2013年09月30日

品質保証のかなめ「予見力」とは?

品質保証のかなめ「予見力」とは?
(2013年9月30日)品質管理研究所


品質問題がおきたときに、原因を調査するために、
どのような情報を確認すればよいでしょうか。


品質問題でお客さんにご迷惑をおかけしているときに、
お客さんに根掘り葉掘り聞きにくいことも確かですが、
問題が再発すれば、再度ご迷惑をおかけすることのほうが、大きな問題ですね。

いざというときこそ、お客さんとの日頃の関係性がとわれますが、

問題が発生したときには、下記の情報をしっかりつかんで、

問題の原因究明と対象範囲の明確化、
迅速な応急処置と根本対策をとることがかかせません。


予見力

そのためには、お医者さんのようにお客さんに下記の項目の「問診」をして、数ある情報を整理できているでしょうか。

@製品名    :問題となった製品名
A製品型番   :製品を特定するための製品機種ごとに設定された型番
B製造識別番号 :原因を調査するための製造ロット番号や製造シリアル番号
C不良発生数  :品質不良が発生した製品の数量
D不良発生率  :納入した製品の不良発生率(不良数/購入数)
E不良内容   :不良の内容(不良とその周辺の不良写真や不良製品の回収も)
F不良発生状況 :不良がどこでどのような状況で確認されたか
G不良発見日  :不良品を確認した日(納入日、開梱日、使用時など)
H保管状況   :不良品の保管状況(すでに納入された製品の在庫情報)
I要望事項   :お客様が要望していることや緊急性、気になっていることなど

お客様からうかがったこのような品質不良に関わる情報は、原因究明と対処の肝となります。これらの問診情報をもとに、まずは、問題発生の原因とその対象範囲を明確にしていきます。

そして、何よりお客さんの直近のお仕事に迷惑のかからないように、
その対象となる不良範囲から新たな不良で問題が発生しないように、
再検査したり、新しい製品と交換したり、
どんな迅速な対応が、いつまでに必要かを明確にして、
お客さんにとっての被害を最小限に抑えることが最優先事項となります。


江戸時代には、火事が発生すると、火消しさんが延焼を防ぐために、
風下の家屋を壊して、火災の被害を最小限にくいとめていたように、

品質問題が発生したときには、品質問題の対象範囲を予測して、
問題を最小限にくいとめる『予見力』が求められます。


予見力

複数の工場に品質問題となる対象ロットが納入されている場合には、
品質問題の可能性が拡大する場合もあるでしょう。
そうなれば、確認範囲をすぐに広げて、チェックしていくことが必要になります。

問題は、目の前で見えて、実際に起きていることだけではありません。
全体を俯瞰的に見て、これから何が問題となるかを改めて見つめなすことがもとめられます。

予見力とは、問題が起きる前に、その問題を見通す力と考えられがちですが、
問題が起きたあとでも、その被害を最小限に抑えるためにも必要な力です。

起きてしまった事実を真摯に受け入れ、
これから起こるべき事に対して、どれだけ迅速に対処できるか、
そのスピード対応が、品質問題による被害を最小限に抑えるのではないでしょうか。

問題を起こさないように努力しても、
ときに問題がおきてしまうことは、だれしもあることです。

企業においても、そんなときにこそ、
お客様を想う心で、いかに迅速に行動をどれるかが、
企業の存在価値を示すものなのではないでしょうか。


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2013年04月13日

過剰品質の見直しとコストダウンとは?

