2012年04月15日

倉庫の7つの識別管理ポイントとは?

倉庫の7つの識別管理ポイントとは? - 品質管理研究所 -


製品の品質を維持するために、
製品を構成する受入部品や完成した製品を倉庫で、
どのように保管すればよいでしょうか。

また、倉庫では、どのような問題が発生しやすいでしょうか。


今回は、さまざまな部品や製品が入出庫される『倉庫』で、
識別管理の視点からどのような大切なポイントがあるか考えてみましょう。


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倉庫での『7つの識別管理のポイント』

(1)保管管理条件の識別管理
(2)検査品の識別管理
(3)製品種類の識別管理
(4)荷姿の識別管理
(5)開梱条件の識別管理
(6)法律や安全性の基づく識別管理
(7)工場内外の識別管理
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(1)保管管理条件の識別管理
製品の仕様に応じて、特殊な保管方法をする必要がある製品が識別されていますか。

保管管理条件の妥当性

壊れやすいもの、劣化しやすいもの、冷やして保管する必要があるもの、
沈殿しやすいもの、ばらばらになりやすいもの、消費期限があるもの、など

どんな条件で保管する必要があるのか、
どのような取扱をする必要があるのか明確にしていますか。


適切な保管や取扱い条件によって、
製品品質が変化しないことを確認した裏づけを明確にしておく必要があります

より過酷な条件でも、問題がおきないか、または、
どのように変化していくかを理解しておくことが大切です。


食品のような鮮度のある製品ばかりでなく、劣化しにくいように見える製造品についても、
手袋をせずに取り扱えば、ゴミがついたり、表面が変質したりすることもあるでしょう。
金属であれば、例えば、表面が空気にさらされると、表面が酸化されます。

ゴムなどに含まれる硫黄成分とふれていれば、硫化して、劣化することもあるでしょう。

金属が、酸化することは、理科の一般的な常識の範囲であり、
10円硬貨のように、金属が酸化することを身近に知っていますが、
硫化することは、あまり認識がない場合も多いのではないでしょうか。


<段ボール梱包による硫化>

例えば、電子部品を段ボール内でさらされると、
段ボールに含まれる硫黄成分が保管時にガスとしてでることによって、
銀メッキ品などが、硫化して表面が変色したり、
はんだ付け性がわるくなり、品質低下のリスクがあることが知られています。

■ Espec 技術情報 No16 「梱包材の製品への影響調査」


適切な保管容器、適切な保管条件、適切な保管期間で管理し、
品質問題を起こす可能性のある保管を未然に防止することが大切です。



(2)検査品の識別管理
検査する部品や製品について、倉庫から抜き出して検査される場合、
製品ロットの検査前、検査中、検査済みの識別がされることが重要です。

検査の独立性や客観性を保つため、製造部門から独立した検査部門が行う出荷検査では、

出荷品から、検査品をランダムに抜取って確認するため、どのロットから製品を抜き出し、
判定した後にどの製品ロットの梱包に戻すかの識別管理が必要になります。


そこで、検査前、検査中、検査済みを、検査ラベル、立て札、置き場所により識別し、
検査の実施有無が混同されることのないような識別やルールが確立されていなければなりません。

不良品があった場合には、ロットアウトとなれば、
合格品とまざらないように、識別管理(色別管理)することも求められます。

色別管理と品質管理

不良品に赤棚をつけたり、専用の赤い棚に保管して識別し、
早急に製造現場や取引先にフィードバックすることが求められます。

また、B級品などのランクの異なるグレード品、特別採用品、保留品など、
通常良品と異なる製品や部品がある場合の識別も注意が必要ですね。


(3)製品種類の識別管理
製品によっては、微妙に寸法がことなったり、色がことなったり、
同じような形状でもわずかな違いが生じるような組み合わせ製品を扱う場合があります。

多数の機種があることで、管理が煩雑になり、間違いやすくなります。

そのため、間違いやすい類似の製品を管理するために、
梱包に貼る製品シールの台紙の色をかえて識別したり、
梱包に大きな識別マークやシールをはって、わかりやすく外観で管理することがおすすめです。

文字の識別管理と間違い防止

また、社内の管理番号をつける上では、
「1(イチ)とI(アイ)」や「0(ゼロ)とO(オー)」について、見間違いやすいため、

読み取り間違いや記載間違いがおきないように、

I(アイ)やO(オー)などを使わないようにするルールを定めるなど、
ヒューマンエラーを防止することも大切です。



(4)荷姿の識別管理
製品においては、壊れやすいものなど、さかさまにすると破損するものや、
梱包を重ねて、上積みしていくと、強度が保てず、梱包が破損して、
内部の製品品質に影響を与える場合などがあります。

