2014年10月19日

FTA(故障の木解析)のやり方とは?

FTA(故障の木解析)のやり方とは?
(2014年10月19日)品質管理研究所

FTA(Fault Tree Analysis)とは、「故障の木解析」と呼ばれ、潜在的な品質・安全上の問題を未然に認識して防ぐための信頼性解析手法です。

まずは、FTAのFT図をみて、イメージをふくらましてみましょう。
下記のFT図は、 JISC5750-4-4:2011 (IEC61025:2006) の参考事例です。

FTA(故障の木解析)

こちらより、上記のFTAの事例をダウンロードできるようにしていますのでご参考にどうぞ。

■ FTA の実施例 EXCEL 無料ダウンロードはこちらからどうぞ!

ひらめきFTA(故障の木解析)

FTAは、発生してはならない故障・事故などの良くない事象を起点にして、その要因の因果関係をツリー状にして、FT図(Fault Tree Diagram)として可視化し、発生確率の大きな不具合の要因を洗い出して、未然の改善に役立てます。

品質問題は、製品の設計上きづかないまま見逃している問題が原因となっていることが多いものです。
すぐにわかるような問題の原因だけでなく、それを引き起こす、2次要因、3次要因・・・といった具合により深く原因を掘り下げていくことで、その不具合を発生させる条件や要因を明らかにして、未然に対策につなげることが大切です。

不具合にいたる「結果」には、かならず「原因」があります。
「結果」と「原因」の組み合わせを深く掘り下げていくと、どのような真因が見えてくるでしょうか。

今回は、「FTA(故障の木解析)」について、ご紹介いたします。


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<FTA(故障の木解析)のやり方とは?>
(1)FTAとは?
(2)FTAの解析手順とは?
  1)Why  なせ、FTAを使用する必要性があるか?
  2)What  FTAの解析対象は何か?
  3)Who  だれがFTAを行なうか?
  4)Where どこでFTAを改善に役立てるか?
  5)When  いつFTAを行なうか?
  6)How  どのようにFTAを実施するか?

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(1)FTAとは?
日本のJIS規格 JISC5750-4-4:2011では、「FTA」は以下のように紹介されています。

■ JISC5750-4-4:2011 (IEC61025:2006)
ディペンダビリティ マネジメント−第4-4部:システム信頼性のための解析技法−故障の木解析(FTA)
Dependability management-Part 4-4: Analysis techniques for system reliability-Fault Tree Analysis (FTA)
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<JISC5750-4-4:2011 FTA>
故障の木解析は、設定した頂上事象の発生の原因、潜在的に発生の可能性がある原因又は発生の要因を抽出し、頂上事象の発生条件及び要因の識別及び解析を行なう手法である。FTAでは、設定する頂上事象は、通常、システムの機能喪失、性能低下、安全性又は他の重要な運用上の特性劣化などである。
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ここで説明されている「頂上事象(Top event)」とは、FT図を作成する目的となる「防ぎたい事象」です。FTAは、Treeという表現を使っているように、「クリスマスツリー」を想像してみると、理解しやすいでしょう。

故障の木解析(FTA)

このFT図の頂上事象は、階層の最上部にくる事象、いわば、クリスマスツリーの先端のお星様の位置にくるもので、問題を分析していくためのスタート地点でもあり、防ぎたい問題内容を設定します。クリスマスツリーの枝葉につく飾りつけの部分が、その問題の要因や発生条件にあたります。一本のクリスマスツリーのなかには、目立つ飾り付けもありますね。どのような要因がその問題に対して発生確率を高め、どのような影響を与えるかがポイントになります。

(2)FTAの解析手順とは?
JISC5750-4-4:2011では、FTAは、定性的・定量的な2つのアプローチがあります。
ひとつは、定性的なアプローチで潜在的な不具合要因を解析して、問題を起こす大きな要因から改善していく方法。もうひとつは、定量的なアプローチで、さらに不具合要因ごとに発生確率を推定したうえで、定量的に重要度を明確にし、不具合確率を低減させる方法です。

不具合の発生確率は、個々の不具合要因の確率を推定しにくい場合もあり、まずは、不具合要因をツリー状に分析して、定性的に考えるアプローチから、スタートしてみるのがおすすめです。

1)Why なぜFTAを使用する必要性があるか?
なぜ、FTAを使用して、解析を行なう必要があるでしょうか。他によい分析手段はないでしょうか。QC
7つ道具による特性要因図による5M1Eでの原因分析、FMEAやDRBFMなどの未然予防手法もあります。なぜ、FTAを使用するのか、その目的は、明確にできているでしょうか。

