2010年11月15日

外観検査に適切な照度とは?

外観検査に適切な照度とは? -品質管理研究所-


ものづくりにおいて、@品質面、A安全面、から『明るさ』を管理することは重要です。

 社員のはつらつとした『明るさ』こそが、何より大切ですが、今回は、ライトの明るさについて、焦点をあてて考えてみます。

■ 明るさとは?

明るさは、照度という定量的(数値)な指標で管理することができます。

照度とは、光が当たる面での光の総量で、明るさの大きさを示します。
単位は、ルクス[lx]で表されます。

デスクライトをおいたときの手元の明るさを想定すればわかりやすいですね。

■ 明るさの管理

『明るさ』について、下記の2つの視点が大切です。

(1)品質面〜適切の明るさの環境でばらつきのない外観検査を行い、品質を維持すること。
(2)安全面〜製造現場の明るさを保ち、はたらく社員の安全を確保すること。



(1)品質面での照度管理
 品質面での照度管理において特に重要なのは、製品の品質検査であり、製造工程同様に4Mを管理することは非常に大切です。

 4Mは、Man、Machine、Material、Methodですね。
 
 4Mは、問題発生時の原因追求の指標、または管理ポイントとなる切り口です。製品検査の場合は、これにE:Environment(検査環境)を加えて考えることが大切です。

@Man:人財
・教育・認定された検査者が実施する。(製造者とことなる第三者が実施)
・連続検査による検査者の疲れを配慮したローテーションにする。

AMachine:検査設備
・校正された適切な検査設備を使用する。
・日常点検管理を行い、測定精度を維持、保証する。
 (校正サンプルの管理)
・測定機器による差があることを理解すること。
 (自社とお客様の検査設備の違いをクロスチェックにより、測定データの違いを理解することが大切です。)

BMaterial:検査材料、限度見本
・検査サンプルは、ランダムにぬきとる。
 (製造者からわたされたものではない。)
・検査したサンプルをエビデンス(証拠)として、キープサンプルとして一定期間保管する。
 (お客さまとの取り交わしをする場合もありますね。)
・外観検査における良品と不良品の差を明確にするため、お客様と事前に限度見本を設定して管理する。

CMethod:検査方法
・事前に定められた検査方法に基づき実施する。(JISや企業独自の方法など)
・測定データのピーク値をとるのか、平均値をとるのかなど、お客様との認識を統一すること。


この4Mに加わるのが、今回のポイント、Environment(検査環境)です。


DEnvironment:検査環境
・外観検査で、測定ばらつきが生じないように、検査場づくりと照度管理を行う。

 暗いところでは、本の文字が見えにくいように、照度が低くなると、みえにくくなることはよくしられていることですが、ものづくりにおける人間による目視検査と検査機器よる検査でも、同じことがいえます。

つまり、検査場の照度が悪くなれば、同じ検出感度を保ったまま、安定した検査を行うことがむずかしくなります。つまり、検査レベルを維持できなくなることなります。

そこで、検査照度をきちんと管理するために、検査場の照度の基準を設定し、検査環境を作り上げることが必要になります。検査室をくろい暗幕で覆い、時間帯にかかわらず一定の条件で測定できるような検査室をもつ企業も多くみられます。

では、どんな基準を設定すればよいのでしょうか。


<検査照度の基準は?>

 まずは、身の回りの照度の標準的な値について確認してみましょう。


※【参照】 産総研 日本の明るさ標準を作ろう より

_____________________________________
 

【照度】 

■屋外・快晴     100,000 [lx]
■屋外・曇天      30,000 [lx]
■手術台        20,000 [lx]
■野球マウンド(福岡ドーム) 2,500 [lx]
■野球内外野(福岡ドーム ) 2,000 [lx]
■FIFAサッカースタジアム 1,400 [lx]
■満月の夜         0.2 [lx]
■星明りのみの夜      0.02 [lx]
■暗闇         0.007 [lx]

_____________________________________


では、工場の実際の検査環境での照度は、何ルクス[lx] がよいのでしょうか?


JIS Z9110 照明基準総則(General rules of recommended lighting levels)では、下記のように設定されています。

※JISは、著作権で保護されているため、詳細本文(PDF)は、『JIS Z9110』検索して、閲覧してみてくださいね。 
http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html

______________________________________

工場 の照度[lx]について

■組立、検査、試験、選別、極めて細かい視作業 3,000 〜1,500 [lx]
■組立、検査、試験、選別、細かい視作業 1,500 〜 750 [lx]
■組立、検査、試験、選別、普通の視作業 750 〜 300 [lx]
■包装、荷造 300 〜 100 [lx]