製品の保管の天地無用、上積み禁止の表示の理解や、
許容積み上げ段数などを教育し、
どのような保管取扱をすべきかを倉庫で徹底することが大切です。
 

特に海外に輸出する際には、現地の言葉で文字が書いてあり、
注意書きが理解されていない場合があるので、
どのような意味であるか教育することが求められます。

世界中に、製品を出荷している企業では、
梱包に記載されている出荷先の言葉を現地の言葉に翻訳し、
保管マークと合わせて倉庫に掲示したり、
梱包にあらかじめ現地の言葉を併記しておくなど
未然防止の対策を図ることがおすすめですね。



(5)開梱時の識別管理
冬場、寒いところから搬送された部品や製品を開梱し、保管されるとき、
温度差による結露で、電子部品などの製品がぬれて、破壊されたり、
樹脂材料などが劣化したりする可能性はありませんか。


冬には、湿度が低く、特に帯電しやすいため、
静電気で破壊しやすい製品は、アースバンドをして取り扱うことも必要になるでしょう。
静電気を帯びやすければ、ごみや汚れをひきつけることもあるでしょう。


倉庫の品質管理

年間を通じて、どのような温度や湿度の変化がある地域なのか、

製品の品質特性を理解するとともに、
品質低下を招きやすい環境にさらされないようにする必要があります。

世界各国の現地工場を訪れる際には、地域の気候も理解することも大切です。
工場を訪問するとき、タクシーの運転手さんに聞いてみるのもよいでしょう。


年中、朝から晩まで、屋外の環境とふれている運転手さんは、
肌で感じていて、気候のことも親切に教えてくれるでしょう。


また、梱包の開梱時には、袋でパッケージングされた製品を適切な方法で開封せず、
カッターなどで製品にきりこみをいれてしまったりすることもありますので、

適切な開封方法を必要とする製品については、
ワンポイントのレッスン書などの掲示で情報共有すること、
社内教育を図ることも大切ですね。



(6)法律や安全性に基づく識別管理
倉庫で特定の薬液やアルコールなど、
数量上限や取扱方法などが、安全性や法律(消防法など)に基づいて、
適切に管理、識別しておくことが求められる製品や副資材もあります。

実務では、安全に保管し、適切に取扱いをするために、
危険なものかどうか、どのような取扱にすべきか、
作業者がきちんと理解していなければなりません。


製品安全データシート(MSDS:Material Safety Data Sheet )をベースにして、
作業上のミスが起きた場合の対応や取扱注意事項を明確にし、教育をするとともに、
大切な社員の安全が常に確保されるようにしなければなりませんね。

また、火災を防ぐために、たばこなどの火気の取扱を禁止するとともに、
電気器具や配線に近い場所に製品を保管しないような日常点検や
配電盤の前にものを置かず、いつでも扉があけられるように床に
保管禁止のテープを貼るような具体的な改善取り組みも大切です。


(7)工場内外の識別管理
倉庫は、工場内外のものやヒトの大切な出入り口で、
屋内と屋外を意識した識別管理が大切です。


製品や部品の出入りだけでなく、
輸送してきたトラックのタイヤやヒトの靴についた汚れや梱包容器についた汚れ、
屋外からの粉塵など、さまざまな汚れが持ち込まれる場所でもあります。

外からの汚れがもちこまれないように、
屋内靴への履き替え等ルールや荷受時の汚れの除去方法などを明確にするとともに、
定期的な清掃も実施して、常に清潔な環境を維持することが大切です。


また、倉庫は、運送業者さんや取引先さんなど社外の方が出入りする場所でもあり、
たばこなどの火気の取扱の徹底が、
社外の方にも、倉庫や周囲で徹底されなければなりません。

火気のリスクを減らすために、社内関係者のためだけではなく、
社外の人にもすぐわかるように、喫煙所の指定や禁煙の指定など、
掲示を含め、注意喚起することが大切です。

倉庫での禁煙と火災防止


そのほか、工場の倉庫での日々の施設点検、
入出庫業務の管理などにかかわるポイントが
国土交通省のマニュアルとして紹介されていますので、
下記もあわせて、ご覧ください。


<参考>
■ 倉庫管理主任者 マニュアル 国土交通省総合政策局貨物流通施設課


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posted by かおる at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 梱包品質
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