2013年12月31日

ワイブルの破壊のチェーンとは?

ワイブルの破壊のチェーンとは?
(2013年12月31日)品質管理研究所


形あるモノは、いつかは壊れます。

いつ、どの部分から、どのようにこわれるかが重要です。
期待される製品の寿命を満足させることは、品質保証の基本です。

いくつもの「わ」がつながってできたチェーンをひっぱることを想像してみましょう。

ワイブル分布

複数の繋ぎ目のあるチェーンは、はたしてどこから壊れるでしょう。

いつくもの繋ぎ目があり、壊れる可能性のあるポイントはいくつもありますが、
もっとも弱いところから壊れて、チェーンは、きれてしまうことでしょう。

ひとつの鎖がきれてしまうことで、全体のチェーン(製品)の価値は失われてしまいます。


複数の異なる材料から構成されている製品もまた、
異なる要素からなる「鎖」が連なったチェーンと同じです。

複数の異なる材料がチェーンのようにむすびついて、製品を構成し、

負荷が加わると、最も弱いところから壊れれば、
製品としてつかいものにならず、価値を失ってしまいます。


製品の信頼性を高めるためには、
チェーンのどこが、最も弱いかを理解する必要があります。


そして、実務では、製品の弱い部分に加え、さらに負荷『Stress』を考えることが大切です。
度『Strength』と対をなす、負荷『Stress』の考え方、Stress-Strength modelが必要になります。

実際に使用されるときに、どの部分にどのような負荷が多くかかるのか、
お客さんの使用状況に応じた負荷を理解することは、見落としがちです。

どの弱いチェーンに、どのような負荷がかかるのでしょうか。

ときに、お客さんは、製品をあやまって、おとすことがあるかもしれません。
移動による振動が多い状態で、負荷の蓄積も大きいかもしれません。
強度の強いチェーンでも、多くの負荷が継続してかかれば、壊れてしまうかもしれません。

どのようにお客さんが使用されるのか、
部品や製品の使われかたを直接みたことは、どれだけあるでしょうか。


各チェーンの強度『Strength』は、企業の実験室で把握することができますが、
使用上の負荷『Stress』の実態は、実験室ではなく、現場に多くの事実が隠れています。


現場にいくと、こんな取り扱われ方をしているのかと驚くこともあるでしょう。

かわいい製品がどのようにつかわれているか、
学校の参観日のように、わが子のような製品を現場に見に行きたいものです。

わが子のような製品と参観日

工場に納める部品であれ、お客様に納める製品であれ、
どのような負荷が想定され、どのような弱い部分があり、改善すべきでしょうか。

最終的にどこからどのように壊れるかをこのような考え方をもとに予測することが
信頼性を確保する上で、大切なのではないでしょうか。



今回は、ひとつの鎖がきれてしまうことで、全体のチェーン(製品)の価値は失われしまう考え方をご紹介しました。

この「鎖の連鎖」の考え方は、全ての事象にあてはまるわけではありませんが、ワイブル分布という統計分布の重要な考え方で、確率的な数式でも表現されています。実務では、信頼性の考え方として、劣化による寿命予測にも、活用されています。

一部が全体の破壊につながるチェーンの考え方、そして、Stress-Strength modelの考え方で、
製品寿命と品質保証について、あらためる考えるきっかけになれば幸いです。


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posted by かおる at 14:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 長期信頼性

2012年02月28日

ストレス-ストレングスモデルとは?

ストレス-ストレングスモデルとは? - 品質管理研究所 -


形あるもの、いつかはこわれます。

問題は、いつ、どのようにして、こわれるかです。

長期信頼性と故障


製品開発時には、製品に組み込まれる部品や材料は、
市場でのお客様の使用環境、使用頻度、使用条件などを想定して、

使用上の負荷(ストレス)が、継続して加わっても、
十分耐えうる強度(ストレングス)をもった設計をすることが求められます。

さらに、もし、壊れたとしても、安全な壊れ方であることも必要です。

これは、製品の品質や安全を前提とした、ものづくりの基本です。

実使用を想定した経年劣化を考慮した設計をする場合、
ストレス-ストレングスモデルという信頼性設計の考え方が役に立ちます。


(1)Stress-Strength modelとは?

