商品の価値は、単に機能をはたすことだけでなく、その外観上の品質も、同時にもとめられます。特に最近では、直接お客様の目に届く部分に関しては、『品位』をもとめられているといってもいいすぎではありません。
人間と同じで、中身は、重要なことはもちろん、見た目も重要ですね。
初めてお会いする方に対して、みだしなみがきちんとできていないと、せっかく中身がよくても、印象がわるくなってしまうのと、まさしく同じですね。
ですから、製品の品質においても同様に、外観上の品位を保つことは、中身にもまして、大変重要だということを認識することが大切です。
では、いったいどのように外観品位をたもてばよいでしょうか。
外観品位を保つためには、その判断基準が難しいポイントです。ですから、多くの工場で、官能検査に用いる『限度見本』が作製され、運用されています。
今回は、この『限度見本』を活用する手順について、具体的に考えてみましょう。
■『限度見本』を活用する手順
@お客様の要望の確認
A仕様書への反映
B工程作業員・検査員への個別製品の品質教育
C限度見本の作製
D限度見本の承認
E限度見本の管理
F限度見本の更新
下記で、それぞれの項目について具体的に説明します。
@お客様の要望の確認
お客様が望むコストと品質で、表面の外観品位を保つためには、製品の外観の良否を判定する基準をお客様と事前にとり決める必要があります。試作や量産試作を実施する中で自社の製品の品質レベルを把握しておくとともに、お客様が要望するレベルとの差を検証し、工程改善や検査体制の確保をする必要があります。その現状の状況をお客様にも理解していただき、お客様への要望に応えていく必要があります。
A仕様書への反映
お客様と話し合って決定した、製品外観の良否判定基準は、取引を開始する前の納入仕様書であらかじめとりかわし、具体的に記載しておきます。
取引開始時には、最終顧客の製品への要求品質や顧客企業での要求品質に応じて、異物なきこと、変色なきこと、きずなきこと、などという記載をし、すべて不良と判断するようなこともあります。しかし、お客様が求めている以上の、度を越えた過剰な品質をもとめ価格を押し上げている場合は、お客様が望んでいることではないので、きず、汚れ、異物、凝集物などの、色や大きさ(長さ、幅、寸法)など可能な限り具体的に記載して管理し、お互いがwin-winの関係(お互いが幸せ)になるようなコミュニケーションをとることが望ましいといえます。実量産を踏まえて、取引開始後に、仕様書の中に、初期流動確認後(数10Lot生産後、3ヶ月後など)に改めて、具体的に決める旨、仕様書に記載する場合もあります。
B工程作業員・検査員への個別製品の品質教育
お客さまから求められる品質レベルについて、工程作業員や検査員にきちんと教育を実施することが必要です。量産ラインの場合は、安定して同じ製品を継続して生産しますので、仕様書に記載した品質基準をもとに現場リーダーや品質担当者が教育をすることが大切です。
しかし、実際に現場で良否判断する作業者が官能検査をする場合、仕様書から落とし込んだ数値を記憶し、書面を都度確認して判断することは、現実的にむずかしいので、『外観限度見本』を作製することになります。
※注意ポイント
特に、量産工程では、協力会社さんやパート社員さんに実施いただいている場合は、人の出入りも多く、教育にもれが発生しやすくなるため注意が必要です。教育すべき人材のもれがないように、教育スキルマップを作成し、だれがどこの工程でどんな作業をどんなレベルでできるのか、また、どんな資格や就業年数があるのかなど一覧表にしてチェックしておくことが必要です。協力会社、人事・総務部門との連携を図り、人材教育の遅れによる不良発生を未然に防止しましょう。
C限度見本の作製
『限度見本』は、製品の良品と不良品の判断基準となる見本です。
人間の官能検査は、機械検査では代用できない優れた検査方法として確立されているものもありますが、そんな熟練工を要するような検査ばかりではありません。ですから、だれでも簡単に同じ基準で判断することができるように、一定した品質を保つための『限度見本』の設定が大切になります。
『限度見本』の設定では、製品の合格基準として、このレベルの傷や汚れまでは、許容できるといった最低レベルの良品基準をつくる場合が多いといえます。また、不良モードを明確化するために過去発生した不良を明示、教育するために作成した不良限度見本を掲示している場合もあります。
<現物製品での限度見本の作成>
『限度見本』は、良品と不良品の判別基準となる見本なので、特定のモノを活用して模擬して作るというよりは、量産試作などの段階で発生した、実際の製品の現物を活用して作成することが望ましいといえます。
D限度見本の承認
限度見本を承認するためには、良品か、不良か判断がむずかしいレベルの見本を準備し、お客様へ訪問し、限度見本として、承認を頂きましょう。仕様書に記載された傷などの場合、いざ、実際に現物をみるとあまりに大きいのでは?といったお客様からのコメントもみられますので、注意が必要です。百聞は一見にしかず、仕様書に記載されていても、表面の色の違いによって類似製品ではOKなものが、現物をみると違って見えることもあるので注意してみてくださいね。
お客様に承認されたら、きちんと限度見本サンプルに
『見本の管理No、お客様・作り手の会社名、部署、捺印、発光日付、管理期限』
等を記載したものをつくり、取り交わしたシールを限度見本に添付して、管理しましょう。お客さまの要望でそれぞれ2本同じ見本を作製して、管理する場合もありますね。
E限度見本の管理
<マスター限度見本から、限度見本(子)の作成>
お客様と取り交わした限度見本は、貴重な管理物になります。そのため、そのマスター限度見本をもとに、さらに工程運用用の限度見本(子)を作成することがあります。
特に、量産ラインで複数ラインある様な場合は、限度見本がひとつだけでは足りませんので、社内運用上の限度見本を複数つくることが必要ですし、汚れてもバックアップできるように工程運用用の限度見本(子)をつくることは必要でしょう。
<管理Noの必要性>
また、限度見本(子)であっても、工程では、外観品位を確認するための貴重な見本になりますので、管理番号をつけて、運用管理をする必要があります。一般的には、工程中の設備の管理というよりは、校正対象機器リストや管理設備リストなどにいれて、定期的に管理している企業が多くみられます。
<取り扱い>
限度見本は、貴重な見本ですが、煩雑な作業を行う現場で活用しないと意味がありませんので、下記のポイントについて取り扱いに注意してみてくださいね。
・作業者がいつでも確認できる場所におく。(使わないと意味がない)
・汚れないような透明カバーをつける。(カバーの汚れ、傷には注意)
・日光の直接あたらないところにおく。(色限度見本の場合には特に変色に注意)
・直接、素手でさわらない。(表面の質感が変化しないように)
・工程中の量産品とまじらないように識別管理を忘れずに。(きちんと見本ラベルを貼って下さいね)
F限度見本の更新
限度見本は最終顧客の要望にもとづく基準です。時代の変化にともない顧客の要求レベルも変化するものですので、絶えず変化するものであることを認識し、お客様での不良連絡、お困り連絡にもとづき、望まれる品質ものに合わせていくことが必要です。
以上のとおり、
今回は、限度見本の活用手順について説明いたしましたが、何か参考になるところがあればうれしい限りです。
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はじめまして、
品質管理研究所 かおるです。
記事を読んでいただきありがとうございます。
限度見本は、検査の判定基準となる
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うまく使いこなしてみてくださいね!