2012年10月01日

大企業病とは?

大企業病と経営品質とは? - 品質管理研究所 -

品質は、製品・サービスの品質に限定される狭い意味の言葉ではありません。

組織とひと


企業を経営する立場においては、
経営の品質も、大きな課題のひとつといえるでしょう。

ヒトと同じように、企業もまた生き物です。

企業にも寿命があり、
ひとと同じように病があります。

今回は、大きな企業が陥りやすい『大企業病』について考えてみましょう。

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<大企業病とは何か?>

(1)大企業病とは?
(2)『大企業病』ということばの生い立ち
(3)大企業病の症状と処方箋とは?
  @経営者と現場社員との心の距離が遠い
  A部門間の見えない壁とセクショナリズム
  B社内の意思決定、承認がおそく、スピード感がない。
  Cリスク回避優先の保守的な意識の蔓延
  D危機意識の欠如
  E書類をつくることを仕事と勘違い
  F会議をすることを仕事と勘違い
  Gお客さんよりも、社内事情・根回しに注力

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(1)大企業病とは?

大企業病とは、業績が伸びて、企業組織が大きくなるにつれて、官僚的な縦割り組織となって、社内の意思疎通が滞りやすく、経営上の意思決定や行動が遅くなり、企業の経営が、非効率で閉鎖的な状態に陥る結果、業績も低迷するような組織の病のことです。

大企業病

組織が大きくなることで、社員は、挑戦よりも安定をもとめる志向が強まり、社員ひとりひとりの、経営に及ぼす影響力も小さくなり、責任感も薄れていきます。仕事をそつなく、波風立てずに行う事なかれ主義の蔓延。組織が、幾重にも階層化して、悪い情報に対するフィルタがかかり、情報の流れが滞り、承認の意思決定も迅速にできなくなります。

その結果、厳しい市場のめまぐるしい環境変化にも適切に対応できなくなり、気がついた時には、経営状態が悪化し、社内のリストラや社員の意識改革が、必要な状況に追い込まれるのです。


(2)『大企業病』ということばの生い立ち

オムロン(当時、立石電機)の会長、立石一真さんは、昭和58年に創業50周年の年頭に、

「大企業の仲間入りをした立石電機は、大企業病にかかっている。大死一番、意識革命に徹し、創業の精神に還り、徹底的分権により中小企業的な組織と簡潔な制度で活性化を図ることこそ、五十周年にふさわしい大仕事である。全員でこれに挑戦してほしい」と指示したそうです。

出典 オムロンHP 第6話 大企業病の克服、第三の創業へ

このことが、新聞や雑誌などで紹介されて、
「大企業病」ということばが、日本で広く有名になったようです。


(3)大企業病の症状と処方箋とは?

@経営者と現場社員との心の距離が遠い
大企業では、各地に工場や事業所があり、経営者を会社で見かけることや、直接話しをする機会のない企業のほうが多いのかもしれません。入社して以来、経営者を見たことがないという社員さんもいるのではないでしょうか。

経営者

このような物理的な距離の遠さも問題ですが、それ以上に、経営者と現場の心理的な距離を縮める努力がなされているかが重要です。経営者と現場社員との心理的な距離がはなれ、意思疎通が十分にできていないことは、大きな問題といえます。

経営者が、お客さん以上の扱いとなっていないでしょうか。あかの他人のような遠い存在になっている企業は、要注意です。会社のトップである経営者が、何を考え、どのような企業にしたいのか、その想いと考えを、社員と共有して、日々行動していくことが求められます。

現在、多くの大企業の企業経営者は、創業力をもち、事業を切り開いてきた創業経営者ではなく、それを引き継いだ2代目経営者など、いわゆるサラリーマン経営者です。初代創業経営者の起業の想いや理念を引き継ぎ、現在の社員に夢やメッセージを伝えられているでしょうか。

経営者からのメッセージを伝える方法は、社内朝礼で考えを伝える、社長メールでつたえる、現場を周り、社員の声をかけて直接はなす、ランチ会ではなす、自らが率先するなど様々ですが、経営者が、何をつたえるかという内容にもまして、伝えようとする意欲や熱意が、社員の意識へ伝播するのではないでしょうか。