Stress-Strength model

Stress-Strength modelは、大切な製品の品質特性である強度(Strength)が、
輸送や使用環境や条件等に伴う負荷(Stress)に負けてしまうときに、
不良が発生するというシンプルな考え方です。


製品の品質特性である強度(Strength)と負荷(Stress)には、ばらつきがありますので、
そのばらつきの分布の裾野でも、『強度>負荷』となるような設計をしなければなりません。
経年劣化したあとも、この関係が成り立つような設計をすることがポイントです。


(2)ストレス-ストレングスモデルの設計時の活用

製品が故障に至るプロセスを
ストレス-ストレングスモデルにあてはめて考えてみましょう。

例えば、

■ 屋内に掲示物がテープで接着されている場合

初期に保持されていた接着強度(ストレングス)という品質特性が、
エアコンの風や光などの環境条件による負荷(ストレス)によって、低下し、
最終的には、負荷(ストレス)に負けてしまい、はがれてしまうことがあります。

製品の品質特性は、使用環境や使用条件による経年劣化に伴い、
強度が低下する場合があります。

そこで、その強度の経年劣化を考慮した初期の強度設計や
代替品を検討し、負荷にまけない強度特性を確保するなど、
設計時にいかに、強度(ストレングス)を作りこめるかがポイントとなります。


この掲示物の場合は、粘着性の強いテープに変更する、接着面積を大きくする、
画鋲をさすなどして、掲示物がはがれるのを防ぐことができるでしょう。

掲示物の落下

どのような品質特性が劣化しやすいかは、

強度特性の物理的、化学的な発現メカニズム(どのような原理で、強度がでるかということ)
を理解した上での予測や過去の類似製品の知見や実務経験、失敗経験などから、
ある程度のあたりをつけることができますが、


製品品質を実際に、モノで検証することも大切ですので、

加速試験や限界試験を実施して、試験経過毎の品質特性の劣化を把握し、
品質特性の弱点を短期間で探り、改善を図っていくことが行われます。

応力解析、熱解析などのシミュレーションが活用できる場合も、
現物による評価と合わせて、うまく活用したいものです。


(3)ストレングス(強度)の改善

強度に問題がある場合は、
具体的な設計改善としては、下記の3つの方向で
品質特性の改善を図ることが求められます。

製品設計時には、初期の品質特性を見てしまいがちですが、
経年劣化という時間軸をいれた品質の概念をもりこむことが大切です。


@ストレングスを高める       〜初期の強度の向上
Aストレングスのばらつきを抑える 〜強度のばらつき減少
Bストレングスの低下を抑える   〜経年劣化の低減


ストレングスは、製品の製造ばらつきとしてあらわれてくるため、
製品の信頼性検証試験においては、ばらつきも把握できるように、
試験数を確保した検証することが求められます。


(4)市場環境の変化に伴うストレスの増大

私達の日常では、新しい仕事についたり、新しい組織に異動したり、
周囲の環境が変化すると、ひとによってストレスの受け止め方はことなりますが、
さまざまなストレスが心や体の負担となる場合があるのではないでしょうか。

環境変化のストレスと強度

製品も、輸送され、使用される中で、その環境や条件がかわれば、
その負荷(ストレス)も変化することを理解する必要があります。

ある製品で、日本では問題なく運搬、使用されていたのに、
ある国Aでは、同じ仕様でも、不良が発生することもあります。

下記は、市場Aから市場Bに環境が変化したときの負荷(ストレス)の上昇に伴う
不良の発生をStress-Strength modelで表現しています。

ストレス-ストレングス モデル

ストレスは、製品の使用環境や使用条件や使用頻度によって変化し、
ストレングスと同様にばらつきがあります。


■ 市場の違いによる輸送不良の発生

例えば、ある国の市場Aでは、製品の輸送時に梱包が壊れることがなくても、

ある市場Bでは、輸送するトラックの走る道路が荒れていて、
さらに製品の取扱が粗く、Stressが増えて、梱包が破損し、
製品がお客様に届く前に不良となってしまうような場合などがあてはまります。

輸送品質と梱包


製品がグローバルに展開される中では、
自国の常識や先入観は、弊害となることも多く、
現地の常識や使用環境を理解することが大切です。


輸送に伴う梱包破損の不良については、

・輸送梱包仕様の耐荷重性能などのStrengthの強化
・取り扱いの丁寧な輸送業者の選定によるStressの低減
・輸送梱包に取扱注意を喚起する表示によるStressの低減