過剰品質の見直しとコストダウンとは?
(2013年4月13日)品質管理研究所


品質は、高ければ、高いほどよいでしょうか。

過剰品質とコストダウン


毎日、食べる卵が、金色である必要があるでしょうか。


お客様の要求にもとづく品質以上に、
過度な品質を追求すれば、余計なコストが発生しかねません。


品質(Quality)とコスト(Cost)は、一体のものとして考えなければなりません。

製品へのこだわりと、過剰な品質とは一体ではありません。
製品のブランドを高める品質のつくりこみは、過剰な品質の追求ではありません。

過剰な品質要求により、検査工程が増えたりすることや、
厳しすぎる基準で不良が多くなれば、
過剰品質によるコストUPとなることも理解しなければなりません。

製造工程のゆるすぎる品質基準によって、
市場のお客様で品質問題が発生することは、当然あってはなりませんが、

逆に、厳しすぎる製品の判定基準によって、
見えていないマイナスのコストが発生していることはありませんか。



■ 品質判定基準の妥当性とは?

過去から、当然のごとく受け継がれてきた判定基準が、
つくり手側の思いこみとして、お客様におしつけられていることはないでしょうか。

製品の品質を管理するための受入検査基準や工程管理基準や出荷判定基準について、
なぜ、その基準値であるか、その理由は、理解されているでしょうか。

そして、その基準値の妥当性について、
つくり手目線ではなく、顧客目線で検証されているでしょうか。

過剰品質とコストダウン

長年使い続けてきたコンセントのタップ周りのように
知らぬ間に不必要な電源コード(判定基準)がついて、
必要のない余計な電力(コスト)が生じていることはないでしょうか。

過度な品質要求になっていないかを改めて検証すると、思わぬ気づきがあるものです。

会議室や机上で悩んでいても、良い答えは見つかりません。
時代の変化や広い世界のお客様が要求する現在の基準と照らし合わせれば、どうでしょうか。

品質保証部や品質管理部の仕事といえば、
品質を検証するための試験や評価、製造工程での品質管理や品質検査、
品質を高めるための改善活動に焦点が当たることが多いものですが、

その判定の基礎となる基準そのものが、
お客様の視点で適正な品質基準であるかを見直すことは大切です。

品質基準を適性値に見直すことと、品質基準を下げることは違います。
適正な品質の追求は、品質を低下させることではなく、コストを低下させることなのです。


■ 納入部材の過剰品質の見直し

例えば、部材を納入いただくサプライヤーさんととともに
適正な部材品質基準の見直しをおこなうことが実務でおこなわれているでしょうか。

サプライヤーさんで、過剰な品質によってうまれた製品のロスなどがどれだけ発生しているか、
部材の工程不良率や特性値のヒストグラムなど数値で具体的に共有されているでしょうか。

品質基準の適正化の中でも、特に品質基準の緩和は、部材を納入する立場では、
お客さんに積極的に言いにくいことなので、購買先側から話を提案することが大切です

過剰な品質基準が、最終のお客様の要求する適正な品質判定基準に修正されれば、
部材のサプライヤーさんにとっても、工程品質不良が減り、収益向上にもつながります。
購入する立場でも、コストダウンにもつながり、WIN-WINの関係となります。

過剰な品質は、実務上、品質問題として顕在化しにくいため(見えにくいため)
見つけようとしなければ、品質課題(コスト問題)として認識されにくいのが特長です。


目に見えている品質問題にとどまることなく、作り手側と買い手側の2つの立場から、
目に見えにくい過剰品質の適性化をはかることが攻めの品質改善ではないでしょうか。

このような不良の基準の適正化は、品質を下げているわけではなく、
あくまで、過剰な品質を正常に戻す取り組みであることを
社内外に徹底することもわすれてはなりませんね。

基準の緩和により、適正な品質基準までゆるむことのないよう
その副作用にも注意して、よりよい品質の製品をうみだしていきたいものです。



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2012年11月06日

OEMを成功させる品質保証とは?

