2012年10月22日

予測に基づく品質管理とは?

予測に基づく品質管理とは? -品質管理研究所-


品質管理とは、何でしょうか?


品質管理が不十分の時に起こるのが、
工程内不良や市場クレームなどの問題です。

このような問題を未然に防ぐために必要なもの、それが品質管理です。

品質管理とは、問題が起きることを事前に『予測する』ことです。

品質向上のためには、問題が起きた後に対処する後手の発想から、
いかに脱却して、先手先手で改善をはかることが求められるでしょう。


私たちは、日頃の生活の中で、予測に基づく行動をとっています。


予測と品質管理

天気予報を考えてみましょう。

みなさんは、日頃から、ニュースなどのお天気情報をみたり、空の様子を確認し、
雨を予測し、傘をもっていくかどうかを判断しているのではないでしょうか。

天気予報は、雲の動き、気圧の高低、気圧配置、過去の天候など、
さまざまな情報を加味して、天気を予測しているでしょう。

また、近くの山にかかる雲の様子をうかがい、
雨の気配を感じ取り、雨を予測している方もいるのではないでしょうか。

ものづくりにおいても、天気を予想するように、
予測に基づく行動は、不良を未然に防ぎ、品質向上につながる大切な考え方です。


傘をもっていれば、雨にぬれずにすむように、

製品の品質問題に未然に対処するために、生きたさまざまな情報から予測し、
傘をもっていくような判断と対策が求められるのではないでしょうか。


予測とは、変化に気づき、感じることです。

製造現場でどんな情報をもとに気づき、どのような視点で予測すればよいのか、
以下で、品質管理の上で大切な5つの予測について考えていきましょう。

________________________

<予測に基づく品質管理>
@ 経験から問題を予測
A 試作品から最終製品の問題を予測
B 少量生産から大量生産の問題を予測
C 製造プロセスから製品の問題を予測
D 傾向から問題を予測

________________________




@ 経験から問題を予測

過去の失敗経験は、ものづくりにかぎらず、成功への近道です。

過去の失敗経験をもとに、同様の失敗を再現しないようにチェックすることが大切です。
個人の失敗経験をいかに組織としての失敗経験・ノウハウにできるかがポイントです。

経験からの予測を成功させる企業では、

過去トラブルリスト(過去トラ)、過去不良リストを保有しており、
類似製品を開発した際には、問題が発生しないように必ず事前にチェックしているものです。

また、設計ガイドラインとして、具体的な品質特性と品質基準に
まで、数値で落とし込み、比較検証することができればさらによいでしょう。

例えば、A部の材質は、樹脂〇〇指定、B部の寸法は最低〇〇mm以上など、

ベテラン技術者さんが体に染み付いて理解しているノウハウともいえるでしょう。



A 試作品から最終製品の問題を予測

試作品をつくり、最終製品に近い現物で、設計と製造時の問題を確認します。製造上問題が発生しやすいような無理な製品設計になっていないか、
図面だけでなく、実際に試作の製品を手にとって見ると様々な懸念点が浮かぶものです。

社内の品質、生産、CS、技術など経験豊富な各部門の有識者3〜4人が集まれば、
これほで、力強いことはありません。

わいわいがやがや自由に問題点を出し合う時間は非常におもしろく、
ものづくりの大切な時間となります。

これから、知識を身につけてほしい若手の品質・技術者も一緒に参加することで
製品に対する考え方や設計思想を学び取るよい機会にもなるでしょう。


製品の品質問題が、出荷した後にあきらかになれば、
そのお客様に与える影響や改善するための労力は、計り知れません。

問題を見つける段階が早いか、遅いかで、
楽しい仕事になるか、大変な仕事になるか大きくかわるものです。




B 少量生産から大量生産の問題を予測

ものづくりでは、問題点が隠れている場合、
ある程度生産してみなければ、問題を把握できないこともあるでしょう。

量産品の品質管理

量産前に、少量、中量評価など、段階的に生産数量を増やして、
本格量産前までに問題を洗い出して、改善することが求められます。

大量生産でたくさんの不良品が作られる前に、少量、生産した状態から、
製造上の問題点や不良発生ポイントを修正し、問題点を事前に解決することが大切です。


一般には、製品の設計だけが、社内審査の注目を集めやすいものですが、
製品を生み出す製造工程(製造プロセス)の審査も非常に大切です。

製造品質を確保するための生産工程の妥当性、作業手順、生産加工治具の準備、
生産技術管理など品質を確保するために欠かせないポイントもお忘れなく。




C 製造プロセスから製品の問題を予測

出来上がった不良品から製造工程の問題点をさぐるのではなく、
製造工程で問題がおきないような製品設計にする逆の考え方も大切です。

魅力ある製品をつくるために製品の設計をつくりこむあまり、

製造上ムリを強いるような設計の製品であれば
生産歩留りも上がらず、製造工程泣かせの製品でコストが増大しかねません。

設計と生産側で隔たりがあり、設計側で生産側の実態が情報共有出来ていなければ
このような問題が発生することになります。

いざ生産という後の段階で問題が明らかになれば、
変更に多大な労力がかかることになるため、事前のすり合わせを行い、
製造上懸念される問題点を設計に反映して、改善を施しておくことが大切です。




D傾向から問題を予測

製造工程中の製造ばらつきは、X-R管理図などを活用して、
管理すべき製品や機械の特性の時間的変化を把握していくことで予測が可能になります。


特性値の傾向(トレンド)からどのような変化があるかをウォッチして、
常に適正な管理基準範囲におさまるように調整することが求められます。

ある社内の基準を越えたときにどのような対策をとるか、
具体的な対応マニュアルであるアクションガイドラインが明確になっているでしょうか。


抜取検査でAという寸法の社内管理基準がはずれたときに、
Bの設定を〇〇する、磨耗品△を交換するなど、具体的な対処方法があるはずです。

社内のベテランは、知っていても、新人さんが知らない情報はありませんか。

また、作業者によって、問題への具体的な対処方法が違うことはありませんか。
工場やラインのシフトによって、やり方が違うことがないように注意しなければなりませんね。


今回は、予測に基づき、先回りして改善を実施し、
高い品質を追求する考え方をご紹介しました。



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posted by かおる at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 品質思想

2012年10月13日

品質管理研究所 OPEN 2周年!

