2010年12月30日

トレーサビリティの確保は大丈夫?

トレーサビリティの確保は大丈夫?
(2010年12月30日)品質管理研究所


製造業において、製造や販売・顧客の記録をきちんととって管理することは、
大切な製造者の責任ですね。

日本では、社会保険庁での年金問題で、5000万件もの記録漏れが明るみに出ましたがたらーっ(汗)
きちんとした管理をしないと、大変なことになることは、容易にわかりますね。


だれにでも失敗はありますが、その失敗をおかしたとき、どのような対応するかが大切です。

そんな急を要する対応をせまられたときに
適切に対応がとれるようにするために事前にすべきことが、

『トレーサビリティシステム』の構築です。


『トレーサビリティ(traceability )』とは、

製品構成する部品や原材料を含む製品全体の生産(加工、組立)、
流通、販売、サービス、廃棄等にかかわる一連の履歴を確認できるようにすることです。

直訳すると、『追跡可能性』となりますね。


生産者は、トレーサビリティシステムを構築し、
問題が発生したときに問題の原因を究明し、被害を拡大させないように
迅速に対応できるようにすることが大切です。

日本では、法律面で『消費生活用製品安全法』が改正施行されたことで、
企業規模を問わず、消費生活用製品にも「リコール」が義務付けられていることも
大切なポイントですね。

ですから、製造者の責任できちんと製品を回収し、お客様に対して、
被害を拡大させないように迅速に対応することが求められます。当然のことですね。

※経済産業省 HP
1)リコールの義務付けについて 
2)各社リコール情報     
   

製品品質を確保して、品質のよい製品をつくるために努力することは当然のことですが、
もし、品質不良が発生したとときにどのように対応するのか、その準備をしておくことも
大切ですね。備えあれば、憂いなし。


以下では、大切なトレーサビリティの2つの役割について、確認していきましょう。

@トレースバック Aトレースフォワード

@トレースバック 

対象の製品の製造履歴を調査し確認し、問題を解決すること。

 そのためには、どんなロットNoの部品や原材料を組み合わせて、
どんな製品をいくつ作ったか、製品ひとつづつを識別できるように
製造NoやバーコードNoをつけて管理する必要があります。

つまり、5W1H、5M1E を管理するということですね。

5W1H は、

When(いつ)   〜日付、時間、製造シフト 例)2010年12月28日、17:00、2直

Where(どこで) 〜工場、ライン、設備 例)アメリカ工場

Who(だれが)    〜生産企業 例)○○会社(業務委託)

What(なにを)    〜ロット番号、製品番号、製品名、例)No □□□□-□□、顕微鏡-△△

Why(どんな目的で) 〜通常生産品、手直し修正品、試作品など

How(どのように)  〜作業手順 例)作業手順 No○○○-○○

5M1E は、

Man(人)       〜どんなレベルでだれが生産?検査したか? 例)○○会社 太郎さん

Machine(機械)    〜どんなラインや機械設備で生産したか? 例)アメリカ工場 Aライン

Material(部品、材料)〜どこから納入されたどんな部品番号の部品や原材料をつかったか?

Method(作業方法)  〜どんな方法でどんな設定で作業したか? 例)設定電流値 ○○A

Measurement(測定) 〜どんな測定機器でどんな測定をしたか? 例)JIS、自社独自の方法

Environment(環境)  〜どんな作業環境で生産したか? 例)温度、湿度、照度


上記のことをしっかりとひもづけできるように、
現場の帳票やチェックシート、ITシステムなどで管理しておく必要がありますね。


さらに、実務上では、次のようなポイントに注意してみてくださいね。

■仕様書の製品番号によるトレーサビリティ管理

通常、部品メーカーから製品を購入する場合、トレーサビリティを確実にするために、
納入仕様書にトレースができるような製品番号の定義をいれます。

自社の製造工程はもちろん、組み込む部品や原材料も含めて、トレースできるように、
製造番号のそれぞれの位置がどのような意味を持つかを定義し、問題が発生したときに
すぐに改善できるようにすることが大切ですね。

ですから、製品の番号には、生産年月、工場名、設備番号、製品名、機種、製品ロット
などがすぐにわかるような番号のつけ方をつけるのが一般的です。


■『納入日』による紐付け管理

 特に部品を組み立てる企業に納入して、不良の一報が入る際には、
『製品の番号』や『生産日』ではなく、『納入日』で不良を報告される場合が多くあるので、
生産した製品と顧客先での納入状況とをひもづけしておくことも実務上重要ですね。

その場合、生産部門と営業部門・ロジスティクス部門との連携も欠かせませんね。
ロジスティクスを外部に委託している工場も多くあるので、
そのような連携も事前に確認しておくことが大切ですね。


■バーコードやRFIDタグなどによるIT管理

バーコードやRFIDタグを活用して履歴管理する場合は、
さらに詳細なデータをもりこむことができますし、製造工程中の履歴管理を自動化でき、
記入ミスなどもなくなるので、最近導入が増えてきているような気がしますね。

※参考 日立HP 『RFIDタグを活用したトレーサビリティについて
     
※参考 クロネコヤマトシステム開発 『食品製造業向けトレーサビリティシステムについて』 
     

■紙ベースの製造履歴の記入時には注意! 

