2011年07月04日

歩留まりのリカバリー「4R」とは?

歩留まりのリカバリー「4R」とは? - 品質管理研究所 -


工程の重要な管理指標として、「歩留まり」があります。

今回は、低い歩留まりをリカバリーする方法について、考えてみます。

歩留まりが低下すれば、不良品となるむだな製品が多く生産され、
損失が拡大することは、いうまでもありません。

そんな製造工程での不良品の損失をリカバリーするために何ができるでしょうか。

歩留り低下のリカバリー

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<4R>
(1)Reduce リデュース : 不良を削減する。
(2)Repair リペア    : 不良品を修理して、良品にする。
(3)Reuse リユース   : 不良品を識別して、点検用などで利用する。
(4)Recycle リサイクル : 不良品を再度、原料に戻して、使用する。

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(1)Reduce リデュース  
歩留まりの改善の基本は、品質不良の問題の原因をつきとめ、
不良そのものを減らしていくこと(Reduce)です。

不良の原因が何であるかを知ることこそが、改善への近道ですね。


(2)Repair リペア
工程中で発生する不良には、特定の部品の故障などで、
製品全体が不良となってしまうような場合もあります。

故障部品を交換さえすれば、製品として機能する場合、
適切な修理(リペア)で品質を回復することができます。


もちろん、正規出荷品としての品質と品位を維持できることが大前提です。

修理に伴う加工の影響で、製品の品質に通常工程異常の影響を与えていないことを検証し、
信頼性試験などを通じて、見えない問題を確認することも必要になります。

特定のリワーク作業手順を標準化して、特定の認定作業員が作業するなど、
通常工程より、厳密な管理で修理していくことが求められます。

製品を廃棄してしまう前に、修理できないかを考えることも大切ですね。


リペア作業の弊害は、

リペアを正規のプロセスとすると、手直しにより見かけ上の歩留まりが向上し、
本来の工程中の不良の発生状況がつかみにくくなることです。


不良の実態がみえにくくなり、
不良の根本改善への推進力が低下しないようにするためには、

「歩留まり」という指標から、「直行率」という厳しい指標に
グレードアップさせて、考えることも有効です。

「歩留まり」は、工程中で発生した不良品をリペアし、良品としてカウントし
下記のように算出されます。

■ 歩留まり(%)= 良品数 / 生産数 ×100 


一方、「直行率」は、読んで字のごとく、工程で「まっすぐ行った比率」です。

つまり、直行率は、部材の投入から、手直しをせずに、
良品のまま、最終製品になった良品を生産数で除算した比率です。

工程中で不良品となり、検査工程で一度除去された製品は、その後手直しされることもあります。
最終的に良品になったとしても、余計な手間が加わっており、
損失であることにはかわりありません。

直行率は、このような回復した製品を、計算上、良品としては、カウントせずに、
手直しせずに最終工程までいった製品を生産数で除算した比率として、下記のように算出します。

■ 直行率(%) = 良品数(リペアなし) / 生産数 ×100

リペアにより短期的にムダを削減するとともに、
その不良の未然防止をうながすためにも、直行率の指標を使い、
正確に品質状況を把握し、手直しによるリペア費用の削減も積極的に図っていきましょう。


(3)Reuse リユース
不良の削減はしても、製品とはならず、リペアもできない不良品が、
工程内ロスとして生じてしまうことがあります。

そんな不良品も、可能な限り、活かして使用することがおすすめです。


@不良の限度見本の作製
生産立ち上げ直後は、外観不良などの限度見本として、不良を保管し、
現場の判断基準、教育サンプルとして、活用することが有効です。

不良は、望んでつくれるものではありませんので、
不良品も大切に保管して活用しましょう。

歩留り低下のリカバリー


A生産設備の条件出し
不良品を活用して、生産設備の初期条件だしや日常点検を行うこともできます。

正規品を使用して、点検すれば、破壊試験検証となるような場合、
節約のために不良品の中の良品部位を活用して、点検を行なう場合があります。

不良品という識別管理がきちんとできていなければ、
確認用のサンプルが流出してしまう不良も発生しますので、注意が必要ですね。


B再加工
サイズの小さな製品に使用できる場合など、
良品部分のみを他の製品の素材として活用することができる場合があります。

小型の用途で安価に使用したいという需要があるような場合は、
大型の素材から加工して、良品部のみを取り出して、ロスを低減させている企業もあります。
製品の歩留まりには反映されませんが、他の製品にすることで、無駄をなくす発想です。

歩留り低下のリカバリー


(4)Recycle リサイクル
リユースも難しい不良品は、原料までもどして、リサイクルの可能性を検討することも大切です。

歩留り低下のリカバリー

@自社でのリサイクル使用
金属製品や樹脂製品などは、不良品を適切に処理し、
溶融すれば、再度使用することも可能です。

もちろん、素材の純度や機械的特性を確認して、品質を保証することや
リサイクル品の比率をきめて、品質を維持することなど注意が必要ですが、
リサイクルすることで、廃棄費用や原材料のロスを削減することにつながります。


