品質管理とは、何でしょうか?
品質管理が不十分の時に起こるのが、
工程内不良や市場クレームなどの問題です。
このような問題を未然に防ぐために必要なもの、それが品質管理です。
品質管理とは、問題が起きることを事前に『予測する』ことです。
品質向上のためには、問題が起きた後に対処する後手の発想から、
いかに脱却して、先手先手で改善をはかることが求められるでしょう。
私たちは、日頃の生活の中で、予測に基づく行動をとっています。

天気予報を考えてみましょう。
みなさんは、日頃から、ニュースなどのお天気情報をみたり、空の様子を確認し、
雨を予測し、傘をもっていくかどうかを判断しているのではないでしょうか。
天気予報は、雲の動き、気圧の高低、気圧配置、過去の天候など、
さまざまな情報を加味して、天気を予測しているでしょう。
また、近くの山にかかる雲の様子をうかがい、
雨の気配を感じ取り、雨を予測している方もいるのではないでしょうか。
ものづくりにおいても、天気を予想するように、
予測に基づく行動は、不良を未然に防ぎ、品質向上につながる大切な考え方です。
傘をもっていれば、雨にぬれずにすむように、
製品の品質問題に未然に対処するために、生きたさまざまな情報から予測し、
傘をもっていくような判断と対策が求められるのではないでしょうか。
予測とは、変化に気づき、感じることです。
製造現場でどんな情報をもとに気づき、どのような視点で予測すればよいのか、
以下で、品質管理の上で大切な5つの予測について考えていきましょう。
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<予測に基づく品質管理>
@ 経験から問題を予測
A 試作品から最終製品の問題を予測
B 少量生産から大量生産の問題を予測
C 製造プロセスから製品の問題を予測
D 傾向から問題を予測
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@ 経験から問題を予測
過去の失敗経験は、ものづくりにかぎらず、成功への近道です。
過去の失敗経験をもとに、同様の失敗を再現しないようにチェックすることが大切です。
個人の失敗経験をいかに組織としての失敗経験・ノウハウにできるかがポイントです。
経験からの予測を成功させる企業では、
過去トラブルリスト(過去トラ)、過去不良リストを保有しており、
類似製品を開発した際には、問題が発生しないように必ず事前にチェックしているものです。
また、設計ガイドラインとして、具体的な品質特性と品質基準に
まで、数値で落とし込み、比較検証することができればさらによいでしょう。
例えば、A部の材質は、樹脂〇〇指定、B部の寸法は最低〇〇mm以上など、
ベテラン技術者さんが体に染み付いて理解しているノウハウともいえるでしょう。
A 試作品から最終製品の問題を予測
試作品をつくり、最終製品に近い現物で、設計と製造時の問題を確認します。製造上問題が発生しやすいような無理な製品設計になっていないか、
図面だけでなく、実際に試作の製品を手にとって見ると様々な懸念点が浮かぶものです。
社内の品質、生産、CS、技術など経験豊富な各部門の有識者3〜4人が集まれば、
これほで、力強いことはありません。
わいわいがやがや自由に問題点を出し合う時間は非常におもしろく、
ものづくりの大切な時間となります。
これから、知識を身につけてほしい若手の品質・技術者も一緒に参加することで
製品に対する考え方や設計思想を学び取るよい機会にもなるでしょう。
製品の品質問題が、出荷した後にあきらかになれば、
そのお客様に与える影響や改善するための労力は、計り知れません。
問題を見つける段階が早いか、遅いかで、
楽しい仕事になるか、大変な仕事になるか大きくかわるものです。
B 少量生産から大量生産の問題を予測
ものづくりでは、問題点が隠れている場合、
ある程度生産してみなければ、問題を把握できないこともあるでしょう。

量産前に、少量、中量評価など、段階的に生産数量を増やして、
本格量産前までに問題を洗い出して、改善することが求められます。
大量生産でたくさんの不良品が作られる前に、少量、生産した状態から、
製造上の問題点や不良発生ポイントを修正し、問題点を事前に解決することが大切です。
一般には、製品の設計だけが、社内審査の注目を集めやすいものですが、
製品を生み出す製造工程(製造プロセス)の審査も非常に大切です。
製造品質を確保するための生産工程の妥当性、作業手順、生産加工治具の準備、
生産技術管理など品質を確保するために欠かせないポイントもお忘れなく。
C 製造プロセスから製品の問題を予測
出来上がった不良品から製造工程の問題点をさぐるのではなく、
製造工程で問題がおきないような製品設計にする逆の考え方も大切です。
魅力ある製品をつくるために製品の設計をつくりこむあまり、
製造上ムリを強いるような設計の製品であれば
生産歩留りも上がらず、製造工程泣かせの製品でコストが増大しかねません。
設計と生産側で隔たりがあり、設計側で生産側の実態が情報共有出来ていなければ
このような問題が発生することになります。
いざ生産という後の段階で問題が明らかになれば、
変更に多大な労力がかかることになるため、事前のすり合わせを行い、
製造上懸念される問題点を設計に反映して、改善を施しておくことが大切です。
D傾向から問題を予測
製造工程中の製造ばらつきは、X-R管理図などを活用して、
管理すべき製品や機械の特性の時間的変化を把握していくことで予測が可能になります。
特性値の傾向(トレンド)からどのような変化があるかをウォッチして、
常に適正な管理基準範囲におさまるように調整することが求められます。
ある社内の基準を越えたときにどのような対策をとるか、
具体的な対応マニュアルであるアクションガイドラインが明確になっているでしょうか。
抜取検査でAという寸法の社内管理基準がはずれたときに、
Bの設定を〇〇する、磨耗品△を交換するなど、具体的な対処方法があるはずです。
社内のベテランは、知っていても、新人さんが知らない情報はありませんか。
また、作業者によって、問題への具体的な対処方法が違うことはありませんか。
工場やラインのシフトによって、やり方が違うことがないように注意しなければなりませんね。
今回は、予測に基づき、先回りして改善を実施し、
高い品質を追求する考え方をご紹介しました。
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