2014年08月12日

手をみる工場監査とは?

手をみる工場監査とは?
(2014年8月12日)品質管理研究所

ものづくり工場では、製品に直接手でふれると、
指紋や汚れなどがつくため、手袋をつけて作業をおこないます。

手袋は、作業をするうえでの必需品ですが、
ただ単につけていればよいというものでもありません。

工場で、作業者さんの手袋を意識して見てみると
その工場のさまざまなことに気がつくことができるのではないでしょうか。


手袋で見る工場監査

@どんな種類の手袋をつけているでしょうか。
作業をする上で、作業性を考慮した適切な手袋が選定されているでしょうか?
手袋にもいろいろな種類があります。一般的な布の手袋が、作業上よいでしょうか。

それともゴムの手袋、ビニールの手袋でしょうか。
現場での作業の目的にあった手袋が使われているでしょうか。

ものづくりでカッターなどの刃物を使用するときには、
指がきれない材質の手袋を選定することもできますね。

また、手袋にどんな工夫がされているでしょうか。

手袋をつけると汚れが防止できる反面、
ごわごわするため、一部の手袋の布の先端をカットして、
ゴムの指サックをつけて作業性と汚れ防止を図るような工夫もできるでしょう。

ビニール手袋を長時間使用すると、汗ばむため、
布手袋の上にビニール手袋を重ねるなどの方法なども製品によっては検討できるでしょう。

作業者さんのことをどれだけ考えているかで、手袋の種類と工夫が加わり、
作業の品質から、製品の品質へとつたわることを感じ取ることができるでしょうか。



A手袋のサイズ、どのような大きさがあるでしょうか。
作業者さんの衣服にサイズがあるように、手袋にもサイズがあります。

体格のよいひと、小柄なひと、さまざまな作業者さんがいます。
作業を安定しておこなうためには、作業者さんの手の大きさにあった
適切なサイズの手袋が必要になりますね。

ものづくりの作業の品質を維持する上で、
手袋の大きさまで、配慮がされているでしょうか。

現場の声に耳をかたむけ、管理者が自分の目で現場を日頃からみていれば、
手袋のサイズも、おのずと、複数準備されるはずですね。



Bどんな状態の手袋を使用しているでしょうか。
手袋は、作業をしていくと新品のきれいな状態から、
汚れ、摩耗、破れによって、交換することが必要になるものです。

手袋の交換基準は、だれもがわかるように明確になっているでしょうか。
どのような手袋の状態が、良い状態か、悪い状態か、
写真で工場の入り口や製造現場に掲示することができます。

現場で手袋の状態をみれば、
製造に関わる摩耗品や交換品に対する意識や管理状況が想像できるでしょう。


手袋の指先に顔を描いて、指人形になっているなど
目を凝らしてみると、工場のいろいろなドラマがみえてくることでしょう。


C手袋の交換ルールはあるでしょうか。
どのような頻度で手袋を確認し、交換するか、
工場での交換のための仕組みと教育がおこなわれているでしょうか。

手袋は、だれに交換したいことをいったら、交換してもらえるでしょうか。
工程リーダーさんでしょうか、班長さんでしょうか、
それとも、交換基準に基づく自己判断にゆだねられているでしょうか。

手袋の交換は、目的ではなく、あくまで製品をよごさないための手段です。

汚れが製品の品質にどのような影響を与えるか、
その交換する目的をきちんと理解してもらうことがなにより大切です。

その目的の理解が、手袋交換のルールを維持するための大切な条件です。

なぜ、交換する必要があるのか、もし、汚れがついた製品があると、
お客様にどのような影響を及ぼすのかを教育して理解してもらうことが大切です。


手袋の品質管理

手袋を交換することは、作業前に服を着替えるようにだれにでもできることだからこそ、
工場の基本的なルールと教育の徹底がどこまで図られているかを感じとることができるのです。


D手袋在庫のルール
手袋の交換が自由にできる場合は、使いすぎも抑制できるような管理方法も必要になります。
品質と同時に、消耗品に対するコスト意識を高めていくために、手袋を交換するたびに使用交換記録として、日時と名前を記入管理する方法も実践することができるでしょう。

交換可能な手袋の在庫が管理され、常に予備品が準備されるように手袋の管理責任者と現場への補給者を明確にすることが必要になります。工場でみなが使うものだからこそ、その管理領域が不明確になりがちですので、だれが管理するのか明確にしておきましょう。


E管理者による手袋のチェック
作業者自らが手袋をチェックすることが大切ですが、製品の検査と同様に、
班長さんや現場のリーダーは、自分達の仲間の手袋を日常的にチェックできているでしょうか。

現場の管理者に対して、手袋の状態の管理は、大切な仕事のひとつだと認識してもらうことが必要です。ルールを遵守できているかを監督する役割として、交換の必要がある手袋かどうかを判断して、作業者さんに交換を促す責任があることを教育することが必要になります。

このようなチェックは、手袋に限ったことでなく、ものづくりの現場の管理者としての責任感と問題意識を高めることにつながります。


F手袋にどのような汚れや破れがあるでしょうか。
手袋の汚れは、どこから来たものでしょうか。
手袋の破れは、なぜ、おきるのでしょうか。

手袋を交換する理由には、工程品質改善のヒントが隠れています。

どの時点で手袋の汚れや汚れが発生しているでしょうか。
通常生産とは異なる設備の故障や停止時などの問題が頻繁に起こっているからでしょうか。
5Sの基本が徹底されていれば、手袋の汚れは、果たして、どうなるでしょうか?

