(2014年5月2日) 品質管理研究所
日本の武道「柔道」、
柔道を教わるときに、最初に習う技術はいったい何でしょうか。
攻めるための「投げ技」でしょうか。

柔道で、最初に学ぶのは、
いかにして投げられるか、負けるときの「受身」の姿勢です。
「受身」は、投げられて畳にたたきつけられたときに、
後頭部などの大切な部分をみずから守り、
からだへの衝撃を緩和するための守りの動作です。
うしろへの受身、よこへの受身、まえへの受身、
あらゆる方向への受身の動作により、けがも少なくなり、
さらに、なげられるときの恐怖心も少なくなる大切な基本姿勢です。
ものづくりにおいて、品質課題のある新規パートナーさんとの取引では、
どのような「受身」をとる姿勢ができているか事前に確認ができているでしょうか。
ものづくりでの大きな痛みは、お客様へご迷惑をかけてしまう「不良の流出」です。
生産が安定するまでに生産工程で多くの工程不良がでてしまったとしても、
市場のお客様に不良を流出させないことが大切なポイントです。
品質実績のある企業さんとの取引と違い、
品質管理体制に課題の多い新規パートナーさんと取引を開始する場合には、
特に、市場不良を未然に防止するために、
柔道の「受身」のような「最終検査体制」を事前に構築することが必要になります。
「お客様に不良品を出荷しない」市場不良の歯止めとなる
最終検査体制を事前に構築することができているでしょうか。
市場での問題が発生してから、あわてて対策を実施していることはないでしょうか。
過去発生した不良モードと不良写真をもれなく情報共有し、
あらかじめ不良の流出防止の対策を講じることができているでしょうか。
多くの不良は、「想定内の不良」ですが、
そのパートナー企業さんにとっては、初めての目新しい不良もあるかもしれません。
自社がすでに経験しているような不良に対して、単に知識不足、理解不足というだけで、パートナー企業さんで見逃されていることはないでしょうか。
市場不良につながる検査工程での検査見逃しの原因には、
検査体制そのものに対するさまざまな「不足」がからんでいます。
その検査の不足について、どれだけ検証ができているでしょうか。
検査教育の不足、検査人員の不足、検査照度の不足、検査員の視力の不足、検査時間の不足、検査力量の不足、検査項目の不足 、検査基準の不足、検査手順の不足・・・
重要工程の設備の条件設定の妥当性検証と同じように、
最終検査工程の検査の有効性を十分に検証することができているでしょうか。
品質に結びつく製造プロセスそのものの品質改善はほんとうに大切なことですが、短期的な成果に結びつく最終検査での歯止めの流出防止対策も忘れてはなりません。
現場作業者さんの離職率が高く、驚くほど入れ替わりの多い海外新興企業においては、
品質を維持することは、日本企業のように容易ではないことを十分理解しなければなりません。
その国や地域、その企業の成長段階に応じて、流出防止対策(柔道の「受身」)を徹底していくことが、安定的な出荷品質を維持するための基礎となるのではないでしょうか。
世界へひろがっている「柔道」の基本「受身」の姿勢に立ち返り、
世界に広がるものづくり企業の「最終検査体制の構築」について、
改めて考えるきっかけになれば幸いです。
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