OEMを成功させる品質保証とは? - 品質管理研究所 -


『OEM』とは、いったいなんでしょうか。

今回は、そんな『OEM』の基本はもちろん、
『OEMを成功に導くための品質保証』を考えてみましょう。


______________________________



(1)OEMとは?
 @OEM(オーイーエム)とは、何か?
 AOEMの目的とは?
 BOEM企業の実例

(2)OEMに迫られる背景
 @製品のライフサイクルの短期化
 A円高による現地海外生産品の輸入の加速
 B生産コストの低い海外現地での生産の加速

(3)製造委託先のブランド企業
 @OEM委託先のメリット
 AOEM委託先のデメリット

(4)製造受託先OEM企業
 @OEMメーカーのメリット
 AOEMメーカーのデメリット

(5)OEMの業務委託契約とは?
 ・品質保証体制の自主構築と継続的改善
 ・品質不良に伴う補償対応
 ・OEM製品の検査
 ・OEM製品の出荷期限
 ・トレーサビリティの確保
 ・OEM製品の品質保証期間
 ・製造現場への立ち入り
 ・アフターサービス
 ・変更管理に伴う事前の届出と承認

(6)OEM取引で品質を確保するためには?
 @OEMパートナーパートナーの探索の重要性
 AOEMプロジェクトの立ち上げ時の場づくり
 BOEM製品の品質を維持向上させる取り組み


______________________________


(1)OEMとは?
@OEM(オーイーエム)とは、何か?

OEMとは、相手先のブランドで、製品を製造することです。

OEM は、Original Equipment Manufacturingの略称として、業務委託されたOEM企業が、相手先ブランドで生産する意味で活用され場合が多いでしょう。また、Original Equipment Manufacturerの略称として、相手先のブランドで製造する製造メーカーそのものをさす場合もあります。

製造を依頼する製造委託先企業(ブランド企業)は、ブランド企業が提供した仕様書をもとに、製造受託先企業(OEM企業)に生産をまかせて、自社のブランドとして、製品を販売します。簡単に言えば、ブランド企業は、自社の生産部門をアウトソーシングして、外部のOEMメーカーに、自社ブランド製品をかわりにつくってもらうということです。

OEM製品と品質保証


日頃私たちがふれる多くの製品では、メーカーの最終ブランドしか見えません。しかし、実際には、OEM企業が生産している場合が多いものです。いわば、OEM企業は、産業を支えるかげの立役者です。

OEM企業の多くは、一般消費者には、あまり知らないBtoB企業(企業と企業の間で取引をする企業)ですが、業界関係者には、良く知られている企業なのです。


AOEMの目的とは?
業務委託するブランド企業は、どのような目的でOEMを実施するのでしょうか。

・ブランド企業の生産能力の不足を短期間で補うため
・自社では難しい価格競争力のある製品をうみだすため
・大きな投資を控えつつ、自社ブランド製品のラインナップを広げるため
・多大な投資を必要とする工場をあえて自社でもたないで営業や企画や設計に専念するため

など目的はさまざまなしょう。

また、自社では、生産する工場を持つ余力のない企業であっても、OEMを活用して、自社ブランド製品をつくることができます。企業がおかれる事業環境や成長段階に応じて、外部の力をかりたOEM戦略でものづくりをしていくことは、変化に柔軟に対応するための手段といえるでしょう。

ものづくり企業にとって、製品市場の立ち上がり、成長、安定、縮小といった製品ライフサイクルは、経営戦略上、大切な変化点といえます。製品の需要のピークにあわせた自社の設備投資は、余剰設備や過剰人員となり、経営を圧迫させる要因となります。市場の急成長によって肥大化した組織は、大企業病の要因となり、企業を衰退させることにつながります。良い事業環境にあるときこそ、将来にわたる企業の健康を考え、OEM取引の考え方をうまく取り入れ、経営のかじとりをすることも求められるでしょう。

このようにブランド企業が、OEM企業の力を借りる一方、OEM企業では、市場での販売力をブランド企業に頼り、販売関連費用を削減し、ものづくりに専念することができます。あえて、自己のブランドを全面にださないことで、世界中のさまざまなメーカーのパートナーとして、受注が得られれば、大きな成長につながりますので、選択と集中、分業体制によって、お互いにメリットが生まれるビジネススタイルといえるでしょう。


