすのは、顧客であり、内部にあるものはコストセンターにすぎない。
 すなわち管理的な活動の対象となっているものはコストにすぎない。

 これに対して、起業家的な活動の対象が、組織の成果となる。

 効率すなわち努力を記録し、これを定量的に把握することは容易である。
 だが、成果すなわち、外の世界に表れるものを記録し、
 定量的に把握する手段はほとんどない。

※『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』 P.Fドラッガー著 上田惇生編訳 P166より要約
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管理図を用いて、管理することによって、どれだけの目標を達成できるかということを
考える必要があります。それは、自社の工場の中での製品の品質をどれだけ改善
するかという、内部のことのみに焦点をあてるわけではないということですね。

つまり、その製品を使っていただくお客さま(企業、消費者)のことを考えて、
その管理図を用いた改善がお客様にとって、どのような価値があるかということです。

ともすれば、自己満足的に管理図を用いて管理すれば満足してしまいそうですが、
さらに、お客様(組織の外)のところでの本質的な成果に焦点をあてて、考えることが
大切だいうことを忘れてはなりませんね。


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B管理手段は、測定可能な事象のみならず、測定不能な事象に対しても適用しなければならない。

 組織の内部にさえ、きわめて重要でありながら定量化しえないものがある。
 優秀な人材をひきつけ引きとめることは、前年度の利益よりも重要である。

 測定できるものは、すでに発生した事実、過去のものである。未来についての事実はない。
 しかも、測定できるものは、ほとんどが外部ではなく、内部の事象である。

 測定と定量化に成功するほど、それら定量化したものに注目してしまう。したがって、
 よく管理されていると見えれば見えるほど、それだけ管理していない危険がある。

※『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』 P.Fドラッガー著 上田惇生編訳 P167より要約
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管理図を通して、測定項目を時系列で定量化することは、

あたかも、現実に起こっている事象を正しく反映しているようにもみえますが、
現実には、現物の製品があり、不良品が発生したり、製造現場で
さまざまなことが日々起こっています。


最近では、PCよる管理図の運用が多くなるなかで、
リアルタイムで自動的にPC上で反映されている企業が増えてきましたので、

管理図が自動的にでグラフ化されて、データ化されることで、
その意図やアクションルールが十分に理解されないまま、
管理した気になることがもっとも危険なことかもしれませんね。

ですから、よく管理されていると見えれば見えるほど、
管理していない危険があるということ認識しなければいけませんね。
(社外の取引先を工場監査するときなどは、特に注意が必要ですね。)


また、測定可能な現象だけでなく、そのほかの測定不能な現場の事象と重ねあわせて、
管理していくことが大切ですね。

あくまで、ものづくりにおいての基本は、『三現主義』です。
『三現主義』とは、『現場』で、『現物』をみて、『現実』を把握して、問題を解決することでしたね

ですから、管理図では、測定可能な現象を管理しているのであり、データとして確認できない
測定できない現場の事象と複合的にみていくことが大切ということですね。




次に、ドラッカーさんが考える、「管理手段への要件」についてみてみましょう。

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◆管理手段の要件とは何か?

あらゆる管理手段が、7つの要件を満たさなければならない。

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@管理手段は、効率的でなければならない。

 必要とする労力が少ないほど優れた管理である。
 管理手段が少ないほど管理は効果的である。

 管理手段を多くしても、よりよく管理できわけではない。
 かえって混乱する。

 管理システムの利用にあたって、まず検討すべきは、
 管理のために最小限必要な情報は何かである。 


A管理手段は、意味あるものでなければならない。

 管理対象として測定するものは、重要なものでなければならない。
 現在重要な意味をもつもの、将来重要な意味をもつものに限らなければならない。
 成果に影響を与える事象だけを対象とすることで、はじめて本当の管理が可能になる。


