(2014年8月15日) 品質管理研究所
アジアの新興企業では、工場の生産数出来高によって、ご褒美として給与をUPするような仕組みに加え、規定のルールを守らないなど問題がある作業者には、罰金などによって賞罰を与える企業も少なくありません。
日本のものづくり企業のように、長い間同じ会社にずっと勤めるような環境ではあまり見られない仕組みかもしれません。

このような信賞必罰の仕組みは、人材の流動性が高い状態の中で、作業者のやる気を引き出し、ルールを守ること徹底できるしくみのように見えてしまいますが、一方で、生産出来高の評価は、生産品質を疎かにしかねないこと、罰金による罰則は、ミスが発生したとき、自らの失敗を隠す風土を醸成してしまうデメリットがあることも、理解しておかなければなりません。
報償対象となる生産数量のUPは、品質の高い製品を維持することが大前提となるものであり、生産優先の雰囲気は、工程不良、市場不良を生みだし、見逃すことにつながりかねません。ものづくりにおいて、品質を維持するためには、適切な作業速度(時間)を確保した上で生産・検査を行うことが必要であり、生産効率のUPではなく、生産品質低下につながるリスクをはらんでいることを理解しておく必要があります。
また、罰金による罰則は、もし、罰則があるということがわかっていたら、自らの原因で品質問題を起こしたことに作業者さんが気づいたときに、自ら進んで、確実に責任者や上長に相談することができるでしょうか。もし、自らのミスを伝えると大きな罰金などの罰則の可能性があるような状況で、生産後、作業当事者しか不具合とわからない不良品をつくってしまったとしたら、勇気を持って、自らのミスを進んで報告できるでしょうか。
本来、工程内で発見された不良品は、次の不具合を防止するための宝です。市場での不具合防止ができるのであれば、企業にとっての大きなプラスなはずです。間違いや不良があれば、その場で工程を改善し、次の不良をうまないように前向きに対策をすることがなにより大切なことです。間違いを正直に言えないような風土では、良いものづくりはできませんので、経営者自らが問題をオープンにして解決する風土づくりを日頃から徹底することがなければ、問題に見えない蓋をして、あとから大きな問題になってしまってから気づくことになるでしょう。
そして、一人の作業者のミスによる不具合を作業者の報告に依存するだけでなく、確実に第三者がチェックできるような工程管理体制を構築することも、リスクを回避するために重要なことです。
特に中国では、人材の流動性が高く、作業者さんも、容易に次の会社へと転職できる環境があるため、日本では考えられないほどの離職や入れ替わりの変化があるのも事実です。よかれと思って実施されている信賞必罰の仕組みの弊害により、品質問題が増えないように、また、品質問題が見えなくならないように注意しなければなりません。
問題が発生したときに、担当していた作業者自身に罰則をあたえても、本質的な品質問題は、解決しません。組織で、同じ問題を2度くりかえし、再発不良とならないために何ができるかそれを考えることが企業の成長につながるのではないでしょうか。
国が違えば、環境も違い、歴史も違い、教育も違います。日本人が当然と思っていることも、海外では非常識となることもあるでしょう。自国であたりまえのことは、当然ではないことをお互いに理解して、日本のものづくりの良い点を伝え、グローバルなものづくりを成功させていきたいものです。
<中国の飲食店での規律ある屋外朝礼の様子>

海外で海外の仲間たちと一緒に日々仕事をしていると、その働く姿勢から、日本人の仕事に対する姿勢そのものを肌で感じ取ってもらえることが多いものです。工場を歩いていると、現場のリーダーさん達が、いつも興味を持って後ろについてきてくれ、次第に大名行列のように人数がふえていきます。何か言葉で伝えるよりも、働く姿勢が国を越えて伝わり、新たな気づきにつながってくれることは、うれしいものです。
新たな国で仕事をするときは、その国や企業の良い点をひとつでも多く学び、お互いに成長することができれば、これほどうれしいことはありませんね。
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