A他社での廃棄物の有価物化
廃棄物の有価物化の可能性についても、検討しておきたいところですね。

自分でリサイクルできないからといて、ゴミと考えるのは、非常にもったいないことです。
見る人によってはゴミですが、他人にとっては、お宝の場合もあります。

ガラスのくずなどのように、捨てれば損、売れば利益となるようなものがないか
見直すことがおすすめです。

ゴミも減らすし、ロスもなくす、節約思想は、現場に見られるでしょうか。
工場のゴミ箱や不良品置き場に何がおかれているでしょうか。

不要なものとして廃棄されるものは、
お金が変化したものであることを今一度考えたいものです。


今回は、低い歩留まりをカバーする「4R」について、ご紹介しました。

リデュースは、基本の品質改善活動ですが、リペア、リユース、リサイクルありきで、
生産工程のロスを見逃したり、許容したりすることは、品質改善の真の姿ではありません。

コストを削減しつつ、工程の品質を改善していくための段階的措置として、
4Rをうまく活用して、ムダをなくすヒントになればうれしい限りです。


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posted by かおる at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 歩留まり改善

2011年07月03日

歩留まり改善とは?

歩留まり改善とは? -品質管理研究所-


品質不良を改善するための
重要な指標に「歩留まり」があります。

今回は、大切な「歩留まり」の考え方についてご紹介しますひらめき


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(1)歩留まりとは?
(2)歩留まりが高いとは?
(3)歩留まりの把握
(4)歩留まり目標の設定
(5)歩留まりの改善


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(1)歩留まりとは?

「歩留まり」とは、生産されたすべての製品に対して、
良品として、お客さんに出荷される製品の比率です。


■ 歩留まり(%)=良品数 / 生産数×100

「不良として、出荷できないものを除いた製品の比率」と考えることもでき、


■ 歩留まり(%)=(生産数−不良数)/ 生産数×100

と、算出することもできますね。

簡単に言えば、
歩留まりが高ければ、不良がすくなくてよいイメージが想像できますね。

また、不良率との関係から、

■ 歩留まり(%)+不良率(%)=100(%)
■ 良品率 (%)+不良率(%)=100(%)


と、算出することもできます。


歩留まりと品質改善


海外企業では、歩留まりは、「 Yield 」という表現が用いられ、
品質レポートなどで確認されたことがある方も多いのではないでしょうか。

「歩留まり」は、生産部門における成果指標として、
世界中の企業で活用されている、いわばものづくりの基本指標です。


歩留まりが低ければ、ロスも大きくなり、製品原価も上がるため、

歩留まりを現場の状態を管理する指標として、
リアルタイムに管理し、改善に活用している企業も多くあります。

まさに、歩留りは、製造現場の健康状態を知るバロメータですね。


(2)歩留まりが高いとは?
一般的に、「歩留まりが高い」とは、
不良品が少なく、生産が安定した良い状態を意味します


たとえば、高い品質基準をもっている企業においては、

歩留まりが高いほど、
不良が少なく、品質が高い生産工程であり、

歩留まりが低いほど、
不良が多く、品質改善が必要な生産工程ということになります。

しかし、製品の品質は、変わらないまま、
品質基準だけが、低く設定されたら、どうでしょうか。

粗悪な製品でも、低い品質基準範囲内で良品扱いとなり、
歩留まりが高くなってしまいます。

つまり、必ずしも、「歩留まりが高い=品質が高い」ではないということを理解しておく必要があります。

「歩留まりが高い=品質が高い」となるためには、
品質基準が、妥当であることが前提条件となっていることを忘れてはなりません。

歩留まりと品質改善



製品の品質を監視する品質管理部門や購買部門の方は、
取引先や現場での工程歩留まりが上昇したときは、

たゆまぬ品質改善の努力によって歩留まりが上昇したものか、
それとも品質基準そのものがずれたり、ゆるく設定し直したことによって、
上昇したものかを見抜く視点も必要です


あまりに急激な歩留まり上昇は、
危険をはらんでいることを覚えておきましょう!


(3)歩留まりの把握
「歩留まり」は、「工程歩留まり」という表現でよく使用されます。

「工程歩留まり」の「工程」とは、
生産ライン上での材料の投入から
出荷検査、梱包、出荷までの一連の工程をさします。
QC工程図で確認される全工程ですね。

「工程歩留まり」を算出するためには、まず、
各工程での生産不良を、5W1Hで正しく記録をとることから始まります。

製品の不良が、

いつ(When)、
どこの工程で(Where)、
だれが(Who)、
どんな製品のどんな不良を (What)、
何個(How many)、
なぜ(Why)

