2012年04月29日

SMARTな品質目標の設定方法とは?

SMARTな品質目標の設定方法とは? - 品質管理研究所 -


継続的な品質改善を推進するために、

毎年、企業の品質方針(Quality policy)にもとづき、
品質目標(Quality target)を設定します。


その品質目標をうけて、各部門では部門目標を設定し、
さらに、各グループや個人へと、ブレークダウンしていきます。

品質目標の設定方法

このような組織のさまざまな部門や段階で必要となる品質目標を
どのように設定すれば、よりよい品質改善に結びつけられるでしょうか。


その目標設定のポイントとなるのが、今回ご紹介する『SMART』です。

『SMART(スマート)』は、「賢い」という意味ですが、
その意味にぴったりの5つの略語をご紹介します。

賢く品質目標を設定するポイントとして、
以下の5つの頭文字SMARTを覚えておくと非常に便利です。


<SMART>
@S- Specific target (具体的な目標、明確な目標、詳しい目標)
目標が、具体的で明確になっているか。

AM- Measurable target (測定可能な目標、重要な目標)
目標が、数値で表され、測定可能であるか。重要な目標が選択されているか。

BA- Achievable target (達成可能な目標)
達成可能な目標を設定しているか。

CR- Results-oriented target(結果指向の目標)
目標が、最終的な成果に結びついているか。

DT- Time-bound target (期限を定めた目標)
目標の達成期限が明確になっているか。

『始めよければ、終りよし。』という日本のことわざがあるように
なにごとも、最初が、肝心で、最初に設定する品質目標が大きなポイントとなります。


適切な品質目標が設定できれば、
経営トップや現場責任者を中心として、
その品質目標の進捗状況をフォローアップしていければ、
自ずと現場の品質改善にも、結びついていきます。


現場での品質改善がうまく進まず、お困りの場合は、
まずは目標が、SMARTに設定されているか見直してみるのが、おすすめですね。


さらに、SMARTを発展させて、

「より賢い」という意味の『SMARTER』という7文字からも大切なポイントを理解しましょう。

目標は、上位方針として決められたものをトップダウンで展開するのが一般的ですが、

実際に目標を行動におとしこみ、実践するのは、現場の社員であり、
実務では、社員の心にはたらきかけるような目標でなければ、その効果も薄れてしまいます。


現場と品質

そこで、下記の2つのポイントもあわせて、目標にもりこめるように考えてみましょう。

EE- Engaging target (魅力のある目標)
ひとをひきつける魅了ある目標になっているか。

FR- Rewarding target(やりがいのある目標)
 やりがいのある目標になっているか。


このような品質目標の設定ポイントを、『SMARTER』を活用して覚えておき、
必要なときにいつでも語呂あわせで、思い出せるようにしておきたいものです。


<SMARTER>
@S- Specific target (具体的な目標、明確な目標、詳しい目標)
目標が、具体的で明確になっているか。

AM- Measurable target (測定可能な目標、重要な目標)
目標が、数値で表され、測の定可能であるか。重要な目標が選択されているか。

BA- Achievable target (達成可能な目標)
達成可能な目標を設定しているか。

CR- Results-oriented target (結果指向の目標)
目標が、最終的な成果に結びついているか。

DT- Time-bound target (期限を定めた目標)
目標の達成期限が明確になっているか。

EE- Engaging target (魅力のある目標)
ひとをひきつける魅了ある目標になっているか。

FR- Rewarding target (やりがいのある目標)
やりがいある目標になっているか。



今回は、品質目標の設定におけるポイントSMART/SMARTERを紹介しました。

SMARTの頭文字に、さまざまな英字をあてることができますので、
みなさんが大切に思われる目標設定のポイントを考えてみても、おもしろいのではないでしょうか。

何がじっくりと考えることで、きっと、大切なことが記憶にのこることでしょう。


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2012年04月20日

倉庫での先入先出の実務とは?