FTAは、故障を発生させる原因や複数の不具合の要因の組み合わせを明らかにして、『不具合の発生確率(故障率)』も考慮して、改善を図るものです。起こしたくない重大な品質問題や故障・事故の発生メカニズムを想定して、その原因と要因を詳細に分析し、未然に防止するために役立ちます。

JISで紹介されているFTAの主な目的について、代表的なものを以下にご紹介いたします。
______________________________
・頂上事象を発生させる原因または原因の明確化
・特定システム信頼性尺度が、所定の要求事項を満たすか否かの決定
・システム信頼度の実現可能な改善策を明確化するために、どの潜在的な故障モードまたは要因が、システムの故障発生確率(不信頼度)またはシステムが修理可能な場合はアンアペイラビリティに最も強く影響しているかの決定
・システムの信頼性を改善する様々な設計代替案の解析及び比較
・安全問題を引き起こすことがある潜在的故障モードの明確化、対応する発生確率の評価及び低減策の可能性の評価
・頂上事象の発生を最も高い可能性で引き起こす事象または事象の組合せの探索
・頂上事象の発生確率に対する基本事象の発生の影響の評価
・事象の発生確率の計算
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問題の結果にいたる潜在的な故障要因を明らかにし、発生確率を考慮した評価をすすめる必要性がある場合、FTAは効果的ですね。問題を未然に防ぐため、航空宇宙分野や原子力発電などの、未知の分野や危険性の高い業界で活用されているものが、現在の多くのものづくり企業にも、活用されています。

2)What FTAの解析対象は何か?
FTAで解析すべき対象は、何でしょうか。FTAでは、製品やシステムなどで「発生してほしくない問題事象」を取り上げて、その要因をツリー状に解析します。製品やシステムの不具合防止、設備の故障防止、現場での事故防止、経営上の失敗防止など、さまざまな因果関係のある事象にあてはめることができます。

ものづくりにおいて、FTAを活用する場合においては、さまざまな問題の要因を見出すために、対象とする製品やシステムについてのさまざまな知識があると、より効果的にFTAをすすめることができます。十分に理解できていないものをいくら解析しようとしても、よい解析にはつながりません。そこで、解析のために必要な社内の関連情報を整理して事前に理解していることも大切なことです。解決したい問題となる事象に関わる価値ある情報は、以下のさまざまなところに眠っていますね。

<FTAで参考となる情報源>
顧客情報、使用条件、環境条件、誤使用事例、お客様の声、特許情報、論文
部材不具合情報、工程不具合情報、システム不具合情報、
市場不具合情報、過去トラブル情報、アフターサービス情報
製品企画書、製品仕様書、図面、検査規格、QC工程図、工場監査記録、外部認証情報
製品の性能評価結果、信頼性試験結果、
他社不具合事例、リコール事例、ベンチマーク
技術要求事項、安全要求事項、品質要求事項、環境要求事項、法的要求事項

もちろん、これらの情報を経験として、理解している豊富な知識をもった仲間の協力もかかせませんね。

3)Who だれがFTAを行なうか?
FTAは、誰が実施するでしょうか。FTAは、見てのとおり、クリスマスツリーのように、原因分析をするプロセスで、たくさんの飾りつけ(要因の分解)をする必要があります。クリスマスツリーはひとりで飾り付けをせず、家族や仲間と楽しむように、FTAも、複数の部門の仲間といっしょに考え、意見を出し合うプロセスが大切です。さまざまな視点での広い経験と深い知見が必要になるため、一人で実施するのではなく、多くの専門的な知識を持ったメンバーを集い、さまざまな視点の情報をとりこみ、不具合要因にもれがないように分析していくのがおすすめです。実務では、素案となる骨子となるFT図を作成したうえで、みなで、それに肉付けをする形で自由に意見をだしてもらうとスムーズに進みやすくなりますね。

4)Where どこでFTAを改善に役立てるか?
FTAは、どこで検証されるでしょうか。FT図として、明らかになった問題点を、未然に改善フォローアップすることが最も大切なアクションです。社内の設計審査(DR)などの検証において、FTAで明らかになった改善ポイント対応スケジュールを明確にして、未然予防事項をフォローアップしていきます。FTAは単なる書面に過ぎず、それを現実にするのは、製造現場になります。デスクワークでの仕事が現場にどのように反映できるかが、ポイントのひとつです。FTAを実施して、要因を分析する時に、製造現場のメンバーを巻き込むことは、不具合要因の漏れを防止するだけでなく、実際の改善をスムーズに現場におとしこむためにも、重要なことです。