品質管理研究所 OPEN 2周年
(2012年10月13日)品質管理研究所


品質管理研究所も2012年10月10日で、
たくさんのみなさんの応援もあり、2周年を迎えることができました。


品質保証・品質管理の向上のため実務に役立つ考えや手法を紹介し、
皆さんのお役に立てていることをたいへんうれしく思います。


2周年にあたりまして、

FacebookとTwitterでも、品質管理研究所(Quality Labo)ページを
OPENいたしましたので、あわせてご活用いただければ、幸いです。


品質管理研究所HPの更新情報と連動しておりますので、
みなさんのご意見など、お聞かせいただければうれしく思います!


■ Facebookページはこちらをどうぞ!



■ Twitterページのフォローはこちらをどうぞ!




ひらめきこれからも、みなさまの実務で役に立つ品質の考えや手法をご紹介していければ幸いです!


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品質管理研究所について
posted by かおる at 16:33| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記

2012年10月10日

実務で役立つ品質管理教育7つのポイントとは?

実務で役立つ品質管理教育7つのポイント
(2012年10月10日) 品質管理研究所


品質管理の教育は、統計や問題解決手法QC7つ道具など
論理的な思考を鍛える内容が多く、難しそうなイメージがあります。


品質教育


品質管理の「いろは」は習ったけれども、その知識をつかっていない、
聞いたことがあるけれども、1年くらいすると全然おぼえていない、
なんていうことも、実際には、多いのではないでしょうか。

大きな企業では、品質管理のプロフェッショナルがいるものです。
その社員が先生となり、新入社員や技術者・品質管理担当者を
教育されている場合も多いように思います。

貴重な社員の仕事の時間を活用して行う品質教育について、

どのような講義の内容であれば、
もっと、身近に、実践的なものになるでしょうか。


今回は、品質保証・品質管理を多くのひとに伝え、
教える立場での教育上のポイントについて、考えてみましょう。




__________________

<品質教育7つのポイント>

@考える時間を作る
A実務事例をふんだんに
B体験を通じて理解する
C教える前に質問を
Dあなたの経験は?
EOB社員さんの知恵をひきだせ
Fアンケートで反省を


_________________



@考える時間を作る
知識のある先生は、限られた時間の中で、
つい多くの情報を生徒に教えたいあまり、一方的に話してしまいがちですが、

グループでの討議や発表など、
生徒さんの意見をひきだし、仲間と意見を交換できる有益な時間を
どれだけつくることができているでしょうか。


生徒さんが、

過去の経験と重ねて、理解をふかめられているか?
現在の業務にすぐにどうすれば使えるか?
将来の仕事では、どのように活用できるか?


生徒さん自身が、さまざまな疑問をもち、
もっと知りたいという気持ちをうまくひきだせているでしょうか。
自らの頭で考え、手をうごかす時間を多くとれているでしょうか。

先生は、生徒さんの顔をみて、どれだけ対話ができているでしょう。


教育と質問

このことに、気づけていないと、
先生は、つい早口で、生徒さんにおしりを向けて、黒板としゃべってしまうものです。

講義の中で、すべてを網羅して教えることはできませんので、

もっと知りたいとおもう心に火をつけ、自分自身で学ぶきっかけや
知識をいれる「ひきだし」をつくる考え方
は、大切にしたいですね。


A実務事例をふんだんに
品質管理手法などのように数式がならぶような難しい手法ばかりが教育され、

実務上でどのような場合に使うのか、その使用のタイミングを
しっかり教育できていない場合が多いのではないでしょうか。


品質教育

例えば、食事で、スープがでてきたときには、スプーン(道具)を使って食べますが、

お箸を使えば、もちろんうまくスープを口に運ぶことができないように、
道具や手法の特徴に応じて、適切に使用するとうまくいく場面を伝えることが重要です。

スプーンや箸など、道具ばかりをならっていると、

いざ使うというときに適切に使えず、
問題解決の役に立たないのであれば、本末転倒ですね。


また、このような状況は、掛け算のやり方だけを教えて、
実務で活用できる消費税の計算の仕方を教えないようなものです


先生自身が多くの経験を通じて、現場で失敗しながら学んだことをもとに、
どんな手法をどんなタイミングで使用すると
効果的かをどれだけ伝えられているでしょうか。


品質教育では、実際に品質管理の手法や統計を活用した
実務でのわかりやすい事例が紹介されると興味をもってもらうことができます。

日本の消費税は何%で、消費税は内税と外税があり、表示に含まれている場合があるとか、
海外では、消費税の割合が5%ではなく、もっと高いとか、
消費税を自動で計算できる電卓があるとか、実務では様々なポイントがあります。

実務上の経験談や注意点、使用上の失敗例など、
ほんとうにいざ現場で使う際に知りたいポイントや実例をいかに盛り込めるかが大切ですね。



B体験を通じて理解する
ものごとを理解するためには、一方的に聞いて理解するのは難しいものです。


教育でも、仕事と同様に自分自身の体験を通じて、
理解を深めれば、新しい発見やそれぞれの経験に基づいた気づきがあるものです。


品質の仕事は、多くの問題と出会い、解決する仕事です。


下記のおもしろい「頭の体操」をしながら、体験してみましょう。

頭の体操



■ 頭の体操 〜9つの点と4つの一筆書き直線〜

下記に9つの点があります。
この9つの点を4つの直線だけの一筆書きで書いてください。
(制限時間は60秒です。)


頭の体操 9つの点と4つの直線











これは、もちろん答えではありません。


頭の体操 9つの点と4つの直線



答えがわかりましたか?



ここでは、うまくこたえられたか、どうかだけが問題ではありません。


あなたは、この問題を解くプロセスで、どのような行動をとったでしょうか。
答えが解けたかどうかも大切ですが、答えを解くプロセスそのものに着目してみましょう

このような未知の問題(品質問題)に出会ったときにとる
あなたの行動は、下記のどれにあてはまるでしょうか。



■ 線を実際に書きながら考えるあなたは、
失敗をおそれず行動を通じて、試行錯誤して問題を解く傾向にあるでしょう。

■ 頭の中で試行錯誤して考えるあなたは、
想像力を膨らませ、頭を使い、論理的に考えようとする傾向にあるでしょう。

■ 周りの人に聞くあなたは、
答えを知っているヒトを探しだして、なりふりかまわず教えてもらう傾向にあるでしょう。

■ 問題の答えがわからないあなたは、
既存の枠組みの中で考えて、答えをみつけだそうと考える傾向にあるでしょう。

多くの方は、答えがでないまま、終わってしまったことでしょう。

■ この問題をすでに知っていたひとは、すぐに答えることができるでしょう

問題に出会ったとき、過去の経験や知識をもっていることの重要性に気がつけるはずです。

このように、問題をとくことで、自分自身の行動と考え方に気づけるはずです。

先生は、問題を解決するプロセスや体験を提供し、
生徒自身にいかに気づいてもらうかが大きな役割といえるのではないでしょうか。



ひらめき正解は、文末にありますのでご参考に!
この問題の答えが伝えてくれるメッセージも大切ですね。


C教える前に質問を
一方的な説明型の教育は、めりはりがありません。

生徒さんに対して、教える前に、質問をなげかけ、

自らの考えを持って、答えてもらうやり取りの中で
他人の意見を聞く時間が大切にされているでしょうか。


講義を作るのは先生ではなく、生徒さん自身です。


例えば、品質管理の『管理』とは何かを説明するときには、どうすればよいでしょうか。

まず、『管理』のつくことばを60秒間で可能な限り列挙して、ノートに書いてもらいます。
次に、生徒さんがいくつかけたかを手を上げてもらい、言葉を書き出していきます。

