『インテルはいってる』のフレーズで有名な
世界最大の半導体大手Intelさんでは、
工場を垂直立ち上げし、量産体制に効率よく移行し、品質を確保するために、
『Copy Exactly(コピー・イグザクトリー)』という独自の考え方をもっています。

『Copy Exactly』は、『完璧な複製』という意味合いですが、
いったい、何を複製するのでしょうか。
『Copy Exactly』とは、
製品をつくる上で必要になる生産工場での生産技術を高め、
製造プロセス、製造手順、生産設備などを最初に立ち上げた生産工場で確立したうえで、
次の工場で、本格的に量産する際に、正確に複製して、
新規工場を短期間で量産体制に移行させ、
初期生産からの高い品質を再現し、高い生産効率、高い歩留りを達成する手法です。
工場の過去の経験も、新たな工場に丸ごと移植できれば、
再び同じ苦労をせず、垂直立ち上げをすることが可能となります。
異なる生産場所へ展開する際にも、工場を丸ごと移植できれば、
現地生産を行うグローバル展開もよりスムーズになります。
製品の販売できる期間が短く、次々と新しい製品が生み出される中で
わずかなチャンスをのがすことは、収益を低下させる要因となることもあるでしょう。
“Time is money”、時は金なりです。
高い品質のモノをよりタイムリーにお届けするためには、
ひとつのマスター工場の方式を、次の工場へと移植することが効率的でしょう。
規模の生産性を掲げて競争性を高める世界的な大企業では、生産力と品質を高めるために、
Fab1、Fab2、Fab3、・・・というように同じタイプの生産工場を拡大していく場合があります。
日本的な工場では、ひとつの生産工場で、
高い品質目標を設定し、かわいた雑巾をしぼるように、
品質不良を削減して、わずかな歩留りロスを少しでも削減する
たゆまぬ品質改善とコストダウンを図る姿勢が印象的です。
いっぽう、海外企業で資本が豊富な場合には、
たくさんの製品を生産できるように多額の投資を行い、
いくつもの巨大な工場を建設し、
生産当初は、多少不良が多くても検査で除去し、
購買量の多さにより、部品コストを低下させたり、稼動の安定性を図り、
規模の大きさに裏づけされたコストダウンをはかっていることもあるでしょう。
このような対応を行うほうが、スピード感があって、
効率的であるという考え方もできるでしょう。
この日本的な考えと海外的な考えの両方のいいとこ取りをした
第三の案が『Copy Exactly』といえるのではないでしょうか。
通常、安定した品質を実現するためには、優れた作業の方法を手順化し、
標準化をはかり、ばらつきのより少ない生産体制を構築しますが、
この考えを工場に適用して、改善を施したうえで、
『工場そのものの標準化』を図り、展開することが、
『Copy Exactly』ではないでしょうか。

このような製造工場の標準化は、
短期間における設備の効率性や稼働率を上げる半面、
どんなデメリットがあるのかも、理解しておくことが大切でしょう。
生産対象が変更した場合には、標準化された設備の柔軟性が乏しく、
新たな設備を導入しなければ生産が難しくなる懸念もあります。
標準化された設備は、安定した生産に強い反面、
変動に対してのリスクにもなりえることから、
長期的にみれば、生産対象の変更に対して
容易に製造変更できる融通性をもった設備仕様であることも重要な視点になります。
新規に設備導入する際には、
ある製品を造ることができる特別仕様の設備にしてしまいがちですが、
将来の製品のロードマップにあった設備の機能を見極め、
将来に必要な設備能力として、必要な要素を持たせておく視点も大切なことです。
また、工場に設備を固定した場合、根が生えたように、
動くことのできないような設備にしてしまうことも、生産の柔軟性をかく要素といえるでしょう。
ビールなどを生産する飲料メーカーなどでは、生産設備は同じまま、
飲料物を変化させて、柔軟な生産対応できているように、
追加的な設備投資を抑えたまま
新たな製品を生み出すことのできる生産設備の柔軟性を確保できるようにすることが、
『Copy Exactly』の手法の押さえどころかもしれませんね。
以上、今回は、工場の垂直立ち上げで必要となる考え方、『Copy Exactly』について紹介しました。
【参考文献】 Intel HP Copy Exactly!
【関連記事】
・日本製品の品質の高さの秘密とは?
・伊勢神宮に学ぶ品質思想
・『ものづくり』は、『料理づくり』と同じ?
・「工程で品質をつくりこむ」とは?
・「鳥の目」「虫の目」「魚の目」
・ TOC制約条件の理論とは?
・生産設備の体調管理とは?
・歩留まり改善とは?
【品質管理 事例の最新記事】