などの取り組みを実施することが求められます。

輸送品質と梱包


輸送については、経時変化の場合ですが、同様に、

お客様での使用環境や使用条件や使用頻度に基づく経年劣化を考慮した
製品設計をすることが求められます。


市場Aで実績があるからといって、
市場Bで品質不良がおきないとはいえませんので、

品質の過信は、禁物ですね。


ひとの場合、ストレスは、お酒をのめば発散できるという方もいるでしょうが、
製品の場合は、うけたストレスをうまく発散することもできずに負荷が蓄積され、
経年劣化へと結びついていくのです。

設計者には、ぜひ、ストレス-ストレングスモデルを理解して、
長期にわたるストレスに耐えられるようなストレングスのある
製品設計をしてもらいたいものですね。


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2011年03月21日

製品長期信頼性の鍵!7つのポイントとは?

信頼性の7つのポイント -品質管理研究所-


信頼性の高い製品を継続してつくるためには、
シンプルであること、基本原則を守ることが大切です。

グローバルな場で、顧客の求めるものの多様化など、
変化の多い環境に柔軟に対応しつつ、

どのように信頼性を確保していけばよいのか考えてみましょう。

信頼性7つのポイント

具体的にどのようなことに注意すればよいのか
『信頼性の7つのポイント』をご紹介します。


■ 信頼性の7つのポイントひらめき

(1)信頼性の目標と達成計画が明確である。
@信頼性目標、保証期間が明確である。
(お客様で使用される条件や環境も明確である。)
A設計コンセプトに信頼性目標があり、開発計画が明確である。
B関連部門の設計開発と信頼性活動を同時並行で行う計画である。

(2)シンプルな組織である。
@プロジェクトの責任者が明確で、権限がある。
A部門の責任が明確で、部門間の連携がとれる。
B社外の窓口が明確であり、情報共有が、円滑に図られる。

(3)シンプルな設計、加工、工程である。
@部品点数がすくない、接点がすくない。
A加工を考慮したシンプルな設計である。
B加工工数がすくない、加工工程が単純。
Cばらつきの多い人手による加工がすくない。

(4)実績のある取引先、工場、部品、技術をつかう。
@過去実績のある取引先、工場で製造する。
A過去市場で安定した実績のある部品をつかう。
(各種加速試験に合格≠市場での安定した実績ではない)
B過去実績のある技術を活用する。
C変化点があれば、重点的に管理する。(DRBFMなど) 

(5)想定される故障が明確で、対策が実施されている。
@故障モードに対して、未然対策を行う。(FMEAなど)
A過去の失敗した経験やノウハウを反映している。
B実用試験、信頼性試験(加速試験、限界試験など)を実施している。
C規格に加え、安全率をかけた厳しい自社基準の安全設計をしている。
D想定を越える使用(不注意、誤使用)を認識したフールプルーフ設計である。
E想定を超える長期間の使用を認識した設計や検証がなされている。
F安全(人命)に影響する部分の冗長設計がなされている。

(6)きめられた手順を守り、安易な変更をしない。
@適切なデザインレビューの手順をふむ。
A製造工程できめられた作業手順をつくり、徹底する。(Method)
B作業する人員を教育し、固定する。(Man)
C製造設備を固定し、設備点検を徹底する。(Machine)
D指定された同じ部材、副資材を使用する。(Material)
E測定方法を明確にし、固定する。(Measurement)
F作業環境(温度、湿度、照度、大気、など)を基準を設定し、維持する。(Environment)
G品質に影響を与える5M1Eを変更せず、維持する。
  
(7)量産初期の品質を改善し、維持する。
@初期流動確認による工程、製品スペックのばらつきの把握と改善。
A量産第一ロットのエージング試験(実使用条件で負荷の大きい試験)による課題抽出と改善。
B量産品のバーンイン試験(実使用条件の試験)による部品のスクリーニング(排除)の実施。
C量産品のバーンイン試験(実使用条件の試験)による製品のデバッキング(修正)の実施。
D量産品の定期的な信頼性試験の実施。
E市場初期不良の現物回収、設計、製造へのフィードバックの実施。
F部品の納入品品質評価と品質改善の実施(定例品質会議の実施)。



ひらめきなにか少しでもご参考になれば幸いです!

 
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posted by かおる at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 長期信頼性