ノートにかいて理解する品質


品質管理、設備管理、管理基準、管理者、管理幅、管理図、管理区域、管理値、組織管理、・・・

手を上げた複数の生徒さんに管理のつく言葉を聞いていくなかで、
管理という言葉のイメージをつかんでもらうことができます。


その後に、をこれらの言葉をふまえて、管理という言葉の意味をノートに書いてもらいます。
そして、どのような意味があるのかを自分の頭で考えてもらいます。


生徒さんの意見をきいた後にはじめて「管理」という言葉の定義や意味を伝えるとどうでしょう。

単に、「管理とは〇〇です」と最初に教えるより、より効果的に理解できるでしょう。

さらに、経営で有名なドラッカーなどの著名な人物が、
「管理」という言葉に対して、どのような考えをもっていたかなど、
偉人の視点も伝えていくと生徒さんの大きな刺激となることでしょう。


Dあなたの経験は?
様々な経験をしているのは、先生ばかりではありません。
生徒さんも、人生経験を通じて、しごとや私生活で様々な経験をしてきています。

個人の経験は、他人とは違い、個性があり、面白いものです。

経験と品質教育


例えば、品質保証とは何かを考えるとき、
難しい言葉の定義をそのまま説明して、理解してもらうことも大切ですが、

これまで生きてきた中で、購入した製品の品質やサービスの良し悪しについて、
生徒さん自身にふりかえってもらう中で考えてもらうとどうでしょうか。


定義をそのまま理解するより、多くの気づきがうまれるはずです。

いままでに購入した製品のどのような不良を経験して、どのような気持ちになったか、
お店の接客やサービスでどのような嫌な経験をしたことがあるか、
壊れた後の製品の修理対応やコールセンターに電話したときの経験でどんなことを感じたか、
問題があったものの良いサービスを受けて、逆にうれしかった経験がないかなど、

良いことや悪いことを振り返って、
生徒さん自身にどんな気持ちになったかを発表してもらうと、
品質保証とは、何かがより鮮明に実体験として見えてくるでしょう。


自分自身だけでなく、多くの仲間の意見をきくことで、その考えの多様性を理解し、
品質保証を単なる言葉としてではなく、体感的に重要性を理解できるはずです。


EOB社員さんの知恵をひきだせ
品質管理は手法だけでなく、企業組織のルールや規律、企業内での実務経験に基づいたノウハウを教えることも大切です。

外部の講師では教えられないようなこれら社内のルールやノウハウは、
長年の組織での実務経験が必要とされます。

定年退職されたほんとうに優秀なOB社員さんの知恵を拝借して、
社員の指導者となってもらうことは、たいへんおすすめですね。


さらに、OB社員さんが指導者となるメリットは他にもあります。

品質は、新入社員や一般の社員だけが、理解すればよいものではなく、
経営層もしっかりと品質についての考え方を持つことが求められます。
経営層より上の先輩であるOB社員さんであれば、経営層を指導することも可能でしょう。

品質管理・品質保証は、経営者の考え次第です。

経営者の品質に対する考えが、
そのまま製品やサービスの品質にあらわれているものです。

経営者の品質に対する考えを高めるために、
OB社員さんの知恵は、きっと役に立つことでしょう。




Fアンケートで反省を
次の講義に向けての反省点を明確にするためのアンケートを事前に作成し、
生徒さんに書いてもらうことが大切です。

授業の内容、話し方、話すスピード、教材の量と質、良い点、改善点、質問事項など、

アンケートに注意ポイントをうまく盛り込んでおけば、

自分が気づいていない改善点をたくさん教えてくれ、
よりよい品質教育の講義をうみだすためのヒントとなります。


ぜひ、アンケートもうまく活用して、
教育力UPにつなげるきっかけにしてみてください。




今回は、品質教育で大切にしたい7つのポイントをご紹介しました。

社内の品質人材育成のために、
品質教育のカリキュラムや品質教育プログラムを作られている方は、
このような教育方法についても、どのようなことを配慮すべきか、
時間をとって、社内の講師陣と意見をかわしてもみるのも良いのではないでしょうか。


皆様の業務のお役に立つヒントがひとつでもあれば、うれしく思います。



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正解は、こちらです!


<正解>

頭の体操と9つの点と4つの直線答え


この問題を解決する中で、未知の問題にであったときに、
既存の枠組みの中で考えるだけでなく、視点をかえ、

『常識の枠をはずして考えるということ』

の重要性が理解できるのではないでしょうか。

限られた9つの点があたえられたときに、

四角い枠をすぐに想像しますが、4つの線しかかけず、
ムリな難題のように思えてしまいます。

いくら、四角の中で考えていても答えはでません。

その9つの点の外に視点をずらし、
直線をひく考え方が答えにつながります。


教育では、五感にはたらきかける問題をだして、答えと同時に
本当に伝えたいことを重ねて説明する方法は、インパクトがあり、
記憶に残るおすすめの方法ですね。



さらに、3本の直線で、一筆書きで書く抜け道もあるので
ぜひ、頭をリフレッシュして、チャレンジしてみてくださいね。


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posted by かおる at 22:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 品質教育

2012年10月05日

ものづくり工場の防虫対策とは?

