(2014年6月10日) 品質管理研究所
ものづくりの不良は、製品そのものの品質不良だけではありません。
製造現場でうっかりやってしまいがちな不良にも、注意をはらう必要があります。

ものづくりの最後では、製品の最終検査をおこない、
合格の証として、製造番号のついた銘板ラベルや
賞費期限などが記載された商品ラベルを貼り付ける場合が多いのではないでしょうか。
検査のあとに、合格の証として貼り付けるラベルのついた製品は、
いったん製品としての検査を通過していることもあり、
ラベルそのものが検査されにくく、気がつきにくい落とし穴といえるのではないでしょうか。
ラベルの不良は、業界を問わず、たくさんの企業で発生している
注意すべき「情報の品質不良」といえるでしょう。
ひとの口にはいる食品の表示ラベルのように、
実際の食品の実態と異なる記載であれば、お客様に対して、大きな影響を与えかねません。
例えば、食品での誤表示には、
アレルギー症状が懸念される原材料の表示もれ
原材料名の誤表記、添加物の表示もれ、注意喚起の表示もれ、
住所表記の誤り、原産国表示誤り製品と外箱の表示不一致、
消費期限・賞味期限の日数の過不足表記、内容量の間違い、
など、記載内容には、さまざまな間違いがつきものです。
ひとたび、間違った内容でラベルが印刷されてしまうと、
大量に間違いの情報がついた製品ができてしまい、
不良も気づかぬ間にたちまち多くなってしまうのが、ラベル不良の特徴といえます。
固有名詞や専門的な内容の記載、日々更新される月日の変更、
製品別に異なる記載内容、製品に伴い変更する重量や数量などの数値変更、
製品切り替え時に発生する変更対応など、誤りがおきやすい要素(変化)がたくさんあります。
これは、食品業界にとどまらず、ものづくりの製品においても同じことがいえるでしょう。
そこで、銘板ラベルを使用するときには、どのようなことに注意すればよいでしょうか。

