(2013年8月16日)品質管理研究所
私たちは、定期的に美容室や床屋さんに通い、髪をきってもらいます。
顧客管理を大切にしているお店では、お客さんの髪のカット情報をカルテに記載して蓄積し、顧客満足度を向上させています。

このような美容室における「カルテによる情報管理」は、
業種の異なる生産現場の設備管理にも活かすことができます。
(1) 理想の髪型の再現(理想の設備状態への再現)
美容室では、定期的にこられるお客さんの立場に立って、どんな髪型にしたいのか、お客さんの過去のカット履歴を把握し、前回同様のカットの希望があれば、いつでも再現できるように、詳細な髪型の情報を頭部の絵を交えて、カルテにさまざまな個人情報を残して、顧客満足度を上げる取り組みをされています。
工場で日夜稼動する生産設備もまた、髪が伸びていくように、時間がたてば、消耗していきます。これまで、いつ、どのような設備の故障やチョコ停などのイベントが発生して、メンテナンスをどのように実施してきたのか、設備個別の弱点や注意ポイントとともに、カルテ(設備管理記録)に大切な情報を残せているでしょうか。設備個別の専用カルテを作成して、生産性に影響する問題を未然に防ぐ取り組みに高めいくことが大切です。
(2)髪型情報と履歴の共有(生産設備の故障・メンテ情報と履歴の共有)
カルテがあれば、他の美容師さんと情報共有ができるため、専属の美容師さんがいないときでも、他の美容師さんでもお客さんが望む同じ髪型を再現しやすくなります。もちろん、毎回同じ髪型にするわけではありませんが、お客さんの希望にそえるように、組織として、対応できるようにしておく準備が大切です。
工場でも、特定のヒトに仕事が依存しすぎて、ベテランの「あのひとに聞けばわかる」というようなことがおこりがちです。組織として、うまく対応できないことがあっては、いざというとき困りますので、設備の問題点や履歴を記録として残し、共有することが大切です。
髪をきるときに異なる髪型にすることがあるように、生産する製品も、多種にわたり、同じでない場合も多いでしょう。変化がある場合であっても、これまで把握した情報を理解し、未然に問題を予測して、対応するとともに、今後のために、新たに情報を追加していくことが大切になります。

(3)髪質・量の違いの理解(個別設備の違いの理解)
ひとによって、髪の毛がはねやすい場合や毛髪のくせがある場合もあるでしょう。髪の質・髪の量も、ひとそれぞれに違いが見られます。お客さんひとりひとりのことなる個別特有の情報を収集しておくことが、きめ細やかなサービスを実施する上で役に立ちます。
生産設備でも、全く同じメーカーの全く同じ仕様の設備であっても、さまざまなばらつきや異なる製品の生産履歴によって、同じような生産結果が得られにくく、不良が発生しやすい場合もあるものです。調子の良い設備やくせのある設備や機嫌の悪い設備などさまざまな特徴があり、号機別の違いに驚かされることもあるでしょう。どの機械にどんな特徴があるのか、美容室にこられるお客さんひとりひとりを大切にするように、設備1台1台異なるものと認識して、個別に向き合うことが大切ですね。
このようなカルテによる顧客情報管理は、美容室や床屋さんに限らず、個人と向き合う病院や歯医者さん、ネイルサロンなどさまざまな分野で活かされ、お客さんである「人」を大切にしています。同様に、ものづくりでは、人の代わりにものをつくりだしてくれる「設備」と、いかに向き合っていけばよいか、あらためて考えるきっかけになれば、うれしい限りです。
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