2013年04月09日

品質検査の大前提!クロスチェックとは?

品質検査の大前提!クロスチェックとは?
(2013年4月9日)品質管理研究所

品質管理は、できるだけ定量的な数値を基準に管理することが求められます。
客観性のある基準と比較すれば、管理がしやすくなるのはいうまでもありません。

クロスチェックと品質検査


しかし、品質特性が、数値で明確になると、
もっともらしく見えてしまいますが、ほんとうにその数字を信じてよいでしょうか?


多くの品質特性は、さまざまな検査方法で測定されています。

あるAという企業での検査では合格ですが、自社で測定すると不合格になる。
そんな結果になったことはないでしょうか?


同じサンプルでも測定方法の違いによって、異なる結果になる可能性があります。

ものづくりにおいては、品質特性の合否判定基準を決定する前提として、
その測定方法自体を検証することが、検査の価値を高めることにつながります。
品質にこだわりと実績のある企業は、このような基礎検証をしっかりおこなっています。



今回は、品質検査の測定方法の差異を検証する『クロスチェック』について考えてみましょう。


(1)クロスチェック(Cross check)とは?
クロスチェックとは、同一のサンプルを複数の立場(方法)で検査・測定し、
どのような違いがあるかを検証することです。


製品の品質保証をするためには、品質検査の測定方法そのもの違い、
その違いによってもたらされる結果を検証する必要があります。

クロスチェックと品質検査

実務では、検査方法が異なることでうまれる測定結果の違いに加え、
同じ検査でも、実務上での作業のばらつきがもたらす測定結果の違いがうまれるものです。
そこで、同一のサンプルを用いて、材料メーカーさんと自社で品質特性をチェックします。


同一のサンプルを2回検査する「ダブルチェック」とは、意味が異なり、
同じことを二回繰り返すのではなく、
同じサンプルを異なるもの同士で比較検証することが、「クロスチェック」といえます。


(2)何を見る?クロスチェック
クロスチェックするためには、どのような試料を比較すればよいでしょうか。

生産された材料をそのままチェックすることは一般的におこなわれていますが、
いくつかの製造条件をふって、作成された試験サンプルを確認するのがおすすめです。

複数の製造条件によってつくられた製品の品質特性の違いが、
両者の測定方法によって、どのように検出されるかを検証していきます。

2つの検査方法で測定されたデータをグラフ化すると、
測定方法の違いによって、どのような相関性があるか、
また、測定方法自体の限界やどちらの測定方法がすぐれているか
その優位性も見えてくるものです。

クロスチェックと品質検査


(2)いつおこなう?クロスチェック
検査方法のクロスチェックは、製品の開発や評価に先立って、実施されます

測定されたデータをお互いに確認するためには、できるだけ検査方法を統一しますが、
異なる測定設備や慣習などで統一が難しい場合も多いものです。

そこで、正確に検査数値の比較ができるように、

材料メーカーさんと自社で本来測定結果が同じになるはずの
同一の試験サンプルで測定を行ない、その違いを比較して、
測定方法の妥当性を検証することからスタートします。


取引先さんと自社でお互いに検証して、その違いを明らかにすることは、
サンプルを通じたコミュニケーションを増やし、
よい人間関係をつくることにもつながります。

このようなクロスチェックは、品質問題が発生してから、
その重要性に気づく場合が多いので、問題が起きる前に検証することが欠かせません。

問題が発生してから、
その測定方法の違いの重要性に気づくことがないようにしたいものですね。


(3)どのように?クロスチェック
@生データを見る
クロスチェックでは、測定した「生データ」を見ることが大切です。

平均値や最大値や最小値などの数値では、見えない、
隠れた意味が測定された生のデータには潜んでいます。

クロスチェックと品質検査

わかりやすくなった数値の裏には、
失われた情報や意味があることを常に意識しなければなりません。


例えば、接着強度(連続的に引っ張った後の強度データ)の場合、
測定されたひとつの丸められた数値をみて、満足していないでしょうか。

客観的に見えてしまいがちな最大値(MAX)、平均値(AVERAGE)
ひとつの数値だけを見ていては、見えないものがあります。

平均値を取るのであれば、何点の平均か、どこの位置の平均をとるのか、
得られた接着強度の波形のデータのどの部分のデータを取得するかによって、
測定値は変化します。

検査者の数値のよみとり方でも、値が変化してしまいます。
さまざまな判定の仕方で、数値がもつ意味が変わります。

製品を購入する立場では、厳しく、
最小値(MIN)を基準としたデータを使用したほうが良い場合もあるでしょう。

どのような数値の読み取り方をしているかで、
その取引先の企業の品質に対する姿勢や考え方も見えてくるのではないでしょうか。


A現場を見る
実際にクロスチェックをおこなう時には、結果だけでなく、
自分の目でその測定プロセスを確認することが大切です。

実際に取引が開始される前に工場へ訪問して、確認したり、
工場監査時に、取引先の検査方法を実際に目の前で確認して、
現地で、現物を見ながら、現実を把握する方法がおすすめです。

品質検査のクロスチェックも、三現主義があてはまりますね。


B仕様書への測定方法の明記
取引先との仕様書には、測定方法の基礎となる客観的な品質規格が明記されていますか?

