「品質を高めるためには、コストがかかる。」
そんな発想を持っている企業は、意外と多いのではないでしょうか。
短期的にみれば、品質よりもコストを重視して、
出荷すれば、納期は満たされ、売り上げが上がり
目先の目標を達成することにつながるかもしれません。
しかし、長期的な視点にたてばどうでしょうか。
もし、その後、市場で、品質の確保されていない製品が不良になるとどうでしょう。
お客さんへの製品の修理や交換といった多大な費用が発生することはもちろん、
お客さんをがっかりさせ、企業としての信頼を損ねてしまうことでしょう。
お客さんから信頼を得られていた価値こそが、まさに企業の価値です。
ものづくりの段階で、適切なコストをかけていれば、
出荷前の品質を高めて、
長期的にわたる製品のコスト(製品ライフサイクルのトータルコスト)を
削減することにつながります。
製品の不良と、虫歯の関係で考えて見ましょう。
虫歯になる前に、歯を磨き、虫歯を予防する。
(市場不良がでる前に、品質改善を行い、市場不良を予防する。)
歯磨きによる虫歯予防費用と、
(市場不良の未然発生防止費用)と

虫歯になって、歯の痛みを感じながら、歯医者さんで歯を治療する費用、
神経を抜かれて元の歯に戻らなくなるリスク、
(市場不良で、お客様に迷惑をかけ、お客様への修理や交換にかかわる費用、
お客様の信頼を失うリスク)

あなたは、どちらをえらびたいでしょうか。
できることなら、虫歯にならないように、
日頃から歯を磨き、未然に防止する対応をとってもらいたいものです。
ただし、歯をきれいにすることばかり気になって、
歯磨きしすぎて、歯ぐきを痛めては、意味がありません。
余計なコストをかけて、過剰な品質を追い求めることはムダですし、
過度な対応がおもわぬ、弊害をうまないよう、やりすぎにも気をつけたいところですね。
短期的にみれば、品質を上げるための部材コストや品質取り組みの費用が
予防コストとして反映され、製品単価をわずかに引き上げることにもつながるかもしれません。
しかし、長期的な視点にたって、そのような品質のつくりこみによって、
市場不良を未然に防ぐことができれば、
どれだけの市場対応費用を削減することにつながるでしょうか。
また、顧客の信頼という値段のつけられない価値をどれだけ損ねずにすむでしょうか。
コストと品質の関係は、品質を上げれば、コストも上がる
トレードオフの関係とおもわれがちです。
これは、まさに製品の造り手側からの視点で、
「出荷時のコスト」を「品質」だけを比較した場合の考え方です。
本来あるべき姿は、お客様側からの視点で、
「出荷時のコスト」に加え、「使用やアフターサービスのコスト」、
「廃棄やリサイクルのコスト」まで含めた考え方です。
出荷時ではなく、「使用やアフターサービス」を想定した長期の品質を確保できれば、
市場での不良もへり、品質とコストのバランスはうまく保たれるはずです。
では、どうして、この品質とコストのバランスが意識されにくいのでしょうか。
多くの企業では、「市場不良率」を納入品質として認識し、品質目標に掲げているものの、
品質とコストを結びつける指標を導入していない場合が、ほとんどではないでしょうか。
品質とコストを結びつける指標として、今回、『Fコスト』をご紹介します。

Fコスト(エフコスト)は、Failure Cost の略で、失敗コストとも呼ばれ、
製品の市場不良に対応して生じた費用のことで、
製品の市場品質とコストの概念を結びつける大切な品質管理指標です。
経営者にとって、
経年変化で良し悪しを比較できる指標「市場不良率」を「%(パーセント)」で認識するのと、
実際の一定期間内の売上金額で比較できる「円」で表現するのとでは、
インパクトがぜんぜん違います。
「円」にかわったとたん、経営者の目の色が、きっと鋭く変わるはずです。
品質の最終責任をもつ経営者の品質の意識が変わらなければ、品質もよくなりません。
経営者の品質に対する意識を高めるためにも、効果的な指標といえるのではないでしょうか。
管理の基本は、見える化です。不良を%から円に直すだけの簡単なことです。
また、Fコストは、市場不良に伴い発生した対応金額(円)で表現できるため、
期間の売上高(円)でわることで、売上に対して、
どの程度の不良に伴う費用が発生しているかという比率として、
「Fコスト」を定義することもできます。
このFコストの売上比率も、おすすめの指標です。
製品の利益にどの程度の影響を与えているか、比較できますので、
売上において、Fコストの占める割合を認識することは、大切です。
年間を通じて、Fコストを認識することで、自社の製品の品質状況を
金額ベースで、反省するきっかけにすることができます。
ぜひ、Fコストをうまく使いこなして、
品質とコストのバランスをとってみてくださいね。
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クレームに対する処理費用のことをFコストと言うんですね。
初めて知りました。
我々、品質に関わるものとしてはとても身近な話ですが、逆にこのようなクレーム処理に携わらない人達にとって、この費用は余り認識が薄いですね。
クレーム処理に掛かる費用は何も生み出さない(お客さんとの関係が強くなる場合もありますが)ことを認識して欲しいです。
クレームで報告に行く際の出張費もバカにならないですしね。
出張ももっと前向きな話で行きたいな、こういうことに金を掛けたいなと思う、今日この頃です。
こんばんは、品質管理研究所かおるです。
Fコストは、おすすめ指標のひとつです。
お客様からのお困りの声に耳をかたむけて、
このような費用が、すこしでも
発生しないように品質改善していきたいですよね。
品質問題に対応するためには、
時間もお金も労力もたくさんかかります。
このような問題がつづくと、
次の新しい製品の品質改善にまで影響を
及ぼしかねませし、お客様の見る目も一段と
きびしくなってきますので、
品質不良による
負のスパイラルにはいらないよう、
いいものを作っていきたいところです。
中国では、国慶節で、
各社お休みがはじまりましたが、
お休みの後などは、
社員の出入りが多い企業も多いようで、
品質が変動しやすい変化点ですので、
受入側ではしっかりと
気を引き締めなければと思う今日この頃です。
Fコストの話、面白かったです。
私はお客さんに零細企業が多いのですが、
こういった話をしてみたら喜んでいただけるのではないかと思いました。
参考にさせていただきます。
ポチさせていただきました。
こんにちは
品質管理研究所 かおるです。
すこしでも参考になることがあれば
うれしいかぎりです。
Fコストなど、損失を見える形にかえることは
大変インパクトがあります。
逆に、現場ではたらく人にとって、
あまりに金額が大きすぎると、
イメージがつききにくくなるので、
身近なものに置き換えて、
例えて説明するのもおすすめですね。
たとえば、1千万円の損失であれば、
高級車の名前をあげて、
「〇〇社1台分の損失とか」
相手に応じて、
わかりやすく伝えることもすごく大切ですね。
伝える内容よりも、
相手がどれだけ理解して納得してくれたかを
大切にしていきたいですね。