2012年10月29日

工場監査先の選定方法とは?

数珠つなぎの監査が必要?工場監査!
(2012年10月28日)品質管理研究所


高い品質の製品をつくるために、自社の品質つくりこみにとどまらず、

使用される部材の製造メーカーさんの工場を監査して、
自社の品質要求基準を満たしているかを確認することが求められます。


工場監査では、部材メーカーさんの生産工場に訪問して、製造現場を確認しますが、
工場監査での対象先は、どのように絞り込んでいるでしょうか。


工場監査と部材品質


(1)品質を確保するための監査対象の選定とは?
下記のように、ひとつの部材が出来上がるまでに、
複数の加工先を経由する場合がほとんどではないでしょうか。

■ 部材A(メーカーA)/部材B(メーカーB)→加工先C→加工先D→自社→お客様

部材が自社に納入されるまで、どのような旅をしてきているでしょうか。
その流れを追いかけて、どこの工場を監査する必要があるかを明確にしましょう。

安定した供給をはかり、価格交渉力を高めるため、
複数の部品購買先が設定されている場合もあるでしょう。

部品の製造先がかわれば、品質もかわるものです。

製品の核となる部品であれば、
部品の一部が最終製品の品質にどのような影響があるか、
その品質上のリスクを把握した上で、どの段階までさかのぼって、
工場監査を実施するかを決める必要があります。

不必要に工場監査先を広げれば、費用だけがかさみ、
コストを意識した品質向上になりません。

すべての取引先をくまなく監査するという発想よりも、
重点指向で監査先を選定するという発想が必要になります。

・品質問題がおきやすい部材、
・品質問題がおきると大きな影響のある部材、
・品質問題がヒトの人命にかかわるような部材、
・外観上、品質問題が判別できず、工程での作りこみが要求される部品、
・品質管理体制が十分でなく、品質改善が必要な組織


など、事前の工場視察や過去の品質情報から判断することが求められます。

監査はあくまで品質確保のひとつの手段であり、
監査をすることが目的化しないようにすることも大切ですね。


(2)数珠つなぎの監査とは?
一般的には、監査先の対象は、自社の直接の納入元である
加工先D社を工場監査することになるでしょう。

■ 部材A(メーカーA)/部材B(メーカーB)→加工先C→加工先D(監査対象)→自社→お客様

部材メーカーA・B社や加工先C社は、必要に応じて、自社で工場監査をすることも必要ですが、
その場合は、加工先D社と一緒に監査を実施することになります。

監査対象が、A社、B社、C社であっても、監査への指摘は、
監督責任をもつ加工先D社に対する指摘改善を促すという形をとることになります。

あくまで、直接の取引関係にある加工先D社が、
責任をもって管理監督する責任をもっているということをチェックし、
問題を再認識してもらうことが、品質の高い製品を継続的にうみだすためには必要です。

では、もし、工場監査で、加工先D社だけを工場監査して、
その他A、B、C社を自社で監査しない場合、どのようにすれば、品質を確保できるでしょうか。


管理監督責任のあるD社が、これらのA、B、C社の工場をしっかりと
監視できているかどうかをチェックし、D社が工場を監査していることが必要になりますね。

加工先D社が、D社に納入される部材の加工先C社や部材メーカーA・Bに対して、
下記のことができているかを、下記の各種のエビデンス(証拠)から確認するのがおすすめです。

・初回の工場監査を実施した記録と課題の確認
・部材や加工品に対する品質確認試験の結果とその妥当性検証
・設計審査(DR)の進捗状況と部材や加工に対する課題点の把握
・生産工程中での歩留りや不良内訳(類似製品や量産試作製品)と対策状況
・製品をつくる上で必要な仕様書や契約の取り交わし記録
・定期的な品質会議の実施記録や計画
・工程パトロールや定期品質監査の記録や計画