倉庫での先入先出管理とは? - 品質管理研究所 -


倉庫では、品質を維持するために、部材や製品の先入れ先出しを行うことで、
古いものから使用し、常に新しいものが在庫に保管されるように取り扱うことが大切です。

この「先入先出(さきいれさきだし)」は、
英語で、『First In First Out』、略して、『FIFO(フィフォ/ファイフォ)』とよばれることもありますが、

『先入先出(FIFO)』は、世界中の製造業の倉庫で行われている、
部材や製品を取り扱う上での基本ルールといえます。


品質管理と先入先出

ISO9001の品質マネジメントシステムの中で、社内規定として、
製品や部材を正しく取扱うために、明記している企業も、もちろん多くありますが、
ルールがあっても、現場で実践されていなければ、意味がありません。

実務では、作業性や効率性も含め、
ルールが徹底されるような工夫やしかけが求められます。


そこで、今回は、倉庫の保管における「先入れ先出し」を徹底するため、
実務で活かせる「カラーシールの活用方法」について、ご紹介します。

カラーラベルとFIFO(先入先出)

<出典: A-Oneさんの在庫管理ラベル(写真) >

部材を先入れ先出しするためには、納品先のラベル表示に記載されている
ロットNoや出荷日などを確認すれば、古いものを見つけ出すことができますが、
数多くの製品が保管されている場合などでは、細かく見て確認していると、
多大な作業時間がかかり、効率的ではありません。


そこで、部材の先入れ先出しのため、入庫時に納入月ごとに、
色を変えたカラーラベルを梱包段ボールの側面にはりつけて、
遠くからでもすぐわかるよう工夫することができます。


視認性が向上することで、入荷シールを読まずとも、

遠くからでもどれが古いものかを判別することができ、業務の効率化を図ることはもちろん、
FIFO(先入先出)の基本ルールを倉庫管理の基本として、根付かせることができます。




A-oneさんのカラーラベルのように、赤、青、黄色、緑、桃、・・・など、

12色のカラーバリエーションを活用して、月ごとに色を指定すれば、
古いものから使用することを色による識別管理(色別管理)で徹底することができます。


倉庫には、1月〜12月までの月別のカラーリストを合わせて掲示し、

さらに、カラーマークの中に、「12年1月」のように、
わかりやすく文字を書き込む、または、印刷表記することで、
年月の情報も具体的にわかりやすく「見える化」する工夫もできるでしょう。

また、製品の先入れ先出しを行うためには、年月日に頼るだけでなく、

奥から保管し、手前から取り出すルールや、
右(上)が新しく、左(下)を古いものにするなど、
独自の置き場のルールを手順書としてまとめ、
倉庫管理のルールとして、共有化していくことが大切です。


倉庫でのルールの徹底

このような小さなルールづくりと浸透させる積み重ねが、
倉庫での品質維持や業務の効率化を実現することになるのではないでしょうか。

特に、海外現地工場で人材流動が激しい場合など、

新人作業者にも、先入れ先出しを徹底するために、
このようなシールを活用したOJT(On the Job Training)で、
業務の教育を行い、ルールを徹底していくことも、大切でしょう。


倉庫で、先入れ先出しの徹底ができない場合は、
倉庫運用の仕組みの問題として捉えなおし、
このようなシールなどを活用した異なるアプローチを検討すれば、
問題点が着実に改善していくのではないでしょうか。




今回は、倉庫での先入先出をおこなうためのひとつの手段として、
カラーシールの具体的な活用方法について、ご紹介しました。


最近では、バーコードシステムなど他のデジタル機器を活用した倉庫管理システムも見られ、
企業の経営にあった適切なツールや手法を一つの手段として活用して、
倉庫の効率的な運営と品質の維持管理に役立てて頂ければ、うれしく思います。



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2012年04月15日

倉庫の7つの識別管理ポイントとは?