______________________________________

JISZ9110照明基準総則のポイントについて、
 上記のリンクの通り、科学情報総研さんがきれいにまとめられていますのでご参考まで。



 JISの基準で、照度は、普通の視作業であれば300lx以上あることがのぞましいということですが、実際には、外観目視検査は、細かく確認する必要がありますので、少なくとも750lx以上は、必要でしょうね。

実際に照度計を用いて測定すれば300lx〜750lxは、検査場では、経験上暗いことがよくわかります。手元に照明をつけた適切な環境であれば1,000lxを余裕で越えますので、750lxをひとつの目安にするのが妥当ではないかと思います。

 ただし、その製品が、どんな大きさで、どんな色で、どんな形状のものを不良と判断しなければならないかを考慮したうえで、適切な明るさについては、量産開始時までに確認することが大切です。 
 ですから、750lxという設定は、JISの参考値ということで、対外的な値ということで照度基準を設定する際のひとつの目安にしてみてください。

<明るくすることの弊害は?>

 逆に数千lxもあるような環境では、明るすぎて、目がつかれますし、見えずらくなりますので、同時に上限値についても範囲をきめて管理をすることが必要ですね。

 また、検査した製品を、良品として出荷するような場合や工程検査の場合は、明るくするために、蛍光灯をライン上に設置したあまり、埃をひきよせ、埃の落下による製品への異物源となることがまれにあるので、検査ライン上に直接蛍光灯がいかないように設定したり、カバーをつけて防いだり、静電気を帯びないようなライトにするなどの細心の注意をはらってくださいね。

<照度の測定は?>
 
 照度は、照度計をつかって測定します。照度計は、1〜2万円前後で購入できますので、工場に1台はぜひとももっていてほしい測定機器といえます。

 例)MK Scientific, Inc 照度計 
 
 ※一般的な照度計について、下記をご参考まで。




 照度は、光源に近づけたり、真正面からまっすぐあたるようにすると大きくなりますので、実際に検査物を確認する位置で照度測定することをきめておくことが大切です。 

検査場所の管理のため、毎回同じ位置で照度を測定し、その値が基準値以内になっていることを、QC7つ道具であるチェックシートにより定期的にチェックすることが必要になります。チェックシートには、測定場所や測定時の注意事項を記載しておくのがおすすめですね。

 また、定期的に校正しておくことも忘れずに!



(2)安全面での照度管理について

 ものづくりにかぎらず、企業の最大の資産は人財です。

 その人材が安全な環境で事故をおこさない環境にたもつことは、経営者としての重要な職務であるといえます。ある外資系の製造業の企業では、労災が発生するとトップが交代するそうです。それゆえ、安全管理をトップダウンで厳しく実施しているということです。それは工場内だけでなく、工場外の行いも同様に管理されるほど徹底されています。

そんな重要な安全面での照度管理については、日本では、法律に基づき、下記のような管理が必要です。

※【参照】 測定販売機器のサトテックさんより
http://satotech.com/item/108.html

____________________________________

@労働安全衛生法23条
事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、非難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない。

A労働安全衛生規則604条(照度)
事業者は、労働者を常時就業させる場所の作業面の照度を、次の表の上覧に掲げる作業の区分に応じて、同表の下欄に掲げる基準に適合させなければならない。ただし、感光材料を取り扱う事業場、構内の作業場その他特殊な作業を行う作業場については、この限りでない。

作業の区分 基準
精密な作業 300 [lx] 以上
普通の作業 150 [lx] 以上
粗な作業     70 [lx] 以上

B労働安全衛生規則605条(採光及び照明)
事業者は、採光及び照明については、明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを¬生じさせない方法によらなければならない。 2 事業者は、労働者を常時就業させる場所の照明設備について、六月以内ごとに一回、定期に、点検しなければならない。

CVDT作業のための労働衛生上の指針
これは法律ではなく労働省通達による指導ですが、これによると、陰画表示のディスプレイでは、ディスプレイ画面における照度は500 [lx] 以下、書類およびキーボード面における照度は300 [lx]からおおむね1000 [lx]までとすること。

_______________________________________


上記の法律を守ることは、最低限必要なことです。

 さらに、実態に即して、不安全な環境を排除するために、その企業の製造環境にあった照度を設定することが大切です。

 多くの企業の工場では、窓がありますので、昼の明るいときだけでなく、夜暗くなったときにでも、安全な環境が保たれているか、時間帯も考慮して、工場内の明るさを管理して、安全に配慮することが必要ですね。人間の不安全な状態を未然にとりのぞくことは、製品品質の安定化につながります。

今一度、工場の適切な照度について、考えてみてくださいね。


今回は、照度と(1)品質、(2)安全 について考えてみましたが、照度と(3)作業効率性という論点もありますので、照度について、改めて考えるきっかけになれば幸いです!