工場の防虫対策と品質管理
(2012年10月5日)品質管理研究所

日本よりも暑くて、湿度の高いアジア諸国の海外ものづくり工場では、
窓をあけて、作業する光景が多く見受けられます。

海外現地工場では、広大な敷地で、エアコンが完備されておらず、
なり行きまかせの温度・湿度管理の工場もあります。

作業場があまりに暑い状態であれば、
作業者の健康や安全が第一優先事項なので
窓を開けて、風通しを良くして、作業者の体調や作業性を向上させるように
配慮することも考えなければなりません。

あまりに暑いときには、たくさんの社員さんに、
アイスを配る優しい経営者さんもいますが、

夏とアイス

暑さを理由に、工場に虫がはいっくることを許して良いわけではありません。
虫が製品に付着して出荷されれば、もちろん大きなクレームとなります

工程の異物不良として、虫の問題がおさまらない・・・、
製品に虫がはいり、市場のお客様で品質問題になってしまった・・・、

など実務で悩まれたことがある方も多いのではないでしょうか。

ものづくり工場における防虫対策について、
どのような対策を講じることができるのか、具体的に考えてみましょう。

_____________________________

<防虫対策と品質管理>

(1)虫の侵入経路の遮断
@部屋の間仕切りで区切り
A防虫カーテン
B建物の隙間をうめる
Cガラス窓の修復
D窓へ網戸をつける
E扉の開閉ルール
F換気扇や排気口の防虫ネット
G扉に開閉型の防虫シートシャッターをつける
Hエアーカーテンの設置

(2)虫の付着持込防止
@内部に持ち込むパレットや梱包などに付着した虫の除去
A梱包副資材の管理規則の標準化と徹底
Bクリーン度の改善

(3)虫の誘引防止
@虫が寄ってきにくいライトへの変更・蛍光灯カバーの設置
A紫外線遮断の防虫シート
B虫をひきつけにくい屋外街路灯

(4)虫の発生防止
@工場内外の清掃
A食堂からのゴミの管理
B不要なものは廃棄

(5)虫の駆除
@捕虫器の活用
A殺虫剤の活用

(6)虫対策の改善効果の確認
@昆虫採集と日記

(7)防虫対策の注意事項
@蚊取り線香による火気注意
A蜘蛛の巣による自然の防虫対策はNG

(8)ソフト面の対策
@作業者への教育
A問題の原因と対策を考える学習の機会

_____________________________



(1)虫の侵入経路の遮断
@部屋の間仕切りで区切り
作業工程や検査・梱包工程に間仕切り(パーテーション)をつけ、よりクリーンな環境へと分離します。特に屋外環境に近い場所で製造せざるをえない場合は、最終検査・梱包工程を分離して、個別の検査・梱包室をつくり、作業環境を改善することが、実務ではよく行われています

部材受入・製造・検査・梱包工程中の作業性や投資費用、そして、迅速な改善対応という視点から、防虫カーテンをつけるなどの他の対策と合わせて、実施するのがおすすめですね。

■ コマニーさん 工場問題解決HP 
コマニーの防虫対策


A防虫カーテン
 飛んでくる虫を遮断するために、防虫カーテンをつけて対策することもできます。部材の荷受場など、大きな扉を開ける場合、必要以上に開放されてしまうため、梱包受入作業中でも、虫が侵入しないように短冊上の防虫カーテンをつけて、作業との両立を図ることもおすすめです。

 防虫カーテンの素材は、虫が最もよく見える光(紫外線波長領域の光)をカットするような特殊な素材でできていることで、物理的な遮断だけではなく、光学的な遮断もしていることが虫をシャットアウトするポイントです。

下記の岩崎電気さんのHPでは、ひとと虫の視感度、いわゆる虫が見ることでのできる光の感度がわかりやすく紹介されています。

■ ひとと虫の視感度曲線について 岩崎電気株式会社さん

人の目は、380nm〜780nm(ナノメートル)が可視光領域で、550nm付近の黄緑色に中心がありますが、虫の場合は、360nm付近の紫外線領域に中心感度があることが示されています。この光の感じやすさの違いをうまく活用することが防虫対策のポイントになります。

■ アキレス株式会社 短冊型のドアカーテン




B建物の隙間をうめる
扉の下などに隙間部分がある場合、遮断して、虫の進入経路をなくします。昼間での屋外の光の漏れの確認、夜間での屋外からの内部の光の漏れを確認すれば、問題箇所を容易に発見できます。

特に屋外と屋内での隙間に対しては、すぐに改善することがもとめられます
。費用をかけずにすぐに対策できる改善ポイントのひとつです。工場の3S(整理、整頓、清掃)活動とあわせて、問題部分がないかをあわせて、チェックするのがおすすめですね。


Cガラス窓の修復
ガラス窓などの建物の破損部がないかを確認しましょう。もし、破損部分があれば、修復し、虫の進入経路をなくしましょう。

ガラスの破損などの小さな問題ですぐに改善できるものを見逃す姿勢は、製品の品質に対する意識にも影響しかねないため、小さな問題こそ見逃さず、つぶすことが必要です。


D窓へ網戸をつける
窓に網戸をつけて、網戸以外の窓を開放しないルールを徹底できているでしょうか。高い位置の窓の開けっ放しも厳禁です。ワンポイントレッスンの張り紙で、注意事項を掲示しておくことも大切ですね。

海外工場では、日本と違い、生産工場の窓や扉が開放されていることに対して、意識が欠けている場合が多く、窓に網戸をつけていない場合も多いので、特に注意が必要です。すでに網戸がつけられている場合は、網戸が破れているままで放置されていないか、窓との隙間が開いていないかもチェックしましょう。


E扉の開閉ルール
搬送用の大きな扉の開閉ルールを定めていますか。受入部材の入出庫や製品の出荷に関わる大きな扉は、荷物作業出し入れの扉として、必要時以外使用しないようにしましょう。

また、夜は内部の明かりに誘われて、屋内に虫が入りやすいため、日没後には、屋外と出入りができる扉を限定し開放してよい時間のルール設定をあらかじめ決めておくこととも大切です。

作業者の出入り口は、別の扉を使用し、大きな扉を必要以上に開けて使用しない、作業後に大きな扉をすぐ閉めるルールを徹底するなど、基本的なルールの確認と徹底をすることもかかせませないことです。


F換気扇や排気口の防虫ネット
換気扇や排気口などのわずかな空間からも虫は進入するため、メッシュの細かい網をつけて、空気の出入りを遮断せずに、内部に虫を入れないように対策しましょう。捕獲される虫の大きさとメッシュのこまかさにも注意が必要ですね。防虫ネットの種類によっては、特殊な薬剤が配合されているものなど様々なものがあります。

