2013年01月14日

工場監査の隠れた確認ポイントとは?

工場監査の隠れた確認ポイントとは?
(2013年1月14日)品質管理研究所


新規の企業と取引をするためには、
工場へ訪問し、現場の品質状況を確認する工場監査を実施します。

工場監査員は、限られた時間の中で、工場の問題点や課題点を明らかにして、
品質の高い製品を安定して、生み出すための改善点を共有することが求められます。

工場監査では、工場の現場のさまざまな場所を確認します。
工場の製造現場、倉庫、検査室、休憩室、食堂、様々な場所が考えられるでしょう。

みなさんは、工場監査でどのようなポイントを確認されているでしょうか。


工場の品質管理状態が、現れやすい場所とは、いったい、どこでしょうか。

工場の中で、見られたくないものが、たくさん集まっている場所もあるでしょう。
工場監査で、取引先さんが確認されると想定していない場所とはいったいどこでしょうか。

工場監査のポイント

工場監査で、ぜひ、見ておきたい場所は、「廃棄場所(ゴミ置き場)」です。
廃棄場所は、製造上不要とされるものが、たくさん集まる場所です。

「廃棄場所」には、製造現場でその企業が抱える問題点がたくさん現れています。

一方、工場監査員が、ものづくりの現場を監査する際に、
QC工程表に基づいて、材料の受入から製造工程、梱包、出荷検査という
一連の流れを確認することは、監査の一般的な常識ともいえるでしょう。

つまり、これらの一連の製造工程は、取引先さんが事前に工場監査に対応して準備し、改善している場所であることを工場監査員はあらかじめ想像しておかなければなりません。

日頃から、5Sをはじめ、品質管理がいきとどいている企業もたくさんありますが、
監査の時には、いつも以上に準備や改善対応している場合が多いので、
工場監査員は、日頃のありのままの現場の姿を想像することが求められます。

工場監査では、監査時に現場に現れた状態よりも、
見えていない日頃の管理状態や管理体制を推察して、指導することが求められます。

そのため、工場監査側でも、あまり気がつきにくく、
監査の準備もしにくい『廃棄場所』を確認するのが、おすすめです。


工場監査の監査ポイント


今回は、工場監査で確認しておきたいポイントのひとつ
「廃棄場所(ごみ置き場)の見所」について、ご紹介します。



廃棄場所には、いったい、どのようなものが、集まってきているでしょうか。

_______________________

(1) 【品質】 不良品の廃棄           
(2) 【コスト】 加工後の端材(はざい)の廃棄  
(3) 【メンテ】 副資材・磨耗品の廃棄
_______________________




(1)【品質】 不良品の廃棄
製造工程中発生した不良品が廃棄場所に集まります。

どんな製品のどんな不良品がどれだけあつまってきているでしょうか。
品質問題がおきなければ、そもそも、捨てなくてもよいものばかりです。

できれば、不良品が廃棄場所にないことが、理想的な状態です。

品質不良の情報は、工程ごとに、どんな不良がどれだけ発生したかを
時間ごとに記録して管理することが求められます。

数値となって現れた不良情報は、問題の大きさを把握し、
改善対策の効果を確認するために役に立ちます。
そして、その不良がどのような不良モードであるか、現物できちんと確認して
その場で原因をきちんと追究して、対策を施すことがかかせません。

廃棄場所に不良品がたまり、原因究明がなされずに放置されれば、
時間がたてば、たつほど、不良品の改善も滞り、
不良の再発件数は、膨れ上がり、被害が拡大することになります。

そのため、問題が確認されたときに、
製品についたキズの位置や異物の種類などを確認して、
どこの場所で、どのようなメカニズムで不良が発生したかを突き止め、
同じ不良が大量に発生させないようにしなければなりません。


捨ててある不良品の不良部分には、不良を識別するマークがついているでしょうか。
通常、良品への不良品の混入防止のために、識別マークとして、
問題箇所を特定するタグをつけたり、ラベルをつけたり、赤い丸印を描いて、管理します。

不良品の取り扱いミスで、良品へ混入するといった
初歩的なミスに対する問題意識の少なさも垣間見られるでしょう。

工場監査員は、問題となる不良品の廃棄の痕跡から、どのような管理体制で、
現場で発生した不良品の改善対応がなされているかを推測することが求められます。

不良が発生している事実への対処はもちろんのこと、
そのような不良品を改善する仕組みを明らかにして、
仕組みそのものに改善のメスをいれる必要性がないかを確認しなければなりません。



(2)【コスト】 加工後の端材(はざい)の廃棄
製品加工中に発生する端材が、廃棄場所に集まります。

加工後に製品にならない端材が多ければ、余計なコストが発生します。
材料コストに影響する材料の耳しろを少しでも削減し、
収率を改善する工夫が施されているでしょうか。

廃棄場所で、廃棄物別に廃棄区分をつくり、識別管理されているかを見れば、
この先どのような処理がなされるか容易に想像がつくことでしょう。


ただ単に捨てるという発想から、材料の特徴に応じて、どれだけ有効活用できるか、
考えること、はじめから、廃棄ロスが少なくなるような材料設計にする工夫も求められます。


お菓子づくりのように、練られた生地からどれだけうまく型を抜くか工夫や、
再度、生地をまとめて、型でぬくような努力が、多くのものづくり企業で実践されています。

歩留りと生産ロス

特に素材や材料関連の製品を扱う企業においては、
自社では、使用できないと思い込んでいるものでも、
他の会社にしてみれば、使用したいと思うものや
異業種の企業で興味をもたれる材料がある場合もあるものです。

わずかな製品のロスは、原価を押し上げ、企業の収益性を低下させます。
製造業の多くの企業の売上高営業率は、わずか数%というレベルで、
切磋琢磨している中で、このようなわずか材料ロスも見過ごすわけにはいかないでしょう。

廃棄場所にある端材をみれば、その企業のコスト意識が見えてくるはずです。
コストに対する改善の意識の差は、もちろん、さまざまな改善意識にもあらわれるでしょう。



(3)【メンテ】 副資材・磨耗品の廃棄
作業者が使用する手袋や生産梱包に使用するテープなど、
生産工程中で使用しおわった副資材が、廃棄物として捨てられます。

どのようなものが、どんな状態で、どれだけ廃棄されているでしょうか。
どのような作業やアクシデントが現場で生じているでしょうか。
工場監査の限られた時間では見えない現場の状況が廃棄物から見えてきます。


また、生産工程で生産回数をかさねるごとに磨耗して、
交換する必要が生じる磨耗品も廃棄されている場合があるでしょう。

製造工程中の変化点である摩耗品の交換箇所を理解し、
製造工程中でどのような日常点検と交換基準が設定されているかを確認することも、
工場監査の大切なポイントになります。


製品品質を安定させるために日々のメンテナンスと交換など
設備の維持管理を行なう姿が、廃棄物の置き場から見えてくるものです。



以上、今回は、工場監査のチェックポイントとなる廃棄場所の見所をご紹介しました。

企業の製造現場を訪問し、現場にふれて、さまざまな視点から眺めれば、
企業の品質管理状況と改善点が、自然と見えてくるものです。

みなさまが、工場監査を実施し、品質改善を進める際のヒントになれば、うれしい限りです。


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posted by かおる at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 工場監査
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