新たな部品や材料を評価する際には、候補となる取引先さんから
試験サンプルを頂き、信頼性試験を実施して、部材の品質を評価します。
今回は、この試験に用いられる『信頼性試験サンプルの素性の重要性』について考えてみます。
信頼性試験には、温度サイクル試験、高温高湿試験、紫外線照射試験、断続通電試験、
塩水噴霧試験・・・などがあり、
お客さんの手元にとどけられる品質を確保するために、
市場での使われ方を想定した様々な過酷な加速試験が実施されています。
製品を市場で実際に保証される期間使用して、確認することができれば、
実績となるのですが、それでは、製品がいくらたっても市場で販売されなくなりますので、
上記のような過酷な加速試験を実施して、
短期間で信頼性、耐久性、安全性をもった製品を作り上げることが必要となります。
そこで、その加速試験に投入される提出試験サンプルが、
最終的に量産時に実現される品質レベルのものでなければ、
試験をする意味がなくなってしまいますので、
その製品の『生産履歴』を明らかにしておくことが、
試験の事前準備として、非常に大切なことです。
この試験サンプルの素性(生産履歴)確認は、
部材の評価における見落としがちな大切なポイントです。
@低すぎる試験品質のサンプル A高すぎる品質の試験サンプル
にわけて、問題点を以下でみていきましょう。
@低すぎる品質のサンプル
Q 試験サンプルは、どのようにつくられたか?
ばらつきの大きい手作り品か?
開発に使用する技術検討用の小さな試作機品か?
生産現場の量産機で製造した量産相当品か?
上記のような試験サンプルの生産履歴の違いで、
信頼性試験の価値が、変わってきます。
十分に生産工程を理解していないような方が、
開発試験サンプルとして、治具などもつかわず、手作りで加工したような場合、
作業ばらつきがおおきく、試験後、劣化要因となっていることが多く、注意が必要です。
試作機で生産してばらつきが大きい場合も同様ですね。
これは、まさに、試験サンプルを評価しているのではなく、
試験サンプルを作成した人の力量や試作機の性能を評価するような試験になっています。
こんな間違いが発生しないように、
取引先さんには、試験の目的や製品開発の中での試験の重要性や位置づけを明確につたえ、
試験目的に沿った妥当なレベルの試験サンプルを要望し、
試験前には、きちんと試験サンプルの現物の素性を確認し、試験に投入しましょう。
時間がかかる信頼性試験が、再試験とならないように、情報をしっかり共有したいものです。
A 高すぎる品質のサンプル
Q 試験サンプルのグレードは?
普の品質の量産品
高い品質の量産品 (特定顧客向けなど)
高い品質の量産品から高グレード品のみを抜き取り選別(チャンピォンサンプル)
試験サンプルを量産品から提出される場合でも、製品品質には、
ばらつきがあることからそのグレードを認識しておくことが必要です。
取引先が、新たなお客さんとなりえる企業に対して、
わざわざ悪いと思われるサンプルを提出したいと思うことは少ないでしょう。
取引先は、サンプルで良い評価をもらって、取引を開始したいという想い
が強くはたらいた場合、チャンピォンサンプルをだすこともあるようにおもいます。
特に、海外の新規メーカーさんで、
試作評価用サンプルで良い結果がでたにもかかわらず
量産時には、試作評価品の高いレベルの結果が維持されず、
品質が格段に低下している場合があります。
試作で評価したものが、本当に量産時にも維持できる能力があるか注意が必要です。
いざ量産にはいったとたん、低い品質のものが納入されている
ようでは、何のための試作評価だったのかわからなくなりますね。
つまり、信頼性試験用サンプルとしては、
@品質が低いすぎるサンプルや A量産では実現できないような品質が高すぎるサンプルが
提出されないように注意を図ることが必要になrますね。提供サンプルが、量産品品質との変化がないことを生産工場、生産材料、生産設備、生産者などの4Mの観点から、事前に比較提示いただくことが必要ということになりますね。
取引先候補さんをうたがうことはよくありませんが、
実績のない企業さんと取引を始める場合は、すこしだけ注意をしていただきたいものです

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確かにサンプルを作る過程によって、その試験は何を評価しているのかが変わってきますよね。
私の会社でも工程変更時に変更前は量産機、変更後は実験設備でそれぞれ作ったサンプルでデータ取りをし、変更のデータとして平気で持ってくる人がいますよ。
そういう人は変更に対してどんな素姓のデータが必要なのかが分かっていなんですよ。きっと。
こういう人達にサンプル作りの重要性を理解して貰うための良い方法はありませんか?
こんにちは
品質管理研究所 かおるです。
QA係長さまのおっしゃるとおり、
社外だけでなく、社内においても、
評価サンプルの妥当性について注意が必要ですね。
サンプル作りの重要性については、
理解してもらうように都度指導することも
大切ですよね。
できれば、自らその必要性に気づいて
考えてもらうように促したいですね。
わたしの場合は、
工場監査に行く機会に恵まれていますので
できるだけ外の企業に一緒にメンバーを
つれてでる機会をつくるようにしています。
監査の場合は、
自分自身が試験を実施し、報告するのではなく、
メーカーさんからのデータをチェックすることになりますので、
逆の立場になれば、
これまでの自分のやりかたが不十分であれば、
いかにデータが不足していたか、
改めて気づくことになるのではないかと思います。
時間は、かかりますが、
『いわれてやる』よりも
『きづいてやる』ような
自発的な環境や機会をつくってあげたいものです。
品質管理研究所 かおる