製造工程で不良が発生すれば、
工程歩留りが低下し、経営上の損失となります。
そのため、量産での不良品は、『いつも悪者』です。
しかし、設備条件を設定するための試作で
確認される不良品は、『貴重な存在』となります。
この違いは、何でしょうか。
不良品が発生するタイミングによって、
不良品の価値が大きくことなることを理解しなければなりません。
より後のものづくりのステージになるほど、その不良の被害は、大きくなるものです。
製品を量産する前に、工程で製品がどのようなメカニズムで不良となるのか、
事前に『予測する』ことがもとめられます。
良品を安定して生み出すためには、
逆にどんな不良品がどのようにして生み出されるかを予測しなければなりません。
不良品をうみださないようにする発想も大切ですが、
不良品がどのような要因でうみだせるのかという逆転の発想も大切です。

製品の試作の段階で、どのように不良をうみだすか、4M1Eの視点でかんがえてみましょう。
■ 4M1E で不良をうみだす発想
Machine :どのような製造設備の設定条件や状態で、不良品がうみだされるのか、
Man :どのような作業者が作業すると、不良品がうみだされるのか、
Method :どのような手順や方法で作業すると、不良品がうみだされるのか、
Material :どのような状態の部品がくみこまれると、不良品となるのか、
Environment:どのような環境で使用、保管されると、不良品となるのか、
このような逆点の発想で考えて、
4M1Eの不良を発生させる『境目(限界)』を知ることが、
未然防止の品質改善につながります。
限界がわかれば、ばらつきを考慮して、
余裕をもった基準を設定に変更するなど、未然防止の手順や方法を考えることができるでしょう。
高度な加工であれば、業務の新たな訓練・認定制度で、基準の再設定も必要になるでしょう。
作業のばらつきが発生するのであれば、治具をつくり、改善することも必要になるでしょう。
材料の品質ばらつきと製品としての品質を把握して、基準の見直しも必要になるでしょう。
材料の温湿度の変化が、製品品質に影響すれば、管理基準の見直しも必要になるでしょう。

このような不良品をうみだす『限界』の重要性は、工程内の不良にとどまりません。
出荷された製品でも同じように、市場のお客様に使用されたとき、
どのような壊れ方をするのか、『使用上の限界』を知ることも大切です。
品質の高い製品を製造するためには、熱衝撃試験、荷重試験などの加速試験により、
限られた開発期間の中で、信頼性が評価されます。
実使用状況における劣化と信頼性による加速劣化の関係性から
製品の想定寿命を予測して、製品としての一定の信頼性を確認します。
仮にこの信頼性試験で、基準に合格して、こわれることなく、
市場で要求される品質に合致する十分な耐久性があることが確認できれば、
もちろん、社内の品質試験は、合格となるでしょう。
ただし、一定の加速試験のもとで、壊れないことを確認するだけでなく、
その後、どのような壊れ方をするのかを確認しておくことが、実務では重要なことです。
どの部分から破壊していくか、どのように破壊していくか、
最も弱い破損部分を見て、故障のメカニズムと弱点を把握することが求められます。
市場での実使用での不良品の発生メカニズムを理解するために試験を続け、
境界(限界)を見極めて、学習することは、ひとめにふれることはありませんが、
品質を保証して、次の製品の改善に活かすためには、大切なことです。
製造現場で、ベテランといわれる方々は、長年の経験から
この境界(限界)を肌身で感じ取っておられるかもしれません。
日本の製造業には、『KKD』というおもしろい言葉があります。
KKD は、Kan(勘)、Keiken(経験)、Dokyou(度胸)の略です。

このようなKKDによる判断は、ベテラン技術者であれば、
あながち間違いではないかもしれませんが、
組織として、きちんと品質管理ができるように、
逆転の発想で不良となる限界を探りだし、問題点を顕在化させたいものです。
【関連記事】
・品質のドミノ倒し
・虫歯と品質不良の関係?
・品質管理研究所サイトマップ