2012年07月26日

常識をうたがう「いじわる試験」とは?

常識をうたがう「いじわる試験」とは? - 品質管理研究所 -


企業の規模が大きくなると、部門ごとに組織が分割され、
分業された業務の専門性が上がる反面、
直接お客様と触れ合う機会が少なくなりがちです。


お客様と会うのは、営業の仕事、アフターサービの仕事、
忙しさのあまり、そんな考え方になっていないでしょうか。

実際に、製品が、お客さんにどんな風に使われているのか、
現場に足を運び、現実を理解すると、思わぬ発見があるものです。

意地悪試験

あかちゃんもいれば、お年寄りもいます。
右利きの人もいれば、左利きの人もいます。
初めて使う人もいれば、すでに使ったことのある人もいます。
寒いところもあれば、暑いところもあります。
気圧の高いところもあれば、低いところもあります。
国がかわれば、見方や考え方も違います。

しかし、わたしたちは、身の回りのあたりまえのこと、
ありふれているものを常識とおもっていることが多いものです。

常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである。

天才 アルベルト・アインシュタインのことばです。

日頃から当たり前のように感じていることは、
実は、『常識』というレンズをとおした偏った見方なのではないでしょうか。


そんな常識とはなにかをあらためて考え、
製品品質改善に役立てる方法が、『いじわる試験』です。

『いじわる試験』は、その名の通り、
設計や製造をするモノを作る立場からみれば、
「いじわる」に感じるような試験かもしれません。


いじわる試験では、製品が実際に使用される様々な場面を想定し、
誤った使い方、過度な使い方、想定範囲を越える使い方をしたとしても、
壊れたりしないこと、問題が起きないことを確認します。

もし、壊れる場合には、その限界を把握し、安全に壊れることを確認します。

そして、現実に起こりえる動作はもちろん、
その動作や条件を強調して再現し、製品の使用上の品質を検証していきます。


いじわる試験を実施すると、製品のより弱い部分が目立つことから、
実使用上の問題点と設計の改善ポイントが明確になります。

ごく短時間に問題点を明らかにし、
効率よく課題をみつけだす良い試験方法ですが、

過剰な品質を追求するあまり、
例えば、自動車が、戦車のようになってしまっては、
本末転倒ですので、バランス感覚もまた重要なポイントといえます。


意地悪試験とバランス

わたし達の身近な製品の多くには、取り扱い説明書がついています。

じっくりと詳細内容まで読んで使用するひとは、
はたしてどれだけいるでしょうか。

実際には、読んで理解というより、
使って慣れてしまう方が多いのではないでしょうか。

すべてのお客さんが取り扱い説明書を
読んでいるはず、知っているはず、理解しているはずと思わず、

いじわる試験を通じて
ひとの間違いやミスをうけいれられる優しさのある商品をつくっていきたいものです。



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posted by かおる at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ユーザビリティ試験

2011年09月11日

いつお客さんに会いましたか?

いつお客さんに会いましたか? -品質管理研究所ー


製品をつくる上で大切なことは、
作り手の立場で満足するのではなく、
使い手の立場で満足いただけるものをつくりあげることです。


他社に追従するために、
他社との差別化をはかるために、
お客さんをみずに、ライバル企業ばかりを意識して、
無駄な機能や使わないような複雑な仕様が
どんどん盛り込まれていないでしょうか。

お客さんにとって、何が使いやすいのか、
お客さんは、どうすれば満足してくださるのか、
お客さんの想いは、はたして、製品へ反映されているでしょうか。

ユーザビリティ試験と使いやすさ


品質の高い製品ができたかどうかは、
製品の品質確認試験や長期信頼性試験の結果、
量産試作や量産の工程品質の安定性(Cpkなど)から評価をすることが
歴史のある品質管理・品質保証の分野で日常的に行われています。

しかし、試作品の段階などで、お客さんの使っている姿を直接みて、
製品の設計に使いやすさを反映したり、お客さんの欲求を満たすための、
修正を加えていることがどれだけあるでしょうか。


お客さんにとって、本当に使いやすい製品をつくるために
私たちは、どんなことをすればよいでしょうか。

ユーザビリティ試験と使いやすさ


お客さんにとっての使い勝手の良さ、使われ方を評価するためには、
「ユーザビリティ試験」を活用することがおすすめです。

ものづくりにおいて、良い作り手であれば、製品を作り始める前に、
どのような状況で使われるか、どんな風につかわれるか調査されますが、
企業では、効率性を重視し、業務が細分化されて専門性のある役割に分割され、
思うように製品にお客様の声を反映できていないということはないでしょうか。