大企業病の病は、組織の病と見られがちですが、その組織の長である経営者の意識が何より、重要ではないでしょうか。


A部門間の見えない壁とセクショナリズム
となりの島(グループ)が、どんな仕事をしているか知らない、なんていうことはありませんか。

大企業は、部門の責任と権限を分け、分業型の組織構造となっています。分業することで、組織の部門ごとの専門性が上がり、専門業務の効率性が高まります。品質面では、品質部門と技術・生産部門の組織分割で、品質権限を独立させて、品質を優先するメリットもうまれるでしょう。

経営品質と組織のつながり


その反面、部門間の見えない壁が、業務のスピードを低下させることがあります。部門組織の業績評価では、組織の上位目標からブレークダウンされた部門としての目標設定と課題に対して、クリアすることで評価されます。

しかし、部門の目標ばかりに着目すると、自己業務に専念してしまうセクショナリズムが横行します。「うちのしごとではない」「うちの責任ではない」「マンパワーが足りない。」「仕方がない。」と言い訳ばかりが聞こえてきませんか。

その結果、全体最適化の視点から組織全体の成果がうまれにくくなります。部門の利害だけを優先する個別最適化が図られることで、本来目指すべき全体の目標が達成できなくならないように注意しなければなりません。

本来、組織としての目標は、お客さまに向いており、部門間の融通もきかず、柔軟に対応できないことは、大きな問題です。実務では、部門間で協力して問題解決を図る場面がほとんどです

各部門をまたがる部門間共通の課題に対する責任感が欠如しているとき、ひとたび、問題が発生すると、社内での犯人探しがはじまります。当事者という意識が欠けた対応をとるばかりか、責任を問う逆の立場に早変わりすることもあるでしょう。

問い合わせても、「私の部門のしごとではない」「関係ない」など、仕事のたらいまわしがおこり、責任の所在が不明確になり、無責任さが目立つことも特徴的な大企業病の症状といえるのではないでしょうか。

このような無責任な組織の壁とは、どのように取り除くことができるでしょうか。

■ いすゞ自動車の事例
いすゞ自動車では、大企業病に対して、「100人委員会」という自由に誰もが参加できる職制をこえた組織で、組織の風土改革が実行され、成果を上げられています。

閉塞感ただよう企業環境を打破しようと改革の必要性に迫られている方のみならず、大変参考になる実務内容が紹介されておりますので、ぜひ、下記をご覧ください。

「いすゞ自動車 100人委員会」一社一風プロジェクト・ジャーナリスト 徳丸壮也 

改革の基本方針は、@部分展開でやる、Aやりたい人が改革をやる、B社員が共有している価値観を変える、C改革推進室をおかないという社員自らが改革の火種となる斬新的な4つの内容など、見所満載です。

※出典 ひとと情報の研究所(元いすゞ自動車 改革実践者 北村三郎さん)

社員の意識改革に加え、組織としての大きな壁も、個人の小さなつながりで、以外と簡単に壊すことができるものです。『同じ釜の飯を食べた仲間』ではありませんが、社内で仕事とは関係ない共通点を持った仲間も大切です。スポーツのつながり、同期とのつながり、お祭りで協力したメンバーなど、様々な共通点が、しごとの壁を壊すきっかけになるものです。

組織を活性化させるためには、部門間での人事交流を図り、品質保証部から技術部へ、技術部から品質保証部へトレードするような公式の人事施策も大切ですが、このような仕事外の取り組みを支援することも、大切なことではないでしょうか


B社内の意思決定、承認がおそく、スピード感がない。
経営に影響のある重要な業務や緊急性のある業務に対して、社内手続きばかり増えて、意思決定が遅く、さらに問題が先送りされていることはありませんか。重要性や緊急性のある優先度のある業務の仕分けが、他の意思決定が必要な通常案件と区別されず、承認がおくれることで、事業に対するスピード感が欠如している場合もあるのではないでしょうか。