始業時、休憩後、昼食後、メンテ後など、変化点での手袋の確認ができているでしょうか。
通常生産時の汚れに加えて、どのような変化点で、手袋の状態も変わりやすいでしょうか。

設備トラブルで止めた設備オイルや汚れが、うっかり手袋についていれば、製品に汚れが転写してしまうこともあるでしょう。食後に食べたデザートの果物の酸があやまってついてしまえば、製品が変色する可能性もあるでしょう。布の手袋が設備に引っかかり気づかぬうちにほつれてしまえば、繊維が異物の原因となることもあるでしょう。

気づかぬうちに手袋の変化点が、問題が発生の要因とならないように、
ものづくりの変化点での問題意識を高め、チェックすることが大切ですね。



G手袋の識別管理と整理・整頓
製造現場で、新品(未使用)の手袋置き場、使用後の手袋の廃棄場所がきめられて、使用前後の識別管理が実施されているでしょうか。製造現場をみわたしてみると、現場の作業机などにだれが使用したものかわからないような手袋が放置されていないでしょうか。

工程作業によっては、手袋を洗濯してきれいな状態にして、
再使用するような取り組みも検討することができるものです。
どれだけモノを大切に使用しているか、感じ取ることができるでしょう。

以上、今回は、工場監査の一つの視点をご紹介しました。
手袋などの小さなところに、工場のさまざまな管理状況がうきでてくるものです。


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2014年04月21日

豊かな自然に学ぶ工場監査

豊かな自然に学ぶ工場監査
(2014年4月21日)品質管理研究所

工場で見かける美しくない状態、不自然な状態には、
見た目以上のなにか大きな問題が隠れているものです。

工場監査では、そのわずかの表面の変化に、まず気づくことが大切です。
わずかな違いに気づくためには、何が必要でしょうか。


自然界では、きれいなものは、
その純粋さが表面にあらわれてくることが多いように感じられます。


物質である半導体や金属の結晶も、見た目が美しい状態のものを分析すると、結果として、
不純物が少なかったり、多結晶ではなく、単結晶だったりすることが多いものです。

また、あらゆるいきものが、長い時間をかけて、進化しているなかで、
色や形、そして、備わった機能には、何か大切な理由があるはずです。

自然の植物や生き物をみていると、
ものづくりの工場にないものやありすぎるものに気がつくことができます。


工場監査と自然

身近に存在する自然は、生命の営みの中で、長い時間をかけて、洗練されてきたものです。

自然とふれ、美しさに気づけるようになれば
工場での問題点にも、より敏感になれるのではないでしょうか。


仕事を一生懸命することも大切ですが、
お寺や神社など自然があふれる場所に行って、
心を休め、自然に目をむけると思わぬところにヒントがあるものです。

日本には、四季があり、さまざまな自然の変化を楽しむことができるすばらしい環境があります。
このような自然と日頃からふれあうことで、豊かな感性を育みたいものですね。



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2014年02月24日

モノではない、つながりをつくる?工場監査!

モノではない、つながりをつくる?工場監査!
(2014年2月23日) 品質管理研究所


工場監査は、さまざまな方とお会いできる大切な機会です。

異なる業界や豊富な経験をもつ方々と直接お会いしてさまざまな刺激をうける、
これほど素晴らしい機会はありません。

ヒトにふれ、新しい考え方に出会い、たくさんの気づきがあります。

工場監査と信頼関係

工場監査では、工場監査員は、工場の品質をチェックすることももちろん大切ですが、
はじめてお会いした仕事のパートナーであるみなさんと良い関係を築くことも大切な仕事です。

工場監査で出会った方々は、数知れず、名刺が山のようになりますが、
その中で、どれだけ、訪問した会社のみなさんの顔と名前が一致するでしょうか。
工場でたくさんのヒトにお会いする機会がありますが、
たくさんの名刺交換をしても、どれだけ記憶にのこっているでしょうか。

相手のお名前を、名刺交換のときに、すぐに覚えられているでしょうか。

名前を覚えることは、相手を知ることのはじまりです。
相手と会い、相手の名前をよぶ回数が増えれば、お互いの気持ちも通じやすくなります。
「名前」は、世界共通の聞きなれたたいへん気持ちのよいことばではないでしょうか。


海外の方のお名前では、発音も難しくすぐに聞き取れない場合もあるでしょう。
ことばにだして、呼びなおして、教えてもらい、自分の名前を教えあうように確認すると
直接ことばが通じなくても、不思議と親近感がわいてくるものです。

アジア圏の国際的な企業の社員さんは、
自国の本当の名前のほかに、発音しやすい"English name"をつけている場合も多いものです。
Kevin、Peter、Bob など、親しみやすい英語圏の名前がよくでてきます。

海外企業では、日本企業に比べて、お互いに
名前で呼び合うことの大切さに気づかれている企業も多いのではないでしょうか。


ものをつくるのは、工場ではありません。機械でもありません。
大切なものをうみだすのは、ひとりひとりの名前を持ったひととひとのつながりです。

相手の名前をよび、自分の名前をつたえ、
相手にお願いをしたり、お願いをされたりすることで、
仕事も円滑にすすむようになるのではないでしょうか。

たくさんの方と出会う機会には、
自己紹介しあうときに相手の名前を声にだして覚えたいものです。
その場で全ての方の名前を覚えて、呼び合えれば、
それだけで、あなたを見る目がかわってくることにも気づくことでしょう。


工場監査では、ものばかり見ず、人とふれ、
このような新たなご縁を大切にしていきたいものですね。

工場監査でつくっているものは、「モノ」にあらず、
ひとの「つながり」をつくっていることをいつも心にとめておきたいものですね。



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