BOEM企業の実例
OEM製品は、家電製品、自動車、産業機器、化粧品、食品、自転車、アクセサリー、衣服をはじめ、さまざまな分野で活用されています。食品の場合は、PB(プライベートブランド)商品というかたちで流通大手企業のOEM商品をみかけることも多いのではないでしょうか。大きな販売力を持ったスーパーが、独自のブランド商品として、原価低減をはかり、販売拡大をするブライベートブランド商品は、製品本来の品質の高さと企業のブランド力の相乗効果で、販売を増加させ、コストも低減し、収益性を高めます。
OEM企業にとっては、自社での生産を安定化させ、事業を安定化させることができるだけでなく、新しい技術を開発して、企業を活性化させる機会ともなります。

このようにOEMは、やり方次第では、お互いの事業をうまく発展させるための優れた方法といえるでしょう。OEMが進む事業分野では、下記のように、ブランド企業とOEM企業のマッチングを図るための商談の場やインターネット上でのOEM仲介サイトもあるほどです。

■ 化粧品OEMナビコレダBANK

■ 国際PB・OEM開発展 –日本能率協会


(2)OEMに迫られる背景
@製品のライフサイクルの短期化

世界中の製品が市場にならぶ競争が激しい市場では、製品のライフサイクルが短く、新製品があっというまに、過去のものになってしまうこともしばしばです。設備投資が十分に回収出来ないうちに、新しい製品を生み出さなければならない状態に追い込まれていくと、経営収支が悪化しかねません。製品のライフサイクルが短くなる反面、新しい製品を生み出していくためには、社内資源だけでなく、外部の資源を活用していくことも求められるでしょう。

A円高による現地海外生産品の輸入の加速
海外では、経済を立て直すために、大量に紙幣をすっています、結果として、日本の紙幣の枚数が相対的に減れば、当然、紙幣の枚数という現実から、円高が進むことになります。円の価値が増すというより、海外紙幣量の増加により、円高がすすむという現象は、日本の国際的な製造メーカーの輸出事業に大きな打撃を与えます。海外への生産移転を加速させ、海外のOEM先への生産委託にも拍車をかけるものです。実態以上に膨れ上がったパンク寸前の各国の借金を補うための動きは、遠く離れた日本のものづくりにも大きな影響を与えているといえます。日本でものづくりを続けることが難しい状況では、海外でのOEM生産が加速し、円高に伴う輸入に頼らざるをえなくなるでしょう。

OEM製品と品質

B生産コストの低い海外現地での生産の加速
グローバルな市場競争が激化する中で、収益の確保のために、人件費が安く、材料コストも抑えやすい海外で生産することは、多くの企業が考えることです。自前で、海外での人員を雇用して、生産拠点をつくるためには、時間と費用がかかるため、すでにある海外のOEM先の企業の力を借りることで、時間を買い、ビジネスを発展させことができます。さらに、海外現地の経済が成長し、現地生産、現地消費も進めば、さらにOEM取引が加速することでしょう。


(3)製造委託先のブランド企業
製造委託先のブランド企業、つまりOEMを依頼する企業のメリット、デメリットは何でしょうか。

@OEM製造委託先(ブランド企業)のメリット
・自社で生産設備をもたないため、変化の激しい市場で柔軟に対応できる。
・生産設備の投資に伴うコストを抑えて、短期間に自社ブランド製品を提供することができる。
・市場の変化に応じて、社内の在庫リスクが低減させて、ビジネスができる。
・市場の需要が高く、受注できる状態で製品が不足している場合、短期間に補うことができる。
・設計品質を確保すれば、販売とサービスに集中して、事業に専念できる。
・OEM企業の販路ネットワークで販売を拡大することができる場合がある。

AOEM製造委託先(ブランド企業)のデメリット
・製造起因で市場品質問題が生じたとき、自社の信頼を失うことになる。
・品質問題が発生したときの原因の追究が不十分で、改善対応が遅れやすい。
・生産に関する技術ノウハウの蓄積が難しい。
・技術情報が開示されない場合、アフターサービスの対応が難しくなる。
・生産場所がはなれており、迅速な修理・交換等のサービスの連携が取りにくい。
・製造原価削減による継続的なコストダウンが難しい。