倉庫の7つの識別管理ポイントとは? - 品質管理研究所 -


製品の品質を維持するために、
製品を構成する受入部品や完成した製品を倉庫で、
どのように保管すればよいでしょうか。

また、倉庫では、どのような問題が発生しやすいでしょうか。


今回は、さまざまな部品や製品が入出庫される『倉庫』で、
識別管理の視点からどのような大切なポイントがあるか考えてみましょう。


_________________

倉庫での『7つの識別管理のポイント』

(1)保管管理条件の識別管理
(2)検査品の識別管理
(3)製品種類の識別管理
(4)荷姿の識別管理
(5)開梱条件の識別管理
(6)法律や安全性の基づく識別管理
(7)工場内外の識別管理
_________________



(1)保管管理条件の識別管理
製品の仕様に応じて、特殊な保管方法をする必要がある製品が識別されていますか。

保管管理条件の妥当性

壊れやすいもの、劣化しやすいもの、冷やして保管する必要があるもの、
沈殿しやすいもの、ばらばらになりやすいもの、消費期限があるもの、など

どんな条件で保管する必要があるのか、
どのような取扱をする必要があるのか明確にしていますか。


適切な保管や取扱い条件によって、
製品品質が変化しないことを確認した裏づけを明確にしておく必要があります

より過酷な条件でも、問題がおきないか、または、
どのように変化していくかを理解しておくことが大切です。


食品のような鮮度のある製品ばかりでなく、劣化しにくいように見える製造品についても、
手袋をせずに取り扱えば、ゴミがついたり、表面が変質したりすることもあるでしょう。
金属であれば、例えば、表面が空気にさらされると、表面が酸化されます。

ゴムなどに含まれる硫黄成分とふれていれば、硫化して、劣化することもあるでしょう。

金属が、酸化することは、理科の一般的な常識の範囲であり、
10円硬貨のように、金属が酸化することを身近に知っていますが、
硫化することは、あまり認識がない場合も多いのではないでしょうか。


<段ボール梱包による硫化>

例えば、電子部品を段ボール内でさらされると、
段ボールに含まれる硫黄成分が保管時にガスとしてでることによって、
銀メッキ品などが、硫化して表面が変色したり、
はんだ付け性がわるくなり、品質低下のリスクがあることが知られています。

■ Espec 技術情報 No16 「梱包材の製品への影響調査」


適切な保管容器、適切な保管条件、適切な保管期間で管理し、
品質問題を起こす可能性のある保管を未然に防止することが大切です。



(2)検査品の識別管理
検査する部品や製品について、倉庫から抜き出して検査される場合、
製品ロットの検査前、検査中、検査済みの識別がされることが重要です。

検査の独立性や客観性を保つため、製造部門から独立した検査部門が行う出荷検査では、

出荷品から、検査品をランダムに抜取って確認するため、どのロットから製品を抜き出し、
判定した後にどの製品ロットの梱包に戻すかの識別管理が必要になります。


そこで、検査前、検査中、検査済みを、検査ラベル、立て札、置き場所により識別し、
検査の実施有無が混同されることのないような識別やルールが確立されていなければなりません。

不良品があった場合には、ロットアウトとなれば、
合格品とまざらないように、識別管理(色別管理)することも求められます。

色別管理と品質管理

不良品に赤棚をつけたり、専用の赤い棚に保管して識別し、
早急に製造現場や取引先にフィードバックすることが求められます。

また、B級品などのランクの異なるグレード品、特別採用品、保留品など、
通常良品と異なる製品や部品がある場合の識別も注意が必要ですね。


(3)製品種類の識別管理
製品によっては、微妙に寸法がことなったり、色がことなったり、
同じような形状でもわずかな違いが生じるような組み合わせ製品を扱う場合があります。

多数の機種があることで、管理が煩雑になり、間違いやすくなります。

そのため、間違いやすい類似の製品を管理するために、
梱包に貼る製品シールの台紙の色をかえて識別したり、
梱包に大きな識別マークやシールをはって、わかりやすく外観で管理することがおすすめです。

