2011年04月23日

部材保管管理 15の基本とは?

部材保管管理 15の基本とは? - 品質管理研究所 -


製品に使用される『部材(部品や材料)』について、

生ものを冷蔵庫に保管するように、
適切な条件の下で保管することが大切です。

どこのご家庭でも、生ものであれば、
しっかり冷蔵庫に保管されているように

ものづくりにおいても、当然、保管材料や保管部品を
適正な条件のもとで管理することが欠かせませんね。

倉庫搬送と保管管理


現在、多くのものづくり企業では、世界中から部材を購入して、
製品が製造されることが多く、自社の保管環境だけではなく、

部材メーカーさんでの保管や輸送方法の違いによる
品質劣化要因を事前確認し、未然にリスクを排除しておく必要があります。

材料単体では、それほど問題ではなくても、
他の部材と組み合わせたときに問題が顕在化することもありますので、

最終製品をつくる企業として、部材保管での問題を未然に防ぐためにも、
組み合わせたときの重要特性を部材メーカーさんと情報共有し、
保管管理も適切におこなうことが大切ですね。


特に劣化要因となる

『温度、湿度、日射、汚れ、落下、振動、静電気』

には、細心の注意が必要です。

現場で活用できる輸送と保管の品質管理のポイントとなる

『部材保管管理 15の基本』について、ご紹介します。


_______________________

【部材保管管理 15の基本】

 @保管条件の妥当性
 A保管環境の妥当性
 B環境測定方法の確認
 C開封後の部材の取り扱い
 DFIFOの管理
 E受入検査との連動
 F太陽光による劣化
 G積み下ろし保管管理
 H雨天時の工場内移動
 I温度差による露
 J静電気対策
 K倉庫の開閉ルール
 L輸送企業、搬送者への教育
 M5Sの徹底
 N現場の教育

_______________________


ひらめき上記の詳細内容を順にご紹介します!


【部材保管 15の基本】

@保管条件の妥当性

 部材別の推奨保管条件とその基準の背景となる裏づけの試験データを確認しましょう。
 ※仕様書に記載されている保管条件は、部材メーカーさんで裏付けがないにもかかわらず、
 一般的な内容を記載している場合やマージンをとりすぎた過度な条件指定を
 記載している場合もありますので、注意が必要です。

 
A保管環境の妥当性

 実際の保管倉庫での保管環境基準(温度・湿度・日射)と
測定実績(1日変動/年間記録)を確認しましょう。

※地域の気候に応じて、年間の湿度や温度の変化が異なりますし、
 工場の古さによっても、エアコンなどの設置もことなるため、
 実際に部材を保管される特定の建物のデータを確認することが必要です。

 また、輸送保管状態での温湿度についても、過酷な長旅になる場合では、
 湿気に弱い製品において、輸送試験やデータロガーによるデータ確認などが必要になります。


B環境測定方法の確認

 保管倉庫での温湿度計の校正状況を現物確認し、
温湿度管理チェックシートに毎日記録確認されていることを確認しましょう。

温度と湿度のデジタル測定による社内PC常時監視や、
ある設定基準温度や湿度を超えた場合にアラームがなるような温湿度管理もおすすめですね。

『部材』は『わが子』です。

『わが子』であれば、おのずとわが子である『部材』の体調が気になるはずですね。

温度測定と品質管理


C開封後の部材の取り扱い

 材料を一度につかいきれれば問題ありませんが、余った場合には、廃棄する、
1日以内に使い切る(検証したデータに基づく日程設定が必要)など、

開封後の製品の取り扱いの手順が明確になっており、現場で運用されているか確認が必要です。

たとえば、粉末のような材料の場合、袋の口の閉め忘れ、
一時保管場所への置忘れなどが見受けられます。


DFIFOの管理

 FIFO (First in First out:先入れ先だし)の管理規定があるか、
また、現場で具体的に実行するための仕組みがあるかを確認しましょう。

・新しい部材は、棚の下に、奥に、左から置くなどのルールがあるか
・保管物の保管期間が一目でわかるように、月別の色別シールを添付して
 管理の見える化をはかっているか、
・倉庫の棚番号管理がきちんと運用されているか

