製品をつくる上で大切なことは、
作り手の立場で満足するのではなく、
使い手の立場で満足いただけるものをつくりあげることです。
他社に追従するために、
他社との差別化をはかるために、
お客さんをみずに、ライバル企業ばかりを意識して、
無駄な機能や使わないような複雑な仕様が
どんどん盛り込まれていないでしょうか。
お客さんにとって、何が使いやすいのか、
お客さんは、どうすれば満足してくださるのか、
お客さんの想いは、はたして、製品へ反映されているでしょうか。

品質の高い製品ができたかどうかは、
製品の品質確認試験や長期信頼性試験の結果、
量産試作や量産の工程品質の安定性(Cpkなど)から評価をすることが
歴史のある品質管理・品質保証の分野で日常的に行われています。
しかし、試作品の段階などで、お客さんの使っている姿を直接みて、
製品の設計に使いやすさを反映したり、お客さんの欲求を満たすための、
修正を加えていることがどれだけあるでしょうか。
お客さんにとって、本当に使いやすい製品をつくるために、
私たちは、どんなことをすればよいでしょうか。

お客さんにとっての使い勝手の良さ、使われ方を評価するためには、
「ユーザビリティ試験」を活用することがおすすめです。
ものづくりにおいて、良い作り手であれば、製品を作り始める前に、
どのような状況で使われるか、どんな風につかわれるか調査されますが、
企業では、効率性を重視し、業務が細分化されて専門性のある役割に分割され、
思うように製品にお客様の声を反映できていないということはないでしょうか。
ものを作る設計者や生産者の多くは、
ほとんどの時間を、作った製品を使うお客さんとではなく、
製品をつくっている人たち(他の部門の社員や部材メーカーさんなど)と過ごしています。
製品を使ってくださるお客さんとお会いするのは、
まさに製品に不良がおきた時だけになっていないでしょうか。
つくった試作品をもとに、お客様の要望にこたえる製品にこたえる
修正がどれだけ加えられているでしょうか。
今回は、Windows で有名な Microsoftでのユーザビリティ試験の事例をご紹介します。
<Microsoft ユーザビリティ試験>
Microsoft社の The human factor のコラムより、ご紹介します。
まずは、Microsoft のユーザビリティ試験室のユーモラスな動画を

Microsoft 社のコラムの著者は、自らのことを技術が大好きなことを認めつつも、
長年の経験から、技術への愛情だけでは、お客さんを、
必ずしも正しい方向には導けないということを示唆してくれています。
技術への愛情をお客さんへの愛情にかえる手段が必要です。
それが、ユーザビリティ試験かもしれませんね。
Microsoft 社でのユーザビリティ試験では、
「ユーザビリティエンジニア」と呼ばれる専任社員がいて、
30もの個別の試験室を完備し、「ユーザビリティ試験」を通じて、
製品開発チームにユーザーが何を要求しているか伝え、
お客さんの要求にどれほど応えられているのかを分析し、
よい製品づくりへと反映する体制を構築されています。
これは、インターネットに関わるユーザビリティに限定されるものではなく、
一般的なものづくりにもあてはまるものです。
技術開発者が、時間をかけ、力を注いで開発した機能も、
お客さんに使ってもらい活用されなければいみがありません。
お客さんが、本当に必要としているものはなんでしょうか。
製品の使い勝手の良さも、品質の一つの指標です。
「作ったものを誰かが使っているのを観察すること。
それが、目標が現実に合っているかどうかを確かめる唯一の方法。」
ということです。
■ 良い製品をつくるためにはどうすればよいか?
優れた製品は、製品の機能など、複雑さを見せ付けて興味をひくのではなく、
複雑さを隠すことに集中し、製品の使い勝手を向上させています。
使い勝手の悪い製品であれば、いくら長期耐久性のあるコンセプトの製品であっても、
そんなに長い期間、使われるはずもありませんし、お客さんの視点にたったものづくり、
自分の家族にもすすめたいような、お客さんへの思いやりのある製品づくりを
こころがけたいものです。
そんな製品をつくるために実施するユーザビリティ試験は、
私たちにさまざまなことを気づかせてくれるでしょう。
Microsoft社のすばらしいコラムから導きだされるユーザビリティ試験の8つのポイントご紹介します。
@お客さんと共に過ごす時間を増やし、何を誰のためにつくっているかを再認識する。
A知識や経験のある熟練の開発者を謙虚にさせる。
B作り手としての自分に訴えかけるものをつくりたくなる罠に陥ることを防ぐ。
C優れた製品作りに貢献できているのかどうか常に気にさせる。
D開発者が想像しないような愕然とする使われ方を認識する。
Eお客さんが、製品をどうにか使えたとしても、その作業の遅さにも気付く。
Fお客さんが本当に必要としているものと、自分自身の予想の違いに自らきづく。
G開発者が慣れ親しんでいる考えは、企業の常識でも、一般のお客さんの非常識であることを認識する。
このような気づきがあたえることができれば、
きっと使いやすく、多くのひとに喜ばれる製品ができるはずです。
以上のように、ユーザビリティ試験は、製品の作り手側への気づきを与え、
品質の高い製品をつくるうえで大きな役割をはたしてくれます。
ユーザビリティ試験は、ソフトウェアにかぎらず、
一般の家電製品などのハードウェハでも実施されている優れた評価方法であり、
お客様を大切にする企業のものづくりにおいて、業界や製品の垣根をこえた、
なくてはならない試験のひとつといってよいのではないでしょうか。
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最近は私の担当製品で品質クレームが出ていないので、半年くらいお客さんのところに行ってないです・・・。
特に昨今の円高の影響で出張も行きにくくなっています。
でも、そうは言わずにたまにはお客さんに顔を出しに行きたいと思います。
こんばんは
品質管理研究所 かおるです。
品質クレームがなくて、
すばらしい管理状況が維持されているのですね。
お客様のところにいくためには、
遠くであれば、出張費もかさみますので、
やはり、いきにくい面もあるので、
出張先方面をまとめたり、工夫が必要ですね。
また、原料や部材の価格上昇を逆手にとり、
取引量の多い製品に対しては、
輸送梱包費の削減のための通い箱を提案して、
廃棄コストや梱包費用の削減により、
価格上昇を吸収することも考えられます。
社外の経済状況にほんろうされず、
逆にうまく活用して、VE活動ができれば、
お客さんも、作り手も一段とスリム化でき、
満足がえられることもあります。
そんな前向きな提案をもって、
お客様のところへ訪問するきっかけをつくれば、
ピンチがチャンスにかわり、
お客様の声のとどいた喜ばれるものづくりが
できるかもしれませんね。