文字の識別管理と間違い防止

また、社内の管理番号をつける上では、
「1(イチ)とI(アイ)」や「0(ゼロ)とO(オー)」について、見間違いやすいため、

読み取り間違いや記載間違いがおきないように、

I(アイ)やO(オー)などを使わないようにするルールを定めるなど、
ヒューマンエラーを防止することも大切です。



(4)荷姿の識別管理
製品においては、壊れやすいものなど、さかさまにすると破損するものや、
梱包を重ねて、上積みしていくと、強度が保てず、梱包が破損して、
内部の製品品質に影響を与える場合などがあります。

製品の保管の天地無用、上積み禁止の表示の理解や、
許容積み上げ段数などを教育し、
どのような保管取扱をすべきかを倉庫で徹底することが大切です。
 

特に海外に輸出する際には、現地の言葉で文字が書いてあり、
注意書きが理解されていない場合があるので、
どのような意味であるか教育することが求められます。

世界中に、製品を出荷している企業では、
梱包に記載されている出荷先の言葉を現地の言葉に翻訳し、
保管マークと合わせて倉庫に掲示したり、
梱包にあらかじめ現地の言葉を併記しておくなど
未然防止の対策を図ることがおすすめですね。



(5)開梱時の識別管理
冬場、寒いところから搬送された部品や製品を開梱し、保管されるとき、
温度差による結露で、電子部品などの製品がぬれて、破壊されたり、
樹脂材料などが劣化したりする可能性はありませんか。


冬には、湿度が低く、特に帯電しやすいため、
静電気で破壊しやすい製品は、アースバンドをして取り扱うことも必要になるでしょう。
静電気を帯びやすければ、ごみや汚れをひきつけることもあるでしょう。


倉庫の品質管理

年間を通じて、どのような温度や湿度の変化がある地域なのか、

製品の品質特性を理解するとともに、
品質低下を招きやすい環境にさらされないようにする必要があります。

世界各国の現地工場を訪れる際には、地域の気候も理解することも大切です。
工場を訪問するとき、タクシーの運転手さんに聞いてみるのもよいでしょう。


年中、朝から晩まで、屋外の環境とふれている運転手さんは、
肌で感じていて、気候のことも親切に教えてくれるでしょう。


また、梱包の開梱時には、袋でパッケージングされた製品を適切な方法で開封せず、
カッターなどで製品にきりこみをいれてしまったりすることもありますので、

適切な開封方法を必要とする製品については、
ワンポイントのレッスン書などの掲示で情報共有すること、
社内教育を図ることも大切ですね。



(6)法律や安全性に基づく識別管理
倉庫で特定の薬液やアルコールなど、
数量上限や取扱方法などが、安全性や法律(消防法など)に基づいて、
適切に管理、識別しておくことが求められる製品や副資材もあります。

実務では、安全に保管し、適切に取扱いをするために、
危険なものかどうか、どのような取扱にすべきか、
作業者がきちんと理解していなければなりません。


製品安全データシート(MSDS:Material Safety Data Sheet )をベースにして、
作業上のミスが起きた場合の対応や取扱注意事項を明確にし、教育をするとともに、
大切な社員の安全が常に確保されるようにしなければなりませんね。

また、火災を防ぐために、たばこなどの火気の取扱を禁止するとともに、
電気器具や配線に近い場所に製品を保管しないような日常点検や
配電盤の前にものを置かず、いつでも扉があけられるように床に
保管禁止のテープを貼るような具体的な改善取り組みも大切です。


(7)工場内外の識別管理
倉庫は、工場内外のものやヒトの大切な出入り口で、
屋内と屋外を意識した識別管理が大切です。


製品や部品の出入りだけでなく、
輸送してきたトラックのタイヤやヒトの靴についた汚れや梱包容器についた汚れ、
屋外からの粉塵など、さまざまな汚れが持ち込まれる場所でもあります。

外からの汚れがもちこまれないように、
屋内靴への履き替え等ルールや荷受時の汚れの除去方法などを明確にするとともに、
定期的な清掃も実施して、常に清潔な環境を維持することが大切です。


また、倉庫は、運送業者さんや取引先さんなど社外の方が出入りする場所でもあり、
たばこなどの火気の取扱の徹底が、
社外の方にも、倉庫や周囲で徹底されなければなりません。