など確認することが大切です。

識別管理と色別管理


E受入検査との連動

 部材の入庫と製造現場への出庫について、
品質保証課や検査課などによる受入検査で合格された部材だけが、
入庫保管され、出庫の際には、良品のみが製造現場で使用されるような
ルールが運用されているかを確認しましょう。

部材の受入検査の理想は、ECRSの改善原理のはじめにもあるように、
Eliminate(排除する)で『検査をなくすこと』です。

100%良品納入を目指して部材メーカーさんが努力し、
受入検査がなくなれば、部材メーカーと自社での2重検査をなくし、
トータルコストを低減させることができます。

しかし、現実は、不良納入部材のリスクを回避するために自社検査をする
企業が多いように思います。

・重要部材だけ受入検査をする
・初期流動期間をもうけて、規定ロット合格するまで実施し続ける
・納入品質実績をみて受け入れ検査を一部に限定する

など、各社、良い品質の製品をより低コストでうみだすために努力がみられますね。

受入検査と品質管理


F太陽光による劣化
 
 倉庫内に、直接太陽光が入射する場所がないかを確認しましょう。
 太陽光が保管部材にあたることで、紫外線劣化や温度変動による劣化を
引きおこす要因となりますので注意が必要です。

温度が上昇防止や紫外線を防止のために特定の波長を遮蔽するフィルムを
窓に張って防止することも可能ですね。

太陽光と品質劣化


G積み下ろし保管管理
 
 トラックから梱包された部材をおろす際に、倉庫前での荷卸し場所に屋根がついておらず、
外で水の濡れの心配がある場所で作業していないか確認しましょう。

作業中に突然の雨でぬれてしまうようなことがないように作業手順や
雨濡れ防止対策用のカバーなど現場に準備されているでしょうか。


H雨天時の工場内移動

 部材搬出の際に、倉庫から工場へ屋外を移動するような立地の工場の場合は、
雨の日の工場内輸送梱包仕様が決まっているか確認しましょう。

外が雨で移動が生じた場合は、みなさん自身が、傘をさすように、
当然納入部材もぬれないように気をつける必要があります。

雨の移動破局さけるとともに、指定のビニールシートを一面にかけるなど、
ぬれないことを検証した工程内輸送手順を明確にしておくことが必要です。

傘をさしても足元がぬれる経験をされたことがある方も多いと思いますが、
納入部材もまた同様です。

部材の気持ちになって、しっかり守ってあげましょう。


I温度差による露

 水分に弱い電子部品では、

外部と内部の温度差により内部梱包に水滴がつくことがあります。

暑い夏に水を入れたコップの中に氷をいれると、
ガラスコップの表面が急激に冷えて、露点に達し、
空気中の水蒸気が水滴となってつく現象と同じです。

急激な温湿度差が生じないようにすぐ開封しないで温湿度ならしを行い、
開封するなど部品別の特定の取り扱いには注意しましょう。


J静電気対策

 湿度の下がる冬場に発生しやすい静電気で、
部品がこわれないように現場管理されているか確認しましょう。

プラスチックなどが導電性シートでまく、
棚や机などアースをとるなどの静電気対策で、
受入時の静電気不良を未然に防止することが大切です。


K倉庫の開閉ルール

 倉庫内では、入出庫が頻繁におこなわれていて、汚れが入りやすい環境にあります。

・倉庫扉が開けっ放しになって、汚れがはいらないような一時開閉ルール
・2重扉による外気からの遮断
・スリットいれた透明カーテンの設置
・清掃ルールの明確化

などにより、5Sの「清掃、清潔」を維持することが大切です。


L輸送企業、搬送者への教育 

 積み込み、輸送作業における作業指導について、確認しましょう。

 社外の輸送業者さんによっては、十分に教育されておらず、
荷役の運搬や取り扱いが乱雑で、運送不良が発生しやすいこともあります。

部材の重要性を認識した適切な取り扱いがなされるように教育し、
運送契約を締結するなど注意しましょう。

輸送品質を保つために、コンテナへつむ際に異常がないことを写真やビデオで撮影して、
出荷時の異常確認をして、いざ、問題があったときに説明できるようすることもできます。

出荷前に運転手さんの顔写真も撮って、きちんと記録に残すなどさまざまな工夫が考えられます。


M5Sの徹底

 倉庫内の5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の徹底が、
図られていることを現場確認しましょう。

管理の基本ともいうべき『5Sの徹底』は、倉庫保管においても大切です。

5Sの徹底と品質改善


N現場の教育

 上記の14の内容が 倉庫管理者、受入検査者に理解されているか、
確認するために、直接質問してみましょう。

もし、うまく答えられないことがあれば、それが改善のポイントです!