ものを作る設計者や生産者の多くは、
ほとんどの時間を、作った製品を使うお客さんとではなく、
製品をつくっている人たち(他の部門の社員や部材メーカーさんなど)と過ごしています。


製品を使ってくださるお客さんとお会いするのは、
まさに製品に不良がおきた時だけになっていないでしょうか。
つくった試作品をもとに、お客様の要望にこたえる製品にこたえる
修正がどれだけ加えられているでしょうか。


今回は、Windows で有名な Microsoftでのユーザビリティ試験の事例をご紹介します。


<Microsoft ユーザビリティ試験>

Microsoft社の The human factor のコラムより、ご紹介します。

まずは、Microsoft のユーザビリティ試験室のユーモラスな動画を
ひらめきこちら からどうぞ!

Microsoft 社のコラムの著者は、自らのことを技術が大好きなことを認めつつも、

長年の経験から、技術への愛情だけでは、お客さんを、
必ずしも正しい方向には導けないということを示唆してくれています。

技術への愛情をお客さんへの愛情にかえる手段が必要です。
それが、ユーザビリティ試験かもしれませんね。


Microsoft 社でのユーザビリティ試験では、
「ユーザビリティエンジニア」と呼ばれる専任社員がいて、

30もの個別の試験室を完備し、「ユーザビリティ試験」を通じて、
製品開発チームにユーザーが何を要求しているか伝え、
お客さんの要求にどれほど応えられているのかを分析し、
よい製品づくりへと反映する体制を構築されています。

これは、インターネットに関わるユーザビリティに限定されるものではなく、
一般的なものづくりにもあてはまるものです。

技術開発者が、時間をかけ、力を注いで開発した機能も、
お客さんに使ってもらい活用されなければいみがありません。
お客さんが、本当に必要としているものはなんでしょうか。

製品の使い勝手の良さも、品質の一つの指標です。

「作ったものを誰かが使っているのを観察すること。
それが、目標が現実に合っているかどうかを確かめる唯一の方法。」


ということです。


■ 良い製品をつくるためにはどうすればよいか?

優れた製品は、製品の機能など、複雑さを見せ付けて興味をひくのではなく、
複雑さを隠すことに集中し、製品の使い勝手を向上させています。

使い勝手の悪い製品であれば、いくら長期耐久性のあるコンセプトの製品であっても、
そんなに長い期間、使われるはずもありませんし、お客さんの視点にたったものづくり、
自分の家族にもすすめたいような、お客さんへの思いやりのある製品づくりを
こころがけたいものです。


そんな製品をつくるために実施するユーザビリティ試験は、
私たちにさまざまなことを気づかせてくれるでしょう。


Microsoft社のすばらしいコラムから導きだされるユーザビリティ試験の8つのポイントご紹介します。

@お客さんと共に過ごす時間を増やし、何を誰のためにつくっているかを再認識する。
A知識や経験のある熟練の開発者を謙虚にさせる。
B作り手としての自分に訴えかけるものをつくりたくなる罠に陥ることを防ぐ。
C優れた製品作りに貢献できているのかどうか常に気にさせる。
D開発者が想像しないような愕然とする使われ方を認識する。
Eお客さんが、製品をどうにか使えたとしても、その作業の遅さにも気付く。
Fお客さんが本当に必要としているものと、自分自身の予想の違いに自らきづく。
G開発者が慣れ親しんでいる考えは、企業の常識でも、一般のお客さんの非常識であることを認識する。
 

このような気づきがあたえることができれば、
きっと使いやすく、多くのひとに喜ばれる製品ができるはずです。

以上のように、ユーザビリティ試験は、製品の作り手側への気づきを与え、
品質の高い製品をつくるうえで大きな役割をはたしてくれます。

ユーザビリティ試験は、ソフトウェアにかぎらず、
一般の家電製品などのハードウェハでも実施されている優れた評価方法であり、

お客様を大切にする企業のものづくりにおいて、業界や製品の垣根をこえた、
なくてはならない試験のひとつといってよいのではないでしょうか。


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posted by かおる at 13:48| Comment(2) | TrackBack(0) | ユーザビリティ試験