経営者と意思決定

ひとつの決裁書にいくつの印がつかれているでしょうか。はんこの数が増えても、よい製品・サービスがうまれるわけではありません。日本企業では、はんこが、決裁承認のシンボルですが、スタンプラリーのようになれば、スピード感がないのは当然です。余計な時間がかかれば、お客さんへの対応も遅れ、変化のスピードについていけなくなります。

各部門の承認プロセスで、検討を重ね、よい商品を練り上げていければよいのですが、問題が起きた時の責任をシェアするというネガティブな発想で、はんこの数が増えているだけであれば、価値がありません。はんこの数によって、責任をうすめている気になれるのかもしれませんが、決裁に対する、承認者が増えることで、チェックする立場の責任感も薄れ、きっとだれかが見てくれているはずという、無責任感も増えるものです。

そうなれば、課題や問題を事前に見つけることも難しくなり、決裁自信の価値も低下し、いい商品やサービスを生み出すことには、結びつかないでしょう。

また、意思決定の遅さの要因には、意思決定を誰が行うかという視点もかかせないポイントです。

日々、発生する現場の問題に対して、現場を十分理解できていないメンバーが会議室で結論をだすのを待ち、指示待ちするのではなく、問題解決に対する責任と権限を各現場の実務責任者に委譲し、現場で迅速に判断して、対応してもらうことが求められるでしょう

映画で大ヒットした『踊る大捜査線』の青島刑事が発した『事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ』という言葉に共感したことはないでしょうか。多くの方が同様の場面に一度はでくわしたことがあるのではないでしょうか。

日本の統治機構として、検討されている道州制を始め、様々な組織で、このような責任と権限の委譲を通じて、活力ある組織にしていくことが求められています。企業業務の中では、どこまでの権限を現場に任せるか、経営者の考え次第といえるのではないでしょうか。


Cリスク回避優先の保守的な意識の蔓延
問題があれば、いかにクリアするかではなく、いかに避けるかばかり考えてはいないでしょうか。
組織の意思決定が、リスクが低くて、より安全なほうばかりを選択し、仕事への挑戦やハングリー精神をもった行動に対して、避ける傾向が顕著になれば、新しい価値ある仕事を生み出し、成長することは難しくなります。

短期的な目先のリスクを避ければ、いずれ、チャレンジしないことによる長期的なリスクとなるものです。

挑戦

大企業病では、なにごとも、平穏無事にすむように流れにみをまかせる『事なかれ主義』が蔓延します。ヒトの顔色をうかがい、多数決できまるような製品では、斬新なアイディアや製品はうまれてこないのも当然ではないでしょうか。社内での問題に対しては、正面からむきあわず、できるだけ波風を立てないことが優先される結果、問題は目先の処置でとりつくろわれ、ひとたび問題が大きくなったときには、時すでに遅し・・・、といった具合です。

外部の環境が変化しているもかかわらず、過去の仕事のやり方を踏襲して、変化できない保守的な意識は、リスクを回避しているのではなく、将来へリスクを転嫁していることを認識しなければなりません。

自社の常識は、他社の非常識です。自分がおもう自己は、他人がおもう自己とは、異なるものです。経営が健全なときこそ、外部から招いている社外取締役などの有識者の声や現場経験の豊富な第三者の声、お客さんの声にも真摯に耳を傾けて、客観的に己の企業を把握することも重要ではないでしょうか。


D危機意識の欠如
大企業であれば、福利厚生もよく、安定している場合も多いでしょう。仕事をそつなくこなせば、退職するまで、給与や職が安定しているといった発想をもちやすくなり、ハングリー精神に欠ける社員も増えることにつながります。
何千人、何万人という大きな組織の単なる一社員として、経営に影響のない歯車の一部と考えてしまう社員が増えることは、危険な兆候といえるでしょう。企業の経営が傾きかけても、まさに他人事のように・・・。

危機意識の低下

企業ではたらく社員の当事者意識の低下こそが、企業組織力の低下といえます。創業当時の経営者や社員のように、企業とともに成長したメンバーのような高い成長意識やモチベーションを同様に維持することは難しいかもしれませんが、責任と権限を現場に委譲し、危機意識を自ら持つ考動する組織にしていくことが求められます。