火気のリスクを減らすために、社内関係者のためだけではなく、
社外の人にもすぐわかるように、喫煙所の指定や禁煙の指定など、
掲示を含め、注意喚起することが大切です。

倉庫での禁煙と火災防止


そのほか、工場の倉庫での日々の施設点検、
入出庫業務の管理などにかかわるポイントが
国土交通省のマニュアルとして紹介されていますので、
下記もあわせて、ご覧ください。


<参考>
■ 倉庫管理主任者 マニュアル 国土交通省総合政策局貨物流通施設課


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2012年04月14日

工程能力指数Cpkと不良率の関係とは?

工程能力指数Cpkと不良率の関係とは? -品質管理研究所-


品質の専門家から、

「Cpk(しーぴーけー)は、どう?」、
「Cpkは、1.33以上ある?」、


など、難しい専門用語を聞かれたことはないでしょうか。

工程能力指数Cpkとは何か、

十分に理解されないまま数値だけが、
社内外で、一人歩きしていることはありませんか。

工程能力指数Cpkとは


今回は、Cpkについての理解を深めることができる
『工程能力指数Cpkと不良率との関係性』について、ご紹介します。



___________________

(1)工程能力指数Cpkとは?
(2)感覚的に理解しているCpk
(3)工程能力指数Cpkと不良率の関係性
(4)EXCELで解くCpkと不良率の関係式
(5)Cpkと不良率の活用と限界
___________________


(1)工程能力指数Cpkとは?

工程能力指数Cpkは、統計的品質管理(SPC:Statistical Process Control)にもとづく
工程の品質の安定性を評価する実務的な指標です。

なんだか難しそうですが、実際には、

@製品の平均値、A製品のばらつき、B製品規格の3つを用いて
引き算と割り算を組み合わせて計算できるシンプルな指標です。


製品特性値の@平均値とB仕様の規格値の差が
A製品のばらつきと比較して、どの程度余裕があるか定量的に把握します。

さらに、どの程度不良が発生する可能性があるかを推測することもできます。

工程能力指数Cpkによる品質管理

一般に自然現象の多くが、正規分布(Normal distribution)に従うことが多いことから、

製品における特性値にも、このモデルを適用することが、
工程能力Cpkを考える上での前提になっています。

この統計的な前提をふまえて、
どの程度の不良が発生するかを推測し、
見えない品質を予測することが、品質保証の上では大切になります。


(2)感覚的に理解しているCpk
たとえば、製品の抜取検査をした場合、検査をした2/10の製品がすべて、
合格であった場合、その他、8/10がすべて合格することを保証できるでしょうか。

もちろん、未検査の製品を根拠なしに保証することなどできません。

このとき、検査した2/10の製品の特性値が、
合否判定基準となる規格に対して、十分な余裕があるのか、

それともぎりぎりで合格していたのかでは、
残りの未検査品に対する印象も大きくかわってくることでしょう。

規格ぎりぎりで合格した場合では、
未検査品の8/10の製品が、ばらつきにより不合格になる可能性をはらんでいます。

しかし、規格範囲から余裕があった製品の場合では、
未検査品でも、かりに多少ばらついても合格する可能性が高いことを
感覚的に理解することができるでしょう。

この不合格になる可能性がどれだけあるのかを感覚的にではなく、

統計的にみて推測することができれば、
第三者にも客観的に説明することができ、
お客さんに対する品質保証に役立てられます。


このような日頃、現場で感覚的に感じていることを
客観的、定量的にあらわせる指標が、工程能力指数Cpkです。



■ 工程能力指数Cpkとその算出方法については、下記の記事をご参考に!

工程能力指数Cpkとは?
工程能力指数Cpkの計算方法とは?

※Cpkを算出する下記のフォーマットも無料ダウンロードできるようにしています!