間違いが起こりえると理解しながら間違いを見逃してしまうのは、失敗経験が不足しているからでしょうか。いいえ、失敗経験ではなく、問題を未然に防ぐための「準備」が、不足していると考えなければなりませんね。では、ラベルの不良を防ぐために、どのような準備が必要かを考えてみましょう。
<ラベルの確認>
・QC工程図にラベルの印字内容の検査項目を追記し、実務でラベル検査を明確にすること
(ラベルの印字内容の確認を重要な工程のひとつと位置づけて、検査を実施する仕組にすること)
・始業時、シフト変更時、ラベル台紙切り替え時、設備故障時、毎日確認すること
(ラベル発行時の内容の点検記録チェックシートを活用すること)
・印字内容は、全体を読むだけでなく、1文字づつ、細かく見て確認すること
(ラベルはあっているもの・・・という思い込みを排除して確認すること)
・製造部門の作業者、管理者、責任者の3段階で、確認・検証して、サイン(捺印)すること
(複数のメンバーが個別に確認し、間違い防止、確認もれの防止をはかること)
・検証確認用のラベルを印刷し、保管管理台帳に貼って、印刷チェックと記録を行なうこと
(印字内容の不備発生時に、いつから問題が発生していたか履歴が追跡できるため)
・品質部門が、工程検査、出荷検査で、ラベル印字内容を詳細に抜取確認すること
(お客様にかわり、品質部門が抜取検査を実施し、印刷内容を確認する)
・出荷検査成績書にラベルの印字内容の図面と印字内容の確認項目を追加して実施すること
・工程検査チェックシートの中に、印字内容の確認項目を追加して実施すること
(実務運用上、成績書やチェックシートに仕組として落としこみ検査もれを防止する)
<管理基準>
・印刷機の作業手順書、特定製品のラベルの造り方が標準化されていること
・特定製品のラベルの品質要求仕様(外観、貼り付け位置など)が明確にされていること
・理解しやすいように注意すべき作業手順・基準が明確に写真や図で記載されていること
・正しい記載内容・状態と比較できるように良品見本のラベルがあり、掲示されていること
・正しくない記載内容・状態がわかるさまざまな不良品見本のラベルがあり、掲示されていること
<印刷機調整>
・印刷機の印字速度や拡大率など、特定の印刷の設定条件が標準化されていること
・印刷するとき、台紙のセット位置ずれ、印刷ズレを確認して、印字すること
・印刷機内部や周囲の清掃を行い、3Sを徹底し、印刷不具合を防止していること
<印字内容>
・ラベルに記載すべき内容が不足していないこと
・印字されている内容の意味そのものに間違いがないこと
・印字に記載の認証規格が取得できていること、過不足がないこと
・固有名詞に誤りがないこと(会社名/事業部/住所/電話番号/原産国など)
・印字されている個別の重量記載にあやまりがないこと
・文字のサイズとフォントに間違いがないこと(部分的に変更されていないこと)
・文字の間隔や行間などの隙間に異常がないこと
・英字など外国語の単語の表記に間違いがないこと
・カタカナの表記/半角と全角の混在誤使用がないこと
・中国での生産で、中国文字に近い日本語のフォント登録の誤りがないこと
・文字と数字などの類似文字の間違いがないこと Oや0など1やlなど
・型番記号が省略されず、記載間違いがないこと(社内管理コードとの違い)
・消費期限や賞味期限等の日々更新される内容の表記が正しいこと
・20XX年X月X日の期限表記が適切な記載であること
・使用部材によって変更する特定のシリアルNoの項目ルールどおりで間違いがないこと
<印字状態>
・印字のかすれ、にじみ、浮きなどの印字異常がないこと
・連続印刷しても文字や線のかすれ、とぎれなどの印字異常がないこと
<印刷台紙>
・印刷されるラベル台紙の仕様にまちがいないこと(色や文字の変更による識別管理など)
・類似機種のラベル台紙や同梱物の置き場が識別されて、色別管理されていること
・印刷保管してある古いラベルの貼り間違い防止、廃棄手順が明確であること
・印刷台紙の向きを横からたて、たてから横への変更も承認なく認めないこと
・印刷文字の精細さにあったラベルの大きさを選定し、使用していること
・シールが熱でねばねばしていないように適切な温湿度・遮光の保管場所で管理していること
・表示された文字が、特定の屋内外環境での使用条件下で劣化しないこと
(光や紫外線などの環境で商品寿命に適合して、劣化しないで維持できることを検証すること)
・ラベルの印字不良により台紙不足にならないように員数管理していること
<バーコード>
・印刷されたバーコードは、バーコードリーダーで実際に読み込めること
・バーコードが、仕様で指定したコードの種類に適合していること(CODE39/CODE128など)
・バーコードを読み込んで、電子出力したあとの文字や数字が適切に表示されていること
・文字数が多くなり、バーコードが広がり、印刷台紙からバーコードがあふれていないこと
<貼り付け>
・シールを貼り付ける際に気泡が入らない作業手順が明確であること(汚れ防止、ツールなど)
・シールの貼り付け位置、曲がり具合の基準と曲がり貼り付け防止の手順が明確であること
<再発行>
・誤って印刷したラベルも台帳に貼り付け(廃棄)、誤使用防止方法が明確であること
・同じラベルを追加で発行して張り付ける際の管理責任者のチェックルールがあること
・現物からラベルをはがした数の確認と不要なラベルの保管管理方法が明確であること
<紐付け>
・一つの製品番号の場合、同じ製品番号を2回以上印刷し、複数貼り付けても流出しない仕組みがあること
・一つの製品に同じ製品番号を(表裏)2貼り付ける場合、表裏不一致の間違い防止の仕組みがあること
・製品Aに、誤って製品Bのラベルをはりつけていることが、検出できる仕組みがあること
・製品ラベルと同梱資料と箱で、製品機種や製品番号が一致させるための仕組みがあること
<変化点>
・類似機種の生産切り替え時にラベルと印字内容を変更確認するルールが明確であること
・停電時などに、印刷機の設定と印刷内容に異常がないことを確認するルールが明確であること
・組織名や住所や電話番号が変更したときに、ラベルの表記変更にもれがないこと
・再検査、再梱包時のイレギュラー作業時にも、製品ラベル・梱包・同梱資料の一致を保つための仕組みがあること
<変更>
・印刷内容の変更は、システム管理責任者・顧客の承認なしに変更しないこと
(通常、変更できないこと、変更時は変更履歴をシステム責任者が記録するなど定める)
・文字のフォント、大きさ、登録文字の追加などシステム変更する際のルールと権限があること
このような基本を現場で教育して、理解いただくことが何より大切です。
そして、あたりまえのことをあたり前に、毎日続けてやることは、とてもむずかしいことです。
毎日の基本動作、ラベルの作成(ホップ)、確認(ステップ)、承認(ジャンプ)の3ステップで、
3人の別々のメンバーによる検証作業により、間違いを防止していくことが大切になります。
あわてず、1文字、1文字をゆっくりと文字を追いながら、確認します。

海外では、日本語が十分理解されていない場合、日本語の印字内容を文字ではなく、形で認識せざるを得ない場合もでてくるため、海外工場で製品をつくられている場合には、さらに間違いに注意していただければ幸いです。1度や2度の確認で満足することなく、ぜひ何度も確認して、注意してみてくださいね。
以上、今回は、「うっかり発生しやすいラベル不良」について、ご紹介いたしました。
現場にいる作業者さんの目線でどのようにしたらラベルの間違いを防ぎやすくなるか、
どのように、不良を未然に検出できる仕組みをつくることができるか、
改めて、ラベルの品質不良について、考えるきっかけになれば、うれしく思います。
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