5)When いつFTAを行なうか?
新製品をつくる時、設計変更を行なう時、仕向け先が変わる時、などの変化点において、対象となる製品の早期の段階(設計段階)で、FTAを実施すると効果的です。安全に関わる問題は、事故につながるため、あらかじめ対策を施すことが必要になります。問題を引き起こす可能性がある潜在的な要因を明らかにして、問題が起こる前に対策をとれるように、FTAを活用することが求められます。

また、実務では、いったんおきてしまった品質問題に対して、原因を追究するためにFTAを活用することもあります。市場での1つの不具合をきっかけに、お客様の要求に基づき、FTAによる検証が求められる場合もあるでしょう。もちろんFTAをつくること自体が目的ではありません。お客様の要求の多くは、納入される製品で不具合を減らすために自社できちんと不具合を想定して対策をする、そのために、FTAを活用してください、ということが根底にあるはずです。FTAという手法だけが、一人歩きして、単なる書類づくりにとどまらないように、うまく品質改善に役立てていくことが何より大切です。FTAという手段の目的化がおきないように注意したいものです。

6)How どのようにFTAを実施するか?
@不具合設定 (頂上事象の設定)
まずは、解析の対象となる発生してほしくない防ぐべき不具合・故障・事故などの事象を設定します。

A不具合要因の分析 (中間事象の分析)
起きてほしくない問題に対して、その要因として考えられることを抽出していきます。問題の要因を記述する際には、単に単語表現の表示ではなく、「〇〇が△△である。」といった文書表現で、容易に理解できるようにしておくことが大切です。

実際にどのような要因があるかは、過去の情報を参考に問題の要因を分析していくことももちろん必要ですが、問題が起こる要因として、5M1E(Man/Machine/Material/Method/Measurement/Environment)の視点から分析をすすめていくことも大切です。

FTAの解析事例

B関係性の明確化 (ゲート記号)
不具合と要因の関係性を論理記号ANDやORなどで結合し、因果関係を関連付けます。
特に多く活用するのが、AND記号とOR記号です。

■ AND 両方の要因が発生する時に問題が起きる場合、使用する記号です。
■ OR どちらか片方の要因でも発生する時に問題が起きる場合、使用する記号です。

不具合は、一つの原因でおきているだけでなく、複数の要因がからみあって、要因が同時に重なって発生する場合もあります。どのようなメカニズムで不具合が発生しているかを理解して、論理記号を使い、ツリー状に深堀していくことになります。

実務でよく活用するFT図の構成記号を下記に紹介いたします。

FT図記号

C不具合要因の詳細分析(基本事象の明確化)
不具合の要因について、さらに、その要因をより詳細に分析していきます。具体的な改善につながる要因レベルまで深堀していき、Bと同様に、上下の関係性をANDやORの論理記号で結んでいきます。最終的にこれ以上展開できない要因まで分解して、基本事象(不具合の要因)を明確にします。

DFT図の見直し
FT図に使用されている論理記号のANDやORの記号は、プール代数の公式によって、以下の通り、簡素化することができますので、作成したFT図を見直して、簡素化できるポイントがないかを確認してみましょう。同一の要因が含まれているような場合には、特に注意してみてみましょう。

FTAのプール代数

E重要要因の抽出と対策
FTAの定性的なアプローチでは、問題と原因の因果関係のFT図を作成することで、問題を引き起こす要因の全体像を把握し、さらに、細かく分解された最下部の問題の要因(基本事象)が、どのような確率で発生するかを推定し、防ぐべき問題(結果)がどのような発生確率でおこるかを検証していきます。

この分解された要因(基本事象)の発生確率が推定できない場合には、その発生確率が「非常に高い」、「高い」、「中くらい」、「低い」などのレベルで分析し、最終的な問題にどの程度の影響をあたえるかを推測します。発生確率が高い要因(基本事象)を明確にした上で、重要な要因から優先的に具体的な対策を立てて、改善を行います。これが、定性的なFTAのアプローチになります。まずは、どのような要因があり、どの要因によって問題の発生確率が高まるか、あたりをつけて、対策していくことが大切です。もちろん、問題の要因となる事象の確率が推定できる場合には、定量的に計算し、重要度を算出していくことが可能です。


以上、今回は、FTA(故障の木解析)の定性的なアプローチについて、ご紹介いたしました。
みなさんのお仕事で、未然に問題に気づき、対策を施すヒントになれば幸いです。


【参考文献】
[1] JISC5750-4-4:2011 (IEC61025:2006) 
ディペンダビリティ マネジメント−第4-4部:システム信頼性のための解析技法−故障の木解析(FTA)
[2] やさしく学べる信頼性手法 −未然防止のための設計ツール− 
日科技連 中村泰三 榊原 哲 著

【関連記事】
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DRBFMのやり方とは?
posted by かおる at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | FTA
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