B管理手段は、測定の対象に適していなければならない。

 管理手段の要件として重要でありながら、
 その設計において、最も守られていない要件である。
 
 たとえば、従業員からの苦情は、1月に5件/1000人という数字で
 報告されるが、あくまで表面的な報告である。しかし、実際は、
 工場のほとんどの部門からは苦情はでておらず、ごくわずかな部門
 から集中的に苦情が出ているということである。 


C管理手段の精度は、測定の対象に適していなければならない。

 正確な測定が困難であり、幅をもってしか評価できないという情報こそ重要である。
 おおざっぱな数字のほうがかえって本当の姿を伝える。
 一見根拠があるかのごとき細かな数字こそ不正確であることをしらなければならない。


D管理手段は、時間間隔が測定の対象に適していなければならない。

 精度と同じことが、時間間隔についてもいえる。
 頻繁な報告がよりよい管理を意味するわけではない。かえって管理を無効にする。


E管理手段は、単純でなければならない。

 管理手段は、複雑であっては機能しない。事態を混乱させるだけである。
 肝心の管理の対象ではなく、管理の方法に関心が移る。


F管理手段は、行動に焦点をあわさなければならない。

 管理の目的は、情報収集ではなく、行動である。行動が、検討や分析であることもある。
 「何か面白いことがおこっている」というだけで管理をおこなってはならない。

※『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』 P.Fドラッガー著 上田惇生編訳 P167-170より要約

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■「良い管理」とは?

上記のドラッカーさんの管理手段を考えることは、

「良い管理とはどのような管理であるか?」

という疑問にもこたえてくれます。

管理をするためには、費用や労力がかかりますので、製造工程中での管理項目をすべて
管理図で描いて、まとめて管理すればよいというものではありませんよね。


ですから、「良い管理」というものは、効率性や費用対効果の視点も不可欠ですね。

そのためには、管理図という「管理手法」ではなく、
管理図で管理すべき「管理の対象」がなんであるかという基本に立ち返ることの重要性に
ついて改めてに認識することができますね。


■管理対象の選定は?

さらに、お客様の品質に影響を与える適切な管理項目のみを抽出する「重点指向」
1号機や2号機など複数の情報を整理する「層別」の考え方で、
管理対象を絞り込むことも大切ですね


■測定方法の妥当性は?

良い管理をするためには、管理対象を適切な頻度で、
適切な測定方法(適切な精度)によって測定する
といった測定の基本も、効率性や妥当性にもとづき検証すること必要ですね。


■管理で見えないデータは?

データとしてあらわれない見えない現場のデータも大切にしなければなりませんね。

特に、忙しい管理職の立場であっても、現場からとおざかって、
管理図だけの数値データだけから、状況を判断して、
何かをきめつけるようなことは、あってはならないということですね。


■測定後のアクションは?

これらきちんと測定したデータを活用して、現在、そして将来の状況を推定し、
新たな改善の行動をうながす、次の一手にこそ、管理の意義があるということですね。

現場で忙しいと、データをとることが管理になりがちですが、行動をおこすこということこそ
管理ということをやはり忘れてはいけませんね。



今回は、ドラッカーの『管理の基本原則』と重ねあわせて、
QC7つ道具の『管理図』を考えてみました。


管理図を実務上活用する上でのポイントが、
すこしでもみなさんにご理解いただければ、うれしいかぎりですひらめき


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posted by かおる at 19:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 管理図

2010年12月29日

管理図とは?

管理図とは? - 品質管理研究所-


製品のかなめともいえる品質を保証するために、

製品や設備の状態を測定し、
目に見えるような形で管理することが大切です。

管理図と測定

そんな見える化による管理のために、
多くの企業で実践活用されている方法が、QC7つ道具の『管理図』です。



今回は、QC7つ道具の一つで、
実務で大変役に立つ『管理図』について考えていきます。

____________________________

【管理図について】

@『管理』とは?
A『管理』の意味は?
B『統計的品質管理』とは?
C何を管理するか?
Dシグマσを利用した統計的品質管理とは?
E『管理図』とは?
F管理図の使用上の注意点とは?
 1)管理図はだれがしっておくべき?
 2)管理図の管理アウトと仕様書のスペックアウトの違いとは?
 3)管理図を効果的に活用するためには?
 4)管理図は社外の管理にも適用できる?
 5)管理図の更新とは?
 6)どんな管理図があるの?

