(2013年8月18日)品質管理研究所
工場監査は、顧客の立場から、新規の取引製品の取引先さんに訪問して、
モノを生みだす現場を直に診て、未然に問題を防ぐように一緒に改善していきます。
製品の品質に直結する製造現場の確認では、どのようなことに注意すればよいでしょうか。
通常、製造現場の工場監査は、仕様書に記載されたQC工程図をもとに順番に工程をチェックしていきます。工程のどのような点をチェックするかということに対して、もれがないようにチェックシートを用いてチェックしますが、工程そのもの自体の確認もれがないように注意することも大切です。

工場監査で、製造現場を確認するときには、
・QC工程図に記載されにくい工程
・QC工程図の流れの中で見逃しやすい工程
があることを理解しておくことが大切です。
このような確認もれが発生しやすい工程とは、いったいどの工程でしょうか。
QC工程図に記載されている工程は、もちろん現場ですぐに理解することができます。
特にQC工程図に記載されにくく、工場監査で確認がもれやすい工程は、『リワーク工程』です。
今回は、工場監査を実施する工場監査員の立場で、
どのようにリワーク工程をチェックしていけばよいか、考えてみましょう。
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<リワーク工程の品質管理>
(1)リワーク工程とは?
(2)リワーク工程のジレンマ
(3)リワーク工程の品質妥当性検証
(4)リワーク工程は不良品の追跡で確認
(5)リワーク作業は作業手順書と教育認定制度を!
(6)リワーク作業者の識別管理
(7)リワーク工程前後の現物と情報の管理
(8)リワーク工程の経営管理指標
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<リワーク工程の品質管理>
(1)リワーク工程とは?
リワークは、品質不良となった製品に後で手を加えて、不良部分を交換・補修して、良品の製品にするような特殊な工程です。
(2)リワーク工程のジレンマ
リワーク工程は、工程品質不良による損失を削減するために必要に迫られて、現場で知恵をだして実施している場合が多いものです。しかし、製造現場の工程不良が発生しなければ、本来、必要のない工程であるため、表向きにはお客さんに対して説明しにくい工程であることも理解しておかなければなりません。
工場監査をうける企業さんの立場に立てば、一般的に外部から来られた工場監査員さんには、このようなジレンマにある特別工程は、できれば見せたくない工程のひとつといえるのではないでしょうか。工場監査のときには、念のため、リワークの有無の確認について、現場で日々作業されている作業者さんに直接お話を聞いてみるのがおすすめです。
(3)リワーク工程の品質妥当性検証
リワーク品は、通常とは異なる製造工程を通るため、リワーク製品に対する品質の妥当性検証がなければ、リワーク工程は品質保証ができなくなり、正しい工程としては認められません。
リワークを実施している場合、なぜ、リワークをする必要があるのか、リワークすることによって、通常生産品と比べて、最終的にどのような品質と品位の違いが現れるのか検証できているでしょうか。
リワーク品の品質確保のためには、実際に生産するときではなく、製品の信頼性試験の内容を事前に確認する時や仕様書の取り交わしの時に、リワークによって生じる副作用を検証しておくことが求められます。そして、工場監査の時に、そのリワークの具体的な作業を直接自分の目で確認しておくことが大切です。
リワーク工程の検証が十分でなければ、工場監査では、リワーク工程を認定することができないため、リワーク工程なしの製品のみを納入いただくようにしなければならないでしょう。
(4)リワーク工程は不良品の追跡で確認
取引先さんにとって、リワーク工程はなかなかいいだしにくい工程だからこそ、監査のときには、工場監査員は、製造現場でリワーク工程の有無、隠れたリワーク工程がないかを現場の担当者さんにあらためてうかがい、不良品・リワーク品の取り扱いに注意をはらうことが必要になります。
リワーク工程は、QC工程図からもれている場合も多く、さらに、通常の生産ラインからはなれた場所で実施されていることも多いものです。そのため、リワーク工程は、実際の製造現場で、気づきにくいものです。工場監査では、QC工程図の流れに沿って、順番に確認していきますが、QC工程図の確認の流れからいったんはなれて、不良品の扱いの動きを追跡することで、おもわぬリワーク工程が明らかになる場合もあるでしょう。
工程で発生した不良品の現物は、どこに運ばれているでしょうか。多くの場合、工程毎の不良置き場に保管しておきますが、その後、その不良品はだれがどこへもっていっているのでしょうか。廃棄物の置き場でしょうか、それともリワーク工程でしょうか。
リワーク品の元は、不良品であることから、不良品の動きを確認する過程で、リワーク工程の現実が見えてくることが多いものです。
(5)リワーク作業は作業手順書と教育認定制度を!
