2015年02月12日

イルカショーに学ぶ現場教育

イルカショーに学ぶ現場教育
(2015年2月12日)品質管理研究所

ひとと仲の良いイルカさん、水族館の花形です。

驚くような華麗な泳ぎ、空中への大ジャンプ、愛くるしい姿に、
魅了されたことがある方も多いのではないでしょうか。

イルカさんが、すばらしい芸を披露するために、
トレーナーさんは、日頃いったいどのように向き合っているのでしょうか。

イルカの調教に学ぶ学習理論

イルカさんのパートナーであるトレーナーさんは、
期待するような動きをイルカさんに習得してもらうために、

イルカさんが特定の動きをしたときに合わせて、
特定の音色や手の動作を行い、うまくできた時にご褒美のお魚をあたえ、
動作と対になる行動を繰り替えして、反復するそうです。


そして、繰り返し、繰り返し、紐付けされた合図と動きが重なることで、
パートナーさんの期待するような基礎の動きが理解され、
すごい応用技へとつながっていくそうです。

教えるというよりも、自然の動作と重ねて、褒めて、紐付けされていくのです。

やらされているのではなく、
もともとそなわっている能力をうまくひきだし、自発的にやりたくなる「しかけ」が
イルカさんとトレーナーさんの関係には、隠れているのではないでしょうか。


ものづくりの工場の場合はどうでしょうか?

ものづくりの基本は、ひとづくりです。

ひとの教育では、ことばがあるので、
現場では、作業手順書にもとづいて、その目的、作業を説明しますが、
「ことば」があるばかりにただ説明して、それだけで教育として満足していないでしょうか。

一度や二度教えたからといって、すぐに理解できるものでしょうか?
メンバーによっても理解に差があり、すぐに教育が完了したと思い込んでいないでしょうか。

たびたび、ヒトに関わることが原因で、品質不具合が発生している場合には
教育上、なにか見落としている点があるはずです。


イルカの調教とオペラント条件づけ

教えた後にも、繰り返し、繰り返し、作業を見て、顔を見て、声をかけ、
良く出来ていれば、その場ですぐに褒めてあげられているでしょうか。


よくできたときに、きちんとその場で、すぐに、その行動を褒めてあげれば、
そのよい作業は、自信をもって継続することにつながります。

そして、褒めてもらえることから、
だれかを褒めてあげようと自分で考え、気配りできるようになったとき、
組織がさらに成長していくのではないでしょうか。


イルカのショーは指図され、やらされているのではなく、
イルカ自身が、楽しく遊んでいることそれ自体が、ショーになっているともいわれます。


工場でも、ポジティブな気持ちで取り組める環境を整えて、
自発的な学びが深まる機会を増やしていきたいものですね。

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posted by かおる at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 新人教育

2014年09月28日

新人教育とは?

新人教育とは?
(2014年9月28日)品質管理研究所

高い品質を維持するためには、新人作業者さんの教育が大切です。

特に、海外工場での生産では、
日本では、当然とおもっていることも、きちんと教育しておくことが必要です。

新人作業者教育

中国をはじめとする海外現地工場では、日本のように安定した定着率を維持することは難しく、作業者の入れ替わりが激しい環境の中で、製造品質が安定しない問題に悩まされている企業も多いのではないでしょうか。

作業者の入れ替わる頻度が高く、十分な教育ができていないまま、工程へ新人作業者さんがどんどんと追加されていくと、どうなるでしょう。確実に工場の品質レベルは低下し、市場でも品質問題が発生することにつながります。

経験が浅い新人作業者の基礎教育は、ものづくりの品質を守る上で欠かせない取り組みです。
製造現場で思いもよらない光景にでくわすことのないように、どのようなことを基礎教育として、徹底すればよいでしょうか。

下記に、ぜひ、確認しておきたい新人教育内容を試験項目としてご紹介します。やってはいけないことの表現にしていますので、答えは、すべて「No」になります。「Yes」の回答をおりまぜて、文末の表現をアレンジして、ランダムに並べかえて、テストをすると作業者さんの考え方、基礎教育の理解度を知ることができるでしょう。

新人教育前後で、このような2択テストを行い、作業者さんの理解度を確認するヒントになれば、幸いです。

【新人基礎教育 理解度テスト】

<規則>
□ 会社のルールは、まもらなくてよい。
□ みなが会社のルールを守っていないから、自分も会社のルールにしたがわなくてよい。
□ 上司の指示をしっかりきかずに、自分なりに作業してよい。
□ 仕事のミスをしたときには、すぐにリーダーに相談せずに自分で判断してもよい。
□ 問題を発見しても、そのまま放置して、報告しなくてよい。

<準備>
□ 仕事前に寝ないで、夜更かししていてもよい。
□ 日頃から、体調管理せず、暴飲暴食してもよい。
□ 夜勤は、ねむたくなるので、音楽をききながら仕事をしてもよい。
□ 開始前や決められた休憩時間にトイレをすませなくてよい。
□ 不安なことがあっても、相談せず、ひとりでなやむ。
□ 家をでるとき、忘れ物やみだしなみをチェックしなくてよい。

