品質は、お客様に販売する製品の品質に
限定される狭い範囲のものではありません。
その製品やサービスの品質をつくりだすプロセス
『仕事の品質』こそが重要です。
製品を創るプロセス(仕事)の品質が十分でなければ、
高い品質の製品を安定的に、繰り返し生み出すことも難しいでしょう。
今回は、このような『仕事の品質』を高める“きょういく”とは何か、
教える側と学ぶ側の2つの立場から考えてみましょう。

(1) ひとに教えるとは?
ひとは、仕事によって、ひとと関わり、
学び、教えあうことを通じて、成長します。
仕事ができる優秀なひとほど、経験もあり、
課題に対して、すべて自分で仕事をしてしまうほうが
短時間に、より正確なしごとをできることも多いでしょう。
自分自身でしごとをすべてやりきるほうが、
楽なことのほうが、むしろ多いのかもしれません。
仕事ができるヒトが陥りやすい『教育のジレンマ』です。
個人の仕事としてではなく、チームとして、
仕事の成果を継続的にあげるためには限界もあります。
組織としてのパフォーマンスをいかに向上させるかを考える必要があります。
自らができる仕事を繰り返し、
自らがやることは、非常に簡単なことです。
しかし、仕事のできるひとにとって、仲間を信頼して、
任せることは、単純ですが、意外と難しいものではないでしょうか。
じれったくなる気持ちを抑えつつ、問題を共有し、解決を後押しして、
責任をもって、最後までフォローする『共育の姿勢』が課題ともいえるでしょう。
お互いが信頼し、助け合える組織として成長していくために、
仕事のできるひとほど、このジレンマを自覚する必要があるのではないでしょうか。
『教える』ということばの語源は、
『愛しむ(おしむ)』ともいわれています。
教えることは、愛をおしまないことであり、
子を育てる親のような育て、見守る気持ちが必要なのかもしれません。
(2) ひとから学ぶ(まねぶ)とは?
逆に、何かを学び、習得する立場では、どのような心構えが必要でしょうか。
『学ぶ』ということばの語源は、
『真似る(まねる)』と同じ語源ともいわれています。
何かを学ぶためには、ひとをまねることからはじめる
真似ぶ(まねぶ)ことが、学びの基本ともいえます。
ひとからまねび、乾いたスポンジのようにどんどん吸収し、
学習することが、理解への近道ともいえるでしょう。
ただ単に教えを待つだけではなく、
自らがそのしごとをまねぶ(まねる)ことで、
しごとのやり方そのものまで、学習したいものです。
現実には、見習うべきでない先生がいることもあるかもしれません。
そんなときは、反面教師として、
自らがやってはいけないこととして、
注意するべきことを教えていただいていると考えれば、
気持ちを抑えて、感謝することもできるのではないでしょうか。
さらに、仕事中の社内の教育者ばかりが、先生ではありません。
いつも顔をあわせている取引先さんやお客さんも、先生です。
そして、仕事からはなれた家族やわが子も、先生となります。

Aさんは、あるとき、成長するお子さんに1年間を振り返り、
どんなことができるようになったかを聞いたそうです。
お子さんが、あんなことができるようになった、こんなことができるようになったと
楽しげに、できるようになったことを教えてくれたあとに、こんな質問をうけたそうです。
『お父さんは、1年間で何ができるようになったの?』と。
Aさんは、親として、子供の1年間の成長は、
肌で感じてわかったにもかかわらず、
お子さんからのこの何気ない一言に、
自分自身の成長がとまっているのではと、『はっ』と気づかれたそうです。
相手に何かを教える時は、相手が教えられたと思うのではなく、
自らが気づいたように思えるようなきっかけをあたえることが、
共育者としての重要な役割といえるのかもしれません。
ひとから学ぶ「学びの場」は、常にあふれています。
それを学びの場と捉えるかどうかは、
心の持ちよう次第といえるのではないでしょうか。
今回は、仕事の品質を高める『教え』と『学び』についてご紹介しました。
みなさまのお仕事の少しでものヒントになればうれしく思います。
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