品質管理上必要となる試験と結果、生産上の課題、監査の記録や計画・進捗、
品質を維持するための契約、実際に取引が始まったあとの品質管理体制の構築など、

加工先D社が、取引先に対して工場監査を実施し、
数珠つなぎのように情報を共有し、問題を改善できているかを確認することが大切です。

品質問題が発生してから、問題を改善するのではなく、
問題が発生する前に問題点を解決し、安定した品質体制を築くことがポイントですね。


(3)隠れた存在こそ明らかに!
さきほどのサプライチェーンの中で隠れた存在が、後から明らかになる場合もあるものです。

■ 部材A(メーカーA)/部材B(メーカーB)→加工先C→加工先D→自社→お客様

このとき、加工先Dから自社に直接納入されている場合だけでなく、
いったん外部の委託倉庫に製品が保管されて出荷されている場合があります。

■ 部材A(メーカーA)/部材B(メーカーB)→加工先C→加工先D→外部倉庫E→自社→お客様

外部倉庫E社が、D社の出荷指示に応じて、
都度、部品が出荷されている場合もありますので、
部材がどのようにして保管・出荷されているか確認することも必要です。

部材の保管管理条件で大きな品質低下を及ぼすような場合、
この外部委託倉庫を工場監査の対象として、きちんと現場確認しておくことも大切なことです。


高い品質で作られた部材が、最後の保管や輸送の取り扱いによって、
品質問題になることもあるので、ぜひ注意していただきたいポイントのひとつです。


問題が発生した後に迅速に問題に対処することも必要ですが、

工場監査を通じて、問題が発生する前に、問題の原因となりえる
『見えないものを見ようとする意識』を持って、現状を把握することがかかせません。

隠れたものは、意識的に見ようとしなければ、なかなか把握できないものです。
隠れたものには、目に見える問題の根本的な原因が潜んでいます。


工場監査では、目に見えないポイントをひとつでも見つけて改善できれば、
それだけでも、大きな価値があるのではないでしょうか。


以上、今回は、工場監査対象の絞り方とポイントについてご紹介しました。
工場監査時の心構えなど、下記の関連記事も参考になれば、幸いです。


【関連記事】
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posted by かおる at 07:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 工場監査
この記事へのコメント
かおるさん、こんばんは
工場監査のお話でとても面白かったです。

TS16949基準の当社の概念で言うと、サプライヤーの全てが監査対象と考えています。
ですが、そうなると膨大な監査が必要で、現実的には困難な状況は否めません。

かおるさんは、こんな状態を如何お考えですか?
また、かおるさんが品質担当ならどんな対応をされますか?

本件に関しては、私たちも重要視しており、何とか定期的に監査出来る様に検討中です。

理想と現実のギャップをどうやって埋めるか!
それも、品質管理の責務でしょうね

かおるさんの、ご意見を楽しみにしています。

Posted by 政之助 at 2012年10月31日 00:24
政之助さん

鋭いご質問ありがとうございます。
品質管理研究所 かおるです。

TS16949は、ISO9001品質マネジメントシステムをベースとした
自動車メーカーさんとの取引で要求される、厳しい品質規格ですね。

サプライヤーさんのすべてを監査対象として、
定期的に監査をしたいとおもったことがある
品質部員の方は、多いかもしれませんね。

ただし、政之助さんが、ご懸念されているように、
定期的な監査をすべての取引部材のサプライヤーさんに実施するとなると、
世界中に散らばる膨大な取引先の監査が必要となり、
現実的には、やはり難しいものです。

ひとつの取引先で様々な部品の組み立てや加工を行う場合は、
さらにその源流の工場をたどることになれば、ますます、気が遠くなりそうです。

ある大手企業では、トップダウンで、品質を向上させるために、
対象としたすべての企業に対して、1年間かけて、定期的な監査をおこなったそうです。
その結果は、前年と比べて、品質向上につながったか、はなはだ疑問だった・・・、
というお話を伺ったことがあります。

工場監査のやり方や監査内容によっても変わるかもしれませんが、

すべてを一律に実施するというのは、
めりはりがなく、あまりおすすめできる方法ではありませんね。

すべての工場をもれなく監査する考え方も大切ですが、
費用対効果、効率性を加味したうえで、品質を向上するひとつの手段として、
工場監査を実施することが求められるでしょう。


