品質の高い製品をうみだすためには、
設計・開発・生産・販売・サービスという一連の流れを阻害する
問題を理解し、未然に改善を図ることが大切です。
今回は、量産試作や量産に入る製造前の段階で、
事前に問題を把握し、製造工程に未然の対策を施す創造的な品質管理手法、
『工程FMEA』について、ご紹介します。

※ 上記のFMEAのフォーマットのExcel版を下記で、
無料でダウンロードできるようにしていますので、
ご自由にアレンジして、ご活用いただければ幸いです。
■ FMEAとは?
FMEAとは、Failure Mode And Effects Analysis の略称で、
『故障モード影響解析』ともいわれ、
製品やそれを構成する部材の想定されうる故障モード(Failure mode)を
事前に抽出して、その原因や影響を分析することで、
量産前段階の部材や製品の設計段階から、工程上で想定される問題を防ぐように、
基本設計の改善や工程設計の改善を図る優れた品質管理手法です。
FMEAは、もともと、アメリカ軍やNASAなどで、
技術開発と品質向上を図るために生み出された手法ですが、
今では、自動車業界を中心として、多くの一般企業にも普及しています。
人の命を預かる自動車では、特に、高い品質が求められます。
そのため、ISO9001の品質マネジメントシステムに加え、
自動車産業の要求事項を備えた規格ISO/TS16949による
『コアツール』と呼ばれる5つの品質手法を活用することが要求されています。
FMEAは、そのコアツールのひとつとして、活用されている品質手法としても知られています。
今回は、FMEAのフォーマットの中でも、特に、工程の設計にかかわる、
工程FMEAのフォーマットを無料でダウンロード(Excel)できるようにいたしました。
ぜひ、皆様の会社にあった形でアレンジして活用いただければ幸いです。
■ ダウンロードはこちらからどうぞ!
@ FMEAのフォーマット(Excel)※工程FMEA バージョン

※簡単な記入事例も記載しておりますので、参考になれば幸いです。
こちらは、PDFでの確認バージョンです。

A FMEAのフォーマット(Excel)※設計FMEA バージョン
あわせて、設計FMEAのフォーマット(参考)については、
こちらの記事から、ダウンロードできますので、ご参考にどうぞ。

