納入部材の品質目標とは? -品質管理研究所-
お客様に対して、品質を保証するためには、
製品に組み込まれる部材の品質から高めていくことはかかせないことです。
今回は、納入部材の品質を向上させる
納入部材の「品質目標」の活用方法についてご紹介します。
__________________
<納入部材の「品質目標」の活用方法>
(1)納入部材の品質目標の設定
(2)品質目標の提示方法
(3)品質目標の提示のタイミング
(4)品質意識の違いの把握
(5)品質目標の役割
(6)品質目標による評価制度__________________
(1)納入部材の品質目標の設定納入部材の品質を高め、不良を削減するためには、
品質目標を明確にすることが大切です。
部材の品質目標としては、
以下のような
「納入不良率」という指標を活用することができます。
■ 納入不良率=納入不良数/納入数 このとき、部材の納入不良率は、
%レベル(100分の1)でしょうか。
それとも
ppmレベル(100万分の1)でしょうか。
はたまた、不良
ゼロ(0)でしょうか。
品質目標は、このように数値で具体的になっているでしょうか。品質管理するための基準となる目標を設定するために、
最終製品での品質目標に基づいて、
構成される個別の部材に対する品質目標(納入不良率など)を設定します。
複数の部品が組み込まれた製品での不良を抑えるために、
部品に対する品質基準は、一般に製品の品質基準より高いものになります。ISO9001品質マネジメントシステムのように
企業として掲げた品質方針に基づき、品質目標を設定し、
個々の部門目標や各社員の目標に展開していくように、
製品としての品質目標を設定し、社外の個別の部材に品質目標を展開して、
最終的な製品の品質を確保していきたいものです。
(2)品質目標の提示方法納入部材の品質目標を設定したあとに、
その実現すべき品質目標を取引先さんにきちんと伝えることがかかせません。
他社と異なる要求品質と品質目標を、
部材メーカーさんの経営トップや現場のリーダーに直接伝えられているでしょうか。
部材メーカーさんに対して、品質目標を提示できたからといって、
部材メーカーさんの中で、それがきちんと認識され、
現場で理解されるといると思い込んでいないでしょうか。 しっかりと、お互いの品質情報を共有したいときは、
情報の送信量ではなく、受信量が最大になるような心配りがかかせません。

経営者や品質責任者、そして、製造現場のリーダーや検査リーダーなどと
直接、顔をあわせて、自社の品質要求レベルをお伝えし、
品質に対する意識を高めていく、地道な取り組みがもとめられます。(3)品質目標の提示のタイミング品質目標をいつ提示するかも大切なポイントです。
納入不良や市場の不良が発生してから、後付けで品質目標を提示するのではなく、
問題を未然に防ぐために、
取引開始前に企業としての品質目標を提示することが大切です。具体的に実践するためには、
企業との取引開始時に締結が必要な
品質契約の中に、
具体的な数値目標を明記して、取引先さんの経営者や関係者の目に通るようにし、
契約事項として、直接説明することもおすすめです。(4)品質意識の違いの把握品質目標を活用する上で、部材メーカーさんが、得意とする業種(業界)によって、
品質意識にも差があることは、十分認識しておかなければなりません。その企業がどのような経緯で成長してきた企業か、
どのようなお客様と取引してこれまで鍛えられてきたかということは、
品質に対する意識の差として、はっきりあらわれてきます。
特に過去に取引実績のない新規取引先さんで新規部材を導入する場合や
文化や社歴の異なる海外企業と取引する場合には、
過去の社歴や事業分野などの関連情報をききとり
品質に対する意識の差異を少しでも事前に理解しておくことが大切です。
これから結婚するパートナーのことをよく知らずに
取引開始後、離婚せざるを得ない状況にならないように、
お互いのことをよく理解するようにしなければなりません。
仕様書の取り交わしや品質契約の締結、さらに、工場監査通じて、
要求する品質基準や品質目標と共に、
部材メーカーさんが知ることが難しい最終製品の購入者である
お客さまが期待する品質・品位の情報や課題を共有し、
納入前に、いかに品質意識を高めていけるかがポイントです。(5)品質目標の役割品質目標をクリアしていれば、
ごくわずかの不良が納入されてもよいわけではありません。
品質不良は、基本的にゼロであることが前提にあること、
そして、その理由について、きちんと取引先さんにご理解いただくことが大切です。取引の中で納入時の受入検査や工程検査で、不良品が確認されることがあります。