倉庫と作業者教育



ひらめき今回は、納入される部材の保管における品質管理についてご紹介しました。

納入された良い部材を、良い状態のまま使用するために、
どんなポイントに着目すればよいのか、ヒントになれば幸いです!


【関連記事】
良い部品は良いパートナーから!
納入部材の品質不良、改善方法とは?
商社を通じた海外部材の品質指導とは?
工場監査とは、向上監査!
posted by かおる at 20:22| Comment(4) | TrackBack(0) | 部材品質
この記事へのコメント
かおるさん、こんにちは。
部材保管に対しても色々ポイントがあるんですね。
さすがにプロの監査員って印象を受けました。
かおるさんが経験された監査の中で、「これは酷かった」みたいなエピソードはありますか?
実際の監査に纏わる話なども聞いてみたいです。
Posted by QA課代 at 2011年04月25日 10:47
QA課代さま

こんにちは
品質管理研究所 かおるです。

あまりつらいと感じることもなく、
楽しんで仕事ができているので幸せです。

工場監査は、
さまざまなプロの方に
お会いできる絶好のチャンスですので、
たいへん刺激にみちていますね。

ものをまぜる、ものをきるなどの

基本的なことを確実に行うためには、
どんなことをすればよいのか

当たり前のことを深く考えると
面白い発見があります。

あかちゃんのように、
見るものすべてが新しく、
つきることのない興味を
常に持ち続けたいものですね!








Posted by 品質管理研究所 かおる at 2011年04月25日 18:12
かおるさん、こんばんは。

全然違うコメントなのですが、
今日初めて、協力工場の見学をしてきました。

これからお付き合いするであろう工場なのですが、私が品証課として見学に行くということが今朝急遽決まり出発したので、何の心の準備もなく行くことになってしまいました。。。


まぁ、「監査」の意味で私も行くことになったとは思うのですが・・・。


恥ずかしながら、何もできずにただの「見学」となってしまったと思います。自社の製造とは別工程の工場の為、工程についてもうまく質問もできませんでした(涙)


品証課としての「目」で見てくることができず、ちょっとヘコんでました。


かおるさんもこんな経験ありましたか?


改めて、これからもいろいろ現場をみることで成長できればいいなと思います。
Posted by みず at 2011年04月25日 20:08
みずさん

こんにちは
品質管理研究所 かおるです。

協力会社さんの現場を
みてこられたのですね!

いきなり現場に行く機会があって
気づきが多い一日になったみたいですね。

協力会社さんとお顔合わせできただけでも
価値があったのではないでしょうか。


わたしの場合は、同じように、最初は
何を確認すればよいのかわからず、

事前にききたいことをチェックシートにまとめて、もれなくききだすことだけで必死でした(汗)。

日々、試行錯誤ですね。


自社ではなく、
異なる製造工程となれば、やはり
現場をみぬくことはむずかしいですよね!

そんなときは、
製品のQC工程図を出していただいて、

受入検査から出荷検査までの一連の工程
を客観的にみて、気になるところを
説明していただくのがおすすめです。

ただ、工場にいく目的にもよりますので、
協力会社さんの業務の都合もみつつ、

じっくり見る場合は、事前に了解を頂いて
行くのがいいかもしれませんね。


協力会社さんは、大切なパートナーなので
たくさん顔をだして、

ぜひ、良い関係を築いてくださいね!

仲良くなれたら、きかずとも、

『実は、・・・』ぽろりぽろりと
自分からポイントを話し始めてくれるはずです。







Posted by 品質管理研究所 かおる at 2011年04月26日 20:19
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