■ 工程FMEAとは?
設計FMEAが、製品の設計に着目するのに対して、
工程FMEAは、その名のとおり、工程の設計(製造工程上の製品の不具合・問題)に着目し、
実際に製造ラインで生産をする前に
QC工程表に対応した各製造工程(各製造設備や検査設備、作業内容)に対しての問題や
原因を追求し、改善を図るために活用することができます。
■ 工程FMEAのやりかた 簡単7ステップ
(1)お客様の要求仕様、設計の変更点、新規に追加される部品や工程を明確にしておきます。
※FMEAは、新たな隠れた問題点を抽出するものであり、リスクの大きな
変化点に意識を向けることが大切です。
(2)想定されるQC工程図をもとに、工程と工程機能を抽出します。
※特に新たに追加された工程がもれていないか注意してください。
■ QC工程図については、こちらの関連記事で説明していますので、ご参考まで!
・何をかく?QC工程表!
・QC工程表の作り方とは?
・『QC工程表』って何?
(3)製造工程で発生が想定される問題点(工程の故障モード)とその要因を抽出します。
新規の製品をつくるために、既存の工程に新たに追加する工程は特に注意しましょう。
作業のしやすさ(Man)、必要な治工具(Method)、新規設備(Machine)、
手袋やメガネなどの備品や副資材(Material)、検査に必要な測定器具(Measurement)
作業・設備スペース(Environment)など、
5M1Eにかかわるポイントでの工程上の問題点を抽出しましょう。
新規設備導入予定があれば、設備メーカーさんが理解している設備のメンテ・磨耗情報や
交換部品、チェックシートなど含め、教えていただくこともできるでしょう。
工程設計上の問題を防ぐためには、製品の不良だけに焦点をあてるのではなく、
つくるために必要な5M1Eの要素にも、注意しておきたいものです。
■ 設備の汎用性
将来、製品の機種変更に伴う可能性があるのであれば、
より広い範囲で加工できるより汎用性のある設備を導入することも必要でしょうし、
■ ラインバランスによる生産性
量産工程での各工程の生産タクトタイムを測定したときに、
新規に追加した工程だけが多く時間がかかりボトルネックになるのであれば、
生産性のよい機械を購入したり、2台購入したりして、
ラインバランスを保つことも必要になってきます。
■ 作業者の安全
工程を動かすのは、大切な社員さんです。
事故やけがが起きないように工程設計の段階で未然に安全を確保することも大切です。
工程FMEAは、製品に伴う問題に着目しがちですが、
工程全体、将来にわたる時間軸ももった検討が大切ではないでしょうか。
さらに、過去の失敗経験やベテラン社員さんの豊富な知識もあれば、
さらによいFMEAになることでしょう。
(4)工程上の問題による影響が、製造の「工程」や部品が組み込まれる「製品」、
さらに、最終的に使用する「お客様」にどのような影響を与えるかを明確にします。
(5)対策前のリスクとして、定量的に発生頻度、厳しさ(影響の大きさ)、
検出の難しさの観点から評点をつけて、掛け合わせた値を致命度(重要度)として、
ランク化し、重要性を認識します。
多くのFMEAでは、リスクをRisk Priority Number (RPN)という指標で、
発生頻度(Occurrence)×厳しさ(Severity)×検出難しさ(Detection)で算出します。
ランク付けは、5段階など、自社内で評定基準を定めて運用することになりますが、
致命度が低いから、未対策でよいと判断すべきものではないことを
認識しておく必要があります。
また、対策前のリスクに対して、改善した後は、
きちんとリスクを再評価して、確認しておくことも大切です。
(6)抽出された問題の要因から、改善策と改善担当者、改善期限を明確にします。
工程の作業性の悪さなどから、製品設計への改善が必要な部分があれば、
早急にフィードバックをかけることが求められます。
(7)改善の結果を評価し、改善が有効であるかを判断します。
改善が十分できていない場合は、
更なる改善を図り、製品の設計、工程の設計改善を実施します。
今回は、工程FMEAについて、紹介しましたが、
製品の特徴やお客様の個別要求にあわせて、FMEAをうまく使いこなして、
品質の高い製品をお客様に提供していければうれしい限りです。
【関連記事】
・FMEAによる未然防止とは?(品質管理研究所)
・動画で学ぶFMEA!(品質管理研究所)
・品質管理研究所サイトマップ(品質管理研究所)
【FMEAの最新記事】
こんにちは、
品質管理研究所 かおるです。
FMEAは、未然に問題を解決する手法ですが、
工程能力指数CpとCpkは、
実際に生産をはじめてからの
生産状況の実態を定量的に把握し、
改善につなげるために必要な統計的な考え方です。
CpkやCpを品質管理の知識としては、
書籍などでよく知られているものの、
生産現場では、あまり活躍していない手法の一つかもしれません。
Cpk(しーぴーけー)というと、
複雑な計算が必要で、なんだかむずかしいイメージがあります。
品質管理研究所の記事のなかでも、
ご要望にお応えして、実務でつかえるよう
これからご紹介していければと思います!
品質管理研究所 かおる
こんにちは、
品質管理研究所 かおるです。
FMEAの評価指標としられるRisk Priority Number (RPN)については、
発生頻度(Occurrence)×厳しさ(Severity)×検出難しさ(Detection)で算出します。
上記の3つの視点で、リスクを評価して、改善に役立てていくものですね。
ものづくりの業界の違い、お客様からの品質要求の違い、商品特性の差によっても、RPNの評点は、変化します。
合計の点数がいくらであれば、対策しなくても問題ないと一律にいえる評価指標ではなく、
リスクを考えることが重要であると考えていますので、指標の配点については、あえて明記しておりません。
FMEAは、道具というより、社内のコミュニケーションの手段として活用していただくことがなにより大切であり、
FMEAを使用する際にもその評価基準と結果についても議論することがよりよいFMEAの活用につながると思っております。
実務では、自動車業界のお客様からの基準をご指定いただき、評価することもあります。
下記は、評価する上でのひとつの事例として、
イメージをふくらますためにご覧頂くと参考になるのではないでしょうか。
■ 10段階の評価指標例
http://blogs.yahoo.co.jp/show942006/folder/880516.html?m=lc&p=10
品質管理研究所
かおる