発生させたか(発見したか)を記録していきます。

一般的に、不良の多くは、受入検査、工程内検査、出荷検査の
3種の検査工程を通じて、検出されますので、
この検査の結果を第一に見直すことがおすすめですね


もし、不良の集計が十分できていない場合は、現場の検査員さんなどに
この不良集計の目的や意義をふくめ、不良の定義の仕方、記録の取り方
をしっかり教育しなおすことか大切です。

また、不良品と良品を明確にするために
不良置き場を明確にするなど、物理的な識別管理のルールをつくることも大切です。


歩留まりと品質改善


不良の情報を記録する方法や現物の保管識別方法が浸透し、
運用できるようになれば、あとは、期間を区切って、不良情報を集計し、分析していくだけですね。

まずは、不良モード別に発生数の多い順にならべて、
パレート図をつくって、重要な問題をみつけだしましょう。

不良の大半を占める問題児をみつけ、その不良モードに力点をおいて、
重点的に改善していくことで、効率よく改善を図れます。

わずかな改善の力で大きな成果を生む「重点指向」の考え方です。


品質データの集計は、統計的な知識やむずかしい理論を駆使するようなものではなく
Excelなどで数値を簡単にまとめるだけでできますので、

まずは、どんな不良がどれだけあるのか、感覚的にわかっている情報を
正確な定量的情報で取り直して、見直すことが大切ですね。


(4)歩留まり目標の設定

問題点をみつけて、改善することは、大切ですが、
どこまで何を改善するか、組織としての目標設定が必要ですね。

会社の上位方針から、トップダウンで、どこまでの改善が必要とされているか、
また、これからの改善努力でどれだけ歩留まり改善できそうかという現場視点から
現実離れしない現場のやる気を引き出す達成可能な挑戦目標の設定が必要です。

目標を設定するにあたっては、

特定の工程の、特定の不良モードに対して、「目標」と「期限」を設定し、
具体的に「だれ」がリーダーとなって、「どんな改善をすすめるか」を明確にして、
改善をすすめていくことが大切です。


歩留まりと品質改善


できそうにもないことへの過剰な期待とムリな目標設定は、

現場の疲弊と事実を隠したくなる風土をうみますので、
形骸化するような目標設定や進捗確認にならないように配慮が必要です。


(5)歩留まりの改善
歩留まりの改善を行うためには、品質保証に関わるメンバーが
問題点をみつけて、指摘、改善することは、大切です。

歩留まりと品質改善

しかし、多くの場合は、改善を行うのは現場の担当者になりますので、
指摘するよりも、自らで気づいてもらうようにするような働きかけが大切です。

特に、現場の工程リーダーなどに不良データの把握、集計をしてもらうことで、
不良の実態を自らで、理解してもらうようにし、
不良の改善プロセスを自覚、共有することが大切です。


不良の集計を品質保証部がおこなっても、工程リーダーがおこなっても
得られる不良の分析結果は同じかもしれませんが、

工程リーダーが自ら加わって取り組んでいることで
その後の工程での改善の取り組みには、明確な違いがあらわれることでしょう。

人から言われて、問題を改善するのと、
自分で問題を把握し、改善するのでは、
課題にとりくむときのやる気はぜんぜん違います。

歩留まり改善の結果が大切なことはもちろんですが、
改善プロセスへの参画を促すための心配りも大切にしたいものです。

歩留まりと品質改善


また、実際に不良を改善していくためには、

不良発生率の情報から、発生率の高い不良モードに着目し、
どこの工程以降で発生しているかを確認する必要があります。

まずは、検査工程から受入工程に向かってさかのぼって歩き、
どこの工程でどのような理由で不良品が生じているかを探っていきます。

すこしでも多く、現場で不良と対話してみましょう。
同じ場所にたって、5分、10分、20分と立って、定点観察していれば、
自ずと不良の声がきこえてくるでしょう。


さらに、突発的な原因を追究するためには、あわせて、
過去に発生した不良状況の時系列データと設備管理記録の時系列データを比較したり、
引継ぎ書などを参考にして、不良発生時の状況をチェックすることも大切ですね。

このような方法で、現場の不良発生工程を明確にし、
その不良の発生メカニズムも明らかになれば、自ずと対策も明確になるはずです。

不良の発生メカニズムが明らかな状態とは、
「不良を再現できる」という状態です。


どんな条件でどんな手順で行えば、同じモードの不良が発生するということを
可能な範囲で、再現試験を行い、きちんと追及することが大切です。

実際には、生産設備が稼動している中、再現試験、検証を行うことが難しいことも
多いですが、ひとつひとつの不良の芽をつむためには、不良を再現して理解し、
二度と再発させない徹底した姿勢がかかせません。


原因の追究こそが、対策の手だてとなる重要な改善プロセスであることを
肝に銘じて、歩留まりを改善していきましょう!



今回は、「歩留り改善」についてご紹介しましたひらめき

「品質向上は終わりがない」とよくいわれますが、
費用対効果の高い品質改善取り組みのヒントになれば、うれしい限りです。


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posted by かおる at 20:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 歩留まり改善