(2011年1月10日)品質管理研究所
お客さまのニーズが多様化し、製品サイクルが短くなるなかで、
企業は、すべてが一社で細かな部品や部材まで製造するよりも、自社の得意な分野に集中し、
他の分野でよい技術をもつ他社の協力をうけて、ものづくりをすることが必要になります。
人間も、だれかに頼り、頼られ生きているように、
企業においても、さまざまな取引先サプライヤーと連携協力をはかることが欠かせないでしょう。
その経営管理手法が、『サプライチェーンマネジメント』(SCM:Suply Chain Management)ですね。
『サプライチェーンマネージメント』とは、
取引メーカーから原材料の調達をはかり、製品を製造し、顧客に販売し、アフターサービスを行うような一連の流れをサプライチェーンといい、購買情報、在庫情報などを共有化し、在庫の削減や物流費用の削減、さらに原材料調達から製品がお客様に届くまでの期間の短縮を積極的に図り、顧客の満足度を向上させる方法です。
では、品質管理の視点から具体的にSCMで何をすればよいのでしょうか。
新規に取引を行う前には、直接部品を購入する第一協力会社の健康状態(財務状況)を把握します。
また、現場の製造状況を確認して、頼れる企業と連携することが必要です。
さらに、その部品を構成するための第二協力会社、第三の協力会社・・・、輸送企業について、
どのような企業が連携して、製品ができあがって自社に納入されるのか、そのサプライチェーンを理解することが必要でしょう。当然のことですね

第二協力会社や第三協力会社や輸送業者の選定は、
多くの場合、取引先が、独自に選定することになります。
第三取引先→第二取引先→第一取引先→輸送業者→企業→お客様
といった流れの中で、窓口となる取引先を信頼して、取引を行いますが、
自社の製品にくみこまれる製品の一部になる部品がどのような企業で作られているか、
どのような企業が輸送するのるか、そしてどのような管理がされているかといったことを
製造者の責任として、自社で把握することが大切です。
■ 工場監査人の視点
そのために、製品品質の向上と連携関係の強化をはかるため、
下記の品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の『QCD』のポイントを明確にすることをお薦めします。
(1)品質 Quality
■ 第一取引先による第二取引先に対する品質確認試験と工場監査実施状況の確認
第二、第三の協力会社は、自社と直接取引しないものの製品に組み込まれる部品を作っていただくことになるため、まずは、第一取引先がしっかりと第二取引先の製品の品質を把握し、管理しているかを確認する必要があります。
そのためには、第一取引先の責任で、
その部品の信頼性試験や社内の技術確認をおこなっていること、工場監査による現場確認を通じて、安定した製品が製造されるような状態にしていること、定期的に品質会議を開くなどの継続した改善・管理体制が構築されていることを確認することが大切です。
このような第一取引先の積極的な対応が見られない場合や重要な部品の場合は、
第二取引先に対しても、第一取引先と一緒に工場監査を行い、
その現場状況の改善と今後の管理体制の再構築を行えるよう、第一取引先と一緒に改善していくことが必要になります。
(2)納期(Delivery)
■ 人、もの、お金、情報の流れを明確にする流れ図の提出
取引に関わる企業名(商社、輸送業者を含む)を明確にし、その企業の連絡窓口担当者を主と副2名で社内固定電話、携帯電話、E-Mailアドレスを記載し、ものの流れ、お金(伝票)の流れ、情報(管理)の流れを明確にしたうえで、その流れ図を取引先に提出してもらうのがおすすめです。
自社に製品が届くまでの流れを明確にするとともに、新たな部材供給先が知らぬ間に追加されて、品質が変化しないようにするため、また、取引開始後、品質問題が発生した際にすぐに連絡をとって、お客様に回答ができるようにするために、サプライチェーンを見える化することは非常に大切なことです。
※特に、提出された流れ図について、きちんと管理できていない企業で生産されて、うしろめたいような場合、残念ながら、この流れ図に含めず、報告される企業さんも中にはありますので、注意が必要です。
(3)コスト(Cost)
■コストにかかわる生産指標(生産量、生産リードタイムなど)の確認
最終製品を製造するにあたり、無理な納期や生産量を協力会社に要求することは、協力会社内での通常作業とことなる無理な連続作業や夜勤手当などの余計な費用を発生させ、収益を悪化させることになるだけでなく、品質の低下の要因にもなりますので、取引先協力会社の生産体制を十分に認識することが大切であり、下記の情報を確認しましょう。
・一日の生産実績量(平均、Max)※現在の勤務体系(24時間3交代製造など)
・今後の生産拡大予定量
・生産リードタイム
・製品品質が保証される保管条件と保管期間(そしてその裏づけとなる試験データ)など
そして、企業間の連携によって、三ム(ムダ、ムリ、ムラ)を抑制できることがないか積極的に話し合うことが大切です。捨てるものを再利用できないか、輸送コストをおさえるために梱包を改善できないかなど、小さな協力の積み重ねがかかせません。
このように、取引において、自社ですべてを行うのではなく、
協力会社で得意な分野をお任せして、部品をつくってもらうことで、
選択と集中を図り、効率的な経営ができる反面、
取引先がひとつ、ふたつ・・・と増えていくに従い、異なる企業文化や考えをもつ企業との接点がふえて、より密な連携をとる必要性があることを十分に認識することが大切ですね。
『製品の信頼性試験』でも、問題の多くは、『異種材料の結合部』に現れることが知られており、問題がおきないようにきめられた製造管理条件を見出し、厳しい管理を行ったり、第三の緩和する特殊な材料をいれるなど工夫をすることで、課題をクリアしていきます。
ですから、同じような企業の連携においても、『異種企業との連携接点部』での問題がおきやすいことを認識し、厳しい管理や第三者としての介入も必要という考えをもって、サプライチェーンの管理で、問題が発生しないように注意してもらいたいものです

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