工程能力指数Cpkの計算方法


(3)工程能力指数Cpkと不良率の関係性
工程能力を図る指数Cpkの理解を深めるために、不良率との関係性についてご紹介します。

百聞は一見にしかず、まずは、
工程能力指数Cpkと推定不良率の関係を数値でみてみましょう。

工程能力指数Cpkと不良率の関係

判断基準ともなる代表的なCpkと不良率の関係は、以下の通りです。

<代表的なCpkと不良率の関係>
Cpk=0.33 (=1.0σ/3σ) では、不良率 317311ppm (31.7%)
Cpk=0.50 (=1.5σ/3σ) では、不良率 133614ppm   (13.4%)
Cpk=0.67 (=2.0σ/3σ) では、不良率 45500ppm  (4.5%) 
Cpk=1.00 (=3.0σ/3σ) では、不良率 2700ppm   (0.27%) 
Cpk=1.33 (=4.0σ/3σ) では、不良率 63.3ppm  (0.0063%)
Cpk=1.50 (=4.5σ/3σ) では、不良率 6.8ppm  (0.00068%)
Cpk=1.67 (=5.0σ/3σ) では、不良率 0.57ppm  (0.000057%)
Cpk=2.00 (=6.0σ/3σ) では、不良率 0.002ppm (0.0000002%)


特に、特徴的なCpkとしては、下記の2つが上げられます。

Cpk=1 (=3.0σ/3σ)は、不良率 0.3%で、いわゆる『千三つの法則』と呼ばれる値です。
Cpk=2 (=6.0σ/3σ)は、不良率 0.002ppm、6σ(シックスシグマ)の値です。

Cpkの意味について、このような不良率からも、理解しておくことが大切ですね。


(4)EXCELで解くCpkと不良率の関係式

エクセル(Excel)では、標準正規分布から、
基準と比較してどの程度の割合が占めるかを算出する
ことのできる「NORMSDIST(Z)関数」を適用できますので、
下記の式によって、工程能力指数Cpkの値から、
不良率(両側規格)を簡単に算出することができます。


■ 不良率(%)=(1-NORMSDIST(Cpk * 3)) * 2 * 100

※この計算式では、EXCELの%表示の書式にせずに ×100倍をして、直接、不良率(%)を算出しています。

不良率がppmの単位で算出する場合は、下記の式になります。

■ 不良率(ppm)=(1-NORMSDIST(Cpk * 3)) * 2 * 1000000

「ppm(ピーピーエム)」は、百万分の1をしめす単位です。

100分の1を示す「%(パーセント)」よりも、
高い品質基準を見る場合に活用されることが多く、品質保証にかかせない単位が、ppmですね。

%で管理するか、PPMで管理するかで、
企業の品質に対する意識や実力の違いが見えてきます。


以下では、上記のCpkと不良率の関係性をシンプルな数式からひもといてみましょう。


<工程能力指数Cpkを用いた不良率の算出方法>

工程能力指数Cpkは、上限規格Suと平均値μ、そして標準偏差σから以下の式で表されます。
・Cpk=(Su−μ)/3σ

※下限規格Slで算出する場合は、Cpk=(μ−Sl)/3σ です。


標準正規分布は、σ=1 μ=0なので、これを工程能力指数に代入すると、
・Cpk=Su/3 

と単純化できます。

上下限の規格値が正規分布の中央値から等しい距離にあることを前提として、
以下の計算では、上限規格Suで計算を進めていきます。

上限規格Suは、
・Su=Cpk×3 

となることから、あるCpkを設定すると、上限規格Suの値(相対的位置)がきまります。
標準正規分布では、基準となる平均値μが、ゼロであるため、
正規分布の規格値Suは、平均値=中央値からの距離Zと捉えなおすことができます。
・Z= Su=Cpk×3

標準正規分布の上限規格Su=Zまでに、データがどの程度の割合を占めるかは、
EXCELの標準正規分布の累積分布関数NORMSDIST(Z)で算出できるので、


上記のZ=Cpk×3を代入することで、

標準正規分布のヒストグラムの片側の良品率は、
・良品率(片側)=NORMSDIST(Cpk×3)で算出することができます。

求めるのは片側の不良率のため、
・不良率(片側)=1- NORMSDIST(Cpk×3)