_____________________________

以下で、上記の項目について順に確認していきます。

すぐに『管理図』について、確認したい方は、E『管理図』とは?から確認してみてくださいね。



@『管理』とは?

■『管理』とは、いったいなんでしょうか。

あなたが思い浮かべる『管理』のつく言葉を1分間で書き出してみてください。
どんなことばが浮かぶでしょうか。

■管理のつくことばには、

『品質管理、工程管理、部材管理、納期管理、顧客管理、目標管理、在庫管理、
原価管理、生産管理、システム管理、温度管理、管理状態、体重管理、管理費用、
管理人、管理職、情報管理・・・』

などがあります。管理がつくだけで、しっかりしているイメージがわいてきますね。

身近でつかわれているにもかかわらず、なかなかおもいつかないものです。
1分間で10個以上書かければ優秀ですね。


A『管理』の意味は?

■日頃から使っている『管理』とは、どんな意味なのでしょうか。

あなたが思い浮かべる『管理』の意味について1分間で考えて書き出してみてください。
どんな意味がでてくるでしょうか。

■『管理』とは?

『管理』とは辞書の意味ではどんな意味がでてくるのでしょうか?

______________________________



管理 ※大辞泉 提供: JapanKnowledge

1 ある規準などから外れないよう、全体を統制すること。
 「品質を―する」「健康―」「―教育」
2 事が円滑に運ぶよう、事務を処理し、設備などを保存維持していくこと。
 「―の行き届いたマンション」「生産―」
3 法律上、財産や施設などの現状を維持し、また、その目的にそった範囲内で利用・改良などをはかること。
_______________________________


特に注目したいのは、1番目の意味で
『ある規準などから外れないよう、全体を統制すること。』という意味です。

『管理』のためには、まず、『基準』を定めることが大切であり、
基準から外れないように、目先のことではなく、『全体』を統制する『全体最適化』
の考えに基づき、統制することが大切ということです。

個別最適化するばかりに、全体での流れをみだすようなことは、あってはなりませんね。


近視眼的に目先の問題を解決しても、全体的にみたとき、
また、長期的な視点でみたときに、プラスにはたらかないような管理では、
本質的な管理になっていないということになります。

つまり、『管理』をおこなうためには、全体としての本質的な目的を再認識し、
個別の管理基準を定め、全体をみすえて統制していくことが大切ということですね。


B『統計的品質管理』とは?

それでは、品質管理上の『統計的品質管理』とはいったいなんでしょうか?

統計的品質の創始者であるシューハート(W.A.Shewhart)は、
偶然原因(Chance causes)と見逃せない原因(assignable cause)の二つにわけて、
管理状態を定義しています。

■偶然原因(Chance causes)と見逃せない原因(assignable cause)

偶然原因とは、製造工程において、適切な作業標準(Method)で、適切な材料(Material)で、適切な機械(Machine)で、適切な人材(Man)で、適切な環境(Environment)で作業したときに、異常な4M1Eの変動がないにもかかわらず、製品品質などの結果にばらつきを与える要因のことで、技術的に経済的に抑制することが困難なものです。

それに対して、

見逃せない原因とは、4M1Eなどの製造時の変動により生じるばらつき要因で、
工程管理を行うことで避けられる要因のことです。突き止められる原因ということで、
要求品質に合致するように改善することのできる要因になります。

統計的な品質管理状態は、この見逃せない原因が取り除かれ、偶然原因によるばらつきによって、
製品にばらつきが生じている状態です。つまり、見逃せない原因が存在する場合は、統計的な
管理状態にない状態ということになりますね。

C何を管理するか?