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posted by かおる at 07:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 検査照度
この記事へのコメント
たいへん勉強になります。ありがとうございます。現在、製造業に従事しております。不良品の流出防止を図りたいと考えており、照明の「色」についてですが、疲れにくい色や傷などが発見し易い色(被検査物の色に対してこの色が良い等)等、知見ございましたらご教示頂けないでしょうか。※私が扱っている検査物はアルミ鋳物です。
Posted by アルミ鋳物屋 at 2011年11月29日 23:47
アルミ鋳物屋さま

こんにちは、
品質管理研究所 かおるです。

対象検査物がアルミ鋳物での
不良流出防止のための環境整備として、
照明について検討されておられますので、

金属製品の検査環境についての経験をふまえ、
ご紹介させて頂きます。


@検査環境の背景色
金属の場合は、特に、光の反射やうつりこみがあるため、
外の状態のうつりこみや光源のうつりこみへの注意が必要です。

外のものが金属にうつりこむと見分けがつきにくく、安定した検査にならないため、
検査台や検視台を黒色などの布や塗装などで統一して、極力余計なうつりこみを減らします。

例えば、うつりこみの大きいガラスなどの検査では、
周りを暗幕で覆った中で、余計なうつりこみを防止することもありますし、
異物が心配な場合だと、黒色異物が見えにくいため、
緑色や白色などの色に変えて、工夫することも大切です。

また、検査目的の光源としては、光源が直接金属にうつると検査しにくくなるため、
くもりガラスのようなカバーをつけたり、散乱したやわらかい遠目の光で検査することを
検討することも大切です。

■照明方式(直接蛍光、間接蛍光)の差異による感じ方の比較では、
【参考】 慶応義塾大学 福田亮子先生 人間環境整合論 
http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_22267/slides/05/38.html

直接蛍光150lxよりも間接蛍光130lxのほうが情緒的に不快ではない状態となっており、

間接的な光は、製品の検査だけでなく、
やはり、人間の目にもやさしいかもしれませんね。


A照度と疲れ
照度が高ければ、一般的に検出感度があがりますが、
逆に照度が高すぎると目が疲れてしまいますので、
適切な照度範囲を定めることが必要です。

一般に照度基準は、下限値として、
750lx〜1500lx以上で設定されている場合が多いのですが、
上限値を決めている企業はごくわずかです。

使用しているライトの状態にあわせていることが多いため
検査者の目の負担を考え、上限を決めておくことができればさらによいと思います。

■照度と作業効率・疲労の関係について面白いデータがあります。

【参考】 慶応義塾大学 福田亮子先生 人間環境整合論 
http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_22267/slides/05/15.html

照度と作業率、疲労率の関係から、
20lxから2000lxまで、照度が上がると、作業性が上昇する反面、
疲労率は、1000lx付近が最も疲労しにくい結果となっており、照度が低い場合や
照度が2000lxまであがると、逆に疲労しやすい結果となっています。

単に製品の変化を検出しやすいというだけでなく、検査者をきづかう照度も大切ですね。

B色の違い
照明の色によって、お客様が実際使用するときの環境での色見にも差異が生じるため、
最終のお客様が使用する環境を想定した確認環境を整えるのが理想的です。

例えば、お店で服をかったときに、お店のライトの光源が暖色系の光源で
いい色にみえていたものが、家でみたときと、色見に違いが生じてがっかりしたり、

海外のお肉屋さんでは、お店のお肉を鮮度よくおいしく見せるため、
ピンク色のライトをつかっていたりもします。

光源の違いによる色の見え方の変化には、日常的にも良く感じるものですが、
検査で同じような変化が生じないことを注意することが必要です。


C検査者の疲労と集中力
検査する人も疲労しますので、
検査環境をととのえておくことはもちろん、
休憩時間を確保するは重要です。

集中力を高めるために、
通常の検査作業は、座ってやることを廃止し、

検査タクトタイムをはかり、
検査での効率性と検査精度向上に結び付けているような企業もあります。

また、同じ検査作業を連続してやっていると眠気もともなうこともあるでしょう。

特に、食後などの時間は眠気が襲わないように注意が必要です。

検査の居眠り運転には、要注意です。

中国の企業などは、検査員をお互い競わせて、
作業を監視カメラで確認するようにして、
個人の成績をつけ、競争意識をはたらかせて、
検査員に自覚をもたせるような取り組みをする企業もあります。

国民性の違いや、企業の経営理念や経営方針さらに人材育成の視点から
どのように検査をおこなっていくのがよいか改めて考え、改善していくことは、非常に大切です。


何かすこしでもヒントになることがあれば、うれしく思います。


品質管理研究所 かおる
Posted by 品質管理研究所 かおる at 2011年12月01日 00:38
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Excerpt: Q:こんにちは。私はとあるメーカーのエンジニアです。著作権なんて全然興味がないの
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Tracked: 2010-12-31 19:27