OEM製品と品質保証


(4)製造受託先OEM企業
製造受託先となるOEM企業のメリット、デメリットは何でしょうか。

@OEMメーカーのメリット
・営業や宣伝に関する販売費用を抑制して、生産に専念できる。
・投資した設備の稼働率を高めて、効率的に生産できる。
・ブランド企業のものづくりノウハウを学び、生産技術を蓄積できる。
・購買数量が増えることで大量購買によるコストダウン効果が生まれる。
・ロット受注生産により、余計な在庫のリスクが少なくなる。

AOEMメーカーのデメリット
・市場のお客さんから認知されず、自社ブランドが構築できない。
・最終のお客さんのニーズに触れにくいため、市場からの情報が不足しやすい。
・取り扱うOEM製品数が増えると、管理する手間と費用が増える。
・ブランド企業の販売・注文状況に影響をうけやすく、経営見通しが立てにくい。
(一部のOEM製品が占める売上比率が高い場合、取引が停止した場合の影響が甚大)



(5)OEMの業務委託契約とは?
OEMによる事業を行う場合、OEMの業務委託契約を締結します。OEMによるビジネスで必要な製品(目的物)の品質(Q)、価格・引渡・支払い条件(C)、数量・納期(D)をはじめ、OEMで生じるリスクをカバーするために、問題が生じた場合のさまざまなことを想定し、あらかじめ契約書を締結しておきます。

OEMの業務委託契約では、業務を委託するブランド企業が、生産を受託するOEM企業に対して、守るべきお約束事を明示する役割をはたします。もちろん、納期の遅延などが生じないようにOEM側の生産リードタイムを考慮したブランド企業側での注文書の発行ルールや支払いルールを定めるなど、お互いに取引上問題が生じないような内容を確認して、盛り込みます。事業パートナーとなる企業をお互いに尊重しながらも、取引上必要なお約束事をしっかり、契約書に盛り込んでいきましょう。

今回は、特に品質保証上明確にしておきたい大切なポイントについて、ご紹介します。

OEM取引では、契約の中に問題が起きないように守るべきルール(問題の抑制)と、そして、市場での問題が発生した場合のお互いの責任と対応を明確にして、どのような補償負担となるか(事後の対応)を明確にしておきましょう。実際に取引を開始する前にきちんと締結することが、交渉をスムーズにすすめる上で大切ですね。

OEM製品と品質保証

下記のようなOEM企業が守るべき品質条項を盛り込んだ契約を締結できるように話をすすめたいものです。

<品質保証体制の自主構築と継続的改善>
高い品質の製品が安定して納入されるように、OEM企業が、品質保証体制を自ら構築し、現場での製造品質の改善を継続的に実施することが求められます。あわせて、品質会議や品質報告を定期的に実施し、安定した品質状況を共有する体制を構築することも大切です。

<品質不良に伴う補償対応>
不良品を良品と交換する代納、不良品を手直しして使用できるようにする補修、特別採用に伴う減額処理、製品にとどまらない市場不良への対応責任と補償対応など、実務では様々なリカバリー方法があります。補償金額は、実際に市場対応にともない生じた費用か、売上の上限額を補償上限とするとか、契約書を締結する過程で取引する企業の品質に対する考え方が見えてきます。

買い手(ブランド企業)の立場であれば、製造上の問題が原因でお客様に迷惑になった場合は、製造者の責任として、きちんと補償対応いただける企業でなければ、製品の製造を任せることに対して、不安に感じるものです。品質問題が起こる前にこそ、いざというときの補償について、議論し、品質に対する企業の考えと責任を明確にしておきましょう。