<挨拶と会話>
□ 挨拶は、工場のしごとには関係ないのでどうでもよい。
□ お客さんなど、知らないひとには挨拶しなくてよい。
□ 知らない職場の仲間には、挨拶しなくてよい。
□ 守衛さんには、挨拶しなくてよい。
□ お客さんや目上のヒトなどへの言葉づかいはどうでもよい。
□ 作業中に仕事場の仲間とおしゃべり(私語)をしてもよい。

<時間>
□ 仕事を休むとき、連絡をしないで、勝手にやすんでよい。
□ 仕事を休むときは、交代メンバーは必要ない。
□ 少しくらいなら、仕事の時間や朝礼の時間に遅れてもよい。
□ 仕事中トイレに行きたい場合、工程にヒトがいなくなるがいってもよい。
□ 休憩するとき、目の前の作業がおわらなくても、休憩にいってよい。
□ ねむたいときには、休憩時間意外にねむってもよい。
□ お客さんに納入する日が、すこしくらい遅れてもよい。

<工場>
□ 品質よりも、ひとつでも多く製品が生産できるほうがよい。
□ すこしくらいなら、お客さんに不良品が納入されても仕方ない。
□ ひとがいないときは、訓練していない工程で作業してもよい。
□ 作業手順書にない作業でも、楽な作業なら、相談なしに実施してもよい。
□ 作業手順書を理解せずに作業してもよい。
□ わからないことや理解していない状態で、作業してもよい。
□ 作業の目的を理解していない状態で、作業してもよい。
□ 自分が加工した製品の出来栄えは、検査員が確認するので確認しなくてよい。
□ 作業の記録は周りのヒトがよめなくても自分が読める字であればよい。
□ 作業を開始する前に道具や設備が正しく動く状態か確認しなくてよい。
□ 暑いときは、虫がはいってもよいので、涼しくなるなら窓をあけてよい。
□ 改善できることに気がついても、上長に相談して、改善にとりくまない。
□ 道具がないとき、自分の個人の道具を家からもってきてよい。

<不良品>
□ 不良品が発生していても、自分の仕事とは関係ないので、そのままでよい。
□ 不良品は赤色、保留品は黄色、良品は青色の区別は、自分には関係ない。
□ 自分のミスにより発生した不良品は、すこしくらいは大目にみてもよい。
□ 不良品の判定基準は、管理基準でなく、自分なりの基準で、合否判断してもよい。
□ 不良品がでると、会社の損失になるが、自分には関係ない。

<異常時>
□ 製品の変化を発見したときは、自分で勝手に判断して処理してよい。
□ 不良品か良品か判定に迷う製品があるときに相談せず、自分なりに判断してよい。
□ 設備から異常な音が発生しているとき、こわれるまで、そのままで放置してよい。
□ 変な材料があったとき、相談せずにそのまま使用してよい。
□ ミスをしたときは、リーダーにすぐに報告せずに勝手に手直ししてごまかしてもよい。
□ 困ったことがあった時、上長に相談せず、自分なりに判断し、作業をつづけてよい。
□ 道具が、こわれたままでも作業ができるなら、作業をつづけてよい。

<服装>
□ つめがのびたままで作業してもよい
□ 手がよごれた状態で作業してもよい。
□ 手袋がやぶれたので、着用しなくてもよい。
□ おしゃれのためなら、どんな服をきてきてもよい。
□ くつのかかとは、ふんだまま作業をしてよい。
□ あついので腕まくりをして作業してもよい。
□ あついので服のチャックを上げずに作業をしてもよい。
□ 作業着の外にフードつきの帽子をだしていてもよい。
□ 製品に直接ふれる仕事でも、腕輪や時計が衣服の外にでていてもよい。

<食事>
□ 果物をたべたあと、作業前に手がよごれていてもよい。
□ おなかがすいたので、はやめにお昼ごはんにいってよい。
□ おなかがすいたときは、工程内でおやつをたべてよい。
□ 夜勤は、ねむたくなるので、飴やガムをたべてよい。
□ 工程内できめられていない場所でも水を飲んでよい。

<3S 整理・整頓・清掃>
□ トイレは掃除するひとがいるので、汚してもよい。
□ そうじをしてくれるひとがいるので、工場内は、汚してもよい。
□ 自分が使ったものは、だれかがつかうので元の場所にもどさなくてよい。
□ 工程内がおとしたゴミが、気になっても、ひろわなくてもよい。
□ 仕事のはじまりとおわりに、常にきれいない状態に整頓しなくてもよい。