リワーク作業に、リワーク作業の作業手順書があるでしょうか。イレギュラーな工程として、工程責任者が不明確になりやすく、きちんと作業場所が設定されていなかったり、ツールが不足していることも多いものです。
また、リワーク工程は、特殊な高度な技量を要する場合も多く、作業者の教育認定制度を確立して、技術力を維持することが必要です。通常、高い力量が必要とされる作業では、新人作業者さんには作業を認めず、熟練した作業者さんしか実施できない作業として設定します。さらに定期的に試験を実施して、スキルマップによる能力の維持管理を実施していくことも必要になります。
(6)リワーク作業者の識別管理
リワークしている数量がごくわずかであれ、不良品を発生させないためには、イレギュラーなリワーク工程の作業者さんに目を向けることが大切です。
現場では、特殊な作業として、工程でリワーク作業者が識別できるようにリワーク認定者用のバッチやシール、色の違う帽子や作業着などを作業者に身に着けてもらい、工程パトロールの時などにも外部からでもすぐにわかるようにしておく工夫が大切です。

(7)リワーク工程前後の現物と情報の管理
リワークを実施する製品は、どこの工程で不良になった製品で、リワークした後、どこの工程に投入しなければならないかそのルールが明確になっているでしょうか。
リワーク工程を設定する際には、リワーク後にどこの工程の前から投入するのかを明確にする必要があります。工程飛ばしや検査もれなどが絶対に発生しないようにしなければなりません。
QC工程図でも、工程の流れの中で逆流する流れを記載して、現場で教育しておくことが大切です。また、リワークした製品は通常と異なる生産履歴となるため、リワークした製品として、追加の工程履歴の情報管理と現品へのマーキングシールやタグも必要になります。いつ、だれがどのようなリワーク作業をしたのか、製品の履歴を管理する現品表や生産ランカードやPC上の記録などに追記することが求められます。
リワークが増えれば、不良品が良品になるため、品質問題として見えにくくなることも理解しなければなりません。リワーク品に対する不良内容とその原因と対策を明確にして、根本的な不良改善につなげていくことが疎かにならないようにしなければなりません。
(8)リワーク工程の経営管理指標
リワークした製品は、余計に手間がかかっているため、リワークしていない製品に比べ、コストアップにつながるものです。経営改善のためには、コストダウンと品質改善の指標として、このリワークの工程情報に着目します。
工場監査では、リワークは、生産現場をみるだけでなく、工場が生産の直行率と歩留りを使用し、2つの差をどのように工場が認識しているかで、その実態をうかがい知ることができます。直行率は、リワーク工程をとおらず、手直しをしないで生産できた良品率です。歩留りは、リワークをした良品を含む良品率になります。
品質を維持向上させるためには、できるだけリワークをしないように、この2つの指標の差異をへらしながら、不良率を改善していくことがもとめられます。経営の立場から、経営者自らがリワーク指標を数値で客観的に理解し、改善を促しているかチェックすることも大切ですね。
今回は、リワーク工程における品質管理について、第三者の工場監査員の視点も含めて紹介いたしました。改めてリワーク工程のリスクについて考えるきっかけになれば、うれしい限りです。
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