E書類をつくることを仕事と勘違い
 企業が大きくなると、間接部門や本社組織が必要以上に肥大化することがあります。付加価値を生まない書類作りそのものを仕事と勘違いしている社員が多くなっていないでしょうか。
書類をつくること自体が目的化すると、組織としての業務効率を低下させ、余計な経費ばかりをうみだします。作成した書類によってどのような意思決定がなされ、行動に移されるかを想定しなければ、意味のない書類やコピーが、社内で蔓延してしまうでしょう。

肥大化した組織では、ヒトの数だけ、余計なしごとをつくリ出す必要性が生じ、付加価値を生まない社内業務が生み出される結果、その業務に現場の実務担当者までも巻き込まれ、無駄な時間が費やされ、さらに必要な実務が疎かになる悪循環がうまれてしまいます。

さらに、資料の文字の大きさやフォント、色などの体裁などの表面的なことばかりを気にかけ、その中身の問題や課題に対して、どのように解決すべきか、頭を使って考えることが疎かになってしまうような、本質からずれたことも起こりかねませんので注意が必要です。


F会議をすることを仕事と勘違い

大企業病と会議の非効率性

会議は、目的と議題を明らかにして、限られた時間で意思決定を行う大切な場ですが、形式的に実施する結論の出ない会議が多くなっていないでしょうか。

会議は、単なる情報共有の場ではなく、意思決定の場です。何をして、何をやめるか、次のアクションを明確にすることが求められます。組織上のルールで実施する必要性のある設計審査(DR)などの会議では、官僚的組織の形式的な会議ではなく、本質的な議論ができる場にすることが求められます。さらに、会議のための会議がひらかれている場合は、もはや、大企業病の末期的症状といえます。

会議をすることは、仕事の目的ではなく、手段であり、その会議自体で達成するものは、いったいなんでしょうか。会議室に、会議の効率化を図るための独自の箇条書きをはって、会議前に読み上げて、注意喚起する、会議時間や人員を測定するなどして、業務の必要性の再確認と効率化を図るなどの小さな改善と工夫が求められのではないでしょうか


Gお客さんよりも、社内事情・根回しに注力
会議の中で『お客さん』という言葉が聞こえてきますか。会議の議題の中心は、お客さんのことではなく、社内のことばかり・・・。お客さまを優先して、何をしたいか、何をすべきかといった前向きな議論することすることよりも、その業務をだれがやるべきかといった社内の業務分担や他部門の顔色をうかがうような社内調整と社内政治に意識が集まっていないでしょうか。

社内での事前の根回しに注意を払い、余計な時間とエネルギーを費やし、本来大切にすべき、お客さんへ提供する製品・サービスを高めることに集中できていないことは、非常に残念なことです。

さらに、自分の業務範囲と責任範囲を最小限に限定し、できるだけ仕事を増やさないように保守的になるのは、まさに、大企業病社員の症状といえるでしょう。このような自己保身や無責任さは、ものづくりやサービスの提供者としての当事者意識の欠如からうまれてくるものです

顧客第一

給料を支払っているのは、企業ではなく、製品やサービスを購入してくださったお客さんということを再認識することが重要です。お客さんのいる店頭に立って、実際にお客さんと対話する経験やアフターサービスの経験は、よい気づきのきっかけとなります。

企業での意思決定のひとつの判断基準は、「お客さんにとってどうか」、という簡単な問いに対する答えではないでしょうか。お客さんを自分の家族にあてはめ、家族に何か提供するときにどうしたいかを考えれば、自ずと答えはでるはずです。


今回は、多くの成長企業が、かかる「大企業病」について、考えてみました。

大企業病の特徴は、官僚的、縦割り主義、セクショナリズム、個別最適化、無責任、スピード感の欠如、意思決定が遅い、閉鎖的、失敗をおそれて挑戦しない、融通がきかない、情報が正しく伝わらない、形式的な会議や書類が多い、など多くの企業がどこかあてはまるような症状です。

大企業病は、成長を果たした企業が立ちむかうべき問題であり、組織体質や風土を改革しながら治療をすることが求められます。大企業病の兆候を理解するきっかけになればうれしく思います。



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posted by かおる at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 品質思想
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