私たちの身の回りには、言語データと数値データがあります。

製造業でよく用いられる管理図で管理する対象は、その中の数値で表記されるデータになります。

私たちは、管理図のようなグラフを幼いときから身近に見ています。

それは、小学生のとき自由研究で、温度と湿度と天気の関係のグラフです。

データは、時系列でとり、過去の傾向から予測したり、過去の同じ日のデータと比較したり、
単にデータをとるだけでなく、実際の外の天気を見たりして、複合的にデータを活用して、
予測などの考察を加えて、活用することが大切でしたね。

また、夏休みの終わりに夏休みの課題ができていないわが子のために、
地域の温度や湿度データを取得している公共機関に問い合わせをして、
まとめてデータ取得するようなことが、インターネットが普及する前にはよくあったそうです。たらーっ(汗)
データの取り方も、データの活用するうえでは、もちろん大切なこともわかりますね。

同じように製造業で使用される『管理図』も、時系列で数値データを継続的に取得して、
そのデータの値やデータの変動、そして現場の状況とあわせて、
品質状況を把握・管理するために活用することができます。

目的をまちがて活用すると何の役にもたちませんので、
『管理図』を道具として活用できるようにこれから理解していきましょうひらめき


Dシグマσを利用した統計的品質管理とは?

工程で管理される数値データ(身長、体重のような連続的なデータ)は、
正規分布とよばれる統計的な分布にしたがうことが知られています。

正規分布については、下記のサイトを参照してみてください。

正規分布 Wikipedia

正規分布 ◇正規分布◇


この正規分布が描く曲線の変曲点がσの基準になっています。
変曲点は、上の弧と下の弧がいれかわる境目です。

この境目を品質上の基準のひとつにしていますので、覚えておきましょう。


次に、このσについて、具体的に考えて見ましょう。

小学生の身長のデータを1000人取得したとき、
データの中心値は、その1000人のデータの平均値となり、その前後で身長データがばらつきます。

そのデータのばらつきは、正規分布にしたがって、ばらつきます。
身長が小さい子もいれば、身長の大きい子もいますし、平均的な身長の子が多くいることも経験的にわかりますね。

たとえば、平均的な身長の子を中心値として、その中心値を境にして、
両側のσの範囲内に入る場合は、平均的な身長の子から前後約68.3%がしめますので、
683人が占める範囲となります。

3σは、このσを3倍したところのデータで、中心値を境にして、
3σの両側の約99.73%が占める割合になりますので、

背の極端に小さいこどもと極端に大きいこどもを除いた、
ほぼすべての身長の子が該当することになります。

これを『千三つの法則』といい、

3σでは、全体の1000個のデータを取得したときに、
3個ぐらいのごくまれにしか含まれない確率の現象として知られています。
※3σから外れる確率は、0.0027(0.27%)

『千三つの法則』 3/1000≒0.0027(0.27%)

そこで、このごくまれにしか当てはまらない3σを基準にして考えるのが、『統計的品質管理』になります。

通常の統計的に管理された工程状態では、取得したデータのうち1000個の中で3個が
このような外れた状態になることは統計上理解されますが、

ごくまれにしか発生しないことから、このようなデータが出てきた場合は、
異常原因によるばらつきが大きいと判断し、管理異常と判断するということにしています。

このようなデータの異常や傾向性から管理異常をみつけて、
問題を未然に予防するためのツールが『管理図』となります。


E『管理図』とは?

