企業の規模が大きくなると、部門ごとに組織が分割され、
分業された業務の専門性が上がる反面、
直接お客様と触れ合う機会が少なくなりがちです。
お客様と会うのは、営業の仕事、アフターサービの仕事、
忙しさのあまり、そんな考え方になっていないでしょうか。
実際に、製品が、お客さんにどんな風に使われているのか、
現場に足を運び、現実を理解すると、思わぬ発見があるものです。

あかちゃんもいれば、お年寄りもいます。
右利きの人もいれば、左利きの人もいます。
初めて使う人もいれば、すでに使ったことのある人もいます。
寒いところもあれば、暑いところもあります。
気圧の高いところもあれば、低いところもあります。
国がかわれば、見方や考え方も違います。
しかし、わたしたちは、身の回りのあたりまえのこと、
ありふれているものを常識とおもっていることが多いものです。
『常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである。』
天才 アルベルト・アインシュタインのことばです。
日頃から当たり前のように感じていることは、
実は、『常識』というレンズをとおした偏った見方なのではないでしょうか。
そんな常識とはなにかをあらためて考え、
製品品質改善に役立てる方法が、『いじわる試験』です。
『いじわる試験』は、その名の通り、
設計や製造をするモノを作る立場からみれば、
「いじわる」に感じるような試験かもしれません。
いじわる試験では、製品が実際に使用される様々な場面を想定し、
誤った使い方、過度な使い方、想定範囲を越える使い方をしたとしても、
壊れたりしないこと、問題が起きないことを確認します。
もし、壊れる場合には、その限界を把握し、安全に壊れることを確認します。
そして、現実に起こりえる動作はもちろん、
その動作や条件を強調して再現し、製品の使用上の品質を検証していきます。
いじわる試験を実施すると、製品のより弱い部分が目立つことから、
実使用上の問題点と設計の改善ポイントが明確になります。
ごく短時間に問題点を明らかにし、
効率よく課題をみつけだす良い試験方法ですが、
過剰な品質を追求するあまり、
例えば、自動車が、戦車のようになってしまっては、
本末転倒ですので、バランス感覚もまた重要なポイントといえます。

わたし達の身近な製品の多くには、取り扱い説明書がついています。
じっくりと詳細内容まで読んで使用するひとは、
はたしてどれだけいるでしょうか。
実際には、読んで理解というより、
使って慣れてしまう方が多いのではないでしょうか。
すべてのお客さんが取り扱い説明書を
読んでいるはず、知っているはず、理解しているはずと思わず、
いじわる試験を通じて
ひとの間違いやミスをうけいれられる優しさのある商品をつくっていきたいものです。
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