品質問題がおきるとき、
その背景には、必ず原因と結果があります。
不良には、不良発生の条件や不良発生のメカニズムが隠れています。
問題を解決するためには、
目の前でおきている現象をじっくり観察します。
そして、その問題がおきたプロセスを理解することがポイントです。
今回は、日々、品質問題とたたかう皆さんを支援するひとつの改善の考え方をご紹介します。
私たちの身近な生活の中で、
ごくまれに見られる虹で考えてみましょう。

虹は、稀に見られる美しい自然現象です。
雨上がり、きれいなグラデーションには、つい目をうばわれてしまいます。
神秘的な現象ですが、
もちろん発生する条件や発生メカニズムがあります。
虹がどのように発生するかを考えるためには、
発生時のことを改めて、認識する必要があります。
それでは、虹が起きたときのことを考えてみましょう。
■ 虹はどこでみかけるでしょうか。
・雨上がりの空
・水しぶきがあがる滝のそば
・夏場の噴水
など、屋外で空気中に水滴があるときです。
■ どんな条件のときに虹がでているでしょうか。
・太陽の光が差し込んでいる昼間で晴れているときに見かけます。
・くもりや雨が降っているときには、虹は見かけません。
・夕立のあとに雨がやんで、光が差し込むようなときに、虹を見ることができます。
■ どのような位置に見えるでしょうか。
・目の高さぐらいの位置に円弧をえがき、地平線にアーチをかけるようにみえます。
・太陽と反対の位置でみえます。
■ どれくらいの時間見えるでしょうか。
・ごくわずかの時間だけみることができます。まれにしかみることができません。
虹という現象から、
発生時の複数の共通項を探し出し、
虹が発生する条件を見出すと、
「太陽光、屋外、水、位置、短時間」
という条件が浮かび上がります。
これをヒントに虹の発生する仮説をたて、
「屋外」にでて、「太陽光」のある場所で、「位置」を変えて、
ホースから「水」を出して、虹を再現してみるとどうでしょうか。
いろいろなことに気づけるはずです。
どのようなときに虹ができて、どのようなとき虹ができないか。
そこからどんなメカニズムが潜んでいるか、
実験的に現象を理解していくことができます。

私たちは、大きな問題をかかえると、
頭でじっくり考え、理屈で問題を解決しようとしてしまいがちですが、
起きている現象を素直にとらえ、行動をおこしてみると、
以外と単純に理解できることが多いように思います。
実務では、品質問題を迅速に解決することがもとめられるため、
手を動かしながら考える「考動」が必要です。
市場ではじめて確認された不良の原因を探り、
改善を施す場合も、虹の再現と同じように考えるとどうなるでしょうか。
解決策の見えない品質不良に直面したとき、
まず、不良品と不良が起きた現場の共通点を探りましょう
5W1Hで考えてみると、
■ WHAT
・何が不良なのか。(製造ロットに依存性があるか。製造データの変動や変化点があったのか)
・どのような材料で不良となったのか。(メーカーはどこか、どんな製品か)
■ WHEN
・いつ不良になったのか。(製造時か、輸送時か、着荷時か、開梱時か、使用時か。)
・どれくらいの期間(輸送・保管・使用)で不良となったのか。
■ WHERE
・どこの部分が不良なのか。(何が不良なのか。発生部位に依存性はあるか。)
・どこで不良となったのか。
・どのような使用環境で不良となったのか。(温度・湿度はどうか。)
■ WHO
・だれが関係しているのか。
■ WHY
・なぜ不良が発生して、流出してしまったのか。
■ HOW / HOW MANY
・どれだけの数や割合で不良となったのか。
・どのような使われ方で不良となったのか。
問題を解く鍵は、製品やお客さまの情報にたくさん隠れています。
問題に共通する条件は、なんでしょうか。
これらの条件を明確にすると、
不良の原因が明確になる場合がほとんどですが、
それでも原因がわからない場合は、現物の解析を行いつつも、
さらに、これらのヒントをよりどころに仮説をたてて、
問題を引き起こす因子の条件をふって、再現試験を検討します。

再現試験は、設計の品質、工程の品質、使用の品質にわけて考えることができます。
@設計の品質:使用部品・使用部材、設計などを変化させる再現試験
@工程の品質:製造時、輸送時、保管時の工程管理条件を変化させる再現試験
A使用の品質:実使用時の条件を短時間で再現する加速試験
これらの再現試験を実施していくことで、
改善の糸口が見えてくるはずです。
その問題を意図的に再現できる状態になれば、
問題の発生条件やメカニズムの理解がすすみ、
問題の発生防止対策も行うことができます。
問題の糸口が見えない未知の不良に立ち向かうときこそ、
不良を再現させ、その問題の根を絶つために力を注いでいきたいものです。
今回は、原因不明の問題に対する改善アプローチとして、
再現試験の活用方法についてご紹介しました。
まずは、問題に潜む共通点を抽出して、
その共通点によリ導き出される仮説から再現試験を実施し、
問題の発生条件や発生メカニズムを明らかにし、問題の対策をたてていく方法です。
品質問題の解決に励む皆様のヒントになれば、うれしく思います。
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最近は年末独特の忙しさで
慌しい毎日です。
そんな忙しいなかで不良が発生し、
その対策におわれ通常業務に遅れが発生し・・・
という悪循環にはまってます(涙)
毎日、対策書を書いているんでは?っていうくらいです。
不良発生理由に『忙しかったから』なんて
言い訳は通用しないのでしっかり原因を追求しなくてはいけないのですが。
特性要因図をつくるも
上司はどっかの文献からもってきたような事
ばかり並べられて本当の要因がよくわからず。
不良解決が上手くできてません(汗)
かおるさんのいう『再現試験』を試してみて
少しずつでも解決できていければいいなと
思います。
毎日おつかれさまです。
年末は、なんだか慌しくなりますね。
不良が発生すると、
不良の処理に手がかかり、
守りの品質になってしまい、
未然予防の攻めの品質管理に
うつれないのがもどかしいところですね。
不良対策も、原因がはっきりしていないと、
目先の対策になりがちで、
再発してしまうことも多いのも事実です。
コツコツとひとつづつ是正していくことが、
仕事を減らす近道かもしれませんね。
今年ものこりわずか、
よいと年をむかえられるよう、
もうひとふんばりですね!
品質管理研究所 かおる