<OEM製品の検査>
OEM企業での出荷検査による工程品質の自己チェックとともに、OEM製品をブランド企業が抜取検査した場合に不合格となる場合もあるでしょう。製品ロットの出荷停止対応など、問題が生じたときの改善・リカバリー対応などをOEM企業が迅速に実施することも求められます。納期に遅延が生じた場合は、販売上の信用問題にも影響することから、納期遅延などのリスクも考慮した内容をもりこむことも大切です。

<OEM製品の出荷期限>
ものづくりにおいて、製造後一定期間保管されたもので品質が劣化する場合は、製造後の品質保持期限を設定して、製造後の納入期限などをあらかじめ明確にしておくことが必要です。これはOEM企業で使用する材料に対しても同様です。受けいれる材料の使用期限がすぎることで、最終製品の品質も落ちてしまうことから、品質が時間とともに変化する製品のOEMの場合には注意が必要となります。

<トレーサビリティの確保>
市場で問題が発生した場合、ブランド企業が、市場からの製品名や製造番号の情報から、OEM先での製品の製造時のデータを確認することが必要になります。ものづくり工場の製造責任として、製造番号のロットNoのつけ方ルールを仕様書で明確にし、製造時の履歴をお互い確認できるようにしましょう。あわせて工場監査でも実際の管理状況を確認することが大切です。

OEM企業がきちんとトレーサリティデータを確保して、必要に応じてすぐに呼び出せる体制を構築することは、取引の基本中の基本です。製造履歴データの情報管理のため、データの保管期間の設定も含め、問題が発生した場合に備えた契約と実務対応が必要になります。

<OEM製品の品質保証期間>
製品の使用寿命よりも買い替えサイクルが短い製品の場合は、大きな問題へ発展することはすくないかもしれませんが、製品が故障するまで使用し続けるような製品の場合は、製品の保証期間をどこで設定するかを明確にしておくことが必要になります。使用上の問題ではなく、製造上の不良と判断された場合、リカバリー対応することは当然のことです。

さらに、もし、品質保証期間をこえたとしても、傾向的に発生する不良やあきらかな製造上の欠陥による問題で市場不良となったときは、OEM企業が責任をもって対応することを取り決めすることも大切です。アフターサービスに必要なサービスパーツ、リカバリーする代納製品のとりきめもなければ、いざ対応するときに代わりの製品で対応することもできないでしょう。

日本的な企業であれば、問題があれば、迅速に対応するのは当然のことですが、海外企業との取引においては、ひとつずつ契約に落とし込んでおく緻密さが求められます。

<製造現場への立ち入り>
OEM製品の品質を確保し、市場での品質問題を未然に防ぐためには、お客さんの声を十分理解している製造委託企業(ブランド企業)が製造現場に入り、品質管理状況を確認できるような取り決めをしておくことが必要になります。重要な製品の場合、OEM企業に駐在して、日々、監視する場合もあります。実際に生産が始まってくると、品質問題が発生した場合、現地OEM先に訪問して、緊急で現場確認しなければならないこともあるでしょう。そんなときにも、工場の製造現場にはいって、現場確認できるような取り決めにしておくことが求められます。

OEMを得意とする企業では、様々な企業のOEMを受けている場合も多く、製造現場では、他社とのOEM契約の守秘義務に縛られている工場もあります。他社製品や開示厳禁の工程など特殊な工程を持つ場合もありますが、自社製品をつくる製造工程だけはきちんと確認できるように取り決めておくことが大切です。実際にそのような秘密厳守の工場では、自社製品の製造工程以外をブルーシートで隠したり、製造に使用する部材名だけを隠したりするなどの配慮をして対応する場合もあります。

また、製品ラインナップを補完するようなOEM製品の場合、OEM企業が、同業他社の場合もあり、技術的情報の流出を防ぐために、工場確認そのものが難しい場合もあるかもしれませんが、その場合は、契約による補償などの手段を通じて、もしものためのリスクヘッジをすることが求められるでしょう。