管理図とは、製造工程の管理特性や製品の特性などを時系列で取得し、
そのばらつきを、中心線と3σの管理限界線で管理していくツールです。

上下の管理限界線から超えたり、そのデータの傾向性に異常がある場合に
管理異常として判断して、工程や製品を安定状態に保つために活用することができます。

では、具体的に実例を見て見ましょう。百聞は一見にしかずですね。

管理図の実例図集


※日科技研HP 管理図とは 
※日科技研HP 管理図   

管理図のイメージがわいたでしょうか。

中央の線は、平均値、中心線で、3σのところに用いられる線が管理限界線と呼ばれ、
上側の管理限界線をUCLといい、下側の管理限界線をLCLと呼び、管理上の重要な基準としています。

UCL(Upper control limit): 上方管理限界線 〜平均値+3σ
LCL(Lower conrol limit) : 下方管理限界線 〜平均値−3σ


この基準をもとに工程や製品の異常を判断するルールが8つありますので、
判定基準を理解しておきましょう。管理図を描いたときこの現象がみられたときは、
工程につきとめられる原因が存在するとみなして、改善のアクションをとっていくことが
必要になります。

■管理異常となる八つのルール

1)管理アウトがある。(3σの範囲外)
2)中心線と管理限界線の間に9つの連がある。(9点が中心線に対して同じ側にある。)
3)6点が増加、または、減少している。
4)14の点が交互に増減している。
5)連続する3点中2点が限界線と2σの間にある。(接近)
6)連続する5点中4点が限界線と1σの間にある。
7)連続する15点が中心線から1σの間にある。(中心化傾向)
8)連続する8点が中心から1σの外にある。

※『 QC入門講座 7管理図の作り方と応用 P92  日本規格協会』より


上記の8つのルールは、QC検定の参考書として推奨されている教科書から抜粋したものですが、

この異常判定の兆候判定ルール(2)〜(8)の7つルールについては、各自の製造対象物や
工程の過去の経験などを踏まえて、自工場の判定ルールとして、現場に即した形で柔軟に
運用することを推奨しています。

ですから、この基準の根拠をうたがうことなく、決められたとおりに行うだけでなく、
その意味合いについても考えることが管理をする意味で大切です。

日頃仕事で社外の工場へ監査させていただくと、

多くの工場では、管理図のデータを取得することで満足して、データの活用にまでいたっていないのが現状です。

せっかく取得したデータを活用するためにも、このような知識をみにつけて、
業務で不良品が発生しないように工程状態を管理し、改善に活用しましょう。


F管理図の使用上の注意点とは?

1)管理図はだれがしっておくべき?

 管理図は、管理項目や基準を明確にし、業務の責任を現場の担当者に積極的に
委譲していくこともひとつのメリットであるといえます。

そのためにもこのような管理図の有効性やルールを現場担当者だけでなく、
業務責任者がしっかりと理解しておくことが大切になります。

ですから、長期間管理図を継続的に運用してツールを組織としてつかいこなすためにも、
業務責任者にも管理図をしっかり理解してもらい、運用していきましょう。

2)管理図の管理アウトと仕様書のスペックアウトの違いとは?

 管理図による管理アウトと仕様書のスペックアウトとは似ているようで
まったく違うものですので、その違いを理解しておきましょう。

 管理図の管理アウトは、Eで示した8つのルールにもとづく工程や製品のばらつきを
3σを基準にして判定したものですので、8つのルールからはずれていたとしても、
最終製品の仕様書を満たしている可能性もあります。

つまり、最終製品の仕様からはずれないように工程や製品のばらつきを管理するために
用いられるのが管理図ですので、スペックアウトの考えと混同しないように注意が必要です。

一方、仕様書のスペックアウトは、最終製品で検査したときに、
要求した仕様書に記載された基準をみたしていないことになりますので、
不適合品(不良品)ということになります。

このような不良品をださないように管理するために使用されるのが管理図ですね。


3)管理図を効果的に活用するためには?