下記では、実際に換気扇の防虫対策など、実際の工場で活用されている防虫ネットの役立つ実例がたくさん紹介されています。

■ 防虫ネット 丸三ケンショウ株式会社さん


G扉に開閉型の防虫シートシャッターをつける
フォークリフトなどの出入りや荷物の受入搬送が多い通路は、虫(ほこりも含む)遮断のためにシートシャッターを設けることもできます。新規に工場を建設する際には、部品や製品出荷場の空間を前室のある2重構造にして、トラックやフォークリフトがはいってから、外の扉がしまり、その後、内部の扉が開く、建物の設計にしておくことが、理想的です。

■  高速シャッター門番 オプトロン門番 昆虫誘因阻止率80% 小松電機産業株式会社さん

防虫シートシャッター門番

下記の動画でも大変わかりやすく紹介されています。

■ シートシャッター門番 KVシリーズ製品特長 小松電機産業株式会社さん




Hエアーカーテンの設置
大きな扉の前に風を送り、見えない空気の壁「エアーカーテン」で虫の侵入を遮断することもできます。風が壁となることで、飛んでくるハエ、蚊などの小さな虫の侵入を阻むことができます。大きなシートシャッターがあるときは、開閉と同時に、このエアカーテンを起動するような相互補完的な活用がされている場合もあります。

■ エアーカーテンによる防虫試験 進入抑制率の検証 日本エアーカーテン株式会社さん

■ シートシャッター門番 他機器への組み込みにも最適 小松電機産業株式会社さん





(2)虫の付着持込防止
@内部に持ち込むパレットや梱包などに付着した虫の除去
搬送用のパレットや梱包など、検査・梱包工程のような一部防虫対策を施した内部へ持ち込むものは、エアブローや清掃点検したものを工程内に持ち込むように注意することも大切です。虫に限らず、汚れを内部に持ち込まないことにもつながります。

輸送上、往復で何度も使用するパレットなどは、いずれどこかで破損するものでありながら、使用時には受入検査があまりされず、釘のとびたしや、木のささくれ、フォークリフトでのつきさし破損などがあり、それが原因で製品の不良につながることもあるので、あわせて、注意が必要しておくのがおすすめです。


A梱包副資材の管理規則の標準化と徹底
梱包副資材などの梱包材は、虫の付かない管理された場所で保管されているでしょうか

製品の保管に限らず、梱包材の保管および取り出しが、特に管理がおろそかになりやすいポイントです。梱包資材の安易な取り扱いで虫が混入したり、挟まって付着したりしないよう作業手順を標準化して、教育することも大切なことです


Bクリーン度の改善
高いクリーン度が要求される工場では、工場の製造現場に入る前に、前室を設けて着替えをして、クリーンエアーで付着物を落としてから、製造工程に入ります。製品の品質要求に応じたクリーンな環境をつくり、虫が少しでも入らないような環境を構築する必要な場合もあるでしょう。設備投資費用がかかるため、さまざまな対策と並行して、検討することがもとめられでしょう。



(3)虫の誘引防止
@虫が寄ってきにくいライトへの変更・蛍光灯カバーの設置
 蛍光灯の光には、虫が見えやすい紫外線がふくまれていることから、ライトそのものを変えてしまうことや、虫をひきつけてしまわないように、蛍光灯に紫外線カットをするカバーをつける対策もできるでしょう。特に、24時間体制で生産するような工場の場合、作業員の出入り口の照明などは、紫外線カットした照明にするなど十分な対策ができているでしょうか。


A紫外線遮断の防虫シート
工場の照明に含まれる光の中で、虫が好む紫外線の波長領域をカットするフィルターを通路や窓につけて、屋内のもれた光で虫をひきつけないようにします。紫外線の光を好む虫に気づかれないようにするための防虫シートとなります。


■ アキレス株式会社 防虫フラーレ 




B虫をひきつけにくい屋外街路灯
 虫をひきつけない屋外街路灯を設置して、安全上の明るさを確保しつつ、できるだけ工場周囲に虫を寄せ付けないようにすることもできます。一方、屋外のはなれた街路灯に虫の好むライトをつけて、工場にいかないようにさせる方法もあり、工場環境全体でのライトの設置方法の検討も大切ではないでしょうか。

■ 東北紙工業株式会社さん 防虫対策

■ 岩崎電気株式会社さん低誘虫照明


(4)虫の発生防止
@工場内外の清掃

工場建物屋外の草木を定期的に手入れし、周囲のゴミなどがないように清掃しましょう。
排水溝など水がたまっている場所は、虫が大量発生する環境をつくっているようなものですので、定期的に清掃しましょう。近くに草木が多く生い茂っていたり、水辺の環境がある工場の場合は、特に注意が必要ですね。


A食堂からのゴミの管理
食堂から出た生ゴミなどの廃棄物により、匂いなどで虫が引き寄せられないように管理ができているでしょうか。専用のゴミ箱やゴミだしのルールなど、ものづくり工場とは直接関係ない場所でも、基本的なことができているかを確認しましょう


B不要なものは廃棄
工場敷地の内外に廃棄物など不要なものが長期間保管されていると、さまざまなものがたまり、虫が生息しやすい環境を作りだすことになります。不要なものは、廃棄する整理(Seiri)を徹底し、清掃(Seisou)して、清潔(Seiketsu)な環境を作り出しましょう。



(5)虫の駆除
@捕虫器の活用
捕虫器は、虫をひきよせる紫外線光をはなち、虫を引き寄せて、進入した虫を駆除することができます。
設置する場所を間違えると、光が虫を引き寄せることになるため、逆に虫を室内にいれることにもなりかねません。屋外から捕虫器の光が見えないような場所に設置して、屋内に入ってしまった虫を引き寄せることで駆除するようにしましょう。

本来は、捕虫器を使わずとも、虫を進入させないような対策を講じることが求められるものです。捕虫器をつけたからといって、安心して、他の防虫対策をおろそかにしてはなりませんね。

■ 岩崎電器株式会社 電撃殺虫器 アイ バーミンショッカー



また、虫のなきがらのお手入れをきちんと実施することも忘れずに。


A殺虫剤の活用
製品や人体、生態系などの環境への影響も配慮したうえで、状況に応じて、殺虫剤の必要性も検討する余地があります。



(6)虫対策の改善効果の確認
@昆虫採集と日記
捕獲された虫の数、虫の種類、捕獲された場所(工程)、捕獲した時間を記録しましょう。
どんな虫が、どれだけ、いつ、どこで発見されたかを記録していくことで、防虫対策の効果と今後取るべき対策の道筋を明らかにすることができます。

このような採集記録をきちんと残していると、虫が発見されたとき、同種の虫が2匹でいる場合が多かったなど、虫も、ヒトと同じように夫婦や友達で仲良く行動しているのかと・・・感じてしまったこともありました。きちんと記録に残して数値で把握することで、多くの「気づき」があるものです