<アフターサービス>
市場で問題が発生した場合、OEM供給の場合は販売窓口となっているブランド企業が、情報を受けて、一次対応することになります。特に、OEM製品に対する技術的情報が十分開示されない場合、製品を実際に製造しているOEM企業が技術的な対応をせざるをえません。
しかし、海外にいる生産先のOEM企業が、お客様のところへ行って、アフターサービス対応ができない可能性もあります。問題が起きたときに、迅速な対応ができるようなサービス体制の構築や技術サービス情報の開示、24時間以内に回答するなどレスポンスのルール、費用の負担などを明確にしておくことが求められます。

<変更管理に伴う事前の届出と承認>
品質を保証するためには、『変えない』ことを徹底する必要があります。製品の仕様はもちろん、5M1EのMan (ひと)Machine(機械)Method(方法)Material(材料)Measurement(測定) Environment(環境)を含め、品質上影響をあたえる変更が生じる場合には事前にブランド企業に承認を得たうえで変更をかけるルールを明確にしておきましょう。

また、契約だけにとどまらず、実際の製造現場で働くOEM先の現場リーダー、現場生産者に対して、直接伝えておくことも忘れてはいけません。契約では、書いてあっても実際に守られなければ、問題を防ぐことはできないでしょう。問題の多くは、変化によって生じることから、製造現場での変更管理が生じた場合の届出と承認ルールを契約に盛り込み、現場に徹底しましょう。

OEM製品と品質改善活動

さらに、取り扱う製品によって、様々な個別の要求事項が必要な場合もでてきます。

輸送上の品質や第三者機関による検査など、さまざまな取り決めができるでしょう。ただし、契約に書いてあっても、実際にOEM企業の現場作業者の方が、これらの契約内容を理解せず、仕事をしていたのでは、契約書も単なる紙切れです。契約書は、できれば、問題がおきたあとに使うのではなく、品質問題が発生しないように、このOEM契約書を噛みくだいて、工場監査で自社の特別の品質に関わる要求事項をしっかり伝えて、理解していただくことも忘れずに。

(6)OEM取引で品質を確保するためには?
ブランド企業の立場で、OEM企業でつくられた製品の品質を確保するためには、実務上どのようなことができるでしょうか。

@OEMパートナーパートナーの探索の重要性
OEM製品は、自社ブランドの商品になることから、厳しい品質管理が求められる反面、あまりに手がかかれば、本来のOEMのメリットが損なわれる点にも注意しなければなりません。購入するOEM製品の価格は安くても、指導するコストがかかり、市場での問題が多発するようであれば、はじめから自前で高い品質の製品をつくりこむほうがよいことになります。

つまり、良いOEMパートナーをいかにみつけだすかという最初のスタートに力をそそぎ、しっかりと選ぶことが大切です。現場に足を運び、自分の目でみて、ふれることができればなおよいでしょう。日本企業の場合は、商社さんが、海外現地駐在者が発掘した取引先さんの紹介をうけることもあるでしょう。そんなときこそ、ものづくりの視点から、ぜひ、五感で現実を感じ取りましょう。

OEM製品と品質改善活動

AOEMプロジェクトの立ち上げ時の場づくり
海外でのOEM取引の場合は、取引がスタートする前には、OEM企業の経営トップから、ブランド企業との取引に対して、どのよう意図や意気込みで取り組むか、現場のメンバーに直接説明していただき、協力的に対応いただける関係性を構築することが大切です。OEM取引では、お互い交流できる土台や関係性を早い段階で構築することで、仕事が非常にスムーズに進むようになります。

また、このようなソフト面(心、意識)での対応に加え、ハード面での対応をも大切です。海外でのOEMでは、言語や文化が違うことで、うまく意思疎通がしにくいこともあるでしょう。日本で行う以上に綿密なコミュニケーションがもとめられます。海外とのやりとりは直接顔を合わしてできることが理想ですが、渡航費用もかかることから、TV会議などで意思疎通がはかられるような機械的なシステムをOEM企業やブランド企業で用意することもおすすめですね。限られた時間での渡航期間で、話せる内容は限られていますので、いつでも連絡をとり、すぐにアクションが起こせるような相互関係をつくる手段をもつことも大切です。