ITによる管理を行わない工場では、紙ベースでの管理が行われていますので、
記入者の書き間違いや記入忘れ、さらにPCへの入力時のミスなどに注意を
はらうことが実務上大切となります。

 現場の作業者がこのようなトレーサビリティの大切さを十分に理解していない場合、
適切に記入されない場合がありますので、新人研修や業務委託などで、
作業者の入れ替わりの多いような企業の場合などにはとくに注意が必要ですね。


■部品や原材料の変更には注意! 

自社の製造工程のみならず、サプライヤーさんから購入している部品や
原材料については、自社で変更を知ることができませんので、

変更の届出について、基本取引契約や品質保証契約の中で事前に
取り決めておく必要があります。

基本的に5M1E(Man、Machine、Material、Method、Measurement、Environment)
の変更や部品および最終製品の品質に影響を与えるすべての変更に対して、
事前に申請して、承認後変更するように取り決めておくことが大切です。

サプライヤーさんが良かれと思って行った変更であっても、
それが、最終商品に与える影響はわかりませんので、

その部品を使用するメーカー側で、試作試験などを通じた判定が
必要なこともありますので、安易な変更は、許されないということを
基本にしたほうがよいでしょう。

逆にこの規定に忠実にしたがうことで、
現場での改善が進まないという悩みをもつサプライヤーさんの意見を
きくこともありますが、綿密な情報交換を図り、

問題を未然に防ぐ努力を関係者間で図ることで解決していくのがよいでしょう。


■不良の原因の追究はどうやってやるの?

 不良品の発生原因についての追求方法については、
市場で発生した不良情報として、製品の番号を入手することが大切ですね。

その情報を元に可能な限り、当時のその製品の生産ロット情報を入手するとともに、
前後の生産ロット情報との違いについても確認することが大切です。

さらに、すぐに、その不良品を回収しましょう。回収がむずかしいのであれば、
現場にいって、現物確認して、現実を把握する(三現主義)ことが何より大切ですね。

具体的にどのようにしたらよいのか、
コベルコシステム株式会社さんのHPにきちんと記載されていますので、
こちらをご参考にしてみてくださいね!

※参考 コベルコシステム株式会社 HP 『4.1 不具合理由の特定 4.2影響範囲の特定』
 http://www.kobelcosys.co.jp/company/mono/m080804.html



■問題の製品の不良原因がわからない?! 

お客様から回収した製品から製品番号を確認し、
当時生産した履歴をひもづけて確認しますが、
そのとき明確な原因が抽出できない場合があります。

その場合、取得しているデータの質と量が不足していないか
改めて確認して、取得するデータをみなおしてみてくださいね。

特にリワークした一部修正したような製品など、イレギュラーな工程で
製造されたものなど記録がもれている場合がありますので注意が必要です。



Aトレースフォワード 

上記で確認した特定製品を購入、使用しているお客さんを特定し、
履歴をもとに商品の回収などを行うこと。

 不良が発生した際には、その製品と同じ履歴をもった不良製品を
一まとめにして、製品を購入していただいたお客様に対して注意を促したり、
すぐに回収する必要があります。

そのためには、上記@のトレーサビリティ履歴をもとに、
対象範囲を明確にした製品とお客様の情報を結びつける必要があります。

高額な自動車などでは、お客様の情報と車の情報が結び付けやすいのですが、
安価な商品になるほど、その顧客のデータの結びつけは難しくなりますので、
その場合は、特に、TVや新聞や広告、店頭などで注意を喚起したりすることが一般的ですね。

パナソニックが問題のあった石油ファンヒーターの回収を行った際も、
マスメディアを活用して、真摯に対応していたことが、記憶に新しいところですね。

生産から販売、アフターサービス、廃棄まで一貫して、
お客様の顔をみて対応できれば、よいかもしれませんが、
現在の分業化されたサービスシステムの中ではなかなか実現はむずかしいので、
サプライチェーンの前後での情報の共有と連携が大切になりますね。


今回は、トレースバックを中心に考えてみましたが、
みなさんのトレーサビリティの理解のため、何か参考になることがあればうれしいかぎりです。


posted by かおる at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | トレーサビリティ
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