<情報>
□ 会社の機密情報やお客さんの情報を勝手に公開してもよい。
□ 工場の製造現場の写真を業務以外に使用してもよい。
□ 会社のものづくりの資料や電子情報を持ち出してもよい。
□ 会社のPCにウィルスのついた個人のメモリなどを使用して作業してもよい。
□ 仕事中、個人の私用の携帯電話をもちこみ、業務と関係なく使用してもよい。

<安全>
□ 通勤時に遅れそうな時は、スピード違反をしても間に合うほうがよい。
□ 工場の避難経路は、しらなくてもよい。
□ たばこは、きめられた喫煙場所意外のトイレなどですってもよい。
□ マッチやライターを作業場にもちこんでもよい。
□ みんなが、安全に仕事ができるように注意しなくてよい。
□ 急いでいるときは、装置が止まっていない状態でも、設備を調整してもよい。
□ 体調が悪いひとがいても、報告せず、しごとをつづけてもよい。
□ けがをしても、すぐに上長に報告せず、がまんする。

新人作業者教育

■ 新人作業者の採用は大切!
新人教育の前提は、まず、入り口となる採用時にルールを守れる作業者さんを雇用することから始まります。単に応募してきたヒトをそのまま受け入れているだけでは、当然よい製品をつくる工場はつくれません。

いくら教育しても、ルールを守らなかったり、適当に作業をしたり、作業の目的や手順が理解できないようなひとは、残念ながら、工場の作業にはむきませんので、採用時に面接と試験により、採用可否を判断することが求められます。集団組織の中で、きちんとルールを守れることが必要になります。

■ 新人教育の生きた教材は、先輩の背中!
新人教育では、みなが、当然とおもえることも、ひとつひとつ丁寧に繰り返し教えることがかかせませんが、実際に工場に入った時に、先輩社員がルールを守っていなければ、いくら教えても、新人さんが見習うわけがありません。見習ってはいけない悪い教材が目の前にあるのですから、当然のことです。
こどもに躾をする親がルールをまもっていないのにもかかわらず、こどもだけに躾をして、こどもが見習わないのは当然のこと、都合のよい話ですね。新人さんを教育するためには、すでに働いているメンバーみなが、先生となり、よい姿を実践で見せて、教育していくことが一番の良い教材となります。

■ 新人さんに関わる問題は、会社組織の問題!
市場での品質問題がおきたとき、「新人作業者さんが作業していたから」という理由の調査報告をみたことはないでしょうか。その本質的な原因は、はたしてなんでしょうか。その新人作業者さんを育て、実務で問題なく仕事ができるまで教育するシステムに問題はないのでしょうか。作業に慣れていない新人さんだから、問題をおこしてしまったという結論は、組織の問題であることが十分理解されていない証拠ではないでしょうか。

製造現場の管理が乱れている工場では、体裁だけの新人教育で、中味がともなっていません。新人教育と称して、教育ビデオをみせても、携帯電話をさわっていて、何も聞いていないようでは全く意味がありません。教育の仕方に問題はないでしょうか。そして、当然、新人作業者さんが、実際に工場の現場にはいり、先輩社員がルールを守っておらず、だれも注意しない環境では、新人作業者さんもすぐに楽なルールに従うことになるでしょう。

規律ある工場にするためには、生きた先輩社員が率先してルールをまもり、新人作業者さんが独り立ちできるまで、仕事をフォローアップしなくてはなりません。新人作業者さんが作業しても、ミスがおきにくいシンプルな作業手順や教育資料・試験問題、ミスを防止する治具の改善も必要です。新人作業者さんがミスをするのは、新人作業者の責任というより、会社の問題であることを再認識することが必要です。社員の定着率が悪く、新人作業者さんの比率が多いのも、会社になんらかの問題があるからです。

海外企業では、作業者の入れ替わりが激しく、「ひと」を、お金さえはらえば、きてくれる「もの」のように考えている企業もすくなからずあるのではないかと思います。しかし、このような考えでは、人の成長も会社の成長にも、いきづまりがくることでしょう。

新人作業者の離職問題

ものづくりでは、製品をつくり、販売し、お客さんに喜んでもらうことは当然大切ですが、工場で「ひとをつくること」もわすれてはなりません。

新人作業者さんが、仕事を通じて、ひとつでも、ヒトとして成長できるように、愛情をもって向き合っていくことが必要なのではないでしょうか。だれかから、家族のように大切にされれば、当然、自分も相手を大切にしたいと思うものです。社員を大切にして、社員が成長すれば、会社も成長することにもなるのではないでしょうか。

以上、今回は、海外で特に気になる新人作業者さんの基礎教育について、ご紹介しました。

日本では、作業者さんは、教育されたことを徹底して守ろうとしてくれますが、 海外では、いわれていないことは、自分なりにアレンジしてやってもよいとおもっていることも多いものです。良かれと思って勝手にやっていることが、後々問題となることもあります。

その工場の実態や工場で働くメンバーの国民性や考えも理解しながら、どのように教育していくのがよいか、試行錯誤していきたいものですね。

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posted by かおる at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 新人教育