「鳥の目」「虫の目」「魚の目」 -品質管理研究所-
品質を高めるためは、
どのような視点で物事を捉えればよいでしょうか。
自然の生き物の3つの目、
「鳥の目」「虫の目」「魚の目」でシンプルに考えてみましょう。
@「鳥の目」 鳥は、大空をとび、地上を大きく眺めることができます。
鳥の目のように、
「全体を俯瞰して状況を的確に把握する」視点が大切です。

物事に取り組むときは、
その仕事は、どんな目的や価値があるのか、
お客さんや仲間にとってどんな影響があるのか、
全体の仕事の中での位置づけを十分理解し、大局を把握することが大切です。・お客さんがほしいものは、どんなものでしょうか。
・最終のお客さんは、目の前のお客さんだけでしょうか。
・お客さんのお客さんがのぞんでいることを理解できるているでしょうか。
・本当に今優先して取り組むべきことはなんでしょうか。
・忙しさにおわれて、本当に大切なことがおろそかになっていないでしょうか。
・現在、企業がおかれている経営環境がこれからどのように変化していくのでしょうか。
・優先的に改善すると効果があるボトルネック(課題)はなんでしょうか。
・作業者は最終製品を理解し、部品を組み立てることができているでしょうか。
・後工程で作業しやすいように、どのようなことに配慮すればよいでしょうか。
・検査員は、前の製造工程でどの部分が不良になりやすいか理解しているでしょうか。
経営者層や工場長は、まさに、俯瞰的にみることが仕事です。また、現場の作業者こそ、この鳥の目で仕事をすることが成長の鍵になります。
担当職務の2つ、3つ上の役職になった気持ちで、日頃から仕事にとりくめば、
おのずと、鳥の目で見えてくるのではないでしょうか。また、鳥のように空を自由に飛べる役職ではなくとも、
木々が生い茂るジャングルの密林の中で高い木にのぼり、
社員が目指すべき方向を体で指し示すような現場のリーダーシップを
実践することもまた、魅力的です。
A「虫の目」虫は、複眼でさまざまな角度で広い世界をみています。
虫の目のように、外敵をすばやく察知して、小さい体で生きぬくために、
「様々な角度から、現実の小さな変化をよみとる」ことが大切です。

・製造現場で、現物をみて、現実を把握する3現主義の基本ができているでしょうか。
・現場の声に耳をかたむけ、異なる視点から課題に対する解決策を見出しているでしょうか。
・数値に抽象化されたデータを見て理解しているだけで、行動がおわっていないでしょうか。
・直接現場で品質課題を肌で感じとっているでしょうか。
・自分の目でみた現場の問題点をもとに、改善につなげられているでしょうか。
・他の類似製品の不良にふれて、製品の不良を未然に防げているでしょうか。
・作業や検査手順が手順どおりに継続して行われているでしょうか。
・設備が量産によりだんだん磨耗してきていないでしょうか。
・大切な従業員の健康管理や日々の体調管理に気を配っているでしょうか。
現場ではたらく方々が、日頃大切にすべき視点が、虫の目です。
周りの生きた情報を取り入れて、品質改善に活かすことが求められます。鳥の目をもつ経営者や工場長自らが、現場に接し、
虫の目で、直接、状況を把握して、社員とのコミュニケーションを図ることも非常に大切です。
優れた経営者は、現場のことを作業者以上に理解しています。経営者自ら、毎朝、現場を周り、問題を把握することはもちろん、
交代制の社員に対しての訓示など、同じ話であっても、
シフトごとに、直接経営者が顔をあわせた中で説明したり、
毎日現場の作業日報に目を通すなど小さな変化をすこしでもよみとろうと
さまざまな努力をしている姿勢には、感銘をうけます。経営者として、当然のことかもしれませんが、
続けることは、なかなかまねのできることではありません。
B「魚の目」魚は、自然の海や川の中でたくましく生きています。
魚の目のように、潮の満ち干きや川の激しい流れを感じ、
空や海からの外的からも身を守ると同時に、自らもえさを探すように、
「世の中の変化、市場の顧客要望や品質要求の変化、製造環境の変化などの流れをよみとる」ことが大切です。 
・短期的な目先の利益に追われず、長期にわたる信頼性や品質を重視できているでしょうか。
・お客様が望む品質が、常に変化し続けていることが把握できているでしょうか。
・製造現場の変化点に目をむけ、現場を管理できているでしょうか。
・季節により製造環境や保管環境が変化することで品質問題が発生する恐れはないでしょうか。
・不良の推移や歩留りの推移はタイムリーに測定されているでしょうか。
・突発的不良と傾向的不良を意識して改善できているでしょうか。
・不良が発生するメカニズムを理解した上で、再発防止の改善が実施できているでしょうか。
・不良の対策に対して、同じ製品をつくる別ラインや別の工場に水平展開できているでしょうか。
・製品が市場で使われる際の流れを理解した上で、品質確認試験が計画されているでしょうか。
「虫の目」は、ボトムアップ的で現場の実態が詳細に見える反面、
近視眼であるため全体が把握しにくい特徴があります。
「鳥の目」では、トップダウン的で全体を把握できる反面
現場の詳細まではつかみにくい特徴があります。
その両者の特徴の欠点を補い、
詳細(ボトムアップ)と全体(トップダウン)をつなぐ役割を果たしてくれるのが、
変化や流れを把握する「魚の目」といえます。今回は、生き物に学ぶ3つの視点、
「鳥の目」「虫の目」「魚の目」をご紹介しました。
日頃忙しいみなさんにとっては、
目先の仕事におわれ、虫の目で精一杯になりがちです。
もちろん、実践的で大切な実務の能力は向上しますが、
最終ゴールまでの道筋が時として見えにくくなり、
最終成果に繋がりくいことも事実です。
最終的なお客様によろこんでもらえるように、
「鳥の目」「虫の目」「魚の目」の視点とのバランスをとり、
多角的な視点で品質を高めることについて、
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