(7)防虫対策の注意事項
@蚊取り線香による火気注意
蚊取り線香など、火気を使う防虫対策は、火災のリスクがあるため使用しないのがおすすめです。社員が良かれとおもって対策をしていても、工場の安全上・火気厳禁の観点から好ましくない対策もありますので、ご注意ください


A蜘蛛の巣による自然の防虫対策はNG
工場の中に虫が多く入っていて、5Sができていない工場では、工場内にその虫を捕獲して、えさにする蜘蛛の巣があるものです。

これは、自然の防虫対策といえますが、蜘蛛自体、虫であることをお忘れなく・・・。

虫が工場の光に誘われてはいってくるのは、夜であり、工場訪問時には、気づきにくいのですが、昼間に訪問した工場でも、蜘蛛の巣があれば、防虫に対する対応が十分でないことを示しています
また、壁付近や溝に虫の死骸なども落ちていないかも、要チェックポイントですね。



(8)ソフト面の対策
@作業者への教育

窓や扉の開閉ルールを標準化して、問題発生時に教育しても、1年が過ぎる頃には、その問題と対策も風化しやすいものです。海外の工場では、特にひとの出入りも多く、ヒトの入れ替わりによって、過去おきた問題と対応がきちんと教育できていない場合があります。

なぜ、窓をしめなければならないか、なぜ、網戸にしなければならないか、その理由を社員にきちんと説明し、理解してもらうこと、その問題が風化しないように内部での工程パトロールで定期的にチェックすること、窓ガラスに標準化したルールやワンポイントレッスンを掲示して、窓を開ける際に注意を促すことなど、小さな改善が必要になってきます。

1度や2度の教育では、身につかず、すぐに組織に定着しないことも認識しておくことが必要です。


A問題の原因と対策を考える学習の機会
防虫対策をする上では、これまで紹介してきた防虫対策をすぐに提示し選択することは、非常に簡単ですが、ハードばかりの対策で満足していては、組織の成長にはつながりません。

海外の現場の責任者や作業者に自ら考えてもらう宿題を与え、防虫のために自分達がすぐにできることは何か、どのようなことができるかを考えてもらうプロセスを共有することが重要です。

問題に対して、個々人の現場の問題としての認識をもって、改善の意識を醸成することが大切です。今後、自分達で問題を発見し、改善する意識をもつ機会にならなければ、ハードばかりの対策をしても、形だけのものになり、他のの問題を未然に予防する組織へステップアップすることもできません。

海外の工場であれば、現地で調達できる材料で対応することも重要な視点ですので、現場の力をいかに引き出せるかが、いかに一緒に自己の問題として考えてもらうかが、重要なポイントではないでしょうか。


ひらめき以上、今回は、実務で活用されている様々な防虫対策についてご紹介しました。

防虫のためのアイテムは、様々な企業さんでつくられており、
今回、ご紹介させていたいだいいくつかの製品については、ひとつの参考事例として、

製造工場の環境にあったよりよい防虫対策を見つけるきっかけして頂ければ、うれしく思います。


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posted by かおる at 22:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 品質不良

2012年10月01日

大企業病とは?

大企業病と経営品質とは? - 品質管理研究所 -

品質は、製品・サービスの品質に限定される狭い意味の言葉ではありません。

組織とひと


企業を経営する立場においては、
経営の品質も、大きな課題のひとつといえるでしょう。

ヒトと同じように、企業もまた生き物です。

企業にも寿命があり、
ひとと同じように病があります。

今回は、大きな企業が陥りやすい『大企業病』について考えてみましょう。

___________________________

<大企業病とは何か?>

(1)大企業病とは?
(2)『大企業病』ということばの生い立ち
(3)大企業病の症状と処方箋とは?
  @経営者と現場社員との心の距離が遠い
  A部門間の見えない壁とセクショナリズム
  B社内の意思決定、承認がおそく、スピード感がない。
  Cリスク回避優先の保守的な意識の蔓延
  D危機意識の欠如
  E書類をつくることを仕事と勘違い
  F会議をすることを仕事と勘違い
  Gお客さんよりも、社内事情・根回しに注力

___________________________





(1)大企業病とは?

大企業病とは、業績が伸びて、企業組織が大きくなるにつれて、官僚的な縦割り組織となって、社内の意思疎通が滞りやすく、経営上の意思決定や行動が遅くなり、企業の経営が、非効率で閉鎖的な状態に陥る結果、業績も低迷するような組織の病のことです。

大企業病

組織が大きくなることで、社員は、挑戦よりも安定をもとめる志向が強まり、社員ひとりひとりの、経営に及ぼす影響力も小さくなり、責任感も薄れていきます。仕事をそつなく、波風立てずに行う事なかれ主義の蔓延。組織が、幾重にも階層化して、悪い情報に対するフィルタがかかり、情報の流れが滞り、承認の意思決定も迅速にできなくなります。

その結果、厳しい市場のめまぐるしい環境変化にも適切に対応できなくなり、気がついた時には、経営状態が悪化し、社内のリストラや社員の意識改革が、必要な状況に追い込まれるのです。


(2)『大企業病』ということばの生い立ち

オムロン(当時、立石電機)の会長、立石一真さんは、昭和58年に創業50周年の年頭に、

「大企業の仲間入りをした立石電機は、大企業病にかかっている。大死一番、意識革命に徹し、創業の精神に還り、徹底的分権により中小企業的な組織と簡潔な制度で活性化を図ることこそ、五十周年にふさわしい大仕事である。全員でこれに挑戦してほしい」と指示したそうです。

出典 オムロンHP 第6話 大企業病の克服、第三の創業へ

このことが、新聞や雑誌などで紹介されて、
「大企業病」ということばが、日本で広く有名になったようです。


(3)大企業病の症状と処方箋とは?

