五感を活かした目視による外観検査(Visual inspection)では、
不良の「見逃し」や「見誤り」が発生します。
問題が発生するたびに
検査者のミスという理由で、
再教育徹底をはかり、問題を片付けてはいないでしょうか。
「見逃し」や「見誤り」を防ぐためには、
検査者が検査しやすい適切な目視検査の環境をきちんと整備することが求められます。
検査の対象物が、
金属光沢があるような場合、

検査の対象物が
ガラスのように透明な場合、

検査の対象物が
床のように表面が滑らかな場合、

特に検査対象物に映り込む周囲のモノや光が、
検査者を惑わしていることを理解しなければなりません。
■ 血漿分画製剤を作る日本製薬株式会社さんの
外観検査の検査環境の良い実例をみてみましょう。
<製品特徴>
日本製薬株式会社さんで製造する血漿分画製剤は、
赤十字などで献血した血液から造られる製剤で、
一般の医薬品よりも厳しい品質、安全管理が求められる製品です。
薬事法による国のサンプリングによる第三者の検定があるような製品で、
その自主品質管理体制も自ずと厳しくなります。
<外観検査環境写真>
まずは、日本製薬株式会社さんのHPで紹介されています
下記の「外観目視検査」の写真を、ご覧ください。
■ 製造された中間製品、そして、瓶、ゴム栓、キャップなどの目視検査

<外観検査環境の特徴>
写真から下記のような管理環境がうかびあがります。
・検査環境を黒い暗幕で囲い、周りの色が映りこまないような検査環境です。
・直接、目には光が当たらず、手もとだけ光があたるように暗幕を下げているのも特徴的です。
・作業者の作業着の色が映りこむことがないように白で統一されています。
手袋も、もちろん白色で、検査対象となる白色物を見るために徹底されています。
上記の検査環境を理解するために、
検査の対象物と背景色の重要性を理解するおもしろい実験をしてみましょう。
下記の左右の黒■と白□の大きな四角の中にある
灰色の小さな四角を画面から少しはなれて、ご覧ください。

2つの左右の小さな四角の色の色はどちらが濃いでしょうか。
左の大きい黒い四角■の中にある灰色の四角(左)が明るく、
右の大きい白い四角□の中にある灰色の四角(右)が、左の灰色の四角よりも
濃く、暗く、見えたのではないでしょうか。
実際には、中央の小さい灰色の四角は、左右同じ色です。
現実に違うのは、背景の色が、白色か黒色かという違いだけなのです。
色は、人間の視覚システム上、
背景の色の状態など、環境により変化して見えることがあります。
もし、このような人間の目の機能を知らずに、
検査環境の背景を適切に設定できていないまま検査すると
誤って見逃すリスクが高まることになります。
検査の見逃しや見誤りが発生した場合は、
検査者の個人の責任にするのではなく、

検査の対象物の表面への光の映りこみや目の機能をきちんと理解し、
適切な検査環境づくりができているか、
見直すべきことがないかを考えてみることが大切ですね。
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