となり、両側の不良率は、同様に反対側の下限規格Slでも、同じ不良率となるため、2倍して
・不良率(両側)=(1- NORMSDIST(Cpk×3))×2

となります。

EXCELでは、大変わかりやすい式で不良率とCpkの関係が導きだせます。


(5)Cpkと不良率の活用と限界
実務では、自社で製品ごとに設定した品質目標(不良率)をもとに、

その目標値を実現するためには、この算術式のCpkを変化させて、
推定の不良率を計算してみましょう。

どの程度のCpkを目指せばよいのか、ヒントになります。

また、製品によっては、多くの重要な品質特性がある場合もありますので、
複数の特性で不良の可能性がひそんでいることを理解して、

最終の品質目標を達成するために、個別の目標(不良率)をさらに厳しく見積もって、
高いCpkを目標設定するという考え方も大切です。


このように、求められる品質に応じて、Cpkの値がいくつであればよいかは、
一般的なCpkの基準(Cpk=1、1.33、1.66など)も考慮して、
自社で設定していくことが、大切ではないでしょうか。

工程能力指数Cpkと目標不良率の設定


■ Cpkの限界とは?
このような計算過程から導出される推定の不良率は、
工程能力指数Cpkの中でも、偏りのない、
規格の中央値と平均値が一致した正規分布を想定しています。

一方、実際の製品実測データでは、このような正規分布にならないことが多く、
不良率との関係性をCpkだけに頼って判断することは、
誤った判断をすることにもつながりかねません。

製品の特性からヒストグラムをえがいたときに
層別できるような分布や特徴ある分布になる場合、

管理図による時系列変動がある場合、局所的な変動がある場合など
さまざまなことが現実には、おきていることが多いでしょう。

Cpkは、一つの指標にまとめ上げた結果、使いやすい反面、
損なわれた情報もあることを常に意識しておかなければなりません。


工程能力の数値Cpkを正しく理解し、解釈するためには、
QC7つ道具の「ヒストグラム〜分布」や「管理図〜時系列変化」などと併用して、
活用していくのがおすすめですね。



今回は、工程能力指数Cpkと不良率の関係についてご紹介しましたが、
Cpkの使い勝手の良さと注意ポイントを理解して、
うまく活用頂ければ、うれしく思います。


【関連記事】
工程能力指数Cpkの計算方法とは?
工程能力指数Cpkとは?
動画で学ぶ工程能力指数Cpk
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2012年04月09日

工程能力指数Cpkの計算方法とは?

工程能力指数Cpkの計算方法とは? -品質管理研究所-


製品の品質を確保するためには、

その製品をうみだす工程のばらつきを把握し、
みながわかる指標で客観的に良し悪しを判断することが求められます。


ばらつきと工程能力指数Cpk


今回は、企業をこえて活用される品質管理指標である
『工程能力指数 Cpk(シーピーケー)の計算方法』についてご紹介します。

なお、工程能力指数Cpk計算フォーマットは、
文中で、無料でダウンロードできるようにしています!


■ 工程能力指数Cpkの活用とは?

工程能力指数Cpkは、

出来た製品の特性のデータ群から算出される平均値μと標準偏差σから、
製品仕様書の上限規格値と下限規格値と比較して、

統計的にみて、品質が安定しているかを判断することができます。

一般的に、工程管理された製品の特性などは、

正規分布に従うことが多く、抜取検査された特性値であっても、
どの程度の不良が発生する可能性があるかも統計的に推測することができ、
抜取検査での不良のリスクについても考えることができます



■ 理解しにくい?!工程能力指数Cpk

大きな企業との取引を通じて、

製品の重要品質特性を確認するために
工程能力指数Cpkを要求される場合も多く、


どのように計算すればよいか、良いのか悪いのか、
試行錯誤されたご経験のある方も多いのではないでしょうか。

工程能力指数Cpkと品質要求


工程能力指数Cpkは、

数式やEXCELなどの計算式が理解しにくいため、
指標として導入するためには、ハードルが高そうにみえますが、

いったん数字(測定データ)で具体的に算出できれば、
工程能力指数の指標自体は、単純明快に理解いただけると思います。


今回は、すこしでも皆さんの理解の支えとなるよう、

工程能力指数の計算フォーマットを無料で
ダウンロード(Excel)できるようにいたしましたので、
ご参考になれば、うれしく思います。


ぜひ、皆様の会社にあった形で、アレンジして活用いただければ幸いです。


工程能力指数Cpk 計算フォーマット について

工程能力指数Cpkの計算方法

■ エクセル/PDFフォーマットのダウンロードはこちらからです!

