工程の重要な管理指標として、「歩留まり」があります。
今回は、低い歩留まりをリカバリーする方法について、考えてみます。
歩留まりが低下すれば、不良品となるむだな製品が多く生産され、
損失が拡大することは、いうまでもありません。
そんな製造工程での不良品の損失をリカバリーするために何ができるでしょうか。

____________________________________________________
<4R>
(1)Reduce リデュース : 不良を削減する。
(2)Repair リペア : 不良品を修理して、良品にする。
(3)Reuse リユース : 不良品を識別して、点検用などで利用する。
(4)Recycle リサイクル : 不良品を再度、原料に戻して、使用する。
____________________________________________________
(1)Reduce リデュース
歩留まりの改善の基本は、品質不良の問題の原因をつきとめ、
不良そのものを減らしていくこと(Reduce)です。
不良の原因が何であるかを知ることこそが、改善への近道ですね。
(2)Repair リペア
工程中で発生する不良には、特定の部品の故障などで、
製品全体が不良となってしまうような場合もあります。
故障部品を交換さえすれば、製品として機能する場合、
適切な修理(リペア)で品質を回復することができます。
もちろん、正規出荷品としての品質と品位を維持できることが大前提です。
修理に伴う加工の影響で、製品の品質に通常工程異常の影響を与えていないことを検証し、
信頼性試験などを通じて、見えない問題を確認することも必要になります。
特定のリワーク作業手順を標準化して、特定の認定作業員が作業するなど、
通常工程より、厳密な管理で修理していくことが求められます。
製品を廃棄してしまう前に、修理できないかを考えることも大切ですね。
リペア作業の弊害は、
リペアを正規のプロセスとすると、手直しにより見かけ上の歩留まりが向上し、
本来の工程中の不良の発生状況がつかみにくくなることです。
不良の実態がみえにくくなり、
不良の根本改善への推進力が低下しないようにするためには、
「歩留まり」という指標から、「直行率」という厳しい指標に
グレードアップさせて、考えることも有効です。
「歩留まり」は、工程中で発生した不良品をリペアし、良品としてカウントし
下記のように算出されます。
■ 歩留まり(%)= 良品数 / 生産数 ×100
一方、「直行率」は、読んで字のごとく、工程で「まっすぐ行った比率」です。
つまり、直行率は、部材の投入から、手直しをせずに、
良品のまま、最終製品になった良品を生産数で除算した比率です。
工程中で不良品となり、検査工程で一度除去された製品は、その後手直しされることもあります。
最終的に良品になったとしても、余計な手間が加わっており、
損失であることにはかわりありません。
直行率は、このような回復した製品を、計算上、良品としては、カウントせずに、
手直しせずに最終工程までいった製品を生産数で除算した比率として、下記のように算出します。
■ 直行率(%) = 良品数(リペアなし) / 生産数 ×100
リペアにより短期的にムダを削減するとともに、
その不良の未然防止をうながすためにも、直行率の指標を使い、
正確に品質状況を把握し、手直しによるリペア費用の削減も積極的に図っていきましょう。
(3)Reuse リユース
不良の削減はしても、製品とはならず、リペアもできない不良品が、
工程内ロスとして生じてしまうことがあります。
そんな不良品も、可能な限り、活かして使用することがおすすめです。
@不良の限度見本の作製
生産立ち上げ直後は、外観不良などの限度見本として、不良を保管し、
現場の判断基準、教育サンプルとして、活用することが有効です。
不良は、望んでつくれるものではありませんので、
不良品も大切に保管して活用しましょう。

A生産設備の条件出し
不良品を活用して、生産設備の初期条件だしや日常点検を行うこともできます。
正規品を使用して、点検すれば、破壊試験検証となるような場合、
節約のために不良品の中の良品部位を活用して、点検を行なう場合があります。
不良品という識別管理がきちんとできていなければ、
確認用のサンプルが流出してしまう不良も発生しますので、注意が必要ですね。
B再加工
サイズの小さな製品に使用できる場合など、
良品部分のみを他の製品の素材として活用することができる場合があります。
小型の用途で安価に使用したいという需要があるような場合は、
大型の素材から加工して、良品部のみを取り出して、ロスを低減させている企業もあります。
製品の歩留まりには反映されませんが、他の製品にすることで、無駄をなくす発想です。

(4)Recycle リサイクル
リユースも難しい不良品は、原料までもどして、リサイクルの可能性を検討することも大切です。

@自社でのリサイクル使用
金属製品や樹脂製品などは、不良品を適切に処理し、
溶融すれば、再度使用することも可能です。
もちろん、素材の純度や機械的特性を確認して、品質を保証することや
リサイクル品の比率をきめて、品質を維持することなど注意が必要ですが、
リサイクルすることで、廃棄費用や原材料のロスを削減することにつながります。
A他社での廃棄物の有価物化
廃棄物の有価物化の可能性についても、検討しておきたいところですね。
自分でリサイクルできないからといて、ゴミと考えるのは、非常にもったいないことです。
見る人によってはゴミですが、他人にとっては、お宝の場合もあります。
ガラスのくずなどのように、捨てれば損、売れば利益となるようなものがないか
見直すことがおすすめです。
ゴミも減らすし、ロスもなくす、節約思想は、現場に見られるでしょうか。
工場のゴミ箱や不良品置き場に何がおかれているでしょうか。
不要なものとして廃棄されるものは、
お金が変化したものであることを今一度考えたいものです。
今回は、低い歩留まりをカバーする「4R」について、ご紹介しました。
リデュースは、基本の品質改善活動ですが、リペア、リユース、リサイクルありきで、
生産工程のロスを見逃したり、許容したりすることは、品質改善の真の姿ではありません。
コストを削減しつつ、工程の品質を改善していくための段階的措置として、
4Rをうまく活用して、ムダをなくすヒントになればうれしい限りです。
【関連記事】
・歩留まり改善とは?
・Fコストとは?
・品質管理研究所サイトマップ
【歩留まり改善の最新記事】