 管理図は、単独に使用するだけでなく、他のQC7つ道具と併用して使用すると
より効果的になります。たとえば取得したデータを詳細に分析するために、
『層別』して、機械の1号機と2号機をわけて、管理図のデータを取得する、
特性要因図を用いて、重要な特性項目のみ抽出して、管理図を活用するなど、

費用対効果や分析の精度をあげるためにより実務的な使い方をしていくことが大切になります。

また、管理異常が発生した場合にどんな改善対応をとるかという
アクションガイドライン(AGL)をきめて、手順として標準化しておくことも大切です。


4)管理図は社外の管理にも適用できる?

■生産部門の方であれば、
自社の管理する工程や設備で管理図を活用することができます。
その場合は、装置に管理図を張って管理して、打点していくこともよく現場では行われています。

また、最近では、管理図のための専用ソフトを活用していることろやエクセルで
管理図用のシートを社内イントラネットで共有して管理している企業も多くみられますが、
パソコンで管理すると、入力することが目的となり、管理図本来の工程を管理して、
未然に問題を防止するという観点がおろそかになりがちになりますので注意が必要です。

■技術部門の方であれば、
サプライヤーさんから供給をうける部品の特性データを管理図として、
定期的に提出してもらうことで、品質確認することができます。

特に品質問題が発生しやすい生産立ち上げ直後には、
製品の特性データ(寸法や電気特性など)は、ばらつきが発生しやすいため
注意を要しますので、初期流動期間として一定期間報告してもらい、
一緒に問題を解決していくように改善を促すことが有効です。

あわせて、Cpkなどの工程能力指数のデータも提出してもらい、
スペックアウトとの関連性も同時にみていくことができればさらによいでしょう。

管理図は、自分が使用するという発想で学んでいる方も多いですが、
実務では、サプライヤーを管理する立場で製造品質を継続して確認するためにも
活用することができますので、うまく活用してみてください。


5)管理図の更新とは?

一般に管理図は、初期生産時は安定しないため、解析用管理図といわれ、
安定した場合は、管理用管理図として移行していきます。

さらに、管理図は、ある一定期間継続してデータ取得していると
ばらつきがより少なくなった管理状態となることがあります。

その場合は、管理限界線を新たにひきなおすために直近のデータをにもとづき、
新たにσを算出し、より厳しい状態の管理限界線をひきなおし、
管理していくかようにすることが推奨されています。


6)どんな管理図があるの?

代表的な管理図には、下記のようなものがあります。

【計量値〜連続的な数値 例)身長、体重、成分、強さ など】
@X(バー)-R管理図 〜 平均値(Xバー)と範囲(R) 
Aメディアン管理図  〜 メディアン(中央値)と範囲(R)
BX管理図       〜 個々のデータ

【計数値〜離散的な数える数値 例)不良個数、不良率、欠点数 など】
Cp管理図       〜不適合品率(不良率) 例)1日に生産した製品中の不良数
Dnp管理図      〜不適合品数(不良数) 例)ロット中(一定数量)の中の不良数
Ec管理図       〜不適合数(欠点数) 例)同じサイズのガラス板中の異物
Fu管理図       〜単位あたりの不適合数(欠点数) 例)長さの異なるシート中の異物

■ 不良率を管理するp管理図は、こちらの記事からエクセルフォーマットをダウンロード
 できるようにしていますので、ご参考にどうぞ!

 ・P管理図とは? 品質管理研究所

■ 実務上の工程管理でよく使用されるのがX(バー)-R管理図ですので、
 X-R管理図をまずは、つかって慣れてみるとよいでしょう。

※X-R管理図の作り方は、こちらのHP(クォリティマインドさんをご参考まで

管理図の管理限界線の算出方法は、管理図用計数表を用いて算出されますので、
上記HPをご参考にして計算してみてくださいね。


今回は、管理の考え方、管理するためのツール『管理図』について考えてみましたが、
あくまで道具なのでつかわないとさびついてしまいますし、すぐにわすれてしまいますので、
業務で管理図をつかいはじめて、品質向上にすこしづつ役立ててみてくださいね。



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posted by かおる at 23:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 管理図