(2013年12月16日)品質管理研究所
お客さまに喜ばれるためには、
変化しつづけることがかかせません。
変化は、成長の証。

いっぽう、品質を維持するためには、変化をさせないことが大切です。
変化があるとき、そして、変更するときは、
品質も変化し、問題はおきやすくなります。
品質部門のしごとは、変化をいち早くとらえ、変化に未然に備えることです。
問題を起こす恐れのある変化の芽に気づき、つみとることが求められます。
変化にきづくためには、
日頃から情報のアンテナをめぐらせ、敏感になる努力もかかせませんが、
変化に関わる情報を入手できる仕組みを整えることが必要です。
変化には、「内の変化」と「外の変化」の2つがあります。
内なる変化は、社内の情報を入手して対応できますが、
外からの変化は、社外の情報に左右され、対応しにくいものです。
もし、社外の取引先さんの外部情報がうまくとりいれる仕組みができていないと、
変化にきづかないまま、知らぬ間に変化しているということになりかねません。
そのため、社外取引先さんとの間の情報共有として、
『変更管理』は、最重要の品質管理項目として、認識しておく必要があります。
例えば、取引先さんが、変更届出をせずに、良かれと思って変更したことでも、
最終商品として、知らぬ間に悪い影響をあたえることもあるでしょう。
最終商品でどのような影響があるかは、材料メーカーさんだけでは、判断できません。
変更には、くすりの副作用のようなリスクが潜んでいることを認識しておかなければなりません。
安易な変更は、けっして、許されるものではありません。

そこで、変更管理をおこなう上で、
下記の3つのポイントをおさえることが大切です。
<変更管理の3ステップ>
(1)契約 品質保証契約での変更管理のルールの明示
(2)仕組 変更管理の規定と変更管理フォーマットの活用
(3)確認 工場監査での実務運用のチェック
<変更管理の3ステップ>
(1)契約 品質保証契約での変更管理のルールの明示
会社と会社との取引には、契約があります。品質保証契約の中で、製品の変更管理のルールを明らかにできているでしょうか。
5M1E(Man/Machine/Method/Material/Measurement/Environment)といった品質に影響を与える変更に関して、変更がある場合には、事前に必ず、一定期日前に届出を行い、取引先の承諾を得た上で変更を実施することを契約の中にもりこむことが基本です。
品質の変化点となる変更は、品質を低下させる要因が数多く潜んでいることから、契約として、事前に明確にしておくことが大切です。無届けの変更によって、品質の検証がなされないまま知らぬ間に変更されることによって、あとで品質問題が発生しないように、この変更の事前申請による承認手続きを理解してもらうことがかかせません。
日本のものづくりの取引では、あたりまえのことかもしれませんが、海外との新規取引の場合には、特に、注意しておきたいポイントです。
(2)仕組 変更管理の規定と変更管理フォーマットの活用
取引先の実務担当者が、個別顧客企業の品質保証の契約書を見る機会がはたしてどれだけあるでしょうか。実際には、ほとんどないのが現実ではないでしょうか。そこで、この約束ごとを理解して、変更管理を徹底するためには、どのような方法が考えられるでしょう。
必要なときに、いつでも見ることができるようにしておくことが必要になります。そこで、社内の関係者がいつでも見ることができる組織のルールや品質管理規定の中に、変更管理のルールをおとしこむことが必要になります。
特に、品質を保証するための仕事の流れが明記されている「品質保証体系図」、変更時のルールを具体的に明記している「変更管理規定」の中で、一連の変更手続きを明確にするのがおすすめです。規定は、あくまで文書なので、さらに具体的な行動につなげるために、実務フォーマットにおとしこむステップアップが大切です。そこで、変更が生じた際の社内申請と検証をおこなうフォーマットの中で、顧客先への事前承認の有無を確認する項目を追加しておくことが大切です。だれもがその重要性に気づき、もれなく確認できるようにするためには、変更管理のフォーマットの中で、運用することがおすすめです。
また、購買する立場で、品質契約の条項に合致する変更項目を記載した、独自のフォーマットをあらかじめ作成し、取引先さんに提供しておき、特別の品質要求事項として、部材メーカーさんの営業さんと工場の両者に認識してもらい、理解を深めてもらうこともできるでしょう。
(3)確認 工場監査での実務運用のチェック
実際に変更が生じた際に、変更管理の仕組みが適切に運用されていることを確認できているでしょうか。変化の実態は、現場にいかなければわかりません。定期的に工程パトロール、工場監査をおこなっているでしょうか。自らの目で工場の変化を直接確認して、変化を確認することで、前回確認をしたときと変化していることがないかを自らの目で確認できているでしょうか。
現地、現物、現実を見て、変化をとらえることが、ものづくりの基本です。定期的に現場をチェックしていれば、変化にも気づきやすくなります。変更の申請に依存するだけでなく、自らの目で変化に気づく姿勢ももちたいものです。
また、工場監査の品質システム監査として、ルールと運用実態を確認しておくことも大切です。窓口の担当者さんや製造メンバーが変わっても、実務運用できることを定期的にチェックして、確認することもおすすめです。海外の日系工場では、担当責任者が海外赴任期間で数年すると入れ替わることも多く、過去担当していた責任者さんが変わり、業務が十分に引き継がれない場合、正しく情報が伝わっておらず、改めて注意をうながすことが必要になる場合もあるものです。
大切なことは、何度も繰りかえして、伝えて理解してもらうことが大切ですね。
以上、今回は、品質管理の重要ポイント「変更管理」の3ステップについて、ご紹介しました。
「変更管理」は、組織と組織のコミュニケーション手段です。
皆さんの品質管理の実務にうまく活用できるヒントがひとつでもあれば、うれしいかぎりです。
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