@経営者と現場社員との心の距離が遠い
大企業では、各地に工場や事業所があり、経営者を会社で見かけることや、直接話しをする機会のない企業のほうが多いのかもしれません。入社して以来、経営者を見たことがないという社員さんもいるのではないでしょうか。

経営者

このような物理的な距離の遠さも問題ですが、それ以上に、経営者と現場の心理的な距離を縮める努力がなされているかが重要です。経営者と現場社員との心理的な距離がはなれ、意思疎通が十分にできていないことは、大きな問題といえます。

経営者が、お客さん以上の扱いとなっていないでしょうか。あかの他人のような遠い存在になっている企業は、要注意です。会社のトップである経営者が、何を考え、どのような企業にしたいのか、その想いと考えを、社員と共有して、日々行動していくことが求められます。

現在、多くの大企業の企業経営者は、創業力をもち、事業を切り開いてきた創業経営者ではなく、それを引き継いだ2代目経営者など、いわゆるサラリーマン経営者です。初代創業経営者の起業の想いや理念を引き継ぎ、現在の社員に夢やメッセージを伝えられているでしょうか。

経営者からのメッセージを伝える方法は、社内朝礼で考えを伝える、社長メールでつたえる、現場を周り、社員の声をかけて直接はなす、ランチ会ではなす、自らが率先するなど様々ですが、経営者が、何をつたえるかという内容にもまして、伝えようとする意欲や熱意が、社員の意識へ伝播するのではないでしょうか。

大企業病の病は、組織の病と見られがちですが、その組織の長である経営者の意識が何より、重要ではないでしょうか。


A部門間の見えない壁とセクショナリズム
となりの島(グループ)が、どんな仕事をしているか知らない、なんていうことはありませんか。

大企業は、部門の責任と権限を分け、分業型の組織構造となっています。分業することで、組織の部門ごとの専門性が上がり、専門業務の効率性が高まります。品質面では、品質部門と技術・生産部門の組織分割で、品質権限を独立させて、品質を優先するメリットもうまれるでしょう。

経営品質と組織のつながり


その反面、部門間の見えない壁が、業務のスピードを低下させることがあります。部門組織の業績評価では、組織の上位目標からブレークダウンされた部門としての目標設定と課題に対して、クリアすることで評価されます。

しかし、部門の目標ばかりに着目すると、自己業務に専念してしまうセクショナリズムが横行します。「うちのしごとではない」「うちの責任ではない」「マンパワーが足りない。」「仕方がない。」と言い訳ばかりが聞こえてきませんか。

その結果、全体最適化の視点から組織全体の成果がうまれにくくなります。部門の利害だけを優先する個別最適化が図られることで、本来目指すべき全体の目標が達成できなくならないように注意しなければなりません。

本来、組織としての目標は、お客さまに向いており、部門間の融通もきかず、柔軟に対応できないことは、大きな問題です。実務では、部門間で協力して問題解決を図る場面がほとんどです

各部門をまたがる部門間共通の課題に対する責任感が欠如しているとき、ひとたび、問題が発生すると、社内での犯人探しがはじまります。当事者という意識が欠けた対応をとるばかりか、責任を問う逆の立場に早変わりすることもあるでしょう。

問い合わせても、「私の部門のしごとではない」「関係ない」など、仕事のたらいまわしがおこり、責任の所在が不明確になり、無責任さが目立つことも特徴的な大企業病の症状といえるのではないでしょうか。

このような無責任な組織の壁とは、どのように取り除くことができるでしょうか。

■ いすゞ自動車の事例
いすゞ自動車では、大企業病に対して、「100人委員会」という自由に誰もが参加できる職制をこえた組織で、組織の風土改革が実行され、成果を上げられています。

閉塞感ただよう企業環境を打破しようと改革の必要性に迫られている方のみならず、大変参考になる実務内容が紹介されておりますので、ぜひ、下記をご覧ください。

「いすゞ自動車 100人委員会」一社一風プロジェクト・ジャーナリスト 徳丸壮也 

改革の基本方針は、@部分展開でやる、Aやりたい人が改革をやる、B社員が共有している価値観を変える、C改革推進室をおかないという社員自らが改革の火種となる斬新的な4つの内容など、見所満載です。

※出典 ひとと情報の研究所(元いすゞ自動車 改革実践者 北村三郎さん)

社員の意識改革に加え、組織としての大きな壁も、個人の小さなつながりで、以外と簡単に壊すことができるものです。『同じ釜の飯を食べた仲間』ではありませんが、社内で仕事とは関係ない共通点を持った仲間も大切です。スポーツのつながり、同期とのつながり、お祭りで協力したメンバーなど、様々な共通点が、しごとの壁を壊すきっかけになるものです。

組織を活性化させるためには、部門間での人事交流を図り、品質保証部から技術部へ、技術部から品質保証部へトレードするような公式の人事施策も大切ですが、このような仕事外の取り組みを支援することも、大切なことではないでしょうか


B社内の意思決定、承認がおそく、スピード感がない。
経営に影響のある重要な業務や緊急性のある業務に対して、社内手続きばかり増えて、意思決定が遅く、さらに問題が先送りされていることはありませんか。重要性や緊急性のある優先度のある業務の仕分けが、他の意思決定が必要な通常案件と区別されず、承認がおくれることで、事業に対するスピード感が欠如している場合もあるのではないでしょうか。

経営者と意思決定

ひとつの決裁書にいくつの印がつかれているでしょうか。はんこの数が増えても、よい製品・サービスがうまれるわけではありません。日本企業では、はんこが、決裁承認のシンボルですが、スタンプラリーのようになれば、スピード感がないのは当然です。余計な時間がかかれば、お客さんへの対応も遅れ、変化のスピードについていけなくなります。

各部門の承認プロセスで、検討を重ね、よい商品を練り上げていければよいのですが、問題が起きた時の責任をシェアするというネガティブな発想で、はんこの数が増えているだけであれば、価値がありません。はんこの数によって、責任をうすめている気になれるのかもしれませんが、決裁に対する、承認者が増えることで、チェックする立場の責任感も薄れ、きっとだれかが見てくれているはずという、無責任感も増えるものです。

そうなれば、課題や問題を事前に見つけることも難しくなり、決裁自信の価値も低下し、いい商品やサービスを生み出すことには、結びつかないでしょう。

また、意思決定の遅さの要因には、意思決定を誰が行うかという視点もかかせないポイントです。

日々、発生する現場の問題に対して、現場を十分理解できていないメンバーが会議室で結論をだすのを待ち、指示待ちするのではなく、問題解決に対する責任と権限を各現場の実務責任者に委譲し、現場で迅速に判断して、対応してもらうことが求められるでしょう

映画で大ヒットした『踊る大捜査線』の青島刑事が発した『事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ』という言葉に共感したことはないでしょうか。多くの方が同様の場面に一度はでくわしたことがあるのではないでしょうか。

日本の統治機構として、検討されている道州制を始め、様々な組織で、このような責任と権限の委譲を通じて、活力ある組織にしていくことが求められています。企業業務の中では、どこまでの権限を現場に任せるか、経営者の考え次第といえるのではないでしょうか。