品質基準を明確にするための納入仕様書には、合否判定の基準ばかりでなく、
その特性の測定方法の根拠となる規格(JISやIECなどの番号)を明記することが大切です。

独自の測定方法である場合には、A社法などと固有名称をつけて、
具体的にその特有の測定方法を図示して、明記することがかかせません。
写真や図などで誰が見てもすぐわかるようにしておくことが大切ですね。

製造する側と購入する側でその測定方法の違いによって、
判定基準は同じでも、お互いの測定値に差がうまれれば、基準の意味が変化します

取引が開始される前にこれら測定方法の検証をおこない、
仕様書で明らかにしておくことは、基準を設定すると同様に大切なことです。


C測定前処理の重要性
測定方法の違いだけでなく、測定されるサンプルの前処理の方法など、
測定方法のさらに前段階の前処理方法の違いによっても、
測定結果に違いが現れる場合もあります。

実務では、仕様書には記載しきれないような何気ない
検査対象の前処理方法に、実は、企業ノウハウがふんだんにつまっているものです。


検査の基本手順があることはもちろん、
どのような前処理作業が実施されているかも確認してみましょう。

クロスチェックと品質検査


このようなクロスチェックのポイントに注意して、クロスチェックをおこなった結果、

測定方法に課題がある場合、従来の測定方法を改め、
より良い方法に測定手順を改めておこなうことが求められます。

また、2つの測定結果に、相関性がある測定結果が確認されれば、
基準そのものを見直して、求める品質要求に合致する基準を再設定することが必要になります。



今回は、製品の品質特性の基礎となる測定方法の妥当性を検証するための
品質検査のクロスチェックについてご紹介しました。


品質管理の実務では、クロスチェックの必要性が感じられているものの、
実際に取り組めていない場合が多いのではないでしょうか。

まずは、重要な品質特性項目にねらいをつけて、
取引先さんと意見交換してみてはいかがでしょうか


みなさんのお仕事のヒントとなれば、うれしく思います。


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posted by かおる at 23:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 品質検査
この記事へのコメント
かおるさん、こんばんは
今回のお話は、とても興味深いですね。
クロスチェックは、APQPの段階で実施すべきと思いますが、そう考えても宜しいですか?

そこから出た答えが、コントロールプランに反映されて、適切な検査プロセスに繋がると解釈しました。

でも、もう一つ言うなら、測定器の選択と校正ですかね?ややもすれば、忘れがちな項目と思いますが、測定の性能・精度など、検討項目は沢山あると考えます。

現場では計画実験法などで応用されていますので、私の部下にも折をみて教えて行きたいです。
Posted by 政之助 at 2013年04月10日 01:02
政之助さん

こんばんは、
品質管理研究所 かおるです。


多くの日本のものづくり工場では、ISO9001品質マネジメントシステムを取得している企業が多く、さらに、自動車メーカーさんとの取引に実績のある企業さんにおいては、より厳しい品質規格TS16949に準拠したものづくりに取り組んでいる場合が多いですね。

ヒトの命をあずかる自動車の部品などでは、より厳しい品質管理が求められます。

特にGMなどの外資系の自動車メーカーの個別要求事項では、TS16949の重要な品質つくりこみ計画として、APQP(Advanced Product Quality Planning)が要求されていると理解しています。

APQPは、生産に先んじた品質作りこみ計画ですので、今回、ご紹介したクロスチェックにおいては、製品特性をチェックするための測定の妥当性検証や工程設備の条件設定の妥当性検証ができるように、製品設計や工程設計といった、量産のはるか前の早い段階で実施しておきたいものですね。

サプライヤーさんとメーカー両方で相互の比較確認ができる基礎をつくってしまえば、その後の仕事も楽になります。

また、政之助さんがおっしゃるとおり、測定器自体の正しい選択と校正も測定データの信頼性を確保するために重要ですね。
測定機器の校正が適切に出来ていなければ、その数値に意味がなくなります。実際には、何を測定しているか数字に振り回されかねませんので、要注意のポイントですね。

さらに、今回、ご紹介しましたクロスチェックは、2社間での比較を前提とした考え方ですが、ひとつの企業で同じものを測定する場合であっても、測定ばらつきが生じる要因が潜んでいることも理解しておかなければなりませんよね。

測定精度やばらつきについては、その限界がどこにあるのか理解しようとすることが大切です。

測定者の違いによるばらつき、繰り返し測定したときの差異、測定値自身の経時的な変動など、さまざまな要因が潜んでいます。

たとえ、測定方法が同じだとしても、ばらつきが生じる要因があることから、このようなばらつきを統計的に確認するために

MSA (Measurement Systems Analysis:測定システム解析)のゲージR&Rという手法もあります。

製品や工程の検証にとどまらず、測定方法も重要な検証対象とみなせば、新たな発見や課題が見つかるかもしれませんね。

私自身残念ながら、実務では、ゲージR&Rを使用したことがありませんが、実務上では、測定による問題を未然に防ぐため、下記のような基準サンプルを用いた簡易チェックをおこなうことがおすすめです。

製品特性を測定する前に、校正された測手機器で基準のサンプルを測定して、その変動を時系列でグラフ化して、基準内にはいっていることを始業時に毎回確認します。

測定値に異常や傾向性がないことを観察していければ、測定時のばらつきや測定機器の異常に対して、点検で気づくことができるようになります。多くの企業の製造現場では、より実践的な方法として、この基準サンプルによる測定検証方法が実施されている場合が多いのではないでしょうか。

詳細な数値を扱う統計的な検証は、正確な分析結果でる反面、複雑で理解がしにくく、難しいイメージがつきまとうため、忙しい現場ではなかなか受け入れられにくいところがネックです。

このような統計的な品質管理手法は、現場でより受け入れられやすい方法で進化していくことが、求められているのかもしれませんね。
今ある多くの品質手法は、過去の品質の先輩達が積み上げてきた遺産ですが、これから、さらによりシンプルに使いやすい方法へと進化させていくことが必要なのではないでしょうか。


かおる
Posted by 品質管理研究所 かおる at 2013年04月10日 22:57
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