ひらめき工程能力指数Cpk計算フォーマット(エクセル.ver)

ひらめき工程能力指数Cpk計算フォーマット(PDF.ver)  ※参考


以下では、工程能力指数Cpkの計算フォーマットの簡単な使い方をご紹介します。

工程能力指数Cpk計算シートのEXCELの該当箇所に入力すれば、
複雑な計算は、自動でされますので、

実際に該当箇所に入力して、さわりながら理解していただくのがおすすめです。



■ 工程能力指数 改善フォーマットの簡単な使い方

(1)測定データの入力
製品の品質特性にかかわる下記のデータ2項目を入力してください。

@個々の測定データ(N =1〜100まで入力可能)
A仕様規格値(上限/下限)


※規格を越えた場合、測定データが自動で赤く表示されるように設定してあります。

(2)自動計算
自動的に下位の指標やグラフができるようになっています。

@工程能力指数Cpk 
Aデータの平均値、標準偏差、MAX、MIN
Bヒストグラム 


・ヒストグラムは工程能力指数とセットで必ず確認しましょう。
 どんな問題があるのか、ヒストグラムをみれば、一目瞭然です。

・工程能力指数として、一つの数字に単純化されたことで、
 そぎおとされた大切な情報もきちんと理解しましょう

(3)その他の関連した必要情報の記載
@工場名、工程名、設備名、製品名、測定箇所がわかる図面など必要な箇所に記入しましょう。 
・工程能力指数は、管理責任者やお客さんに説明する場合が多いのですが、
 見るヒトの立場にたって、何を測定しているか、どこを測定しているのか、
 わかりやすく表示することも大切です。

A目標となる工程能力指数と不良率も設定しておきしましょう。
・Cpkを設定すれば、自動的に統計的に推定される不良率が算出されます。
 EXCELシート内の目標Cpkと不良率の関係から、どれくらいのCpkであれば、
 どれくらいの不良率に相当するのかわかりますので、ぜひ、ご活用ください。


・Cpkは、グラフから読み取れる情報を単純化した指標ですので、
 実測データを元に算出した統計指標を用いて算出した「抜取検査の不良率推定」の項目は、
 現物の実際の不良率とは、異なりますので、参考(推定値)として、理解していただければ幸いです。

(4)Cpkの算出結果の解釈
@Cpkの比較と判定
・Cpkの値から、お客様が求める品質に十分こたえられる状態にあるかを判断し、
 必要ならば改善アクションを明確にして、品質改善につなげていきましょう

・一般的には、Cpk 1.33 以上あることが望ましいとされていますが、
 製品の要求品質によって、基準を設定し、改善に役立てていくことが求められます。
 
 ※工程能力指数 Cpkの基準については、こちらの記事をご参考にどうぞ!

 ■ 工程能力指数Cpkとは? (品質管理研究所)

ACpkの月別推移
・工程能力指数Cpkは、中長期にわたり、時間的な変化を通じて、
 品質が安定していることを確認することが大切ですので、
 Cpkの月別の推移グラフをいれて、毎月の変動をチェックできるようにしています。


以上、簡単に使える『工程能力指数Cpk計算フォーマット』について、ご紹介しました。

ひらめき業界を越えて広がる品質管理指標Cpkが、実務で幅広く活用されて、
さらなる品質向上のきっかけになれば、うれしいかぎりです。


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posted by かおる at 07:00| Comment(21) | TrackBack(0) | 工程能力指数(Cpk)