Cリスク回避優先の保守的な意識の蔓延
問題があれば、いかにクリアするかではなく、いかに避けるかばかり考えてはいないでしょうか。
組織の意思決定が、リスクが低くて、より安全なほうばかりを選択し、仕事への挑戦やハングリー精神をもった行動に対して、避ける傾向が顕著になれば、新しい価値ある仕事を生み出し、成長することは難しくなります。

短期的な目先のリスクを避ければ、いずれ、チャレンジしないことによる長期的なリスクとなるものです。

挑戦

大企業病では、なにごとも、平穏無事にすむように流れにみをまかせる『事なかれ主義』が蔓延します。ヒトの顔色をうかがい、多数決できまるような製品では、斬新なアイディアや製品はうまれてこないのも当然ではないでしょうか。社内での問題に対しては、正面からむきあわず、できるだけ波風を立てないことが優先される結果、問題は目先の処置でとりつくろわれ、ひとたび問題が大きくなったときには、時すでに遅し・・・、といった具合です。

外部の環境が変化しているもかかわらず、過去の仕事のやり方を踏襲して、変化できない保守的な意識は、リスクを回避しているのではなく、将来へリスクを転嫁していることを認識しなければなりません。

自社の常識は、他社の非常識です。自分がおもう自己は、他人がおもう自己とは、異なるものです。経営が健全なときこそ、外部から招いている社外取締役などの有識者の声や現場経験の豊富な第三者の声、お客さんの声にも真摯に耳を傾けて、客観的に己の企業を把握することも重要ではないでしょうか。


D危機意識の欠如
大企業であれば、福利厚生もよく、安定している場合も多いでしょう。仕事をそつなくこなせば、退職するまで、給与や職が安定しているといった発想をもちやすくなり、ハングリー精神に欠ける社員も増えることにつながります。
何千人、何万人という大きな組織の単なる一社員として、経営に影響のない歯車の一部と考えてしまう社員が増えることは、危険な兆候といえるでしょう。企業の経営が傾きかけても、まさに他人事のように・・・。

危機意識の低下

企業ではたらく社員の当事者意識の低下こそが、企業組織力の低下といえます。創業当時の経営者や社員のように、企業とともに成長したメンバーのような高い成長意識やモチベーションを同様に維持することは難しいかもしれませんが、責任と権限を現場に委譲し、危機意識を自ら持つ考動する組織にしていくことが求められます。


E書類をつくることを仕事と勘違い
 企業が大きくなると、間接部門や本社組織が必要以上に肥大化することがあります。付加価値を生まない書類作りそのものを仕事と勘違いしている社員が多くなっていないでしょうか。
書類をつくること自体が目的化すると、組織としての業務効率を低下させ、余計な経費ばかりをうみだします。作成した書類によってどのような意思決定がなされ、行動に移されるかを想定しなければ、意味のない書類やコピーが、社内で蔓延してしまうでしょう。

肥大化した組織では、ヒトの数だけ、余計なしごとをつくリ出す必要性が生じ、付加価値を生まない社内業務が生み出される結果、その業務に現場の実務担当者までも巻き込まれ、無駄な時間が費やされ、さらに必要な実務が疎かになる悪循環がうまれてしまいます。

さらに、資料の文字の大きさやフォント、色などの体裁などの表面的なことばかりを気にかけ、その中身の問題や課題に対して、どのように解決すべきか、頭を使って考えることが疎かになってしまうような、本質からずれたことも起こりかねませんので注意が必要です。


F会議をすることを仕事と勘違い

大企業病と会議の非効率性

会議は、目的と議題を明らかにして、限られた時間で意思決定を行う大切な場ですが、形式的に実施する結論の出ない会議が多くなっていないでしょうか。

会議は、単なる情報共有の場ではなく、意思決定の場です。何をして、何をやめるか、次のアクションを明確にすることが求められます。組織上のルールで実施する必要性のある設計審査(DR)などの会議では、官僚的組織の形式的な会議ではなく、本質的な議論ができる場にすることが求められます。さらに、会議のための会議がひらかれている場合は、もはや、大企業病の末期的症状といえます。

会議をすることは、仕事の目的ではなく、手段であり、その会議自体で達成するものは、いったいなんでしょうか。会議室に、会議の効率化を図るための独自の箇条書きをはって、会議前に読み上げて、注意喚起する、会議時間や人員を測定するなどして、業務の必要性の再確認と効率化を図るなどの小さな改善と工夫が求められのではないでしょうか


Gお客さんよりも、社内事情・根回しに注力
会議の中で『お客さん』という言葉が聞こえてきますか。会議の議題の中心は、お客さんのことではなく、社内のことばかり・・・。お客さまを優先して、何をしたいか、何をすべきかといった前向きな議論することすることよりも、その業務をだれがやるべきかといった社内の業務分担や他部門の顔色をうかがうような社内調整と社内政治に意識が集まっていないでしょうか。

社内での事前の根回しに注意を払い、余計な時間とエネルギーを費やし、本来大切にすべき、お客さんへ提供する製品・サービスを高めることに集中できていないことは、非常に残念なことです。

さらに、自分の業務範囲と責任範囲を最小限に限定し、できるだけ仕事を増やさないように保守的になるのは、まさに、大企業病社員の症状といえるでしょう。このような自己保身や無責任さは、ものづくりやサービスの提供者としての当事者意識の欠如からうまれてくるものです

顧客第一

給料を支払っているのは、企業ではなく、製品やサービスを購入してくださったお客さんということを再認識することが重要です。お客さんのいる店頭に立って、実際にお客さんと対話する経験やアフターサービスの経験は、よい気づきのきっかけとなります。

企業での意思決定のひとつの判断基準は、「お客さんにとってどうか」、という簡単な問いに対する答えではないでしょうか。お客さんを自分の家族にあてはめ、家族に何か提供するときにどうしたいかを考えれば、自ずと答えはでるはずです。


今回は、多くの成長企業が、かかる「大企業病」について、考えてみました。

大企業病の特徴は、官僚的、縦割り主義、セクショナリズム、個別最適化、無責任、スピード感の欠如、意思決定が遅い、閉鎖的、失敗をおそれて挑戦しない、融通がきかない、情報が正しく伝わらない、形式的な会議や書類が多い、など多くの企業がどこかあてはまるような症状です。

大企業病は、成長を果たした企業が立ちむかうべき問題であり、組織体質や風土を改革しながら治療をすることが求められます。大企業病の兆候を理解するきっかけになればうれしく思います。



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posted by かおる at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 品質思想