スケジュールが命とり?工場監査!(2012年10月24日)品質管理研究所
新規の部材を調達する際には、
工場監査(Factory Audit)を実施します。
工場監査では、
部材(部品や材料)をつくる工場の品質管理体制や製造現場の状況を確認して、
要求した品質の部材が安定して納入されるような体制があるかを確認します。
さらに、必要に応じて、問題を未然に防ぐための改善を実施します。多くの企業の品質部門には、取引先に訪問して、
このような工場監査を実施する
『工場監査員』がいるものです。
今回は、取引先の部材メーカーさんの監査を実施する上で、
監査員が意外と見落としがちな監査日程設定の4つのポイントについて、考えてみましょう。_______________________
<工場監査の日程設定の4つのポイント>
(1)現場の都合に合わせた監査日程の設定
(2)工場監査の詳細なスケジュールの調整
(3)監査時間の制約事項の把握
(4)工場監査の事前準備_______________________
(1)現場の都合に合わせた監査日程の設定監査の日程は、いつがよいでしょうか。
監査員の都合だけで監査日程がきまっていないでしょうか。製造機種切り替えに手間がかかる大掛かりな製品をつくる企業では、
生産の都合上、監査当日に実際に生産ができない場合があります。工場慣れしている取引先さんであれば、
生産しているときに監査をするものであることを理解して、
事前に調整をして準備してくれている場合もありますが、
そのような監査に慣れている企業ばかりではありません。
事前に生産日程を確認して、調整することが大切です。監査員の日程の都合だけでなく、生産先さんの都合にもきちんと配慮して、
工場監査の日程を決める心遣いが監査員に求められる資質といえるのではないでしょうか。 もし、生産タイミングと合わせて、監査ができない場合には、
類似の製品での確認やデモ的に作業を実施してもらうなどできる限り実際の
製造現場で行われる作業に近い形で確認できるように日取りを調整しましょう。
また、本工場監査の前に、事前のプレ工場監査を実施して、
できるだけ事前に問題を解決して、本工場監査で最終確認するなど、
監査の日程を分割して臨機応変に対応することもできるでしょう。
大手企業さんの監査員が来てくださる工場監査では、1回や2回にとどまらず、
何度も足を運んできていただき、ご指導いただくこともあるものです。

製品に及ぼす部材の品質影響度や実際の管理状況をふまえて、
工場監査を複数回設定することもできますが、
監査員や取引先の貴重な時間や費用もかかることから、費用対効果もふまえて、
品質を確保できるような効率的な監査の日程を組んでいくことが求められます。(2)工場監査の詳細なスケジュールの調整工場監査での全体のスケジュールをあらかじめ監査先と共有することも必要です。
事前の準備資料等を含め、お互いに余計な時間や手間が発生しないような
段取りが、監査を成功させる秘訣ともいえるでしょう。
例えば、1日かけて、じっくり監査を実施する場合では、下記のように具体的に時間割りと内容を知らせておくと、
監査を受ける側も準備がしやすいものです。【監査スケジュール 例】 9:00- 9:10 ご挨拶・名刺交換
9:10- 9:20 監査の趣旨と目的
9:20- 9:50 会社概要説明
9:50-10:00 <休憩>
10:00-11:00 製品の技術/工程説明と確認
11:00-12:00 品質管理体系の説明と確認
12:00-13:00 <お昼休み>
13:00-15:00 製造工程の現場確認
15:00-15:30 <休憩> (監査のまとめ)
15:30-16:30 監査講評 (クロージングミーティング)
なお、会社概要の説明は、一般的には、サプライヤーさんが一方的に行う場合が
多いものですが、購買企業の側でも会社プロフィールを用意しておき、
両者がお互いのことを良く知る機会にすることがよい監査のきっかけづくりとなります。
このような実施事項とあわせて、
準備してほしいものを事前に要望しておくことも大切ですね。プロジェクター、会社概要資料、QC工程図、名刺のコピー、ポインター・・・など

■
タバコミニケーション最近では少なくなりましたが、たばこを吸う方がおられる場合には、
禁断症状がでないように、ときどき休憩をとってあげることもおすすめです。
タバコミニケーションは、肩身の狭くなった少数の喫煙者の特権といえるかもしれません。
小さな喫煙ルームで、タバコという共通点をもってリラックスすることで、
親密性が不思議と高まるものです。タバコをすわれる監査員にとっての意外と強い味方になっているかもしれませんね。
監査でもいつもの姿をありのまま見せてもらうことが重要です。
ざっくばらんに気さくに話せる自然な状態をつくることも、
監査員の腕の見せ所といえるのではないでしょうか。(3)監査時間の制約事項の把握監査の日程は、計画しているものの実際の監査で時間通りに進めることが
できず、時間通りに終わらない場合ももちろんあります。
サプライヤーさんが、監査になれておらず、
書類審査などが不慣れでスムーズにできなかったり、
現場での問題点が目立つ場合、時間を超過してしまう場合もあるでしょう。
夜になれば、暗くなることでの新たな監査のポイントが見えてくるメリットもありますが、
時間が延びることで、現場で作業されるパートさんや社員さんの就業時間に制約があり、
現場の確認ができなくなることもありますので、
常に『時間』を意識して、工場監査を実施することが大切ですね。 特に、24時間のフル生産ではない企業の勤務シフトや就業時間も理解しておくことが大切です。
また、
製造上、1日に一回しかしない作業など、時間に制約がある工程もあります。あらかじめ監査前に確認しておき、監査当日に現場確認できるように、
その工程のスケジュールを優先的に調整しておくことが求められるでしょう。
特に最終の出荷検査などの重要な工程については、実施する頻度が少なく、
事前に連絡しておかないとすでに終わってしまっているような場合もあるので、
出荷検査は、注意しておきたい工程のひとつといえるでしょう。(4)工場監査の事前準備工場監査は、量産開始前の段階で実施されますが、
その監査の前に、自社の品質要求にこたえた製品をつくれる企業か、また
十分な品質管理体制がある企業かを視察訪問して、
現場確認する『下見』も大切なことです。
どの企業さんと一緒に仕事をするかで、製品の品質は大きく変わります。
最初の選択を誤ると、後から大きな品質問題を引き起こすことになりかねません。単に製品の目先の価格の安さだけにとらわれて、購入してしまうと、
後から、市場不良という大きな出費を被ることになるでしょう。
品質問題がひとたびおこると、ものすごく高い授業料となりますので、要注意ですね。
監査をする時点で、問題のある企業とわかっても取り返しがつきませんので、
日頃から良いパートナー企業を探し、良い関係を構築しておくことが、大切ですね。このような下見をふまえて、取引させていただくパートナーを選定し、
工場監査を実施するまでに、工場監査チェックシートなどで問題点を明らかにして、
本工場監査の日取りを決めて、品質を確認していくことになります。
以上、充実した工場監査を実施するための監査の日程設定の4つの
見逃しやすいポイントをご紹介しました。
工場監査は、限られた時間で実施するため、事前の下準備と監査先への配慮が大切です。
サプライヤーさんの監査窓口対応の方の力もお借りして、
よい製品を一緒につくるための工場監査を成功させ、品質の高い製品をつくりあげましょう。【関連記事】・
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