BOEM製品の品質を維持向上させる取り組み
OEM製品の品質を維持向上するための施策として、具体的にどのようなことが実施できるでしょうか考えてみましょう。

OEM製品と品質

<OEM品質の向上施策>
・製品の仕様を明確にして、出来栄えの品質確認を実施する。
・製品の試作、量産品の製造、チェック、出荷等の開発ケジュールを明確にして管理する。
 (ムリな短期計画や急な変更で後戻りしないように事前の段取りはしっかりと)
・製品に必要とされる部材のサプライチェーンと管理状況を確認する。
・製品の信頼性を保証する試験項目を明確にして、問題を未然に改善する。
・工場監査を実施し、製造品質を確保して、製造不良を防止する。
・OEM企業独自の品質方針・目標に加え、自社製品の品質目標を現場に掲げて改善を促す。
・生産歩留りなど品質状況を現場に掲示・共有して、問題点の改善を迅速に図る。
・定期的に製造現場の工程パトロールを実施し、品質を改善する。
・出荷品の抜取検査を実施し、受入時に品質をチェックする。(輸送品質の確保も含む)
・定期工場監査を実施し、品質管理体制を維持向上させる。
・OEM企業の生産工場に駐在して、品質の指導・確認を実施する。
・OEM企業の生産タイミングにあわせて立会いを実施し、品質状況を確認する。
・市場不良に伴う品質情報を迅速にフィードバックして、改善する。
・定期的に品質会議を実施して、品質問題をフォローアップする。
・自社製品のQC活動について、改善活動を進める。(QC発表会への参加も視野にいれる)
・自社の品質管理教育をOEM企業に実施して、品質意識と知識を高める。
 (QC・QA等の人材だけでなく、製造現場ワーカーに対する品質教育の拡充)
・外部技術標準に従った生産体制を構築して、新たな品質管理基準を取り入れる。
 (ISO9001/TS16949/IPC基準/IEC基準など)
・他社で成功した品質管理手法を自社の製品特徴や企業風土にあった形でうまく選択し、改善をはかる。
 ※ただ単に形式的に真似をするだけでなく、本質的な部分を理解することが求められます。
 (シックスシグマ、トヨタカンバン方式、ZD運動、5S活動、TPM活動など)
・納入品の品質評価に伴う表彰を実施し、実態を客観的に示す。
・OEM企業の新規開拓により、複数購買にして、QCDの改善を促す。
・OEM企業に設備投資を行い、品質や生産性を確保できる生産設備を新規に導入して改善する。

OEM取引による事業は、一時的な取引関係でわりきれるものではありません。お互い長くお付き合いして、信頼できるパートナーになれるよう前向きな姿勢で品質の維持改善に取り組むことがもとめられます。

このように、OEM取引における品質改善活動は、さまざま考えられるでしょう。

しかし、これらがうまくできるかどうかは、現場の社員の力だけではありません。

経営者自らが旗を振り、前向きな改善の意識をもっているかどうかが重要です。
企業でもっとも影響力をもっとももっている経営者が、品質に対して、どのようにかんがえているかが、企業の品質意識、OEMへの品質取り組みにあらわれるものです。

やはり、どの企業とOEMパートナーを組めばよいかという最初の選択は、OEM事業の成功の大きなポイントです。取引を始める前に成功するか、しないかはすでにきまっているようなものです。

大きな企業といえども、人でなりたっています。

OEM企業の経営者が、OEMをどのようにとらえ、品質と顧客満足を実現するためにどのような想いをもっているか、直接会って感じることは、ほんとうに大切なことです。OEMを成功させるためのひととのふれあいをぜひ、大切にしていきたいものです。


以上、今回は、OEMとは何か、OEMを成功させるための品質保証について、ご紹介しました。
みなさんが実務で行うOEM取引のヒントになればうれしく思います。


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