例えば、部材の市場不良が、月に100万個納入された中で1個発生した場合を考えてみましょう。
部材不良が、1個、発見されることによって、
引き起こされる手間や製品としての損失は小さいかもしれません。
しかし、
その部材不良が検出されず、
ひとたび、最終製品として、市場に流出してしまったら、どうなるでしょうか。企業的立場では、100万個の1個の不良かもしれませんが、
そのひとつの市場不良によって、購入したお客さんが感じる不良への意識は、
1個購入した中での1個の不良、つまり100%の不良であるということを
ものづくりをする私たちは、きちんと認識しなければなりません。
企業でものづくりをする上で、日々何万個と生産する現場にどっぷりひたり、
お客様目線で考えることから、気づかぬうちにはなれていることはないでしょうか。
忙しさに追われるあまり製品しかみていない状況に陥っていないでしょうか
お客様のことから意識がはなれないように、日頃から注意しなければなりません。
また、もし、品質目標はクリアしていていたとしても、
お客様への安全性が損なわれるような重大な欠陥が明らかになった場合は、
不良率として設定した品質目標とは関係なく、
品質不良がひとつだけ発生していただけでも、
最終メーカーの責任として、リコールをかけて、
製品すべての回収・修理・交換といったことが必要になることを
部材メーカーさんに認識してもらわなければなりません。ものづくりの基本は、自分の家族や友達など、
大切にしたい人に贈りたいと思えるものを提供することです。特に、部品(デバイス)などを製造する企業においては、
最終製品が一般消費者ではなく、企業が顧客であるため、
一般消費者の声を聞く機会も少ないため、作り手の発想に陥りやすいため、
部品が組み込まれたあとの最終製品のお客様の情報やつかわれ方を共有しましょう。
部材メーカーにとってのお客様は、
納入先である最終製品メーカーであるとともに、
最終の一般ユーザーでもあることをしっかり認識してもらうことが大切です。 このような最終一般ユーザーの声や情報を、工場監査を通じて提供すると
目からうろこの情報と喜んでくださる場合が多いのも事実です。
立場の違いから得られにくい情報をお互い共有し、
品質の高いものづくりをしていきたいものです。
ひとつの不良が、最終顧客全体に与える影響は、はかりしれません。企業の経営にも大きな影響をあたえる可能性があることを認識して、
高い品質の製品を納入し続けられるように品質目標と不良に対する考えを
きちんと伝えていくことが求められます。
(6)品質目標による評価制度取引が開始された後にどのように品質目標を活用すればよいでしょうか。納入時の受入検査や工程検査で確認された不良や市場で発生した不良にもとづき、
納入品質実績として、
納入不良率を毎月(半年、1年間)把握していくのがおすすめです。
品質目標からあらかじめ設定したランク付の基準をもとに、
品質実績と比較し、納入部材メーカーさんに対して、A、B、C、D、Eなどのランク付けを行い、
小学校の成績のような「あゆみ」を提示して、品質改善を継続的に促していきます。
納入部材の品質改善やコストダウンや震災などの供給リスク分散による安定供給を
実現するために、複数のサプライヤーさんを確保している部材などの場合、
同じ製品を納入してくださるメーカーさん同士での比較を行うこともできます。
他社の名前をA社、B社として、
毎月の品質推移と品質ランクを開示することは
大きな改善の原動力になります。
納入品質のランク付けと同業他社との比較で、競争意識をもって、
品質改善につなげることは、改善効果のあるおすすめの方法です。
品質目標を継続的にクリアして、評価が高い場合は、表彰するとともに、
品質目標を達成しておらず、ランクが低い場合は、品質改善計画を提出いただき、
品質会議を開催し、現場の監査を実施するなどして、品質改善を図ります。
このような品質目標に基づく評価制度は、
部材メーカーさんの自主的な改善を促すため、
ぜひ品質改善にうまく活用していきたいものです。今回は、納入部材の品質を改善するためのひとつの方法として、
「品質目標」を活用する方法についてご紹介しました。
部材の品質を向上するためのヒントになれば、うれしく思います。【関連記事】・
品質目標とは?・
品質改善の思考法 『PDCAサイクル』・
お客様はだれですか?・
良い部品は良いパートナーから!・
品質契約って?なに?・
品質保証部は、ゴールキーパー?・
品質のドミノ倒し・
品質管理研究所サイトマップ