とはいえ、すべての工場ににらみをきかして、
未然に問題を防止することは、大切なことです。

現実にできないことではありません。

工場監査は、現地に訪問して、製造現場を確認しますが、
だれが監査するかという視点をもりこむことがヒントになります。

自社ですべて監査したいが、確認が難しいというジレンマは、
すべての工場に自分でいかなければならないという前提に基づくものです。

工場監査は、自社ですべてをチェックして、監査することを考えてしまいがちですが、
サプライヤーさん自身で、その納入部材に対する内部監査を行うこともできます。

ただし、自社で監査したい内容をもりこんだ監査フォームをサプライヤーさんに配り、
内部監査をしてもらい、関連する取引先さんにも、
同様の監査を実施してもうら方法があります。

これは、もちろん、品質問題が発生していない優秀なサプライヤーさんに対してうまく適用できる方法です。

あめとむちをうまく使い分けて、品質管理していくことが必要です。

日頃から自己管理ができて、品質問題を発生させていないサプライヤーさんに対しては、
監査で見張るのではなく、むしろ、表彰などで称える『あめ』が必要です。

品質問題の少ない優秀なサプライヤーさんの監査は、自主監査の報告確認にとどめ、
品質問題が多いサプライヤーさんに対しては、愛の『むち』をいれるために
工場へ訪問して、現場監査をするという、めりはりをつけた対応がおすすめです。

問題の発生していない優秀なサプライヤーさんでは、自主的に改善を促し、
継続的に自己改善を図るような風土や仕組みができています。
問題が発生したときの対応も迅速です。

サプライヤーさんから納入される部材の納入品質評価結果、QCDの対応、
長年の取引関係で構築された信頼関係をベースに

サプライヤーさんの自己内部監査の結果や特定部材での生産品質状況の報告などを
提出いただき、その内容を精査して、工場監査とすることもできます。

もし、その報告に対して、問題や課題がある場合には、
その工場の現場に行き、確認することをあらかじめサプライヤーさんに伝えておき、
書類上の監査の重要性を高めることも大切です。

もちろん、現場に足を運び、顔をあわせてコミュニケーションを図ることは
ものづくりの基本であることはいうまでもありませんが、

もし、限られた工場数しか、工場を訪問できない制約条件があるのならば、
その条件の中で、いかに製品の品質を上げられるかを思案することが必要になります。

現場にいく、いかないにかかわらず、
工場監査をひとつのコミュニケーション手段と捉えて、
品質向上のスパイスとして、活用すれば、
よい工場監査プログラムができるのではないでしょうか。

何かひとつでも、政之助さんのヒントになることがあればうれしい限りです。


かおる


Posted by 品質管理研究所 かおる at 2012年10月31日 19:26
かおるさん

的確なご意見、ありがとうございます。
全く、かおるさんのお考えと同意見です。

各サプライヤーさんに監査を任せる事が、サプライヤーさんの実力を向上させる上に於いても、非常に有益と考えます。

しかし、そこには共通の基準と考え方のコンセンサスが重要な位置を占めると思います。

「あめ」を与える前に、「何故、あめが貰えるのか?」をみんなで決めておこうと、考えています。

如何でしょうか?
Posted by 政之助 at 2012年11月01日 00:03
政之助さん

こんにちは、
品質管理研究所 かおるです。


教えることは、学ぶことです。

監査をあまりしたことがないサプライヤーさん
にとっても良い学習の機会になります。

自分ですべてをやることは簡単ですが、
他人にまかせることをほど難しいものはありません。

政之助さんのお考えの通り、

あめをなぜもらえるのか、
どのような基準であたえるのか、
どのような方法であたえるのか、

基礎となる考えと基準がまさに必要ですね。

あめをあたえすぎると、
きづかぬうちに虫歯にいたることもあります。

バランス感覚が重要ですね。


品質管理研究所 かおる
Posted by 品質管理研究所 かおる at 2012年11月01日 08:00
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